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優秀賞「「0.1歩のあなたで良いんだよ」 ~リバーシブルな関係性を通じて~」

2021年10月27日

ページ番号:545665

受賞者

久保 一弥 様

概要

 現在は19歳の自閉症の男の子のお話です。彼は地域の小学校に通っていましたが、あることがきっかけで小学校4年から高校3年まで(中高は支援学校)不登校になってしまいます。不登校だった期間は1度も校門をくぐることはなく、もちろん先生とのコミュニケーションも全くなくなってしまいました。彼の日課は毎朝、校門の前を走って通り過ぎること、それが彼にとっての出席でした。そんな彼が私たちの事業所にやって来てくれます。最初は中に入るところからのスタート、、それが5分、10分、20分、30分、そして1時間も過ごせるように。コミュニケーションも反応が全くないところからのスタート、、それが「首を横に振ってくれた」、「うなずいた」、「いたずらしてくれた」、「ニヤリと笑ってくれた」、「指さししてくれた」、「オセロのコマ動かした」などの色んな発信も!!まだまだ試行錯誤しながらですが、彼との時間を楽しんで一緒に成長していきます。(現在が利用して1年と3か月)

エピソードを通じて伝えたい「福祉・介護の仕事」の魅力

 彼と出会ったことで当たり前(事業所に通ってきてることなど)ということの重みを気づかされました。そこに気づくことができたのは福祉の場だからこそで、様々な関りや丁寧な関りが関りや丁寧な関りができたんだと思います。また、彼の0.1歩ずつの変化から、僕自身もたくさんの刺激を受けて成長できました。お互いが共に成長していくことのできるこの「リバーシブルな関係性」も福祉の魅力の1つだと感じています。

本文

 19歳の自閉症の男の子のお話です。彼は5人家族の長男で、にぎやかな妹に囲まれて過ごしています。彼は小学校の時に地域の学校に通っていました。担任の先生との関係も良好で良いスタートを切れたと思った矢先…。2年生になったタイミングで担任の先生が変わってしまい、人との関りがあまり得意ではない彼にとって大きな変化でした。担任の先生の障がい理解への考えとズレなどがあったこともあって関係もうまくいかず、学校に対して徐々にネガティブな気持ちを抱くようになります。それでもがんばって通っていましたが、小学4年の時から学校に通うことができなくなり、いわゆる不登校というものが始まります。中学・高校は支援学校に入学します。しかし、小学4年から高校卒業まで不登校は続きました。一度も校門をくぐることもなく、先生と何かしらのコミュニケーションも全くとることはありませんでした。ただ、その不登校の期間中、毎朝晴れの日も雨の日も校門の前を走って通りすぎることは続けていました。そんな彼も高校を卒業し、私たちの事業所にやってくることになりました。
 利用前は「事業所に入れるだろうか?」、「まず来てもらえるのかな?」、「訪問という形も考えなければ」などの声がスタッフ間では出ていました。しかし、スタッフが心配する必要もなく、事業所の中へすんなりと入ってこられました。ただ、なんで入ることができたのかは今でもわかっていません(笑)。まず通所の形としては「週2回」、「10:30に来所」、「お母さんと一緒に」ということに決めました。どんなプログラムで過ごしてもらえばいいのかなどは手探りの状態でスタートしました。
 誰も使用していない部屋で彼とお母さんとスタッフ1人の計3人で過ごすことになりました。最初は彼が興味のある阪神タイガースの話題や好きな食べ物は?といった話題をスタッフが本人に話しかけていました。もちろん反応はなく、これでいいのかなぁ~とスタッフも戸惑いつつ関わっていました。時間も5分くらいで帰っていかれることが続いていました。まず取り組んだこととしては「連絡帳でのやり取り」でした。彼は言語理解のレベルも高く、読み書きも不自由なくできます。毎回、その日に話した話題に加えて、「今日も来てくれてありがとう」と書いていました。それだけでなく、彼への質問なども書いて次回の来所時に返事を持ってきてもらう取り組みをしてみました。これでコミュニケーションが取れたら良いなと思い次回の来所を楽しみにしていると返事が書かれていて、本当にうれしかったです!ここから連絡帳のやり取りは今でもずっと続けています。時間も10分、15分、20分と少しづつ伸びてきました。
 他には大きく2つの取り組みを始めてみました。1つ目が今までは彼にばかり話しかけていたのを、お母さんも巻き込む形をとるようにしました。具体的にはスタッフとお母さんがオセロ、トランプ、ジェンガ、絵しりとりなど様々なゲームで遊び、それを彼には横で見てもらいました。効果は絶大で、ゲームの流れの中で彼の表情が緩む場面が日に日に増えていきました。それだけではなく、オセロのコマを彼が動かしたり、トランプで彼にアドバイスを求めるとうなずきで返しくれたりと彼の発信の幅が広がってました。
 次に同じ阪神ファンである1人の全盲の利用者を彼に紹介してみました。いきなり直接ではなく、全盲の利用者さんのプロフィールをまとめた紙を渡して読んでもらったり、利用者さんからの質問を事前に聞き取って起きスタッフが間接的に伝えるところから始めました。会ってはいないけどその利用者さんのことは徐々に認識してくれているようでした。しばらくそんな関りをした後、その全盲の利用者さんからの動画メッセージをスタッフを介して見てもらうことになりました。なにを撮ろうか迷ったのですが、なんとモノマネ動画を撮ることに!(笑)後日撮った動画を彼に見てもらうと、なんと「ニヤリ」と表情が緩んだのです!この時も本当にうれしかったです。この取り組みもずっと続けていて、間接的ではあるんですが他の利用者と関わることもできるようになりました。ゆくゆくは同じ部屋で一緒にコミュニケーションがとれたりするのかな~と想像したりもしています。この取り組みは彼だけでなく、全盲の利用者さんにも良い影響がたくさん出ています。モノマネの内容などを自分で考え、動画越しではありますが彼に見てもらい、スタッフ伝いで反応をきくことで自信を持てるようになりました。彼と全盲の利用者さんがお互いに相乗効果で成長しているんだなと見ていて感じています。他にもスタッフが拙いマジックを披露して表情や体の動きでの発信を引き出すような取り組みもしています。
 様々な取り組みをしてきて、今では1時間も過ごせるようになり、週2日から週3日に日数も増えています。
 利用者さんにもよりますが同じ部屋に少しの間他の利用者がいる状態でも、過ごせるようにもなってきています。

*大事にしていること
・彼が事業所に来てくれることって当たり前じゃなく、彼なりに壁を乗り越えようとしてくれているんだと思います。それって彼だけ でなく、他の利用者さんにも通ずるものだと気づかせてもらいました。みんなも今していることは当たり前ではなく、めちゃめちゃがんばっている!
・彼にとっては事業所に通うということはとてもがんばっている状態だと思います。そんな彼に対して「なにかしてもらおう」「なにかできるようになってもらおう」と無理にがんばらそうと次のステップへ進もうとするのではなく、今がんばっているという気持ちに寄り添うことが大事。そんな風に丁寧に関わることでまずは関係性という土台を固めていく!
・ただ待つばかりでなくて色々な仕掛け(負荷)も必要かなと考えています。意識していることは彼にとってしんどくならない程度の仕掛け(負荷)という部分です。具体的には、ゲームの取り組みや全盲の利用者さんとの関りなど。
・最も意識していることは「0.1歩ずつ」です。スモールステップと言われますがそれよりももっと小さい0.1歩です!このまとめではたくさんの変化があるように思いますが、実際は毎日ほんの少しの変化だけです。ただ、そのほんの少しの変化=0.1歩を積み重ねたことで今こうした大きな変化につながってきていると実際に経験してみてわかりました。

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