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特別賞(障がい支援部門)「『いやや』という返事のなかに」

2023年4月1日

ページ番号:516593

受賞者

二宮 直也 様

エピソード

 障がい者支援施設で6年目となった今、徐々に後輩が増え、先輩としてサポートする場面も多くなりました。そんな中で、私が働き始めて最初に担当をした利用者のYさんがずっと心に残っています。
 Yさんは80代の男性で両手足の拘縮が進み、ご自分の力で身体を動かすことが困難でした。また、歯がないため言葉の発音が聞き取りにくく、はっきりと分かるのは「うん」と「いやや」という言葉だけでした。
 日中、食事以外ほとんどの時間はベットで過ごしていました。意欲が乏しく、何をするにしても「いやや」と返事が返ってきました。そんなYさんが一番楽しみにしていたのは、ガイドヘルパーを利用しての外出でした。何より、電車に乗って遠出するのが好きでした。しかし、Yさんの体力は年々落ちてきており、外出することも難しくなっていました。
 また、Yさんは特に好き嫌いが多く、食事を飲み込む力も弱くなっていました。そのため、他のスタッフから情報をもらい、色々な食べ物を用意して食べられるように工夫したり、他にも出来ることはないか考えていました。私自身、出掛けたときにはYさんが少しでも美味しく食べられるものは無いかと、探すことが無意識のうちに習慣になっていました。
 Yさんは特にパンが好きなため、出勤するたびにパンを買っていくのが日課でした。パンの他にも安納芋や果物も好きでした。そのため、好きな食べ物を用意しては、Yさんが食べられるようにとろみ剤を付けたりと工夫していました。
 中でも印象的だったのは、好みに合ったパンや果物を持って行くと、いつもの「いやや」ではなく「うまい」という言葉が返ってくることでした。
 最初の頃は、Yさんの言葉を聞き取れないことがあり、ご本人の感情を理解できませんでした。しかし、時間をかけて関わっていく中で「いやや」の単語一つでYさんの表情や口調にはいろんな意味があることを知り、ご本人の伝えたい想いが少しずつ理解できるようになりました。
 Yさんがお亡くなりになり3年半経った今思うことは、ただ目の前の人が話す「声」だけに耳を傾けるのではなく、それぞれの障がい特性や生活習慣などを理解して、その人に合ったコミュニケーションを行う大切さです。一人ひとりに気持ちの表し方があり、その違いやコミュニケーションを楽しむことが何よりの関わりだと思います。Yさんのことが私の心にずっと残っているのは、自分にとって関わりの原点をくれた方だからだと思います。
 今でも日々勉強の毎日ですが、Yさんから学んだことを胸にこれからも頑張っていきたいと思います。

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