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令和4年1月31日付け裁決(答申第17号)

2023年2月17日

ページ番号:561735

裁決書

審査請求人 ○○○○
処分庁      大阪市長

 審査請求人が令和3年8月27日付けで提起した処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)による令和3年5月26日付け換価の猶予取消処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(令和3年度財第15号。以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決します。

主文
 本件審査請求を棄却します。

事案の概要
1 処分庁は、令和2年11月26日付けで、審査請求人の個人市・府民税に係る徴収金について、 令和2年12月から令和3年6月までは月1万円を支払い、残額○○円については令和3年7月に再相談することとする全8回の納付計画(以下「本件納付計画」という。)に基づき、猶予期間を令和3年7月12日として職権による換価の猶予(以下「本件猶予」という。)を行いました。
2 審査請求人は、本件納付計画において、1回目(令和2年12月7日期限分)については期限内に納付したものの、2回目(令和3年1月12日期限)から6回目(令和3年5月10日期限分)については不履行でした。
3 令和3年2月17日、審査請求人から処分庁に対して、1、2月の給料がさらに減少したため納付ができないが、4回目(令和3年3月10日期限)については納付ができる可能性があるとの連絡があったため、処分庁は、審査請求人に対して、令和3年3月15日までに連絡し状況等を報告するよう指示しました。
4 令和3年3月16日、審査請求人は処分庁に架電し、4回目も納付困難であり近日中に来所する旨を申し出ましたが、処分庁は、納付の予定が立たないのであれば、今後猶予を取り消す可能性があると電話で説明しました。
5 処分庁は、令和3年5月26日付けで、地方税法(以下「法」という。)第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号に該当するとして本件処分を行いました。
6 審査請求人は、令和3年8月27日、処分庁に対し、本件処分の取消しを求めて本件審査請求を提起しました。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 市税事務所には、勤務先におけるコロナ禍による指示で月に2日間休むようになり、給与が月に1万円から2万円減額になっているため、市税の支払いが滞っていると伝えていた。電話で、市税事務所に出向いて説明した方がよいか尋ねたが、「具体的な支払についての提示がなければ、来てもらっても…」と言われたので、その突き放した対応に問題はあるが、そのままにしていた。コロナ禍で、通常の猶予よりも理解してもらっているものと思っていたが、突然、猶予取消しの通知をもらった。
 私生活上のトラブルを抱えていることから、想像よりもはるかに険しい生活を送っている。
 困難なトラブルの渦中であるがゆえ、払えない状況を続けてしまっているので、差押えの強行は回避してほしい。
2 処分庁の主張
 令和2年11月24日、審査請求人より滞納している徴収金について、生活困窮であるので、毎月1万円の納付を希望するとの申し出があり、12月から翌年6月まで毎月1万円、翌年7月に残額の分納を約束し、令和2年11月26日付けで本件猶予を決議した。
 本件納付計画の1回目の納付はあったものの、2回目、3回目と不履行であったが、令和3年2月17日に、審査請求人より電話で新型コロナウイルスの影響で1、2月の給料がさらに減少したため納付できなかったが、4回目は納付できる可能性があるとの連絡があり、令和3年3月15日までに近況等を報告するよう指示したが、4回目も不履行であった。
 令和3年3月16日、審査請求人より納付困難で来所したいとの申し出があった時に、納付の予定が立たないのであれば、今後猶予を取り消す可能性について説明したが、5回目、6回目も不履行であった。令和2年11月26日付け換価の猶予通知に記載された分割納付金額をその分割納付期限までに納付していなかったため、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号に該当し、本件処分に至ったものであり、処分は適法である。

理由
1 本件審査請求に係る法令等の規定
(1) 職権による換価の猶予の要件等について
ア 地方団体の長は、滞納者の財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められるときや、滞納者の財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る地方団体の徴収金及び最近において納付し、又は納入すべきこととなる他の地方団体の徴収金の徴収上有利であるときに該当すると認められる場合において、その者が当該地方団体に係る地方団体の徴収金の納付について誠実な意思を有すると認められるときは、その納付すべき地方団体の徴収金につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。ただし、その猶予の期間は、1年を超えることができない(法第15条の5第1項)。
イ 地方団体の長は、当該徴収金の納付について、当該地方団体の条例で定めるところにより、当該換価の猶予をする期間内において、当該換価の猶予を受ける者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付させることができる(法第15条の5第2項において読み替えて準用する法第15条第3項)。
ウ 市長は、法第15条第3項の規定により、同条第1項若しくは第2項の規定による徴収の猶予に係る徴収金を分割して納付させる場合には、当該分割納付の各納付期限ごとの納付金額を定める(大阪市市税条例において条例第6条において準用する条例第4条)。
(2) 職権による換価の猶予の取消しについて
ア 地方団体の長は、次に該当する場合には、当該換価の猶予を取り消し、当該換価の猶予に係る徴収金を一時に徴収することができる。
(ア) 換価の猶予を受けた者が、分割して納付することを認めた徴収金をその期限までに納付しないとき(地方団体の長がやむを得ない理由があると認めるときを除く)(法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号)。
(イ)換価の猶予を受けた者の財産の状況その他の事情の変化により当該換価の猶予を継続することが適当でないと認められるとき(法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第6号)。
イ 地方団体の長は、当該換価の猶予を取り消したときは、その旨を当該換価の猶予の取消しを受けた者に通知しなければならない(法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項及び第3項)。
2 争点等について
(1) 審査請求人は、勤務先からのコロナ禍による指示で月に2日間休むようになり、給与が減額になっているため、支払いが滞っていることを理由に本件処分の取消しを求める旨を主張しています。
 職権による換価の猶予については、前記1(2)ア(ア)のとおり、猶予を受けた者が分割して納付することを認めた地方団体の徴収金をその期限までに納付しないときは、地方団体の長は、当該徴収の猶予を取り消し、その猶予に係る地方団体の徴収金を一時に徴収することができるとされているところ、審査請求人は、本件処分のあった令和3年5月26日時点で、本件納付計画のうち、2回目から6回目について履行していないことが認められます。
 したがって、本件納付計画の不履行を理由に、本件処分を行ったことに、違法又は不当な点はありません。
 なお、前記1(2)ア(ア)のとおり、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号かっこ書きにおいては、換価の猶予が取り消される場合の除外要件として、「地方団体の長がやむを得ない理由があると認めるときを除く」と規定されており、大阪市においては、「猶予制度の取扱いについて(通知)」(平成28年2月16日付け通知、直近改正令和3年3月29日)において、「個々の事情など、猶予段階では予測できなかった事情により、猶予を許可した状況に変化が生じ、かつ、猶予を継続しても徴収上の支障がないと認められるとき」には猶予を取り消さないこととしています。
 これを本件においてみると、審査請求人は、勤務先におけるコロナ禍による対応で、給与が月1万円から2万円減額になっている旨を主張しています。このことが、仮に、前記通知における「個々の事情など、猶予段階では予測できなかった事情により、猶予を許可した状況に変化が生じ」たことに該当するとしても、本件納付計画の最初の不履行(令和3年1月12日期限分)から約4か月を経過した本件処分を行った時点(令和3年5月26日)に至るまで、処分庁から猶予取消しの可能性を示唆され、新たな納付計画の提示を促されていたにもかかわらず、本件納付計画の不履行部分についての支払い時期や新たな納付計画の提示もなかったことからすると、猶予を継続しても徴収上の支障がないと認められるとはいえず、本件猶予を取り消さないやむを得ない理由がある場合には該当しないとするのが相当です。
(2) 審査請求人は、市税事務所に出向いて説明した方がよいか尋ねたが、「具体的な支払についての提示がなければ、来てもらっても…」と言われたので、その突き放した対応に問題はあるが、そのままにしていた旨及びコロナ禍で、通常の猶予よりも理解してもらっていると思っていたが、突然、猶予取消しの通知をもらった旨も主張しています。
 この点について、前記1(2)イのとおり、換価の猶予を取り消す場合には、当該猶予を取り消した旨を通知するよう定められているものの、取消しに当たって事前に通知するよう定めた法令等の規定はありません。
 とはいえ、処分庁は、納付回数が8回の本件納付計画のうち、2回目、3回目が不履行であった時点で本件猶予を取り消す要件は満たしているものの、4回目は払える可能性があるという審査請求人からの連絡を受けて、本件猶予を取り消すことなく継続しています。また、処分庁は、電話で換価の猶予を取り消す可能性について説明し、具体的な支払い可能額について提示を求めたにもかかわらず、審査請求人から金額の提示はなく、その後も不履行が続いていたため、本件処分を行ったことが認められ、処分庁の対応についても違法又は不当な点はありません。
(3) 以上のことからすると、本件処分は、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号の規定に基づき、適正になされています。
(4) 審査請求人は、本件審査請求に係る審査請求書や反論書、審査会に提出された資料等において、私生活上のトラブルについて詳細に言及し、そのようなトラブルの渦中であるがゆえ、払えない状況を続けてしまっているので、差押えの強行は回避してほしい旨を主張しています。
 しかしながら、審査請求人が抱える私生活上のトラブルや、本件処分の後に審査請求人が想定する差押えについては、本件猶予を取り消さないやむを得ない理由とはいえず、また本件処分に対する違法又は不当に関するものではないため、審査請求人のこれらの主張は採用することができません。
3 前記2以外の違法性又は不当性についての検討
 前記2の争点等以外について、本件処分全体として検討したところ、他に違法又は不当な点は認められません。
4 結論
 以上のとおり、本件処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決します。

令和4年1月31日
大阪市長 松井 一郎

裁決書(令和3年答申第17号)

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