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特別賞「猫と共に」

2024年9月5日

ページ番号:545671

受賞者

小山 多佳子 様

概要

 猫と一緒に暮らすAさん。ずっと一緒に長い間暮らしてきたけどAさんが病気になり、ずっと入院しなくてはいけない状況になりました。Aさんは、猫と一緒に、最期まで家で暮らしたいと思っています。認知症があり独り暮らしのAさんの安全を考えると入院した方がいいと後見人さんは考えています。話し合いをする事になりました。Aさんが安全に、猫と最期まで暮らしていく為には、どうすればいいかを考えました。考えていく中で、いろいろな方から意見やアドバイスを頂いて、話し合いの中で提案をしていきました。

エピソードを通じて伝えたい「福祉・介護の仕事」の魅力

 その人が大切にしている事や、存在を守っていったり、実現していく為に、一緒に人の人生を考えていく事、それが実現できた時の喜びは、自分の事ではなくても、自分の事のように嬉しいです。また、支援する人の人生を通じて、自分の人生を考えるきっかけになる事もあります。

本文

 私は小規模多機能型居宅介護の介護支援専門員です。Aさんが、小規模多機能型居宅介護へ紹介されたのは、飼い猫のBちゃんと一緒に暮らしていく事を続けたいからでした。ヘルパーさんのお手伝いを受けながら、デイサービスに行っていました。Aさんの入院をきっかけに、施設入所も考えられたそうですが、Bちゃんと一緒に暮らしていくために、訪問、通い、宿泊と柔軟な対応ができるという事で紹介を受けました。
 Bちゃんとは、付き合いが長いようで、介護サービスが開始した10年以上前から一緒にいたそうです。Aさんはその時から認知症が出ていたようですが、一人と一匹の女同士で、穏やかに過ごされてきました。Aさんの希望で、1日ご自宅で過ごす日を週2回設けて、その日は数回訪問して、AさんのケアとBちゃんのケアも行いました。宿泊は、Aさんは希望されませんでした。
 利用開始時は、Bちゃんは元気でやんちゃでした。部屋のロフトによく上っていました。そして利用されてから年月が経つにつれ、だんだんと動きが鈍くなってきていきました。ある日、フラフラで歩けなくなりました。Aさんの希望で一緒に動物病院へ行くと、原因は老化による神経痛でした。Bちゃんも高齢猫だという事がわかりました。年金暮らしで使える費用が限られることもあり、治療にお金は使えないという事になりました。後見人さんとも話し合いをして、Bちゃんのエサに少しお金をかけていく事になりました。Aさんが通い(デイサービス)に行く日は、Bちゃんは留守番をしていました。Aさんの希望で、1日ご自宅で過ごす日を作り、その日は数回訪問して、AさんのケアとBちゃんのケアも行いました。いろいろな事がありながら、高齢者と高齢猫の暮らしは続いていきました。高齢猫のケアがわからないので、研修に講師で来られていた人と猫の共生を支援されているねこんさるさんが、アドバイスをして下さることになり、不安な時には相談をしていきました。
 ある時は、Aさんが転倒していて、おでこを打って倒れていました。念のために病院へ行くと、頭部内出血が少しあり、念のために入院をするように言われましたが、Aさんは家に猫がいるからと入院はできないと言いました。先生と何とか説得して、1泊入院したという事もありました。体調が悪い時でも、家に帰ると一人なので宿泊してはどうか?という時も家に猫がいるからダメ。待っているから帰る。とご自宅に帰って過ごされ、その時には、必ずBちゃんがAさんの頭元にじっと座っていました。Bちゃんの調子が悪い時は、AさんがずっとBちゃんを撫でて、「B。B。」とずっと名前を呼んでいました。そうして、一人と一匹で高齢者と高齢猫は支え合って過ごされていました。
 そして年が明けてAさんの血液検査のデータや体調が悪く、詳しい検査はご本人が望まれず(検査自体が体に負担が大きいので)恐らく消化器系の癌であろう。データ的には余命はそう長くないだろうと、今後の事を話し合って下さいと主治医の先生から言われました。以前から、後見人さんは、独り暮らしなので、最期は病院へ入院すると考えられていました。病院の費用のための貯金をするために、日々の生活費も切り詰めていたくらいでした。でも、病院へ入院すると、猫と離れてしまうことになります。ご本人は、痛い事や検査もしたくないから、病院へは行きたくない。何より、Bちゃん(猫)と一緒に居たい。という強い思いをお持ちでした。今後の事について話し合いをすることになりました。
 小規模多機能型居宅介護では、今までも利用者さんの看取りをした事は何度もありました。最期に過ごす場所を、ご自宅で選ばれる方もいれば、宿泊を利用して、施設内を選ばれる方もいらっしゃいました。AさんとBちゃんが一緒に暮らせるように、病院へ行かずに在宅で看取りという事を考えていきました。Aさんは、自宅ではお独りで、電話もありませんでした。ケアの事や緊急時の事を考えると、体の衰弱が進んでいった時の事を考えると、施設内での宿泊が適切と思われました。ただ、今まで施設内では、動物と一緒に泊まった事はありませんでした。AさんとBちゃんが宿泊を利用して一緒に最期まで暮らしていくためには、いくつか課題がありました。
 日中や夜間を一緒に過ごしていく他の利用者さん達の中には、動物が嫌いな方、アレルギーのある方もおられて、その方達とも一緒に過ごし行く事。また、施設内でずっとゲージに閉じ込めておくとBちゃんにもストレスがかかるので、猫が安心してすごせる事。AさんとBちゃんが触れ合う時間を持つ事など、課題を一つ一つ考えていきました。Bちゃんの事に関しては、ねこんさるさんにアドバイスと協力をして頂ける事になりました。
 Aさんの看取りについて、後見人さんと話し合いました。後見人さんが懸念していた在宅での看取りについて、別紙の資料を用意して在宅での看取りについて話し合いをしました。Aさんも思いは変わらず、病院には行きたくないと話されていました。後見人さんも納得され、Aさんは入院せずに、最期まで自宅で(状態が悪くなれば施設で宿泊へ)過ごす事になりました。自宅で過ごす準備が整いました。その後Aさんの方は、調子が良くなっていき、逆にBちゃんの方が衰弱していき、その年の夏にBちゃんの方が先に亡くなりました。そして、Bちゃんを看取ってから、秋にAさんは、亡くなりました。最期の場所は施設でした。(宿泊を利用しました。)最期までAさんは、Bちゃんの何度も名前を呼んで、職員にたくさんのありがとうと愛しているという言葉をかけて下さりました。亡くなられた後は、たくさんの支援者や、以前に長く通っていたデイサービスが近いので、利用者さんもたくさん来られていました。Aさんの事を大切に思うたくさんの人たちに囲まれて旅立たれました。
 結果としては、AさんとBちゃんが施設で過ごす事はありませんでした。でも、AさんとBちゃんからは、たくさんの事を教えて頂きました。大切な存在と暮らしていく事の大切さ。その人の大切な事を守っていくために、たくさん人と力や知恵を出し合い、皆で取り組んでいくと、できないと思われていた事もできるという事。利用者さんも私達も、たくさんの可能性をもっている事を教えて頂きました。旅立たれた後は、天国でAさんとBちゃんはまた一緒に暮らしているのかな。と思い出しています。

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