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令和4年3月30日付け裁決(答申第21号)

2023年2月17日

ページ番号:566147

裁決書

審査請求人 〇〇〇〇〇〇〇〇〇 〇-〇-〇
 〇〇〇 〇〇〇 〇〇
処分庁 〇〇〇〇〇〇〇 〇〇 〇〇

 審査請求人が令和2年11月19日に提起した住民票の写しの不交付決定処分に係る審査請求について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 審査請求人(以下、請求人という。)は、令和2年9月15 日付で、大阪市郵送事務処理センター(以下、郵送センターという。)あてに住民基本台帳法(昭和42年7月25日法律第81号)(以下「法」という。)第12条の3第2項に基づく住民票の写しの交付の申出をした。
2 交付対象者の元の住民登録地である処分庁は、令和2年9月18日付けで、請求人に対し「住民票の写しの不交付の決定について(通知)」を送付した。
3 請求人は、令和2年11月19日、大阪市長に対し、本件処分の取消しを求める審査請求をした。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 請求人の主張は、本請求において次のとおり。
・交付対象者(本件交付申出の対象とされた者。以下同じ。)は、平成28年に地裁判決で命じられた支払いを行っておらず、請求人は、上記判決の原告(以下、「依頼人」という。)より、正当な権利を実行するために強制執行等の裁判手続きを委任された者である。
・交付対象者は、上記判決の支払い義務を免れるために、ドメスティック・バイオレンス等の被害に遭っているという虚偽申告をしている。よって、ドメスティック・バイオレンス等の被害に遭っているというのは、不交付決定の理由にはならない。
・請求人は、住民票の写しの交付請求を弁護士業務として行っているものであり、知り得た情報を外部に漏洩する恐れはなく、ドメスティック・バイオレンス等の状況は生じ得ない。
2 処分庁の主張
 処分庁は、次のとおり主張している。
(1)  本件処分の判断の根拠は、住民基本台帳事務処理要領(昭和42年10月4日)(以下、「国要領」という。)に定める「住民基本台帳の一部の閲覧及び住民票の写し等の交付並びに戸籍の附票の写しの交付におけるドメスティック・バイオレンス・ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための措置」における支援対象者として、交付対象者が住民票の写し等の交付制限されているためである。
(2)  請求人は、ドメスティック・バイオレンス等の被害申告は虚偽であると主張しているが、当区は、大阪市住民基本台帳事務処理要領(以下、「市要領」という。)に則り、支援措置の必要性を確認している以上、申出者の身の安全を最優先して速やかに支援措置を決定した。
(3)  請求人が申し出た住民票の写しの利用目的は「強制執行申立」とされているが、平成30年12月3日付け総務省通知によれば、「加害者に対しては、住民票の写し等を交付することができないこと、及び住民票の写し等が交付されない場合の対応方法について、裁判所において被告等の住所に関する調査嘱託を受けられることを説明した上で、具体的な手続きについては裁判所に相談するよう案内すること」となっており、本件の利用目的は裁判所に提出すれば達することができるので、請求人に住民票の写しの交付は必要ない。

理由
1 本件審査請求に係る法令等の規定
(1) 法第12条は、住民基本台帳に記載されている者からの自己並びに同一の世帯に属する者に係る住民票の写しの交付請求を、法第12条の2は、国または地方公共団体の機関が法令で定める事務の遂行のために必要である場合の住民票の写しの交付請求を定めており、法第12条の3第1項は、市町村長は、前2条の規定によるもののほか、自己の権利を行使し、または自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者、国又は地方公共団体に提出する必要がある者、この他住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者について、住民票の写し等が必要であるとの申し出があり、これを相当と認めるときは、当該申出をするものに住民票等を交付することができると規定している。
(2) 法第12条の3第2項は、前2条及び前項の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、特定事務受任者から受任している事件又は事件の依頼者から同項各号に掲げる者に該当することを理由として、住民票の写し等が必要であると申し出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該特定受任者に当該住民票の写し等を交付することができると規定している。
(3) 法第12条の3第3項は、前項に規定する特定事務受任者を、弁護士(弁護士法人を含む)、司法書士(司法書士法人を含む)土地家屋調査士(土地家屋調査士法人を含む)、税理士(税理士法人を含む)社会保険労務士(社会保険労務士法人を含む)弁理士(特許事務法人を含む)海事代理士又は行政書士(行政書士法人を含む)と規定している。
(4) 法第12条の3第5項は、特定受任者の申出の場合にあっては、受任している事件又は事務についての資格及び業務の種類並びに依頼者の氏名又は名称を記載することとしているが、受任している事件又は事務についての業務が裁判手続き又は裁判外手続きにおける民事上若しくは行政上の紛争手続きについての代理業務その他の政令で定める業務であるときは、当該事件又は事務についての資格及び業務の種類としており、そのうち弁護士にあっては、住民基本台帳法施行令(昭和42年9月11日政令第292号)第15条の2第1項に、裁判手続き又は裁判外における民事上もしくは行政上の紛争処理の手続についての代理業務であることを規定している。
(5) 法第15条の4は、住民票を消除したとき、又は住民票を改製したときは、その消除した住民票又は改製前の住民票を除票と総称することを定めており、法15条の3は除票の記載事項として、住民票に記載していた事項のほか、当該住民票を消除した事由(転出の場合にあっては、転出により消除した旨及び転出先の住所)及びその事由の生じた年月日を記載することを規定している。
(6) 法第15条の4第1項は、除票に記載された者からの交付請求による、同条第2項は国または地方公共団体からの交付請求による、同条第3項は第3者からの交付申出による、同条第4項は特定受任者からの交付申出による除票の写しの交付について規定している。
(7) 法第15条の4第3項は、自己の権利を行使し、または自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者、国又は地方公共団体に提出する必要がある者、この他住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者について、除票の写し等が必要であるとの申し出があり、これを相当と認めるときは、当該申出をするものに住民票等を交付することができると規定している。
(8) 法第15条の4第4項は、特定受任者が法第15条の4第3項に規定する者から依頼を受けたことを理由として除票の写しの交付が必要であると申出があり、且つ、これを相当と認めるときには、当該申出をするものに住民票等を交付することができると規定している。
(9) 法第38条第1項は、地方自治法第252条の19第1項の指定都市に対するこの法律の規定で、政令で定めるものの適用については、区及び総合区を市と、区及び総合区の区域を市の区域と、区長及び総合区長を市長とみなすと規定している。
(10) 国要領の第5-10「住民基本台帳の一部の写しの閲覧および住民法の写し等の交付並びに戸籍の附票の写しの交付におけるドメスティック・バイオレンス・ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための措置(以下、「支援措置」という。)」は、支援措置の取り扱いを規定している。
(11) 国要領第5-10-アは支援措置の受付を、国要領第5-10-イは支援の必要性の確認を定めており、市町村長は、その備える住民基本台帳に記録又は戸籍の附票に記載されているもので、ドメスティック・バイオレンス・ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者から、支援措置の実施を求める旨の申し出を受け、加害者が被害者の住所を検索する目的で住民基本台帳の閲覧や交付申出等を行う恐れが認められるかどうかを相談機関等に確認して支援措置の必要性を確認するとしている。
(12) 国要領第5-10-エは、申出者が前住所地や本籍地等ほかの市町村に対して併せて支援を求める場合には、当該市町村に申出書を転送することを定めており、さらに国要領第5-10-オでは、原則として当初受付市町村長が支援の必要性を確認したことをもって、転送を受けた市町村長は支援の必要性を確認することとして差し支えないとしている。
(13) 国要領第5-10-コ-B-(イ)-(A)は、被害者を対象とする住民票の写しの交付について、加害者が判明している場合、加害者からの交付請求は被害者の住所を検索するための不当な目的として拒否し、又は、法第12条の3第1項から第6項、法第15条の4第1項から第4項等に掲げる者に該当しないとして申出を拒否することを規定している。
(14) 国要領第5-10-コ-B-(イ)-(C)は、第三者からの住民票の写しの交付申出に当たっては、加害者が第三者に成りすまして行う申し出に対する交付を防ぐため、本人確認、利用目的の審査について厳格に行うことを規定している。
(15) 平成30年3月28日付総務省通知 総行住第58号「ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための住民基本台帳事務における支援措置に関する取扱いについて」は、弁護士からの交付申出にあっても、委任者が加害者である場合は加害者から当該申出があったものと同視し、国要領第5-コ-B-(イ)-(A)により対応することとしており、請求事由や利用目的を厳格に審査した結果、請求や申し出に特別の必要があると認められる場合には、交付する必要がある機関等から交付請求を受ける、加害者の了解を得て交付する必要がある機関等に市区町村長が交付する、又は支援対象者から交付請求を受けることにより、加害者に交付せず目的を達成することが望ましい。としている。
(16) 平成30年12月3日付総務省通知総行住第199号「ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等,児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための住民基本台帳事務における支援措置に関する裁判所との連携について」は、住民票の写し等の交付請求及び申出について、依頼元が加害者や加害者が依頼人の職務上請求であって、訴訟を提起する場合等は、住民票の写し等の交付によってではなく、裁判所からの調査嘱託に対応することとしている。
(17) 大阪市〇〇区役所事務分掌規則第7条第2項は、市民局総務部に所属する職員に補助執行させる業務として規定しており、住民票の写し等の交付のうち、郵送による請求及び申出によるものを市民局総務部住民情報担当が所管する郵送センターが担っている。
(18) 市要領は、国要領を踏まえた大阪市における住民基本台帳事務を定めている。
2 本件処分の適法性について
(1) 令和〇年〇月〇日付で処分庁に対して、交付対象者の支援措置決定を行った市区町村の長からその旨の通知(以下、「支援措置通知」という。)が、支援措置申出書の写しを添えてなされた。
(2) 請求人の住民票の写しの交付申出について、郵送センターは、交付対象者が支援措置対象者であることを確認したため、請求人(事務所)に委任者を照会し、加害者であることを確認した。
(3) 郵送センターは、委任者が加害者であることから、請求人に対し、交付することはできないことを説明したところ、請求人は不交付決定の証明書を希望する旨を郵送センターに伝えたため、郵送センターはこれを処分庁に連絡し、処分庁は請求人に対し住民票の不交付決定通知を交付した。
(4) 処分庁は、支援措置通知により、交付対象者が被害者であり支援措置が必要である旨を相談機関が意見付与していること、及び加害者氏名が依頼人であることを確認した。
(5) 処分庁は、本申出が被害者の住所検索に利用するための加害者からの不当な交付申出と同視し、特定受任者からの除票の写しの交付について規定する第15条の4第4項に該当しないものとして不交付とした。
(6) 請求人は、交付対象者は加害者を原告とする裁判において、原告に対して損害賠償金の支払いを命じられているにもかかわらず、一切加害者に対して支払いを行わず、支援措置の申し出は支払いを免れるために行われていると主張する。
(7) 請求人は、交付対象者が申出のあった被害の事実はなく、処分庁はそれを確認せずに支援措置を行っている旨主張するが、処分庁は、支援措置通知により支援の必要性を確認しており、加害者の委任を受けた弁護士からの申し出に対し、不交付とした処分庁の決定は適切である。
(8) 請求人の住民票の写しの利用目的が強制執行手続であることから、裁判所の調査嘱託の依頼を行うことにより、目的は果たせることが考えられる。

結論
 以上のとおり、本件処分に違法又は不当な点は認められず、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

令和4年3月30日
審査庁 大阪市長 松井 一郎    

裁決書(令和3年答申第21号)

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