認知症について
2025年3月4日
ページ番号:113559

認知症とは
認知症とは、さまざまな原因で脳に変化がおこり、これまでできていた生活に支障が生じている状態を言います。
「認知症」の原因となる病気はいろいろあり、病気によって現れやすい症状は異なります。
また、認知症とよく似た症状を来す体の病気や状態があるので、気になるときは是非早期に相談しましょう。

認知症の原因となる病気
認知症の原因となる病気は、脳の神経細胞が変化する神経変性疾患と、脳の血管に関する血管障がいが主になりますが、感染症によるものや、アルコールによるものなどがあります。
【それぞれの病名と主な特徴】
■神経変性疾患
・アルツハイマー型認知症:大脳皮質と海馬の萎縮、アミロイドβ蛋白の蓄積、記憶障がい、見当識障がい
・レビー小体型認知症:レビー小体の蓄積、パーキンソン症状、幻視や錯視
・前頭側頭型認知症:前頭葉と側頭葉の萎縮、時刻表的行動、脱抑制、言語障がい
■血管障がい
・血管性認知症:脳梗塞や脳出血、感情失禁、アパシー

認知症の症状

認知機能障がいについて
脳におこった病気そのものによって直接みられる、記憶、理解、判断力などの低下や言語障がいなどの症状を認知機能障がいと言います。
■もの忘れ/記憶障がい
アルツハイマー型認知症では、初期から目立つことが多いです。
加齢とともに気づかれる記憶力の低下と異なるのは、認知症の人のもの忘れでは、日々の時間の中で体験した「ある出来事」がスッポリ抜けることが特徴です。
昔のことはよく覚えていても、先ほどの話のような最近の出来事を記憶しづらくなります。
■失見当識/見当識障がい
多くは、時間、場所、人の順で、徐々に基本的な状況がわかりにくくなります。
時間:時間や季節の感覚があいまいになります。
場所:自分がいまどこにいるのかわかりにくくなります。
人物:周囲の人との関係がわからなくなります。
■実行(遂行)機能について
目的に向かって計画をたてて実行して、さらに繰り返しながら物事を進めて行くことを遂行(実行)機能と言います。
段取りよく物事を進めがたくなっても、個々の動作は保持されていることがあります。例えば、家事動作などでも、周囲が次の段取りを声かけすることで、実行可能なことがあります。
■理解・判断力について
比較的早期から、徐々に考えるスピードが遅くなり、複雑なこと、予期しないことへの対応が苦手になります。

行動・心理症状(BPSD)について
認知症の人に現れる症状のうち、不眠、焦燥感などの行動や心理状態に関するものを言い、周囲の環境などの影響を受けていること、本人が困っている状況の場合が多く、「認知症の人のSOS」とも言われています。
なぜそのような症状が現れているのか、原因を探り、対応を考えること、またそのような症状ができるだけ出現しないように検討することが必要です。
(例)
・認知症の初期には、多くの人が、「覚えられない、上手くしゃべれない」などの変化に戸惑い、今後に不安を抱きます。うつを伴うこともあります。
・うまく生活できなくなってきた自分自身にいらだつことがあります。
・レビー小体型認知症では、「こどもが何人来ている」などありありとした幻視が見られることがあります。
・アルツハイマー型認知症では、もの盗られ妄想が有名です。

早期発見と早期受診
認知症の早期発見、早期受診・診断、早期対応はとても重要です。
進行予防の薬がある病気もあり、「認知症はどうせ治らない」とあきらめず、気づいたときに行動することで、その後の生活の質が大きく変わります。そのことは認知症を患う方だけでなく、本人をとりまく周囲にも影響していきます。
受診はまずかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医につないでもらいましょう。かかりつけ医のない人は、認知症の相談窓口等に相談しましょう。
診断の際には画像検査、血液検査、問診、心理検査などを行い、原因となる病気を見つけていきます。問診時には、医師に既往歴、今飲んでいるお薬、今の症状、生活の上で困っていることなどを簡潔に伝えられるとスムーズです。

認知症のような症状が出る病気と治療
認知症のような症状の中には治療できるものや一時的な症状の場合があります。しかし治療が遅れることで回復が見込めなくなったり、後遺症が残ることもあります。どのような病気があるかを知り、「あれ?」とまず気づくことが早期発見につながります。
■脳外科的処置
・正常圧水頭症 ・慢性硬膜下血腫 ・脳腫瘍
■内科的処置
・甲状腺ホルモン異常 ・うつ病 ・栄養障がい
■投薬調整
・自己判断での服薬 ・ポリファーマシー

若年性認知症
65歳未満で発症した認知症のことを「若年性認知症」といいます。
働き盛りや家庭での大きな役割を担う世代の人に発症し、社会生活・家庭生活・就労・経済面への影響が大きく、高齢者の認知症と比べ、社会的な認知度もまだまだ低く、本人や周囲の病気の受け入れの困難さ、社会資源の不足、ダブルケアやヤングケアラーなど、多様な支援が必要とされています。就労中の診断であるかどうかが制度利用に影響することもあり、早期発見、早期対応が重要です。
大阪市では身近な相談窓口として各区一か所に配置した認知症地域支援推進員が大阪市若年性認知症支援コーディネーターと連携し、若年性認知症に関する相談支援を行っています。

認知症とともに
認知症とともに生きていくには、適切なサポートを過不足なく受けられることが大切です。医療は検査や投薬などにより、病気を見定め、進行を遅らせたり、行動・心理症状を和らげることや、他の疾患の発症・進行予防などが期待できます。
非薬物療法とも呼ばれるケアは、生活上のできにくくなった部分をケアで補うことや、運動・他者との交流・音楽・作業など適切な脳刺激によって進行を遅らせたり、症状を和らげることが期待できます。

認知症の経過
認知症の進行とともに、認知機能が低下していきますが、進行の仕方は原因となる病気や人によって違います。認知機能障がいがあるけれど日常生活には影響がない、認知症と診断される一歩手前の状態をMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障がい)といい、症状進行により認知症に移行しますが、適切な予防をすることで、健常な状態に戻る可能性があります。
認知症を発症してから、なだらかに進行する人もいれば、階段状に進行する人もいます。経過は個人差が大きく、進行の早さもさまざまです。重度になると多くは身体機能や嚥下機能にも影響が出てきます。
令和6年より認可されたアルツハイマー病の新しい治療薬は、アルツハイマー病の原因に働きかけて病気の進行自体を抑制する薬です。MCIまたは経度の認知症の人が治療対象のため、早期受診が大切となります。ただし治療薬はあくまで選択肢の一つであり、治療対象とならない場合でも様々な対応があります。

予防の考え方
これをすれば「認知症にならない」という予防法はありません。ライフスタイルの改善により、認知症発症リスクを減らすことは可能です。また、認知症になってからも、進行をゆるやかにすることが期待できます。

脳を活性化する ~脳を活性化して生活能力を維持・向上させるリハビリテーションの原則~
■快刺激であること
■コミュニケーション
・一人で取り組むような活動ではなく、仲間や支援者と楽しく交流しながら行う活動が望まれる。
■役割と生きがい
・受動的になされるがままの活動ではなく、役割を担う活動が望まれる。
■正しい方法の繰り返し
・認知症では誤りが記憶に残りやすい。ミスを誘発しないようにサポートし、正しい方法を繰り返すことで、その能力を身につけるというアプローチが基本である(満点主義)。
⇒例えば、料理や園芸、回想などが有効です。
(出典 山口晴保:認知症のリハビリテーションとケア.In:日本認知症学会編.認知症テキストブック.1版。東京:中外医学社:2008 p182)

認知症の人への対応

基本の考え方
認知症の人には、認知症への正しい理解にもとづく対応が必要になります。
記憶力や判断力の衰えから、社会的なルールに反する行為などのトラブルが生じた場合には、家族と連絡をとり、相手の尊厳を守りながら、事情を把握して冷静な対応策を探ります。日常的にさりげない言葉がけを心がけることは、いざというときの的確な対応に役立つでしょう。

具体的なポイント
■まずは見守る
じろじろ見たり、あからさまな特別扱いは相手を怖がらせたり、疎外感につながります。
そっと見守ることから始めましょう。
■余裕をもって対応する
関わり始めるときは、まずは自分が落ち着きましょう。焦りは禁物です。
相手は急かされるとかえって動揺してしまいます。
■声をかけるときは一人で
複数で取り囲むと恐怖心をあおりやすいので、できるだけ一人で声をかけましょう。
■後ろから声をかけない
本人の視野に入ったところから「どうされましたか?」など、様子をうかがいながら声をかけましょう。
■本人と目線をあわせて
話し始める時は、本人と目線を合わせ、注意を向けてもらってから話し始めましょう。
■おだやかにはっきりと
早口、大声、甲高い声は聞き取りにくくなってしまいます。できるだけひとつずつ、ゆっくり、はっきりと話しましょう。
■本人の言葉に耳を傾けて
症状によって現実に沿わない言葉やうまく言葉にならないこともありますが、まずよく聴き、否定や先回り、修正などをせず、相手の言葉や意図を確認していきましょう。

対応の工夫
行動・心理症状の中には、周囲の関わり方や工夫で発現を予防することや、回数を減らすなど改善が見込まれるものがあります。
■不安・うつ
初期には多くの人が変わっていく自分に、今後どうなるのだろうと不安になります。また、認知症にうつを伴うこともあります。不安をやわらげたり、今できていることを見つけて応援しましょう。
■いらいら・興奮
今までできていたことがうまくいかず、自分自身にいらだつこともあります。
精神状態や体調が悪いとき、感情のコントロールがうまくいかず、興奮してしまうことがあります。
本人の言葉だけでなく、表情や視線、行動の変化などにも目を向けて関わり方を考えてみましょう。
■妄想・幻想
アルツハイマー型認知症では、もの盗られ妄想が有名です。もの盗られ妄想は、もの忘れに不安や「自分はもの忘れなどしない」という意識などが加わっておこります。
まずは傾聴し不安をやわらげ、一緒に探して本人に見つけてもらうなど工夫が大切です。
■歩き回る・道に迷う
一人で出かけて道に迷ってしまうことや、歩き回ってしまうことがあります。
道に迷ったときに人に聞きやすいように、名前や住所のわかるものを持つなど、準備をしておくことも大切です。

本人の声に耳を傾けて
認知症になっても「認知症の人」になるわけではありません。
さまざまな人がさまざまな認知症の「いま」を生きています。
本人の声に耳を傾けてみてください。

診断後の本人の気持ち
認知症と診断を受けても急に何かが変わるわけではありません。
それでもショックを受けて落ち込んだり、一人で抱え込んだり、頭が真っ白になったり、これからどうなるかと不安な日々を過ごす人がいます。
そんな時に必要なことは何か、本人の立場になって考えてみましょう。

認知症の人とともに生きる家族
身近な人が認知症だと知った時、様々な感情や状況が家族を襲います。家族介護者が認知症を理解し、あるがままを受け止められるようになるまでには次のような段階があるとされていますが、実際にはこのステップを行ったり来たりしながら進んでいきます。

介護者のたどる4つの心理的ステップ
身近な人の言動の変化に気づいた時、介護者はとまどい、認知症を疑いながら「そんなはずはない」と認知症であることを否定しようとします。
■第2ステップ 混乱・怒り・拒絶
さまざまな認知症の症状への対応に混乱し、介護がうまくいかないことにいら立つことや、本人に対して腹を立てて責めたり、拒絶したりします。
心身ともに疲れ、先の見えない介護に不安や絶望感に襲われます。
※この時期に大切な事
・認知症の正しい知識 ・さまざまな専門職とのつながり ・当事者との出会い
・サービスの利用 ・身近な相談相手
■第3ステップ 割り切り
サービスをうまく利用したり、仲間と出会いさまざまな気づきを得ることなどで心身ともにゆとりが生まれてきます。なるようにしかならないと割り切ることができるようになります。
■第4ステップ 受容
認知症の人への理解が深まり、本人や介護者自身のありのままを受け入られるようになります。
(※認知症の人と家族の会ホームページ「介護者のたどる4つの心理的ステップ」を元に作成)

集いの場
地域には介護家族者会や当事者会など、認知症の人や家族が集い、語り合ったり、お茶を飲んでほっとできる集いの場があります。また、認知症について誰でも気軽に話し合える場として、認知症カフェがさまざまな場で開催されています。
一人で悩むより同じ立場の人と話すことは、不安をやわらげ、つらい時期をのりこえる助けになります。

認知症を学び みんなで考えましょう
大阪市では、認知症に関する市民の正しい理解を深めるため、啓発活動を推進しております。
大阪市ホームページ「認知症サポーター」に大阪市認知症サポーター養成講座テキスト「認知症を学び みんなで考えましょう」を掲載していますので、ご確認ください。
探している情報が見つからない

このページの作成者・問合せ先
大阪市 福祉局高齢者施策部地域包括ケア推進課認知症施策グループ
住所:〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所2階)
電話:06-6208-8051
ファックス:06-6202-6964