特別賞(高齢者支援部門)「幸せをもう一度」
2024年9月5日
ページ番号:516601
受賞者
エピソード
私は大阪市内の小規模多機能型居宅介護で働いております。
この業界に入ったきっかけは、食べることが好きで、高齢者の方においしい幸せを感じてもらいたい。おいしい幸せを実感して、少しでも長生きして欲しいと思い入りました。まだ一年未満ですが、今感じたことをお話しします。
舌癌で舌を3分の2切除した90歳の女性本木さん(仮名)は治療後自宅で転倒し、一人で暮らしていたため動けずに丸一日苦しんでいるところを家族の方に発見されました。ひとり暮らしでの生活を不安に感じた家族は、介護施設に入る事を勧められました。本木さんは拒み続けました。しかしながら、家族の説得で渋々当施設を利用することになりました。毎日帰りたい、一人で大丈夫だという気持ちでの通いの日々が続きました。
食事は舌癌の影響から、普通の食事が摂れません。施設でミキサー食を提供してもらっていましたが、ほとんど手をつけることなく、次第に栄養ドリンクやゼリーで栄養補給をする形になりました。
休日には一人で買い物に行き、食べたいものを買うのですが、食べることが出来ず、何日間も冷蔵庫に入ったままの状態になりました。栄養ドリンクなどの食べたくないものが目の前に並び、自然と笑顔も体重も減って行く毎日でした。
そんな本木さんの笑顔になる瞬間を見たい、食べたい気持ちを叶えてあげたい、美味しい幸せをもう一度感じさせてあげたいという思いとは裏腹に、叶えてあげることが出来ない日々を送っていました。
ある日、友人とレストランに行き、運ばれてきた料理の盛り付けを見て、すごくワクワクしました。本木さんの食事にもこのワクワク感だ!と思ったのです。食事という字は「人に良い事」と書く言葉を信条にしていた私は一気にスイッチが入りました。
洋食のソースデコレーションや盛り付け、カフェのラテアートを参考に出来ないものかと、家で何度も試作し、本木さんを喜ばせてあげる手段を自分なりに考えた結果、女性が喜ぶ感動する見た目と、味は薬品や添加物の使用を感じさせない、レストラン同様に味わう料理に近づけ、健康で元気な人に提供する料理のミキサー食化を実現してみました。
そして、施設の先輩に「もう一度本木さんにミキサー食を提供してあげたいのですが」と相談し、本木さんに食事を提供すると、殆ど発語しない本木さんが、「わぁ、美味しそう!」と言ったのです。声を聞いたことが無かった私はそれだけでも驚きましたが、なんと、全量まではいきませんが私が作ったミキサー食を食べてくれました。それにはスタッフも驚いたようで、その瞬間を見て私は、本木さんに幸せを感じていただく事が出来たというより、自分が感動させられました。
それからは、施設利用で来られる日は可能な限り食べられる食事を作ることにしました。施設の先輩が本木さんの家に訪問した際ご家族の方から、「母が食事を楽しみにしています」と言う言葉をいただきました。
私はとてもうれしく、もっとおいしく、もっと楽しくなる食事を目指しました。
本木さんが百貨店の惣菜コーナーから食べたいものをいくつか買ってきて、それを私がそれぞれの惣菜を食べることが出来るように加工するなど、本木さんの食べる幸せをサポートすることが私の今の幸せです。
これからはもっと沢山の利用者様と出会い、食べない人が食べるようになり、おいしく食べる幸せな時間をサポート出来るように頑張り、私自身「成功者」ではなく「成幸者」に成りたいと思います。
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