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第71回 大阪市住宅審議会

2014年9月10日

ページ番号:5336

1. 日時

 平成15年10月22日(水) 14時00分~15時40分

2. 場所

大阪キャッスルホテル

3. 出席者

(委員)
大山委員、尾山委員、北浦委員、佐々木委員、佐藤委員、塩委員、高木委員、巽委員、徳矢委員、西木委員、服部委員、三輪委員、村田委員、山本委員

(大阪市)
岸野住宅局長、永井計画調整局理事、坂住宅局理事、北山住宅局理事兼建設部長、岩城管理部長、平岡企画部長、菊植建築指導部長、中村住環境整備担当部長

(注) JISコードにない漢字は一番近い字で代用しています。

4. 会議の議題

(1) 異動委員の紹介

(2) 議事要旨について

(3) 今後の住宅施策の方向について

5. 議事要旨

(1) 委員等発言要旨

(会長)

 前回の第70回住宅審議会においては、大阪市より答申に向けての課題認識(素案)などについての説明があり、委員の皆様方からいろいろとご意見をいただいた。
 前回の議事内容については、「議事要旨」として事務局で発言内容を取りまとめ、私も内容を確認しているが、委員の皆様のご確認をお願いしたい。

(2) 今後の住宅施策の方向について

今後の住宅施策の方向についての素案の説明概要

  この素案については、答申の全体構成を示したものであり、作成に当たっては、企画委員の先生方のご意見もおうかがいし、また、審議会での委員の皆様方からいただいたご意見についても反映し、事務局の方でたたき台としてまとめたものである。
 第1章では、これまでご議論いただいた大阪市の住宅事情、あるいは社会経済情勢の変化といったことについて、委員の先生方のご意見を踏まえ内容を整理し、「大阪市の住宅政策を取り巻く状況と課題」ということでまとめている。
 第2章では、現状と課題を踏まえ、今後大阪市の住宅政策がどのような役割を担っていく必要があるのかということで、「住宅政策の役割と必要性」について改めて整理している。
 第3章は、「住宅政策の目標」であるが、具体的な表現については、次回以降の審議会で、第6章の「今後重点的に取り組むべき施策」と並行してご議論いただきたいと考えている。
 本日は、これまでの審議会での議論も踏まえ、キーワードということで、物の豊かさだけでなく心の豊かさ、ゆとり、充実感といったことを含む「豊かさ」、経済活動や文化、コミュニティにおけるにぎわいや活気といったことを含めた「活力」、環境問題への配慮はもちろん、豊かさや活力を備えた住宅・住環境を次の世代に引き継いでいけるようなという意味で「持続可能」、この3つを例示として挙げている。
 第4章では、第3章の「住宅政策の目標」を受け、今後どのような視点で住宅施策を進めていくのかということで、「施策展開にあたっての重要な視点」について取りまとめている。
 第5章では、1章から4章までを受け、今後の「施策の取り組み方向」について、[1]市民に愛される個性豊かな居住地の整備、[2]大都市居住ニーズに応える住まいづくり、[3]安心して暮らせる住まい・まちづくり、[4]住宅ストックの再生と有効活用、[5]市民とともに進める都市居住プロモートと、大きく5本に柱立てを行ない施策の取り組み方向をまとめている。
 第6章については、これまでの審議会でいただいた意見、また本日の議論も踏まえ、「今後重点的に取り組むべき施策」として取りまとめてまいりたい。第3章とあわせて次回以降にご審議いただきたいと考えている。

<1.大阪市の住宅政策を取り巻く状況と課題>

(1)都市居住ニーズの高まりと都市再生の潮流

 都市居住ニーズの高まりや分譲マンション供給の活発化等を背景に、都心部を中心とした人口回復傾向がみられており、こうした都市居住の流れをより確実なものとすることが重要な課題である。

(2)中堅層の市外転出と少子高齢化の進行

 近年、都心部において人口が回復傾向にあるものの、全市的には、依然として中堅層の転出超過が続いている。また、少子高齢化についてもより一層の進行がみられ、こうした傾向が続くと、地域コミュニティの維持が困難となることをはじめ、様々な面で都市活力の低下が懸念される。こうしたことから、人口構成バランスの確保は、住宅政策においても重要な課題である。

(3)ますます多様化・高度化する居住ニーズ

 人々のニーズが多様化するなか、住宅・住環境に対するニーズも、ますます多様化・高度化・個性化してきている。今後の住宅施策の展開にあたっては、こうした居住ニーズの変化を十分に踏まえる必要がある。

(4)一層の改善が求められる市民の居住水準

 これまで実施してきた各種住宅施策の効果もあり、市民の居住水準は着実に向上しているものの、大都市の中では依然として低く、また、防災上の課題を抱えた老朽住宅が相当数存在するなど、取り組むべき課題が残されている。また、新規の住宅供給についても、持家と比べて借家の水準が十分でないなど、引き続き適切な誘導が必要な状況となっている。

(5)魅力の向上が必要な居住地環境

 市民の住環境に対するニーズは、ますます多様化・高度化してきているが、市内の居住地はこうしたニーズに必ずしも応えるものになっていないのが現状である。特に、JR環状線外周部を中心に老朽住宅密集市街地が広く存在しており、こうした地域の住環境の改善が大きな課題となっている。また、市内に存在する魅力的な居住地や特色ある居住地について、十分知られているとは言い難い状況となっている。

(6)住宅政策を取り巻くその他の動き

 都市基盤整備公団、住宅金融公庫の独立行政法人への移行が予定されるとともに、地方住宅供給公社の今後果たすべき役割についても検討が行われるなど、住宅政策を取り巻く国の動きは変化してきており、今後の住宅施策の展開にあたっては、こうした変化を踏まえた対応が必要である。

<2.住宅政策の役割と必要性>

(1)市民が安心して豊かな生活をおくるための住宅政策

 住宅・住環境は、市民生活の基盤であり、市民が安心して暮らせることはもとより、豊かで快適な生活をおくるための基本的な要素である。
 市内の住宅について、広さや設備性能など一定水準の質を確保するとともに、市民が各々のライフスタイルや価値観に応じて、自分に合った住宅を選択できる環境を整備していくことが重要である。
 また、住環境は、住宅と一体となって市民生活の主要なステージとなるものであり、そこに住むことが誇りに思えるような魅力を備えていることが重要である。
 こうしたことから、住宅政策は、市民が生活の安心や豊かさを感じることができるよう、住宅・住環境を大都市ならではの多様なライフスタイルや価値観に対応した、良質な社会的資産へと誘導していくための重要な役割を担っている。

(2)都市に活気と活力をあたえるための住宅政策

 都市居住の促進は、近年、より高まっている職住近接のニーズに応えるだけでなく、市内の消費の拡大や新しい産業を支える多彩な人々の交流、にぎわいの向上といった経済・景気対策の観点からも重要な意味を持つ。
 また、都市居住の促進は豊かな文化の形成と享受にとって重要である。
 都市の活性化には、コミュニティを支え、経済・文化をはじめとした様々な都市活動の担い手となる市民がそこに居住し、訪れる人やもの・情報と活発に交流することが重要であり、住宅政策は、そのための都市居住促進に向けた基本的な役割を果たす必要がある。

(3)持続可能な社会を形成するための住宅政策

 社会経済状況の変化を踏まえつつ、様々な都市活動の活力や、住宅単体から地球レベルまでを視野に入れた良好な環境を、将来に渡り持続的に維持・継承していくことができる持続可能な社会を実現していく必要がある。
 そのためには、若年層・中堅層の市内定住を促進し、バランスのとれた人口構成の確保を継続的にはかることが重要である。
 また、都市を形成する重要な要素である住宅・住環境については、循環型の社会ストックとして形成されていくことが必要であり、都市全体についても、エネルギーの消費が少ないコンパクトな都市形態を実現する必要がある。
 今後の住宅政策には、こうした面において、持続可能な都市づくりを担う重要な役割がある。

<3.住宅政策の目標>

第3章では、住宅政策の目標をわかりやすく表現するキャッチフレーズのようなものを掲げ、またその趣旨などについて記述をしていきたい。

<4.施策展開にあたっての重要な視点>

(1)居住政策としての総合性を確保する

 市民の都市居住ニーズは、住宅単体に対するものに加え、住宅をとりまく物理的な環境、さらには、情報や住まい方、居住関連サービスといったソフト分野にまで広がるなど、ますます高度化・多様化してきている。
 今後の住宅施策の展開をはかっていくためには、住宅・住環境を含む居住全体を施策の対象としてしっかりと位置付け、ハード、ソフト両面での取り組みを進めるとともに、建築指導行政などの各種まちづくり行政をはじめ、文化、経済、福祉など様々な政策との連携を強化するなど、より一層の総合性の確保が重要である。

(2)地域特性を重視する

 都市間競争の時代を迎え、高いアイデンティティを有した、個性豊かなまちづくりが求められている。
 また、地域の活動やまちに対する愛着心がまちのにぎわいと活力の源泉であり、地域の特色を活かしたまちづくりを進めることにより、人々の愛着を生み育て、そのまちの魅力が次世代へと引き継がれていくことが重要である。
 住宅政策においても、都心部における職住遊近接型の居住地整備に加え、地域の歴史や文化を活かした居住地づくりや、緑や水辺などのアメニティ要素を活かした快適な居住地づくり、古くからのコミュニティを活かしたふれあいのある居住地づくりなど、地域特性を重視した施策展開が必要である。

(3)既存の資源、ストックを活用する

 人口や世帯数が将来的に減少していくことや、市民の環境に対する意識が高まっている状況を踏まえ、既存の資源やストックの活用を軸とした施策の展開が必要となってきている。
 このため、良質な住宅ストックの形成や良好な住環境の整備を進めていくにあたって、新たに整備するものの質的向上を誘導していくことに加え、既存ストックを有効に活用した更新・再生の手法を可能な限り導入することが重要である。また、ストック全体が効果的に機能するよう住宅市場の活性化を誘導することが重要である。

(4)公共と民間が適切に役割分担し、協働する

 今日の経済状況や行財政改革の流れなどの社会情勢を踏まえ、住宅政策の推進にあたっては、民間にできることは民間に任せるということを基本に、公共と民間の役割分担を再構築することが重要である。
 民間住宅については、規制誘導や助成策等により、その質的な向上をはかり、良好なストックへと誘導するとともに、それらの円滑な流通に向けた住宅市場整備に対する支援を行うことが公共の大きな役割である。
 一方、密集市街地整備など、民間だけによる事業では適切な効果が期待できないものについては、公共による積極的な施策展開が必要である。
 また、地域の特性を活かした居住地整備を進めるにあたっては、地域住民やNPO法人等との協働による取り組みが重要である。
 さらに、現在新たな役割が求められている住宅供給公社や、独立行政法人への移行が予定されている公団・公庫といった公的セクターとも連携し、公共と民間がそれぞれ適切に機能するような住宅政策の展開をめざしていく必要がある。

<5.施策の取り組み方向>

(1)市民に愛される個性豊かな居住地の整備

 快適で魅力にあふれるまちづくりを進めるため、それぞれの地域が独自に持つアメニティや文化、歴史といった特性を十分に活かした個性豊かな居住地整備を進めていくことが重要である。
 このためには、市民が主体となり、ハード・ソフト両面に及ぶ特色を再発見するとともに、それをまちの魅力として地域の中で共有し、醸成していくような新たな仕組みを構築することが重要である。そのうえに立って、地域住民やまちづくりを支援するNPO法人、そして行政が連携・協働し、地域の特性に応じた居住地づくりに取り組んでいく必要がある。
 また、居住地を構成する主要な要素である住宅については、まちの個性や魅力を形成するうえで重要であり、住宅そのものの質的向上を図ることはもちろん、優れた景観や環境への貢献といった観点から、良好な都市型住宅ストックとなるよう誘導していくことが必要である。

(2)大都市居住ニーズに応える住まいづくり

 多様化する市民の居住ニーズに的確に対応していくためには、市民がそれぞれのライフスタイルにあわせた住まいの選択が可能となる、多様な住宅ストックの形成をはじめとした施策展開をはかることが重要である。
 このため、近年増加している単身世帯や二人世帯などの小規模世帯の居住ニーズや、在宅就労等の増加にみられる就労形態の多様化や情報化の進展等を背景とした新たな居住ニーズにも対応した住宅施策を展開する必要がある。
 また、依然として市外への転出傾向にある子育て世帯を中心とした中堅層の市内居住を促進するため、安心して子育てができる居住環境を備えた魅力ある住宅・住環境の整備を進める必要がある。
 また、高齢者や障害者等が暮らしやすい住宅・住環境の整備を進めるため、ハード面での施策を推進するとともに、ソフト面においても、住宅関連の情報提供や相談サービス等の充実をはかる必要がある。さらに、福祉施策等との連携による住宅供給や住宅ストックの有効活用などにも取り組む必要がある。

(3)安心して暮らせる住まい・まちづくり

 市民が安心して生活することができるよう、住宅・住環境が防火性や耐震性、健康といった基礎的な安全性を備えていることが重要である。
 とりわけ、老朽住宅が密集する市街地については、災害に強く、安全で住みよい居住地への早急な整備・再生が求められている。このためには、建築指導行政等との連携もはかりながら、老朽木造住宅の自主建替えをより一層促進するとともに、生活道路やまちかど広場などの防災骨格の形成、狭あい道路の拡幅促進などを、コミュニティ等も生かし、着実に進めていくことが必要である。とりわけ、「防災性向上重点地区(約3,800ha)」や「特に優先的な取り組みが必要な密集住宅市街地(約1,300ha)」においては、特に重点的な施策展開をはかる必要がある。
 また、防犯や健康、住宅の品質といった安全・安心に対するニーズにも配慮した住宅・住環境の整備を進める必要がある。

(4)住宅ストックの再生と有効活用

 市民の居住ニーズに対応した良好な住宅ストックを形成するため、新規に建設される住宅の質的向上をはかるとともに、既存住宅ストックの再生を進めることが重要である。また、住宅ストックがより有効に活用されるよう、住宅市場の環境整備による円滑な流通の促進をはかることが重要となっている。
 既存住宅ストックの再生・活用に向けた積極的な取り組みは、地球環境に配慮した持続可能な循環型社会をめざす観点からも強く求められている。そのため、既存の民間住宅ストックについては、リフォームの普及・促進や、賃貸住宅・中古住宅市場の活性化による円滑な流通の促進をはかるなど、適切に誘導していくことが必要である。とりわけ、今後、分譲マンションについては、管理組合による適正な維持管理の促進や円滑な建替えに対する支援策の充実をはかることが必要である。
 また、市営住宅ストックを、住宅団地をはじめ地域の活性化や、コミュニティ醸成等の観点から、良好な社会的資産として有効に活用していくことが重要である。このためには、老朽化した住宅の建替えや全面的改善(トータルリモデル)を計画的に進めるとともに、入居者選考方法や入居管理のあり方などについて検討する必要がある。また、市営住宅団地の建替えや改善等にあたっては、居住の実態等を踏まえ、まちづくりに貢献する新たな機能の導入も視野に入れた取り組みが必要である。

(5)市民とともに進める都市居住プロモート

 市民の居住ニーズがますます高度化・多様化するなか、地域に愛着を持てるまちづくりを推進していくためには、住まいやまちに関する様々な情報を的確に提供するとともに、その共有化をはかっていくことが重要である。
 そのため、「住まい情報センター」が果たす役割について、都市居住プロモートの観点から新たな機能を導入するなど、一層の充実をはかる必要がある。住まいに関する相談サービスについては、物件情報の拡充とあわせ、住宅の取引等における消費者保護の視点からの情報提供や相談対応の強化が求められる。
 また、地域主体の住まい・まちづくりを促進するため、市内の様々な居住地のアメニティ資源の発掘・収集と、その情報の提供・発信を行うとともに、まちづくり分野でのNPO法人等の紹介や相互交流の場を提供するなど、新たな施策展開をはかる必要がある。
 さらに、大阪の居住地としての魅力を向上し、市内外に広く発信していくことが重要であり、多様な手法や媒体を活用した情報提供の充実をはかるとともに、「大阪くらしの今昔館(住まいのミュージアム)」の機能の強化により、大阪の都市居住文化の振興と発展的継承をはかる必要がある。

(3) 委員発言等要旨

(会長)

 このたたき台をまとめるに当たり、前回お願いした企画委員の方々にいろいろアドバイスを頂戴し、それを事務局のほうで取りまとめたものである。
 今日見ていただきたいのは、現状認識ということで、前回までの審議会での審議の結果を整理したものとなっている。その次の段階の組み立て方がどうかというあたりをなるべく細かく見ていただき、カテゴリーの立て方だとか方向づけ、その他につきまして、いろいろご意見を頂戴したい。
 また、全体の流れとして、できるだけどこかで薬味の効いた、新しい施策に少しずつでもつながるようにしたい。できないようなことでも何かヒントのようなものを出すというのが我々の役目であろうと思う。そういったことの手がかりとなるようなことでも構わないのでいろいろご意見をいただきたい。

 

(委員)

 新聞で言えば見出しに相当するものであり、政策であるから、総合的にこのような表現になるわけであるが、特に強調したい見出しを今日お聞きしたい。「豊かさ、活力、持続可能」という表現は抽象的な表現であるが、もう少し中身にある程度踏み込んだポイントをお聞きしたい。

 

(市)

 第3章の「住宅政策の目標」というところで、冒頭、フレームのところでもご説明させていただき、「豊かさ、活力、持続可能」という3つの言葉を挙げているが、今日の議論も受け、このキャッチフレーズについては大事なところだと考えているため、ご意見を頂戴してまとめて参りたい。
 見出しになるようなことについては、第5章で5つの柱を立てているが、それらを具体的に進めていくための施策を、第6章で議論をお願いしたいと思っている。そういった中で、メリハリをつけていく必要があるのではないかと考えている。

 

(会長)

 今日の資料で示されている、「豊かさ、活力、持続可能」は、おそらくこの3つのキーワードは必ず入るであろうということであり、これが原案であるという形でお出ししたわけではない。一応かなり論議が進んだ段階で、ここへ戻って、最後にこれを決めようと考えている。

 

(委員)

 具体的なことになるが、「持続可能な」というところに関係があるが、以前の審議会で「新エネルギー」という言葉が出た。省エネではなくて、近未来には住宅にも、風力や燃料電池といった新しいエネルギーが導入されていくわけであるから、そのことにもう少し触れてもよいのではないか。
 また今後は、自動車にも燃料電池なり水素エネルギーが普及していくと思うが、これから自動車公害の低減が進めば、そのことによる環境の向上というのは非常に目覚ましいものがあると思う。そうすると、都心が子育てに向かない大きな理由である「空気が悪い」ということが、今後なくなっていけば、他の要因とも相まって、都心の魅力はさらに高まり、ひょっとして都心回帰が進むバネになるかもしれない。そういう意味からも、新しいクリーンエネルギーということにもう少し着目しても良いのではないか。
 もう一点は、南海地震・東南海地震のことであるが、これも以前意見が出たかもしれないが、地震だけではなく、津波というところに触れなくていいのかと思う。これは住宅施策ではなくて都市施策になるから、記載がなかったというふうに理解してよいのか。

 

(市)

 クリーンエネルギーについては「ますます多様化・高度化する居住ニーズ」のところの「環境・健康へのニーズの高まり」で、ニーズとして省エネルギー・省資源、ヒートアイランド対策への意識の高まりとあわせて、燃料電池などの新エネルギーについての研究・開発ということで少し触れているが、ここだけではなく、他のところでも、ご指摘の観点から取り入れていけないかとは考えている。ただ、燃料電池等については、かなり速いスピードで研究・開発が行なわれているようだが、住宅行政の中でどう活かしていけるかについては、もう少し検討していく必要があると思っている。
 次に、津波については、河川行政の方で、陸地に上がる前のところで止めるべく、手立てがされているということで、東南海・南海に向けての大綱として発表された中にも挙がっている。直接住宅行政で津波対策ということにはなりにくいかと思っている。

 

(委員)

 長期的な住宅施策を考えなければならないが、やはり、生活というのは、随分、速く変化すると思う。今、特にそういう変化の時期だと思う。政策展開に当たっては、見直しや評価が、きちんとできるような仕組みを考えておいた方がよい。これまでは、公共が計画した場合、余っているような住宅を作り続けるというようなことが今までもあった。それをきちんと表明しておいたほうが市民としては安心できるのではないか。今でも、市全体として施策評価はされていると思うが、答申の中でも、例えば<4>の中で、あらためて書いてもいいと思う。

 

(会長)

 今後、大阪市がいろいろ事業なり政策を展開するにあたっては、それをチェックするシステムも同時に展開する、そういう観点を書き加える方向で考えてはどうか。

 

(委員)

 「誘導」という言葉が頻繁に使われている。「質的向上を誘導する」、「住宅市場の活性化を誘導する」、「規制誘導」、「良質なストックへと誘導する」「都市型住宅ストックとなるよう誘導していく」など。施策として「誘導」ということを考えた場合に、周知が徹底されてないのでPRしたり、あるいは新たな制度をつくったりと、いろんな手だての方法が考えられると思うので、全て「誘導」と書くのではなく、「こういう制度もある」ということをもう少し具体的に書くなどの工夫をしてはどうか。

 

(市)

 公共が直接供給する事業については自ら整備できるが、市場の9割以上は民間が占めており、民間の動向で市場が動く部分がある。そのため、建築物の規制や制度の活用、あわせて直接的な融資・助成制度などさまざまな手法を用いながら、ここに書かれているようなさまざまな目標へと向かっていただくという意味で「誘導」という言葉を使っている。
 具体的な施策について、例えば、現在の融資制度をもう少し充実するとか新しく誘導的な制度をつくるといった提案は第6章で書いていくというかたちで、この答申を組み立ててはどうかと思っている。

 

(委員)

 先ほどの意見と同様であるが、言葉の語尾が全部、「重要である」とか「必要である」という文言になっている。選挙においてもきちんとしたマニフェストを出すご時世なのだから、インパクトを出すという意味では、今後、第6章の部分での議論になるのかもしれないが、ここをめざしたいであるとか、例えば緑化にしても、現在の緑被率がいくらであると。特に大阪の都心部というのは非常に緑が少ないということなのだが、例えば20%なら何年間で倍増をめざすなど、もう少し具体的な表記も織り込んでいただきたい。

 

(市)

 第6章の書きぶりも踏まえて、全体でまた議論いただければありがたいと思っている。

 

(委員)

 モデル地区、モデルゾーンのようなものが打ち出せればいいなという気がする。シンボルプロジェクトという言い方がマスコミの言葉としてあるが、シンボルになるもの、あるいはそういうものをつくっていくのだという何か具体的なものをつくれればよいと思う。それは、既存のところをもっとプロモートすることが一番よいかと思う。上町台地にもあるし、それから住吉のほうもずっと昔からよいところであった。せっかくの既存の資源を活用するのであれば、本当に住宅、住環境がよく、歴史的なものもうまく活用されている、もちろん緑もある、そのようなところが欲しいと思う。そのような議論がされればよいのではという気がする。
 それから、もう1つはペットをこれからどう考えるか。今朝のNHKのラジオ放送を聞いていると、日本の世帯の3割が犬・猫等のペットを飼っているそうである。独り暮らしであるとか高齢者の世帯などが増えてくると、やはりペットがますますほしくなってくるのだと思う。ペット、犬・猫OKだというマンションも出てきているようであるが、大半は飼うことができない。いわゆる独り暮らしの女性もよく飼っているという話を聞く。猫が外から入ってくる穴をつくっておくとか、脚を洗う場所をつくるとか、いろんな工夫がなされているようである。ペットというのは、小さいと言えば小さな話であるが、身近なことをどう考えるか。1つのテーマではないかという気がする。

 

(市)

 モデルゾーンの打ち出しについては、非常に大事な視点であると考えている。地域特性を重視するという視点の中で、こういった居住地をめざしていこうという方向性を挙げているのと、もっと地域特性に注目していこうという視点、それから地元の方とも連携・協働して居住地づくりに取り組むということを考えている。具体的にどういった形でモデルゾーンという打ち出しが可能か、これまですでにHOPEゾーンという形の事業や密集市街地の整備等を行っているが、それ以外の分野でどのような打ち出しが可能かということについて検討していきたい。
 ペットの件については、特に高齢化が進み、単身世帯が増えていく中で、精神的な支え、パートナー、癒しというような面も含めて重要な問題になってきていると考えている。
 以前に住宅供給公社のほうでモデル的に試みたことがあったが、残念ながら団地周辺から反対を受けた。公共が直接取り組むことについてはまだまだ難しい点がある。一方で、民間の分譲マンションなどでは、恐らく敷地条件や立地条件等を加味した上で取り組まれていると思われるが、ペットのための別の出入口があったり、脚洗い場があったりという試みもされている。ペットに関しては、マナーの問題が非常に大きく、マナーの面でもきちんと向上してもらえるような、ハード・ソフトあわせた対策が必要ではないかと考えている。

 

(委員)

 宝塚のファミリーランド跡にペットを連れて入れる公園ができたというので行ってみたところ、犬を連れた人たちが非常に多く、盛況であった。あのような空間がいかに求められているかということをすごく実感した。ペットとの共生ということがマンションの中では実現できなくても、まちづくり、都市づくりの中で公園としてどこかにつくられるという方向で考えられることもあるのではないか。
 また、活力については、昼間人口と居住・常住人口との問題で考えてみると、住環境と言う場合に、体を休めるとか心が癒されるといった、働く以外の時間帯を快適に過ごすということに重点が置かれているように感じる。それも重要だが、明日への活力、仕事の活力という意味で、働く場所、オフィスとしての大阪の役割というものもすごく大きいと思う。
 サービス産業や物販の人たちが市外から通うのではなく、大阪市内に転入してくれたら、もっと職住接近ができて、働く面でも活力が出てくる。昼間人口の増加も大事だが、夜間人口として定着すればもっと活力が出る。やはり働く場所ということで、職住接近という点をもう少し力を入れて、都市再生を図ると強調してはどうかと思う。
 文化の中に「教育」というのもめざす言葉として入れるべきではないか。子育てをする親にとって、教育環境という面で、転出する理由に学校が挙げられている。教育も環境の中の1つの大事な条件ではないかと思うので、教育という言葉も入れた方がよいのではないか。

 

(委員)

 全体を通して、「大阪市」という固有名詞が感じられにくい。どこのまちにでも当てはまる、どこの大都市にでも当てはまりそうな内容でインパクトがない。大阪市の施策だなということがわかるようなことになっていなければならないのではないか。
 それから、一番最初の問題点の提起のところで、子育て期の家族の市内定住がなかなか増加しないということについて、それがこの施策によって、どのように解決されるのかがよくわからない。
 「大都市居住ニーズに応える住まいづくり」のところでは、子育て世帯を中心としたことが書かれてはいるが、具体的にどういう形で子育て期の人たちを呼び込めるのかがはっきりしない。先ほどから空気が悪いとかいろんな話は出てきたが、そもそもなぜ入らないのかという問題認識のところがはっきりと示されていない。だから「公共と民間が適切に役割分担して協働する」のところで、住宅のストックの9割は民間が持っているので民間に任せて、残りのやりにくいところを公共がやるという話が書かれているように、結局ほとんどを民間に任せたような形の政策になるのではないかという気がする。
 具体的に書いてあるのは、豊かな緑や、生活の利便性や、安心して子育てができるという、抽象的なことである。このような抽象的な言葉で表現されることも、この裏には、非常にいろんな具体的な話があると思う。そのあたりを解決しないと、この子育て層というのは、戻ってこない気がするので、もう少し「あれがこうなってこうなるのだな」ということがわかるような表現になっていればよいと思う。最初の問題認識のところでも割と大きく取り上げられていたので、大阪市の課題の中の1つの部分というところがあるのではないかと思う。
 それから、緑やペットの話が出ていたが、大阪市に生産緑地はあるのかどうかお聞きしたい。もしあるならば、何かそれを活用するような方向でやればよいのではないかと思う。「なんばパークス」の屋上の貸し菜園への応募者が非常に多く倍率が高かったということを聞いた。安心して子育てできる緑がある豊かな環境というのは、多くの人が求めていて、具体的な話としてはそのあたりに収斂していくのではないかという気がする。

 

(市)

 活力に関して、昼間人口が減ってきているということを挙げている。これは首都圏と関西圏の関係で、企業の中枢機能が東京のほうへ行っており、また、生産拠点が海外のほうへ行ってしまい、いわゆる生産の部分での雇用が減っている。いろいろなことがあって大阪都市圏が非常に苦しい状況になっている。住宅施策として行っていけるものとしては、職住近接ニーズが高まっているというところで、雇用形態・就業条件の変化を踏まえて、より高まっている職住近接ニーズに応えていくということに加えて、都市の経済・景気対策の関連からも大事であるため、都心居住を進めるということを指摘している。また、在宅就労等の増加にみられる就労形態の多様化や情報化の進展等を背景とした新たな居住ニーズに対応した施策で、職住の近接ということで、大都市ならではの魅力を生かした居住地づくりや、住宅供給にも取り組んでいかねばならないと認識している。
 それから、大阪の固有性についての表現が少ないのではないかということについて、密集市街地の整備など、懸案となっていることについては、より積極的に重点的に取り組んでいかなければならないと思っている。また、大阪の居住地としての魅力についても、魅力はあるのに、まだ十分に知られてない部分と、もっと作っていかねばならない部分とがあるが、そういった地域のそれぞれが持っている特性ということに注目した施策を進めていかねばならないと思っている。
 それから、子育て期の家族に関してであるが、この点については、都心6区(北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区)について、分譲マンション供給の活発化等を背景に、中堅層も含めて、若年層から50代前半まで、すべての幅広い年齢層で増加してきている。周辺区の方ではマンション供給が少なく、人口も減っているところがあるが、都心の方では、最近建っているマンションの影響もあり、こういった子育て層についても戻ってきている。
 今後とも子育て世帯がどういったニーズで転居されるかということについては非常に重要な課題だと思っているが、現に都心に入ってきているという事実を踏まえ、その潮流を今後さらに本格的にさせるために、さらにどんなことが必要かということで取り組まねばならないと考えている。
 それから、生産緑地については、大阪市内にも、平野区、鶴見区といった周辺区を中心にあり、これらの活用については、家庭菜園としての活用といった施策もあると聞いている。身近なところで植物に触れることができるということも住宅地の魅力として大事な要素だと思っているので、関係する部署とも十分連携を図った施策を考えていかねばならないと考えている。

 

(委員)

 先ほどから出ている大阪の特徴であるとか、モデル地区といったこととも関係があるかもしれないが、もう少し大きな打ち出しで大阪の特色が出てこなければならないのではないかと思う。京都では、市が町家再生ということで力を入れて、いろいろな組織を作り、京都の魅力の向上には非常に役に立っているのではないかと思う。
 例えば大阪であれば、水の都と呼ばれているのだから、川に面してどういう住宅をつくっていくというようなことを考えてもいいのではないか。
 これは実際にはなかなかできていなくて、以前、枚方でも大規模な住宅の造成地を見たが、淀川が本当にきれいに流れているのに、全部南向きになっており川側を向いてない。日本の住宅といえばやはり南向きのほうが売れるのかなという感じであるが、都心で大阪でやる時には、いかに水辺に向けていくかということを少し誘導的にやることを考えてもいいのではないか。ヨーロッパの都市なんかでも、川辺に向いて家が建っているところはいくらでもあると思う。そのような新しいタイプの住宅というのを水辺に誘導していくようなことが、大阪の格といったものに非常に関係してくるのではないかと思う。
 そういったことは、かなり積極的に打ち出していかなければならないのではないか。今そのような住宅が無いのでだめというようなことではなく、これからそのようなところに例えば補助金を出すとか、そのようなものに賞を与えるとか、いろいろな形でそれは誘導できるのではないか。それは、「取り組みの方向」の 1つとして入れておくべきではないかと思う。単にモデル地区でやるというようなレベルではなくて、全体としてどこに魅力を特化させていくのかということと関係が深いのではないかと思う。
 子育て期の件については、今、母と娘の密着度が非常に高くなっていることから、近居をうまく活用し、例えば、年をとった人は都心回帰も進んでいるので、郊外に出ていって子どもの面倒を見てもらうのではなく、都心に戻ってきた母親たちに子どもの面倒を見てもらうという新しいスタイルの保育の形態、確かイタリアではそのような状況があるので、新しい誘導を今までの発想を少し変えた形で考えてはどうか。そのようなことも少し考えていけば、もっと親子がお互いに戻って来ることができてよいのではないかと思う。

 

(委員)

 以前の審議会で私が「子育て層向けに都心にもう少し低層を増やしたらどうか」という発言をしたが、そういうことに非常に関連している。オランダでは、市がキャナルハウスを1,000戸か1,500戸か建設し、非常に人気があった。背中合わせの3階建ての長屋で、真ん中に駐車場がある。3階建ての低層で、三方が壁にもかかわらず、空間が高いことを利用して中が非常にリッチな空間になっている。SOHOにも使われていたと思う。キャナルハウスは、工夫すれば運河や川が見えるということで、非常におもしろい空間が多くでき、希望者も非常に多かったようである。そのようなものを大阪で積極的に導入できないか。大阪であれば川の見える長屋というのでもよいと思うが、何かそういったものが前面に出れば、非常に大阪らしい前向きさが強調されてよいのではないかと思う。
 そのような空間であれば、おそらく子育て期の家族も入りやすい。仕事をしていても、SOHOになっているので、何かいろいろなことができるというように、いろいろな考え方が出てくると思う。少しでもいいから、パーンと打ち上げて、PRしていくと、いろいろな意味で新しい人たちが集まってくるのではないかと思う。

 

(会長)

 本日は、大阪市の住宅施策の方向についてという諮問のテーマのおよその枠組みと、そのカテゴリーの組み立て方について、ご検討いただいた。
 具体的な薬味のつけ方だとか、特に強調すべき点などについてのヒントを多くいただいたので、企画委員の先生方のお知恵を拝借しながら事務局の方で次の段階に向けての作業をやっていただき、それをまた皆さんに見ていただくという形で進めさせていただきたいと考えているので、次回以降もよろしくご審議をお願いいたしたい。
 以上で本日の予定議事は全て終了したので、会議はこれで閉会する。

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