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優秀賞「卒業式」

2023年4月1日

ページ番号:516591

受賞者

磯貝 健大 様

エピソード

 「お母さん、桜が咲き始めたよ。」A様とその娘様は、本当に仲が良いご家族です。
 これは、特別養護老人ホームで働く私が、1年が過ぎた頃に、これからの仕事への不安を吹き飛ばし、仕事のやりがい、介護の魅力を感じたエピソードです。
 私の担当している70代の女性A様は、よく笑顔を見せられるお元気な方ですが、認知症が進み、スタッフや他利用者とはほとんどお話しすることはできません。また、施設での介助にも拒否が見られることがあります。A様は、働き者でホテルの配膳の仕事など、60歳頃までお元気に働かれていました。もともとの性格は恥ずかしがり屋で、当時からあまり話好きではありませんでしたが、子どものことを第一に考える優しい方でした。70代になってからは、徐々に認知症が現れ、外出すると家に帰ってこられないことが何度も続きました。それでも、娘様はA様のお世話を続けておられましたが、子育ても重なり、親子関係がぎごちなくなってきた頃、施設に入所されることになりました。
 娘様は、毎日のように母親のA様に面会に来られていました。娘様が来られるとA様はパッと明るい笑顔で会話を楽しまれ、幸せそうなご表情になります。私たちは、出来る限り穏やかに施設で過ごしていただくために、チームで話し合いながら支援をさせていただきました。支援が上手くいかないことがあれば、外部の認知症ケアアドバイザーから、いろいろな助言を受け、介助の際の声の掛け方を工夫しました。娘様に過去の生活歴を聴かせていただき、それをヒントにすることで、A様の介助に対する抵抗感を和らげることができました。このような関わりにより、スタッフと娘様との信頼関係も深まっていきました。その一方で、これが本当にA様の気持ちに寄り添えているのか不安でもありました。
 ある日、いつものように娘様とA様は一緒にボール投げをするなどして過ごされていました。私は、離れたところからお二人の様子を見ていると、娘様と目が合いました。すると娘様が私のほうに近づいて来られ、目を潤ませながら、「いつも母を見守っていただき、ありがとうございます。」「私の娘の小学校の卒業式は母の介護があり、出席できなかったのですが、先日の中学校の卒業式には出席することができました。皆様のおかげです。本当にありがとうございます。」と涙ながらに話されました。「母にも娘の卒業式に参加してほしかった」とも話されていました。A様が施設に入所されてから、笑顔で会話されるくらい親子関係は良くなっていました。施設を利用されたことで、娘様の心に余裕ができたからではないかと思います。娘様から突然、感謝の言葉をいただき、私は胸が熱くなりました。この仕事をしていてよかったと感じ、私たちスタッフが、少しでもご家族様の想いに寄り添うことを目指した取り組みを、信頼してくださったからなのだと思いました。
 しかし、お孫様の卒業式にA様も参加する方法もあったのではないか、とも考えさせられました。他のスタッフを含めたチームでA様やご家族の想いに寄り添い、本当の想いを伺い、共感し、様々な支援の方法を考えることができたのではないかということです。
 今回のように、私たち介護職員は入所者様やそのご家族様から思いがけない嬉しい言葉をかけていただくなど、些細な出来事に大きな喜びを感じられる仕事です。これは他の仕事では経験しがたい、やりがいのある仕事であると実感しています。

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