生きた建築ミュージアム・大阪セレクション　淀屋橋竹村ビル

2025年4月3日

ページ番号：648264

選定

令和5（2023）年　選定

撮影｜西岡　潔

［解説］

斜向いに建つ「大阪倶楽部」（1924年）を意識しながら、設計者・高松伸の力量が発揮されたオフィスビル。1～3階はコーナー部分をピロティ状にし、角地にあることを強調している。どっしり構えたその上部で、4・5階が最も複雑で意味ありげな様相を呈し、6・7階も左右対称形を基本としながら独立性の高い造形であって、斜線制限という外的条件でセットバックしている事実を感じさせない。機能性に根拠を持たないけれど美しく、黒御影石や金属を駆使して工芸性と機械的な印象を共に持ち、艶という単語さえも脳裏をよぎる。前年に道頓堀に完成した「キリンプラザ大阪」は日本建築学会賞（作品）を受賞するなど高く評価されたが今はなく、設計事務所を構えた京都でも1980年代の代表作が消えつつある。建築に魅力的な存在感を与える設計者の個性が刻まれた作品として貴重だ。（倉方俊輔）

※解説文は2023年度の選定当初の内容です。