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令和3年7月27日付け裁決(答申第4号)

2023年2月17日

ページ番号:543365

裁決書

審査請求人 〇〇〇〇
処分庁   大阪市長          

 審査請求人が令和2年12月12日付けで提起した処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による令和2年9月10日付け徴収猶予(特例)却下決定処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(令和2年度財第19号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 審査請求人は、令和2年度固定資産税及び都市計画税に係る徴収金(以下「本件徴収金」という。)のうち、第1期分(納期限:令和2年4月30日)、第2期分(納期限:令和2年7月31日)及び第3期分(納期限:令和2年12月25日)について徴収猶予申請書(特例)(以下「本件申請書」といい、本件申請書による第1期分及び第2期分に係る徴収猶予の申請を「本件徴収猶予の申請」という。)を、令和2年8月1日の通信日付にて郵送により処分庁に提出しました。
 本件徴収金のうち第3期分は27,000円であるところ、審査請求人は、本件申請書(第3期分)の「(2)当面の運転資金等の状況等」における「当面の支出見込額(⑬)」欄に○○万円、「(3)現金・預貯金残高」における「現金・預貯金の合計(⑭)」欄に○○万円、「(4)納付可能金額」における「納付可能金額(⑮)」欄に⑭-⑬として75万円と記載し、これを提出していました。他方、審査請求人は、「(5)猶予を受けようとする金額」における「(⑮)納付可能金額」欄に0円と記載していました。
2 処分庁は、第1期分及び第2期分の徴収金については、本件申請書が地方税法(以下「法」という。)附則第59条第1項の申請期限(第1期分については、法等の一部を改正 する法律(令和2年法律第26号)(以下「改正法」という。)附則第2条に経過措置として定められた改正法施行の日から2月を経過する日である令和2年6月30日、また、第2期分については、納期限である令和2年7月31日)後の令和2年8月1日に提出されたものであり、その申請期限内に提出できなかったことについてやむを得ない理由があるとは認められないことを理由に、また、第3期分の徴収金については、申請に係る徴収金を一時に納付又は納入することが困難であるとは認められないことを理由に、法附則第59条第1項の要件に該当しないとして令和2年9月10日、本件処分を行いました。
3 審査請求人は、令和2年12月12日、大阪市長に対して、本件処分の取消しを求めて、本件審査請求をしました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 行政に対する手続きは、書面もしくは口頭によっても認められることとなっている。本件徴収猶予の申請は、令和2年7月31日の消印日までが受付期限であり、審査請求人は、期限内の令和2年7月31日、担当者に直接電話で徴収猶予申請の申出の意思表示をしているので、認められるべきである。
 本件申請書(第1期分及び第2期分)を令和2年7月31日夕刻ポストに投函したが、新型コロナウイルス感染拡大により郵便局の閉局時間が早まっているのに併せて集配時間も早まっていたのが原因で、当日消印に間に合わず、翌日の消印が押印されたため、1日遅れの消印も新型コロナウイルス禍という天災による過誤であるから、認められるべきである。
 また、本件申請書(第3期分)に記載した支出見込みは、日常生活費の節約を極め困窮している現在の支出額であり、通常生活の支出額からかなり低くかい離した額を申告している。
 大阪市生活保護費支給基準を例示すると、審査請求人の世帯状況での生活費は月当たり18万5千円で、当面必要な生活費6か月分は111万円である。
 これを現預金残高○○万円から差し引くと残額○○万円となり、通常生活者はそれ以上にゆとりある費用支出が必要であるとみなすべきであり、その方法に従えば審査請求人の世帯ではむしろ生活費は赤字となる。
 新型コロナウイルス禍が治まり、生活費が自力で賄えるようになるまで市税の徴収を猶予願う。
2 処分庁の主張
 法附則第59条第2項において「徴収の猶予の申請をしようとするものは新型コロナウイルス感染症の影響による事業収入の減少等の事実があること及び徴収金の全部又は一部を一時に納付することが困難である事情の詳細等を記載した申請書に当該新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実を証するに足りる書類等を添付し、地方団体の長に提出しなければならない。」と規定されており、口頭での申請は認められない。
 審査請求人から送付された本件申請書(第1期分及び第2期分)の郵便の消印の日付は、令和2年8月1日であり、法附則第59条第1項及び改正法附則第2条で規定された第1期分の申請期限である令和2年6月30日を、第2期分の申請期限である令和2年7月31日をそれぞれ経過している。疾病等の申し出もなく期限内に申請ができない特段の理由は認められない。
 令和2年9月7日、本件申請書(第3期分)の記載内容について、審査請求人へ電話にて確認を行ったところ、添付できる疎明資料はなく、普通預金は○○万円で、定期預金の○○万は担保的なもので余裕のある金額ではなく数か月で消費される生活資金であるとの回答であった。
 本件申請書には、生活費用月額○○万円に対し、現金・預金資産の総額が○○万円とあり、以降6か月間の支出見込額を大きく上回る納付可能額が算出されるため、法附則第59条第1項に規定する市税を一時に納付することが困難である場合であるとは認められない。

理由
1 本件審査請求に係る法令等の規定
(1) 法附則第59条第1項及び法施行令附則第36条は、地方団体の長は、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により令和2年2月1日以後に納税者又は特別徴収義務者の事業につき相当な収入の減少であって総務省令で定める事実があったことその他これに類する事実(以下「新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実」という。)がある場合において、これらの者が令和3年2月1日までに納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金の全部又は一部を一時に納付し、又は納入することが困難であると認められるときは、その地方団体の徴収金の納期限内(改正法の施行の日から2月を経過した日前に納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金は、改正法施行の日から2月を経過する日まで(改正法附則第2条))にされたこれらの者の申請(地方団体の長においてやむを得ない理由があると認める場合には、その地方団体の徴収金の納期限後にされた申請を含む。)に基づき、その納期限から1年以内の期間(政令で定める地方税にかかる地方団体の徴収金については、政令で定める期間)を限りとして、その地方団体の徴収金の全部又は一部の徴収を猶予することができる旨を定めています。
 また、法附則第59条第2項は、当該徴収の猶予の申請をしようとする者は、新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実があること及びその地方団体の徴収金の全部又は一部を一時に納付し、又は納入することが困難である事情の詳細、当該猶予を受けようとする金額及びその期間その他の政令で定める事項を記載した申請書に、当該新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実を証するに足りる書類、財産目録その他の政令で定める書類を添付し、これを地方団体の長に提出しなければならない旨を定めています。
(2)「新型コロナウイルス感染症に係る徴収猶予の特例の取扱いについて」(令和2年4月30日総税企第64号総務省自治税務局企画課長通知、令和2年9月4日総税企第110号により一部改正)(以下「総務省通知」という。)は、前記(1)の「全部又は一部を一時に納付し、又は納入することが困難」のうち、「全部を一時に納付し、又は納入することが困難」とは、次に掲げるものをいうと定めています。
ア 納付・納入すべき地方団体の徴収金を納付・納入する資金がないこと
イ 納付・納入すべき地方団体の徴収金を納付・納入するための資金を納税者等の事業の継続のために必要な少なくとも今後6か月間の運転資金並びに納税者等及び納税者等と生計を一にする配偶者その他の親族の生活の維持のために必要な少なくとも今後6か月間の費用(以下「運転資金等」という。)に充てた場合に地方団体の徴収金を納付・納入する資金がないこと
 また、総務省通知は、「一部を一時に納付し、又は納入することが困難」とは次に掲げるものをいうと定めています。
ア 納付・納入すべき地方団体の徴収金の全額を納付・納入する資金がないこと
イ 納付・納入すべき地方団体の徴収金を納付・納入するための資金を運転資金等に充てた場合に地方団体の徴収金の全額を納付・納入する資金がないこと
(3) 総務省通知は、「やむを得ない理由」とは、納税者等が事業につき新型コロナウイルス感染症の影響を受けたことに伴う貸付けを受けるための手続を行っていたこと等により申請ができなかったことをいい、なお、納税者等が新型コロナウイルス感染症にり患したため申請ができない場合又はそのまん延防止のための措置の影響により申請ができない場合等には、法第20条の5の2第1項及び同項に基づく条例の規定により期限の延長を認めることができることに留意することと定めています。
(4) 大阪市において、市税条例第13条第5項は、法又は条例に定める申告、申請、請求その他書類の提出(審査請求に関するものを除く。)又は納付若しくは納入(以下「申告等」という。)に関する期限の延長について定めており、個別的事例について、市長は、災害その他やむを得ない理由により、申告等に関する期限までに、申告等をすることができないと認めるときは、申告等をすべき者の申請により、その理由のやんだ日から2月以内に限り、期日を指定して当該期限を延長する旨を定めています。
 また、市税条例第13条第6項は、期限の延長を受けようとする者は、同項に規定する理由がやんだ後速やかに、申請書にその証拠となる書類を添付して、市長に提出しなければならない旨を定めています。
(5) 法第20条の5の3は、法又はこれに基づく条例の規定により一定の期限までになすべきものとされている申告、徴収の猶予若しくは申請による換価の猶予の申請又は更正の請求に関する書類その他総務省令で定める書類が郵便又は信書便により提出されたときは、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日(その表示がないとき、又はその表示が明らかでないときは、その郵便物又は信書便物について通常要する送付日数を基準としたときにその日に相当するものと認められる日)にその提出がされたものとみなす旨を定めています。
(6) 法附則第59条第3項により読み替えて準用する法第15条の9第1項は、本件申請にかかる猶予をした場合には、その猶予をした期間に対応する部分の金額に相当する金額を免除すると定めています。
2 争点等について
(1) 審査請求人は、徴収猶予の意思表示は口頭によるものであっても認められるべきであり、本件徴収猶予の申請に係る意思表示は、電話により申請期限内に行われていたのだから徴収猶予が認められるべきであると主張しています。
 しかしながら、前記1(1)のとおり、法は、新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等があり、徴収猶予の申請をしようとする者は、猶予を受けようとする金額等を記載した申請書に、当該新型コロナウイルス感染症等の影響による事業収入の減少等の事実を証するに足りる書類等を添付し、これを地方団体の長に提出しなければならないと規定しており、書面による徴収猶予の意思表示を前提としているから、審査請求人の前記主張は採用することができません。
(2) ところで、徴収猶予の申請期限は、前記1(1)のとおり、当該徴収金の納期限内(改正法の施行の日から2月を経過した日前に納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金は、改正法施行の日から2月を経過する日まで)とされており、また、前記1(5)のとおり、徴収猶予の申請書が郵便又は信書便により提出されたときは、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなすとされているから、本件徴収金の第1期分の申請期限は令和2年6月30日、第2期分の申請期限は令和2年7月31日となり、本件申請書(第1期分及び第2期分)がこれらの申請期限内に提出されたかどうかは、郵便による提出の場合、その通信日付印により表示された日によって決せられます。
 しかるに、審査請求人が本件申請書(第1期分及び第2期分)を郵送した封筒には通信日付印により令和2年8月1日と表示されていたから、本件徴収猶予の申請は申請期限後になされていたものです。
 もっとも、前記1(1)のとおり、法は、やむを得ない理由があると認める場合には、徴収猶予の申請が徴収金の納期限後にされた場合であっても、例外的に徴収猶予を認めているところ、そのやむを得ない理由については、前記1(3)のとおり、総務省通知は、納税者等が新型コロナウイルス感染症にり患したため申請ができない等の場合には、法第20条の5の2第1項及び同項に基づく条例の規定により期限の延長を認めることができるとし、前記1(4)のとおり、市税条例ではその理由のやんだ日から2月以内に限り、期日を指定して当該期限を延長する旨定めていて、これらの取扱いは、本件においても妥当するものといえます。
 そこで、審査請求人にやむを得ない理由があったか検討するに、審査請求人は、本件申請書(第1期分及び第2期分)を期限内の令和2年7月31日夕刻ポストに投函したが、新型コロナウイルス感染症の拡大がもたらした郵便事情の変化により、翌日の消印が押印された旨を主張します。
 しかし、当審査会に提出された証拠において、審査請求人の住所を管轄する郵便局が、ポストに表示されている集配時間までに投函されれば当日の消印が押印される旨の回答をしていることからすると、新型コロナウイルス感染症の影響により、郵便の集配時間に変更はなかったというほかなく、これと相反する審査請求人の主張を裏付ける証拠は提出されていません。
 したがって、審査請求人に徴収猶予の申請が徴収金の納期限後にされた場合であっても、例外的に徴収猶予を認めるべきやむを得ない理由があったということはできず、この点に関する審査請求人の主張は採用することができません。
(3) 前記主張に加え、審査請求人は、1か月間の生活保護費の受給額とする18万5千円に基づき、当面必要な生活費の6か月分は111万円となるとし、これを基準に、現預金残高○○万円から差し引くと残額○○万円ですが、生活保護に係る扶助費は、「人たるに値する最低限の生活を保障する額」であって、通常生活者はそれ以上にゆとりのある費用支出が必要であるとみなすべきで、そうであれば、審査請求人の世帯では預貯金額は残らず、むしろ生活費は赤字となる旨を主張しています。
 しかし、「現金・預貯金の合計(⑭)」欄の○○万円を考慮すれば、少なくとも本件徴収金のうち第3期分である27,000円の全部又は一部を一時に納付し、又は納入することが困難であるとまでは直ちに認めることはできず、このことは、本件申請書に審査請求人が記載した前年の収入の状況(⑥~⑧欄)等を勘案しても変わるところはありません。
 したがって、審査請求人の前記主張は採用することができません。
 なお、審査請求人は、前記「事案の概要」1のとおり、本件申請書(第3期分)の「(4)納付可能金額」における「納付可能金額(⑮)」欄に、75万円と記載し、これと同額となるべき「(5)猶予を受けようとする金額」における「(⑮)納付可能金額」欄には0円と記載するという矛盾した記載をしていたことは認められるものの、これについても、令和2年9月7日に処分庁から尋ねられた際、審査請求人は納付可能金額が75万円であるとしながら、これが余裕のある金額ではなく数か月で消費される生活資金であると回答したことが認められるのであり、この点でも、当該記載内容をもとに本件徴収金(第3期分)を一時に納付又は納入することが困難であるとは認められないとしてされた本件処分に違法不当な点は見当たりません。
3 前記2以外の違法性又は不当性についての検討
 前記2の争点等以外について、本件処分全体として検討したところ、他に違法又は不当な点は認められません。
4 結論
 以上のとおり、本件処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

令和3年7月27日
大阪市長 松井 一郎

裁決書(令和3年答申第4号)

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