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優秀賞「地域で暮らす」

2023年4月1日

ページ番号:516578

受賞者

南出 智行 様

概要

 地域で元気に暮らしていたMさんは、骨折により入院し、認知症も出始めたことから、退院と同時に、私が勤めている事業所の利用を始められました。事業所のみならず、地域の人の支えで元気になっていくMさん。地域で暮らすとは何か。そこにはなじみの人・こと・モノが必要であり、それがあれば年をとっても、認知症になっても、地域で暮らし続けることができる。それを教えてくれたMさんの物語です。

エピソードを通じて伝えたい「福祉・介護の仕事」の魅力

 一人の人の最期のときを一緒に過ごす。そこには人とのつながりがある。笑顔がある。悲しみもある。それら全てを学ばせてくれる、かかわりがある仕事だと思います。

本文

 「地域で暮らす」って何だろう?この問いに悩んでいた私に1つの答えを教えてくれた。そんな私の大好きなMさんの話をします。
 Mさんは嫁いでこの地(住吉)に来られました。しかし子どもがまだ幼い時に頼りにしていた夫を亡くし、以後は女手一つで子どもたちを育ててこられました。55歳でヘルパーの仕事を始め、その際に字の読み書きができないことに困り、識字の勉強会に参加。また地域で行っている民謡会に参加し、その仲間と自宅で集まっておしゃべりすることが日課となっていました。そんなMさんも90歳を過ぎて圧迫骨折で入院。一度退院するも再度入院。長期の入院のため認知症の症状も出始めていました。退院と同時に、Mさんは私が現在勤めている、小規模多機能型居宅介護(以下小規模)の利用が始まりました。
 退院直後は歩行器にて自宅内を歩かれるも利用開始直後に転倒。以後は歩行困難な状況が続きました。小規模は週7日の毎日通い、内4日を宿泊、他の3日間は自宅に帰られます。家に帰った次の日は8時半に小規模から訪問。訪問した際は転倒していることもあれば、きっちり準備万端なときもありました。また、私たちが訪問するより先に近隣に住んでいる民謡の仲間たち(Aさん・Bさん)が覗いてお世話をしてくれていました。その他定期受診の際には診察の順番を取るのもAさんがしてくれていました。
 大好きな民謡の練習は歩くことはできないが車椅子で参加しました。練習のある金曜日は毎週仲間が小規模まで迎えにきてくれていました。「うちよう踊らんで~」と言うMさんに「踊らんでも居ってくれたらええから」と力強く返すお仲間たち・・・(笑)
 そして昔と同じように練習が終われば毎回Mさんの家でお茶会です。地域の老人会役員会議にも小規模の職員と一緒に参加しました。元気な頃は歩行器を押して参加されていましたが、車椅子でも参加してくれるMさんを見て、役員の方々も喜んでおられました。
 民謡や識字の勉強会、老人会の役員会議に参加することはMさんにとって“ふつう”のことです。しかしその“ふつう”のことが車椅子生活や認知症になると難しくなることも現実としてあります。
 ある日のこと、近隣のBさんが小規模に向かうMさんに対して「また明後日帰っておいでや」(小規模に2日間泊まり)と声をかけてくれました。そんな何気ない言葉を聞いて、Mさんは独居だけど地域に一人で暮らしている訳ではない・・・と強く感じました。年をとっても介護が必要になっても認知症になっても、Mさんの周りには10年前と変わらない日常がありました。
 Mさんもどんどん元気になって歩こうとする意欲も湧き、筋力も回復してきました。
 入院する前までは毎日家で晩酌(ビール)されていたそうで、また前みたいにビールを飲みたいか聞いたことがあります。「飲みたいけど怖い・・・」と仰っていました。
 数日後の小規模に泊まっていたある日、看護師が一緒にビールを飲もうとMさんを誘いました。しばらく飲んでいなかった為不安そうにするMさん、「今日はここ(小規模)で泊まるから大丈夫やで!」と声をかけると、安心されたのかビールが入ったグラスに口をつけ、その後は満面の笑みが一緒に飲んだと話を聞きました。
 昔から誰にでも面倒見のいいMさん。世話好きだったMさんはいつしかお世話されることが多くなりましたが、いつもMさんの周りには人が居て、そこには常に笑顔がありました。
 Mさんの暮らしを通して、「地域で暮らす」とは、なじみの人・こと・モノが周りにあるということだと教えてもらいました。そして、本人の望む暮らしや、なじみ関係性があって、必要な介護がみえてくるということも。
 そんなMさんも、自宅で三度目の骨折があり、地域の特養に入所されました。入所されてもMさんの仲間たちは変わらず会いに行ってくれました。「自宅でなくても地域で暮らし続けられる・・・」またまたMさんから教えてもらいました。
 Mさんはその後体調不良もあり、先日お亡くなりになられました。
 Mさんが教えてくれたことは私の中で、仕事の価値観を大きく変えるきっかけとなりました。
 私たちに求められていることは介護をすることだけではありません。地域で暮らすために、なじみ人・こと・モノとの関係を継続することができるようアプローチすることが求められる・・・それを教えてくれたMさんに心から感謝です!

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