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令和3年12月8日付け裁決(答申第9号)

2023年2月17日

ページ番号:552912

裁決書

審査請求人 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
         〇〇 〇〇
処分庁 大阪市〇〇区長 〇〇 〇〇

 審査請求人が令和2年6月19日に提起した住民異動届(世帯分離)に関する不受理処分に係る審査請求について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 審査請求人(以下、請求人という。)は、令和2年5月27日に、令和2年3月31日付け世帯分離届を処分庁に提出した。
2 令和2年6月3日、大阪市〇〇区長(以下「処分庁」という。)は、審査請求人に対し、令和2年5月27日届出の住民異動届(世帯分離)に関する不受理処分(以下「本件処分」という。)を決定し通知した。
3 令和2年6月19日、審査請求人は、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、処分庁が行った本件処分の取消しを求める審査請求をした。

審理関係人の主張の要旨
1  審査請求人の主張
 審査請求の趣旨は、本件処分の取消しを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 審査請求人夫婦は同一の住所地で生活しているが、夫婦別産制をとっている。このため世帯分離を申請したが不受理とされた。不受理は日本国憲法第22条及び第24条に反し、不当である。世帯とは実質的な概念であり、認定は生活の実質的関係に基づき、具体的に判断されるべきである。
 また、処分庁が弁明書において主張する処分理由は、処分決定時の理由とは異なっている。
2  処分庁の主張
 弁明の趣旨は、「審査請求人の審査請求を棄却する。」との裁決を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 審査請求人と審査請求人の妻は同居しており、今後も別居の予定はない。また、婚姻関係が続いており、今後も離婚の予定はない。
 審査請求人と審査請求人の妻は同じ建物に起居しており、名義は共有名義であり、区分所有ではない。
 外見上玄関は共有であり、電気・ガス等のメーターも分かれていない。
 これらの事から、審査請求人と審査請求人の妻は、生計を別にしている実態が客観的に明らかでないとして住民異動届(世帯分離)を不受理とした。
 本件処分は住民基本台帳法(昭和42年7月25日法律第81号。以下「法」という。)上の世帯認定に関しての処分であり、同一の家屋に起居している審査請求人と審査請求人の妻が、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められない場合における法第25条に規定する世帯変更届(世帯分離)の不受理処分であり、何ら違法又は不当な点は存在しない。また、本件処分は、審査請求人が主張する、憲法第22条及び憲法第24条が保障する権利の侵害をしているものとはいえないため、審査請求人の主張は失当である。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
(1) 法第1条で、この法律の目的として住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他住民に関する事務の処理の基礎とする旨が規定されている。
(2) 法第3条第1項で、市町村は、常に、住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるよう努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるよう努めなければならないことが規定されている。
(3) 法第3条第3項において、「住民は、常に、住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うよう努めなければならず、虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはならない。」と規定されている。
(4) 法第4条において、(住民の住所に関する法令の解釈)として、「住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第10条第1項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない。」とされ、総務省において定めている住民基本台帳事務処理要領(昭和42年10月4日自治省行政局長通知)では、住所の認定にあたっては、客観的居住の事実を基礎とし、これに当該居住者の主観的居住意思を総合して決定するとされている。
(5) 法施行令第11条において、市町村長は、世帯変更等の届出があったときは、当該届出の内容が事実であるかどうかを審査して、第7条から第10条までの規定による住民票の記載、消除又は記載の修正(以下「記載等」という。)を行わなければならないとされている。
(6) 法第6条第1項に「市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しなければならない。」とされている。
(7) 法第32条に「この法律の規定により市町村長がする処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。」とある。
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は、審査請求人とその妻が居住と生計をともにしているか否かである。
3 争点にかかる判断について
 法第6条第1項によれば、「市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しなければならない。」とされ、ここでいう世帯は、行政解釈により、「世帯とは、居住と生計をともにする社会生活上の単位である。」(総務省の住民基本台帳事務処理要領p.6参照)とされている。
 ここで、審査請求人とその妻が居住をともにしていることは、審査請求人自身も認めるところである。そうであれば、審査請求人と審査請求人の妻の間で世帯分離が認められるためには、審査請求人と審査請求人の妻が別生計である必要がある。
 そこで、まず、生計の意味が問題となるが、生計をともにするとは、つまり、世帯員がくらしを立てるためのてだてをともにすることを意味する。これについては、生活するための費用をともにすることはもちろん、生活に必要な家具や家事労働等を恒常的にともにすることと解される。
 この点、婚姻関係にある場合には、夫と妻の間に相互に扶助義務が発生することから(民法第752条)、上記でいうところの生計の同一が推定され、世帯を分離するには、「生計を別にしている」ことが認められる必要がある。
 生計を別にしているか否かについての審査請求人の主張を検討すると、審査請求人は、①健康保険の種類が審査請求人とその妻で異なること、②配偶者控除を夫婦間で相互に適用していないこと、③夫婦別産制をとっていることをもって生計を別にしている根拠であるとする。
 しかし、①については生活実態とは関係なく、②についても税額計算にあたっての所得控除の適用の問題に過ぎず、③についても財産の所有関係と使用関係は異なることから財産が別であることをもって生計が別である証左とはならない。
 むしろ、処分庁が弁明書で主張するところによれば、外見上も玄関は共有であり、電気・ガス等のメーターも分かれていないとのことであるから、住居や生活インフラを共同使用していることを示すものである。
 これらの処分庁の主張事実について審査請求人は否定しておらず、審査請求人とその妻が生活をともにしていることを示すものである。
 以上から、処分庁が世帯分離の届出について不受理とした判断に違法又は不当な点は認められない。
 なお、審査請求人は、処分庁の主張する不受理の理由が変遷していることをもって瑕疵がある旨主張しているが、不受理決定通知の理由が誤っているとはいえず、また、弁明書等での処分庁の主張は不受理決定通知の理由を補うものであり、違法な変遷ないし追完とは言えない。また、そもそも、法第32条により、不受理決定においては行政手続法第2章の規定は適用除外とされていることから、本件における理由の提示は行政運用上のものに過ぎず、違法又は不当の問題を生じさせない。
 その他、審査請求人は、本件処分の違法性及び不当性について縷々主張するが、いずれも採用することはできない。なお、審査請求人は、処分庁が民法第752条を援用したとしてその無効を主張しているが、上記のとおり、民法第752条は夫婦の生計状況を推定する根拠として用いられているに過ぎないのであり、そのような私法関係を踏まえて世帯認定を行うことは当然のことであることから、違法・無効な点はない。

結論
 以上のとおり、本件処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

令和3年12月8日
審査庁 大阪市長 松井 一郎    

裁決書(令和3年答申第9号)

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