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令和3年8月5日付け裁決(答申第3号)

2023年2月17日

ページ番号:543361

裁決書

審査請求人 氏名 ○○○○
処分庁 大阪市○○区保健福祉センター所長

 審査請求人が令和2年1月28日に提起した処分庁による保育施設・事業利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書に関する処分に係る審査請求について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 令和元年10月2日、審査請求人は、審査請求人の子どもの「子どものための教育・保育給付保育認定(変更)申請書兼保育施設・事業利用調整申込書」(以下「本件申請」という。)を処分庁に提出した。
 本件申請における保育施設・事業利用調整にかかる申込内容は、第1希望を〇〇〇〇、第2希望を〇〇〇〇、第3希望を〇〇〇〇、第4希望を〇〇〇〇、第5希望を〇〇〇〇とし、令和2年4月入所希望とするものであった。
2 処分庁は、希望施設5施設について、いずれも利用可能数を上回る申込みがあったため、保育利用調整基準に基づいて利用調整を行ったうえで、平成2年1月24日に審査請求人に「利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書(以下「本件処分」という。)」を送付した。
3 令和2年1月28日、審査請求人は本件処分について不服であるとし、処分庁を経由して審査庁に審査請求書を提出した。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、以下のとおりである。
 審査請求人の児童は、保育に欠ける児童であるにもかかわらず、入所保留となると、保育を受ける権利が侵害され、入所承諾された児童との間で金銭的な不平等が生じる。また、審査請求人らも保育を利用する権利を侵害され、就労が困難になるなどして困窮することとなり、児童福祉法第24条第1項並びに日本国憲法第13条及び第14条に反する違法な処分である。
 さらに、保育利用調整基準の順位表において、「当該保育施設又は保育事業の希望順位が高いもの」が「経済的状況」より優先されるため、審査請求人よりも所得金額の世帯が高い児童が保育を受けられ、審査請求人の児童は保育を受ける権利が侵害され、入所承諾された児童との間で金銭的な不平等が生じることとなり、児童福祉法第24条第1項、子ども・子育て支援法第3条並びに日本国憲法第13条、第14条及び第25条に反する違法な処分であり、本件処分は取り消されるべきものである。
2 処分庁の主張
 処分庁の主張は、以下のとおりである。
 児童福祉法第24条第1項及び第2項の規定は、市町村に、保育を必要とする児童について、保育所、認定こども園、家庭的保育事業等(以下「保育施設等」という。)において必要な保育を確保する義務を課するものではあるものの、保護者に希望どおりの保育施設等の利用を保障したものとはいえず、申込のあった児童を受け入れできる保育施設等の利用枠を確保し、利用の機会を提供し、同条第3項の規定による利用調整を適正にしている限り、同法に違反するものではない。
 本件処分は、利用を希望する保育施設等に受入れ可能を上回る申込があったため、利用調整の結果、4月1日から希望する保育施設等を利用することができない旨の決定をしたものである。本件処分通知には利用枠に空きがある保育施設等の一覧を添付するなどしたうえで、2月14日までにこれらの施設を希望すれば再度利用調整を行うようにしており、その後も毎月空き枠の情報提供及び利用調整を行うようにしている。
 すなわち、本件処分は、保育施設等における保育を不承諾としたものではなく、利用調整の結果、当初希望どおりの保育施設等の利用はできないとするものであり、申込のあった児童の受入れをできる保育施設等の利用の機会の確保はできていることから、適法な処分といえる。
 保育施設等の利用調整については、児童福祉法施行細則第24条において、保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育を受ける必要性が高いと認められる児童が優先的に利用できるよう調整するものとするとされているところ、保育の必要度の判断基準や必要度が同程度と判断された場合の優先順位の付け方は市町村の裁量に委ねられている。
 大阪市における利用調整にあたっては、「大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱」を定め、保護者の保育を必要とする事由及び保育必要量(就労時間等)をもとに保育の必要性を点数化して保育の必要性が高いものから利用できるように調整するものとしたうえで、保育の必要性の点数が並んだ場合は、希望順位等を踏まえた順位表により優先順位をつけて順位の高いものから利用できるように調整するものとしている。経済的状況を利用調整にあたってどの程度重視するかは市町村の裁量の範囲内である。
 処分庁としては、同要綱に基づき適正に利用調整を行っており、本件処分は適法妥当なものと考えており、本件審査請求は、棄却されるべきであるものと思料する。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
(1)児童福祉法第24条第1項において、「市町村は、この法律及び子ども・子育て支援法の定めるところにより、保護者の労働又は疾病その他の事由により、その監護すべき乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合において、次項に定めるところによるほか、当該児童を保育所(認定こども園法第三条第一項の認定を受けたもの及び同条第十一項の規定による公示がされたものを除く。)において保育しなければならない。」と規定されている。
(2)児童福祉法第24条第2項において、「市町村は、前項に規定する児童に対し、認定こども園法第二条第六項に規定する認定こども園(子ども・子育て支援法第二十七条第一項の確認を受けたものに限る。)又は家庭的保育事業等(家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業をいう。以下同じ。)により必要な保育を確保するための措置を講じなければならない。」と規定されている。
(3)児童福祉法第24条第3項において、「市町村は、保育の需要に応ずるに足りる保育所、認定こども園(子ども・子育て支援法第27条第1項の確認を受けたものに限る。以下この項及び第26条の2第2項において同じ。)又は家庭的保育事業等が不足し、又は不足するおそれがある場合その他必要と認められる場合には、保育所、認定こども園(保育所であるものを含む。)又は家庭的保育事業等の利用について調整を行うとともに、認定こども園の設置者又は家庭的保育事業等を行う者に対し、前項に規定する児童の利用の要請を行うものとする。」と規定されている。
(4)児童福祉法施行規則第24条において、「市町村は、法第24条第3項の規定に基づき、保育所、認定こども園(子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第27条第1項の規定による確認を受けたものに限る。)又は家庭的保育事業等の利用について調整を行う場合(法第73条第1項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)には、保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育を受ける必要性が高いと認められる児童が優先的に利用できるよう、調整するものとする。」と規定されている。
(5)大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱第4条において、「保健福祉センター所長は、利用調整を行うにあたっては、利用調整会議を開催し、別表『保育利用調整基準』に基づき保育の必要性の高い児童から順に利用調整を行うものとする。」と規定されている。
(6)大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱別表において、「利用調整にあたっては、『(1)基本点数表』により、世帯の保育の必要性に応じ基本点数を設定する。また、『(2)調整指数表』により、該当する内容に応じて加点・減点を行い、基本点数及び調整指数の合算点数の高い世帯から利用が可能となる。同一点数で並んだ場合は、『(3)順位表』に規定する順位により、優先順位を決定する。」と規定されている。また、同表の順位表中3番目の判定項目が「該保育施設又は保育事業の希望順位が高いもの」とされ、6番目の判定項目が「経済的状況」とされている。
2 本件処分が取り消されるべきか否かについて
(1)保育利用調整基準に違法又は不当な点があるか否かについては、審査請求人は、審査請求書において、「保育利用調整基準の順位表にて『当該保育施設又は保育事業の希望順位が高いもの。』が『経済的状況』より優先される為、審査請求人よりも所得金額の高い世帯の児童が保育を受けられ、審査請求人の申込児童は保育を受ける権利を侵害され、入所承諾された児童との間で金銭的な不平等が生じる」旨主張していることから、まず、処分庁が用いた審査基準(行政手続法第5条)である保育利用調整基準に違法又は不当な点があるか否か検討する。
 児童福祉法施行規則第24条において、保育施設等の利用調整については、保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育を受ける必要性が高いと認められる児童が優先的に利用できるよう調整するものとするとされているところ、保育の必要度の判断基準や必要度が同程度と判断された場合の優先順位の付け方について具体的な定めはなされておらず、市町村の裁量に委ねられている。児童福祉法のその他の条項にも経済的事情に係る文言は認められない。そして、保育の必要性は、必ずしも所得の多寡のみに左右されるものではない。保育施設等の利用調整にあたって、当該保育施設等の希望順位を考慮に入れることは、保護者の希望に沿った保育施設等の利用に資するものとして一定の合理性がある。よって、審査請求人が指摘する点において、保育利用調整基準が不合理とは言えず、その他の点においても、保育利用調整基準に不合理な点は認められない。
(2)保育利用調整基準の適用に違法又は不当な点があるか否かについては、処分庁は、上記のとおり不合理な点が認められない保育利用調整基準を用いて、利用調整を行い、その結果、令和2年4月入所に係る一次調整において審査請求人の児童を入所保留としたとのことであるから、その手続きに不合理な点は認められない。
 そして、児童福祉法は、市町村が、定員を上回る需要がある場合に調整を行い(同法第24条第3項)、その結果として保育の必要性がありながら保育所への入所が認められない児童が生じるという事態を想定しているものと解されることから(東京高裁平成28年(ネ)第4173号同29年1月25日判決・賃金と社会保障1678号64頁参照)、それをもって審査請求人の保育を利用する権利を侵害しているとはいえない。
 なお、審査請求人は、審査請求書において、平等原則(憲法第14条)違反を主張するが、憲法第14条第1項は、合理的理由のない差別を禁止するものであり、児童福祉法が、「保育の必要性」を基準に利用調整を行うことを予定している以上、利用調整の結果として、入所が承諾された児童と入所保留となった児童との間で金銭的な不平等が生じたとしても、正当な目的から生じた合理的な結果に過ぎないことから、それをもって、平等原則に反するとはいえない。
 また、以上で検討したとおり本件利用調整において不合理な点は認められないことから、憲法第13条、第25条違反の主張はあたらない。
(3)以上のとおり、児童福祉法第24条第3項に従い利用調整を行い、その結果審査請求人児童を入所保留とした本件処分に違法又は不当な点は認められない。
3 結論
 よって、本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

令和3年8月5日
審査庁 大阪市長  松井 一郎  

裁決書(令和3年答申第3号)

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