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令和2年4月17日付け裁決(答申第16号)

2023年2月17日

ページ番号:505377

裁決書

審査請求人  大阪市〇〇区〇〇〇〇  〇〇 〇〇
(代理人    〇〇 〇〇)

処分庁  大阪市長  松井 一郎

 審査請求人が平成29年7月24日に提起した大阪市重度心身障がい者(児)住宅改修費給付事業に関する処分(平成29年5月23日付け大〇〇福第〇〇号)に係る審査請求(以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の経過
1 平成29年5月9日、審査請求人は、大阪市〇〇区保健福祉センター所長(以下「処分庁」という。)に対し、住宅改修費給付申請書を提出して、大阪市重度心身障がい者(児)住宅改修費給付事業実施要綱(以下「本件要綱」という。)第4条の給付申請(以下「本件申請」という。)を行った。
2 平成29年5月23日、処分庁は、本件申請に対し、第6条第3項第2号の不支給決定(以下「本件処分」という。)を行った。
3 平成29年7月24日、審査請求人が大阪市長に対し、本件処分の取消しを求める本件審査請求をした。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 審査請求人代理人は、平成27年6月に処分庁を訪れ、審査請求人に係る本件申請について相談し、その際に申請様式の交付を受けたが、これを紛失した。
 そのため、審査請求人代理人は、平成28年8月以降10回以上、処分庁を訪れ、申請様式の再交付を求めたが、処分庁に交付を拒否され続け、申請時期が遅れた。
 処分庁のこうした対応は法違反であるから、住宅改修費は給付されるべきである。
2 処分庁の主張
 審査請求人が、本件申請を提出したのは平成29年5月9日であり、この日から〇日後の平成29年〇月〇日には審査請求人が65歳に到達し、介護保険法第45条に基づく居宅介護住宅改修の対象者となることから、申請後の審査や決定手続きに要する期間を考慮した場合、住宅改修費給付事業の対象とならないことを理由として不支給決定としたものであり、本件処分は実施要綱に基づき適正に行ったものであって、本件処分に違法や不当な点はない。
 また、本件申請の受付までになされた審査請求人代理人からの相談については、審査請求人が希望する工事の内容が審査請求人の障がい状況から対象外であること等を説明し、審査請求人の障がい状況から対象となる工事例等を繰り返し説明し、対応してきたものである。
 審査請求人から平成29年5月9日に提出された本件申請には、本件申請までの相談段階で、処分庁から審査請求人代理人に対して繰り返し説明してきた疑義が解消されておらず、同事業の対象とならない工事を含む内容となっていた。
 なお、審査請求人が申し立てている「処分庁が申請様式の交付を拒否し続けた」という事実はない。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
 本件要綱は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号、以下「障がい者総合支援法」という。)第77条第1項第6号、同法施行規則第65条の12で規定される地域生活支援事業の一つとして行われる、在宅の重度心身障がい者(児童を含む。以下同じ)に対する住宅改修費の給付基準を大阪市において定めたものである。
 本件要綱の内容は、以下に記載のとおりである。
(1) 住宅改修費給付の目的は本件要綱第1条に規定されており、日常生活上の障がいの除去又は軽減に直接効果のある改修工事を行う場合の費用を一部給付することにより、日常生活の便宜を図り、その福祉の増進に資することであることが定められている。
(2) 住宅改修費給付事業の対象となる工事は第2条第4項に規定されており、障がい状況に応じた対象工事例が示されている。
 審査請求人は、身体障がい者手帳〇級(〇〇の総合等級)並びに療育手帳〇を所持していることから、同条同項の第〇号、第〇号及び第〇号で示されている工事例が対象となる。
(3) 住宅改修費の受給資格は第3条に規定されており、同条第2項において、介護保険法の住宅改修費を受けることができる者は給付対象としない旨が定められている。
(4) 申請内容の審査については第5条に規定されており、同条第1項において、保健福祉センターは実地調査の前段に申請書類が整っているか、対象工事であるかどうか、及び受給資格があるかどうかを審査することが定められている。
(5) 給付決定については第6条に規定されており、同条第3項第2号において、申請内容が本件要綱に基づく対象工事でない場合や受給資格に該当しない場合は、不支給の決定を行うことが定められている。
2 本件処分に係る審査事項の整理
 審査請求人は、処分庁が申請様式の交付を拒否したことが違法である旨主張するが、本件処分に係る審査は、本件申請に係る処分の適否に係る審査であり、すなわち本件申請に対する本件処分の適否の如何を審査する限りである。
 したがって、本件において、審査請求人が申し立てている事項のうち、処分庁が申請様式の交付を拒み続けたことの如何については、本件審査において審査しない。
3 本件処分に係る手続き
 本件申請は、審査請求人が介護保険の対象となる〇日前の平成29年5月9日になされており、本件要綱第5条の審査に要する事務手続きにかかる期間を考慮した場合、本件要綱第3条第2項及び第6条第3項第2号に基づき、審査請求人は受給資格を満たさないと判断し、本件処分を行っていることが確認できる。
 本件申請に係るこれら一連の事務手続き並びに本件処分は、本件要綱に基づき行われており、処分庁における手続きに違法や不当な点はないものと考える。
4 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 本件処分について、他に違法又は不当な点は認められない。
5 争点について
 本件審査請求における争点は、以下の3点である。
(1) 審査請求人は、本件要綱第3条第2項本文に該当し、本件要綱に基づく住宅改修費の受給資格を欠いていたといえるか否か(以下「争点1」という。)。
(2) 本件処分にあたって付された処分理由が、行政手続法第8条に反し、違法又は不当となるか(以下「争点2」という。)。
(3) 審査請求人代理人が本件要綱に基づく住宅改修費に係る申請様式の交付を求めたにもかかわらず、処分庁が交付を拒否したとして、行政手続法第7条の趣旨に反し、違法又は不当となるか。(以下「争点3」という。)
6 争点に係る判断について
(1) 争点1について
 本件要綱第3条第2項本文は、本件要綱に基づく住宅改修費の受給資格の一つとして、「介護保険法の住宅改修費を受けることができる者は給付対象としない。」と定めている。
 審査請求人は、平成29年〇月〇日付けで要介護認定を受けているが、本件申請時である同月9日時点においては、未だ介護保険法(平成9年法律第123号)第27条の要介護認定を受けていなかった。
 また、審査請求人は、本件処分時においても、同法第40条第6号の居宅介護住宅改修費の支給申請や第52条第6号の介護予防住宅改修費の給付申請(以下あわせて「介護保険住宅改修費申請」という。)を行っていなかったから、申請がない以上はこれに対する給付決定を受けることもない。
 そうすると、審査請求人は、本件申請時において、介護保険法に基づく住宅改修費を受ける資格を有しておらず、また、本件処分時においても、介護保険法に基づく住宅改修費を現に受けている者でもないことから、審査請求人は、本件要綱第3条第2項本文に該当しないようにも思われるので、この点検討する。
 本件要綱第3条第2項本文は、第6条の給付決定・不支給決定時において、介護保険法第27条の要介護認定又は要支援認定を受けている者(以下「要介護者等」という。)について、介護保険住宅改修費申請の有無にかかわらず、本件要綱に基づく住宅改修費の受給対象者から、一律に除外する趣旨の規定である(以下「本件要綱解釈」という。)。
 これに従うと、審査請求人は、前記のとおり、平成29年〇月〇日付けで要介護認定を受けていることから、本件処分時において要介護者等にあたり、本件要綱に基づく住宅改修費の受給対象者ではないといえる。
 ただし、前記のとおり、本件要綱第3条第2項本文の文言からは、判断基準時がいつであるのか不明確であり、介護保険住宅改修費申請の要否も不明確であるので、本件要綱解釈が直ちに導き出されるものではなく、許認可等の性質に照らしできる限り具体的なもの(行政手続法第5条第2項)となっているとは言えない可能性がある。
 本件要綱に基づく住宅改修費の給付は、障がい者総合支援法における地域生活支援事業の一つとして行われるもので、全国一律に行われるべき自立支援給付とは異なり、受給対象者をどのような者とすべきか、また、いつの時点で受給資格を判断すべきかということについて規則や通達等でも細かく規定されてはおらず、各自治体の実情に応じて実施されるべきものと考えられるから、本件要綱に基づく住宅改修費の受給資格やその判断基準時についても、どのように定め、判断するかについて、各自治体の広範な裁量が認められていると考えられる。
 そうすると、本件要綱に基づく住宅改修費の受給資格者や判断基準時の定め方について、大阪市に広範な裁量があると考えられる。
 また、本件要綱第3条第2項但書とあわせて考えれば、本件要綱解釈のとおり、要介護者等が受給資格から一律除外されていることがとりわけ不相当とは解せられない。
 さらに、要介護認定等を受けた場合に、本件要綱に基づく住宅改修費の給付対象外となることが内部のマニュアルや、窓口に相談に来た者に配布される資料にも、記載されており(ただし、市ホームページには掲載されていない。)、審査請求人に対してのみ本件要綱解釈を恣意的に行っているわけではない。
 そうすると、本件要綱第3条第2項本文の記載は、やや明確性を欠くものの、本件要綱解釈を導き出すことが可能であり、受給資格の定め方について、大阪市に広範な裁量があることや、恣意的な運用は防止されていることも考えあわせれば、本件要綱解釈が、未だ明白に不合理とまで言うことはできず、本件要綱第3条第2項本文の記載が行政手続法第5条第2項に反しているとも言えない。
 したがって、本件要綱解釈により、審査請求人は本件処分時において要介護認定を受けていた以上、本件要綱第3条第2項本文に該当し、本件要綱に基づく住宅改修費の受給資格を欠いていたと言える。
 以上より、審査請求人が、本件要綱第3条第2項本文に該当するとして本件処分を行った処分庁の判断に違法又は不当な点は認められない。
(2) 争点2について
ア 本件処分に付された処分理由について
 平成29年5月23日付け住宅改修費不支給決定通知書では、本件処分の理由として「給付の要件に該当しないため」としか記載されていないが、処分庁によれば、同通知書の送付にあたり、「介護保険住宅改修費の給付対象者となるため」と記載した別紙の添付がされていたとのことである。このような本件処分に付された処分理由について、行政手続法第8条の理由付記の程度が十分といえるか、以下検討する。
イ 行政手続法の解釈について
 行政手続法第8条では、処分通知と同一の書面で理由付記すべきことまでも求めているわけではなく、別紙の添付によることも許容されている。
 行政手続法第8条の規定は、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されている。したがって、一般論として、理由の記載は、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して申請が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に拒否の根拠規定を示すだけでは、それによって当該規定の適用の基礎となった事実関係をも当然知りうるような場合を別として、理由付記として十分でないということになる(最判昭和60年1月22日民集39巻1号1頁参照)。
 また、「一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」(最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁)とされている。
ウ 本件処分における理由の記載の程度について
 本件処分の性質は、本件要綱に基づく住宅改修費給付申請に対して、不支給決定をすれば、日常生活上の障がいの除去又は軽減に効果がある住宅改修にかかる工事費について、本市の補助を受けることはできなくなるというものである。
 本件処分の理由として、本件要綱の具体的規定までは示されていないものの、別紙が併せて添付されているため、本件審査請求人が介護保険法に基づく住宅改修費給付の対象者となったという事実関係から、本件要綱に基づく住宅改修費の受給対象者でなくなったことがわかることから、その結果、本件要綱第3条第2項本文により不支給決定となったとの理解が十分可能であり、審査請求人の審査請求の内容に照らしても、不服申立の便宜を与えるという趣旨は満たされていたと考えられる。また、具体的な事実関係については記載されている以上、後に処分庁において本件処分の理由を変更することは難しいと考えられ、恣意抑制の趣旨についても満たされている。
 したがって、別紙も併せて考えれば、理由付記の程度が不十分であり、違法又は不当があるとまでは認められない。
(3) 争点3について
 仮に、審査請求人主張のとおり、申請様式について、交付の要求があったにもかかわらず、処分庁が交付を拒否した事実があれば、行政手続法第7条の趣旨に違反し、本件処分の取消事由となりうる場合があると考えられるので、以下検討する。
 事件記録によれば、審査請求人代理人は、遅くとも平成29年1月頃から同年4月頃までの間、処分庁を何度も訪れ、窓口において、何度も申請様式の交付を求めたが、処分庁は、審査請求人の障がい状況からみて、条件に合わないとして、申請様式の交付を拒否したとのことであり、申請様式をもらうことができなかったとのことである。そして、審査請求人代理人は、当時、どのような工事が本件要綱に基づく住宅改修費の給付対象となるかもわからなかったので、本件要綱に係る工事内容の話は、本件申請を行った平成29年5月9日以外していないとのことである。
 一方、処分庁によれば、平成29年2月頃から同年4月頃に審査請求人代理人から、審査請求人の希望する工事内容が本件要綱に基づく住宅改修費給付対象となるか否かの相談を何度も受けたとのことであり、もっとも、申請様式の交付を要求されたことは一度もなく、申請様式の交付を拒否したこともないとのことであり、本件申請に至るまでの経過について、審査請求人と処分庁で全く主張する事実が異なっている状況である。
 しかし、ホームページ上で誰でも取得可能である申請様式を、審査請求人のみに対し、交付を拒否する理由が見出し難いことから、処分庁が申請様式の交付を拒否した事実があったとも判断できない。
 そうすると、処分庁においては、行政手続法第7条の趣旨に違反する事実があるとは未だ認められず、本件処分を取消すべき事由があるとも認められない。
7 その他
 本件処分について、その他に違法又は不当な点は認められない。
 また、本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
8 結論
 よって、本件審査請求は理由がないと認められるので、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

令和2年4月17日
審査庁  大阪市長  松井 一郎

裁決書(令和元年答申第16号)

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