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いまざとライナー(BRT)の運行による社会実験について実験開始5年目の効果検証等をまとめました

2024年2月9日

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 大阪市は、平成31年4月1日から大阪市高速電気軌道株式会社(Osaka Metro)と共同で社会実験中のいまざとライナー(BRT)について、Osaka Metroの協力のもと、実験開始5年目の効果検証等をまとめましたのでお知らせします。

 なお、BRT社会実験については、5年間取り組んできましたが、コロナ禍もあり需要喚起が不十分であったため、さらなる需要喚起に取り組むとともに、実態に即した効率的な運行計画を検討する必要があることから、社会実験を2年程度延長します。

実験開始5年目の状況及び今後の進め方(案)の概要

1.利用状況等

  • 平日の利用者は、ダイヤ改正前の令和5年9月までは令和4年度を上回る状況が続き、令和5年9月時点では1日約3,700人となっている。ダイヤ改正後の令和5年10月以降の利用者数は、前年同月比で約16パーセントから19パーセント減少し、令和5年12月時点で約3,000人となっている。1便あたりの利用者数は、令和5年12月時点で21.3人であり、令和5年9月時点の19.6人から増加している。
  • 土曜日・休日の利用者数は、令和4年度と同水準となっている。
  • 長居ルート(地下鉄今里~JR長居駅前)は、朝夕ラッシュ時間帯の利用割合が高いことから、通勤や通学を目的とした利用が多いと考えられる。
  • あべの橋ルート(地下鉄今里~杭全~あべの橋)は、朝夕ラッシュ時間帯と昼間時間帯の差が大きくないことから、買い物などの自由目的の利用も多いと考えられる。
  • 今里筋線延伸区間(地下鉄今里~湯里六丁目)のみの利用者数は全体の約47パーセント、地下鉄長居、JR長居駅前、あべの橋を含む延伸区間外の利用者数は全体の約53パーセントとなっており、鉄道駅のあるターミナルと接続することで、利用者の増加につながっていると考えられる。

(注)平日は月曜日~金曜日、休日は日曜日及び祝日

2.アンケート調査の実証及び分析

 社会実験1年目(令和元年)と3年目(令和3年)及び5年目(令和5年)の平日及び休日に実施したアンケート調査結果を比較することで、いまざとライナーの利用者特性等の経時変化を分析した。

アンケート結果の概要

  • 平日、休日ともに60歳以上の利用者の割合が高い。
  • 利用者のうち、沿線にお住まいの方が平日は約60パーセント、休日は約70パーセントとなっている。
  • 平日の利用者のうち、いまざとライナーの運行開始前には同じ目的地への移動がなかった方が約50パーセントであり、利用者の約半数が新規需要となっている。一方で、いまざとライナーの運行開始前に同じ目的地への移動があった方で他の交通手段からいまざとライナーへ転換された方は約49パーセントとなっており、そのうち、バスからいまざとライナーへ転換された方が約65パーセントとなっている。
  • いまざとライナーを利用する理由として「移動時間が短い」を選択された方が約50パーセント、バスとの比較によるいまざとライナーの優位点として「時間が短縮できる」を選択された方が約70パーセントと最も高くなっている。
  • いまざとライナーの認知度は、沿線住民で約87パーセント、企業・学校で約60パーセントとなっており、いまざとライナーを知るのに役立った情報として、「区役所が発行する広報紙」「知人に聞いた」 「地下鉄・バス車内の広告・放送」が多い。
  • 沿線住民の利用者の約半数の方が「外出機会が増えた」と回答している。

3.お寄せいただいたご意見

 「案内も丁寧で安全運転」といった好意的なご意見もあるが、乗務員の利用者への対応に関する苦情等も寄せられている。

4.需要喚起策の取り組み

沿線施設とのイベント連携による需要喚起

  • 長居植物園と連携し、いまざとライナー利用者向けに長居植物園グッズの配布を実施
  • レッドハリケーンズ大阪と連携し、試合日にヨドコウ桜スタジアムにていまざとライナー利用者向けにレッドハリケーンズ大阪グッズの配布を実施。いまざとライナーの車内においてレッドハリケーンズ大阪の装飾を実施

沿線施設等との広報連携による需要喚起

  • 区民まつり(生野区、平野区、東成区)で、いまざとライナーのガイドブックやノベルティの配布によるPRを実施
  • 長居公園と連携し、長居公園内サイネージでいまざとライナーのPR動画を放映
  • セレッソ大阪と連携し、試合日にヨドコウ桜スタジアムにていまざとライナーのチラシを配布。スタジアムビジョンにていまざとライナーのPR動画を放映
  • 大阪コリアタウンと連携し、大阪コリアタウンホームページにていまざとライナー停留所から大阪コリアタウンまでのアクセス方法を記載
  • いまざとライナーのポスターを新しく作成し、駅構内において掲示

5.長居ルート運行区間の変更による影響の分析

長居ルート変更の概要

 JR長居駅前付近の道路整備の完成に伴い、令和4年10月にJR阪和線との乗継利便性の向上を図るため、JR長居駅前に停留所を新設し、長居ルートの運行経路の変更を実施

長居ルート変更前後の利用者数

  • 「JR長居駅前」停留所から乗車する利用者は約10パーセント増加しており、特に、朝の通勤や通学時間帯の利用者が増加した。一方で、降車する利用者は約44パーセント減少している。
  • 「JR長居駅前」停留所と「長居西二丁目」停留所の利用者の居住地を比較した結果、JR阪和線沿線に居住している人及びいまざとライナー沿線区に居住している人の割合が増加している。

長居ルート変更に伴う効果

  • 令和5年10月のダイヤ改正後も「朝の通勤時間帯の乗車」及び「JR阪和線沿線居住及びBRT沿線居住の利用者の割合」が増加していることから、いまざとライナーとJR阪和線の乗継利便性が向上したことに伴い、通勤や通学利用の増加につながっていると考えられる。
  • 「JR長居駅前」停留所を降車する利用者の減少については、長居ルートの変更に伴い、「地下鉄長居停留所(西行)」を「地下鉄長居停留所(北行)」に移設したことから、「地下鉄長居停留所(北行)」とJR阪和線長居駅との距離が近くなり、往路は「JR長居駅前」停留所から乗車している利用者が復路は「地下鉄長居停留所(北行)」で降車していることが要因と考えられる。

6.利用実態に応じた運行計画の見直し(令和5年10月ダイヤ改正)による影響の分析

時間帯別の車両内最大乗車人数

 ダイヤ改正後の令和5年10月のいまざとライナー車両内の最大乗車人数は36人となっており、令和4年10月の31人から増加している。

利用者数の変化について

  • ダイヤ改正後の令和5年11月の平日1日平均利用者数は令和4年11月と比較して約17パーセント減少している。
  • 既存の路線バスにおいて乗換えずに移動が可能な利用区間において減少量が大きくなっている。一方で、それ以外の利用区間(乗換が必要な移動もしくは、路線バスの運行がない区間)は利用者数の減少の影響は少なかった。
  • このことから、いまざとライナー利用者が路線バスの利用に転換している可能性が高い。

7.需要予測

  • いまざとライナー利用実績をもとに需要定着時期を予測したケースでは、新型コロナウィルス感染症による外出自粛などの影響が継続すると仮定した場合、平日の利用者数のピークは1日あたり3,720人であり、新型コロナウィルス感染症の影響の回復を見込む場合は1日あたり3,900人。
  • 地下鉄今里筋線(井高野~今里)と同様に開業10年目に需要が定着すると設定し予測したケースでは、新型コロナウィルス感染症の影響が継続すると仮定した場合の平日の利用者数のピークは1日あたり4,400人であり、新型コロナウィルス感染症の影響の回復を見込む場合は1日あたり4,660人。

8.費用便益分析

  • いまざとライナー利用実績をもとに需要定着時期を予測したケースでの費用便益比は0.07。地下鉄今里筋線(井高野~今里)と同様に開業10年目に需要が定着すると設定し予測したケースでは0.61。
  • 現状の料金体系や運行計画ではいずれのケースも費用便益比は1未満となっており、利用者のさらなる増加や収支改善が必要である。

9.収支採算性分析

  • いまざとライナーと重複する路線バスの減収を見込む場合、単年度収支は毎年3億円程度の赤字、開業10年目において累積損益がマイナス48億円程度になる。いまざとライナーと重複する路線バスの減収を見込まない場合、単年度収支は毎年1.2億から1.8億円程度の赤字、開業10年目において累積損益がマイナス36億円程度になる。
  • 現状の料金体系や運行計画での収支採算性の確保は難しい。

10.社会実験の総括と今後の対応について

総括

  • 沿線住民を中心に利用が定着し、新規需要の創出や沿線活性化に一定寄与している。
  • 一方で、現行の運行計画では将来予測通りに利用者数が増加したとしても、年間1.2~1.8億円程度の赤字の見込み。
  • 引き続き、需要喚起に取り組むとともに、BRTと路線バスの利用状況と需要の相互影響を確認し、実態の即した運行計画の検討や、BRTと路線バスの一体的運営によるコスト削減を検討することでBRTの事業継続性が高まると思料する。

(1)BRTが確保すべき機能面の評価

 確認できたこと

  • 輸送力は、将来的に平日1日あたり約4,400人から4,700人の利用者を見込み、現状の運行計画において対応が可能
  • 速達性は、路線バスと比べ移動の時間短縮が図られており、アンケート結果からも移動の速達性に関する項目の評価が高い
  • 定時性は、バス優先レーンやPTPS(公共車両優先システム)などBRTを優先的に走行させるための仕組みを確立したことにより、概ねダイヤ通りの運行を実施

(2)BRTによる需要喚起の評価

 確認できたこと

  • コロナ禍以降、沿線施設と連携したイベントを実施したが、利用者の大幅な増加には至っていない。一方で、アンケート結果からイベントをきっかけとした新規需要の創出や利用者の外出機会の増加が確認され、沿線施設と連携することにより、BRTの利用が促進されることが分かった。
  • 沿線施設等と連携した広報の実施により、沿線住民の約90パーセント、企業・学校の約60パーセントがいまざとライナーを認知している。BRTを知るのに役立った情報として、「地下鉄・バス車内の広告・放送」や「区の広報誌」が多く、利用者によって、有効な周知方法が異なっていることが分かった。 

 確認できなかったこと、取組みが不十分なこと

コロナ禍で沿線施設等と連携したイベントや効果的なPRによる需要喚起が不十分

(3)BRTの事業性の検証

 確認できたこと

  • 令和5年10月のダイヤ改正により、路線バスと並行する運行区間において、利用者の減少率が大きく、BRT単独の運行区間では、利用者の減少率は小さい
  • 令和5年10月のダイヤ改正により、1便あたりの利用者は増加しており運行効率は向上しているが、長居ルート及びあべの橋ルートともに全時間帯で輸送力が需要量に対して多い状態となっている
  • 現行の運行計画では、将来予測通りに利用者数が増加したとしても、年間1.2~1.8億円程度の赤字の見込み

 確認できなかったこと、取組みが不十分なこと

  • BRTと路線バスの利用状況と需要の相互影響を確認し、実態に即した運行計画の検討が必要
  • BRTと路線バスの一体的運営による運行コスト(車両、運転士、運行サービス等)の削減の検討が必要

今後の対応について

 今後、需要喚起に引き続き取り組むとともに、BRTと路線バスの一体的、効率的な運行計画及び運営の検討、試行、検証を行うためには、さらに少なくとも2年が必要であり、社会実験を2年程度延長し検証を進める。

(1)沿線施設と連携した需要喚起・創出の取組み

  • 沿線施設や観光地と連携したタイアップ企画の実施やイベント等でのPRによる需要喚起の実施

  • Osaka Point等交通以外のサービスを活用し、外出機会の創出、利用者の増加を目的としたBRT沿線施設との新たな取組みを検討、実施

(2)運賃収入以外の収入確保の取組み

車両や停留所施設を活用した広告を検討・実施

(3)BRT及び路線バスの実態に即した運行計画の検討

BRT及び路線バスにAIカメラを設置、利用実態・相互影響を把握し、実態に即した運行計画を検討

(4)路線バスとの一体的運営による運行コスト削減の取組み

BRTと路線バスの一体的、効率的な運営計画(車両、運転士、運行サービス等)を検討

社会実験開始5年目の効果検証等のまとめ

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