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特別賞「「心のゆとり」を大切に」

2024年9月5日

ページ番号:579241

受賞者

村田 佳緒梨 様

概要

 施設で働く方は必ずと言ってもよいほど児童からの様々な「試し行動」を経験しています。「試し行動」とは子どもが大人の気持ちを探る行為です。わざと悪い事をしたり、あまのじゃくな態度を取ったりをくり返して、大人の反応を確認していると言われています。このような行為は関係の築けていない働き始めの時期に起こりやすいです。私自身、1年目の時に「試し行動」に悩みました。暴言、話を聞き入れてもらえない、目の前にいるのに私には声をかけずに遠くにいる職員に頼み事をしに行くなど。当時はどうしたらいいのか分からないサポートしてくださる先輩職員に申し訳ないと感じていました。徐々に信頼関係を築いていくなかで試し行動はなくなっていきましたが、今でもはっきりと覚えていて一番印象に残っている出来事があります。
 「試し行動」が一番ひどかったAちゃんと、当時担当していたBちゃんのお話です。

エピソードを通じて伝えたい「福祉・介護の仕事」の魅力

 人への支援の仕事なので、悩む事はたくさんあります。そんな中で、自分が考えて関わってみた事がうまくいくととても嬉しく、やりがいを感じられます。うまくいったから次はこんなことに挑戦してみよう。その次はどんな楽しい事をしようか。何をしたら喜んでくれるだろうか。
 こんなことを考えられる毎日が、とても楽しいです。

本文

 私は3歳~18歳の児童が暮らしている障がい児入所施設で働いていて、今年で3年目になります。
 1年目の時、「試し行動」に悩んでいました。例えば、注意をしてもなかなか聞き入れてもらえなかったり、目の前に居る私のことは「いや!」と言って遠くの職員の元へ行ったり・・。
 日々悩んでいましたが、どんな事があっても持ち前の明るさだけは失くさないようにしようと心がけていました。でも一度だけ、帰り道に泣きながら自転車を漕いだ日があります。その日にあった出来事は今でもすごく印象に残っています。
 きっかけは些細な事でした。施設の1日の流れとして夕食は歯磨きをして寝間着に着替えるということになっているのですが、その日のAちゃんは録画していたテレビに夢中で全く動こうとしませんでした。歯磨きにいこう、先に着替えようと声をかけても目も合わせてくれません。そこで、やらないといけない事が終わっていないからテレビは後にしようと一度録画のテレビを停止してみました。今考えると、この時の私はいつもは日課を終えている時間に追われない、間に合わないという焦りもあったのだと思います。その結果、テレビを止められたAちゃんはリモコンを取り返そうと暴れる、泣く、暴言を言うなど私には手を負えない状況になってしまいました。そこで言われた一言が忘れられません。普段「ばか」や「死ね」など言われてもあまり気にせず明るく接していましたが、その時はいつもと違う言葉でした。「この施設の子どもみんな村田さんのこと嫌いやで」と。勢いで言ったのかもしれませんが、この一言はすごく胸に刺さりました。Aちゃんは別の職員が応援に来て下さり対応を代わることで落ち着くことができましたが、私は落ち込んでしまいました。そのまま退勤の時間になったので着替えに行き、1人きりの空間でじっと座りこんでしまったのを覚えています。
 暴言を言われているのを見せてしまったので他の児童は嫌な気持ちになっただろうし、せめていつも通り接して帰ろうと決めて立ち上がり、いつも通りおやすみを言いに各部屋を回った時です。担当児童のBちゃんが「村田さん、大好きやで」と抱きついてきてくれました。いつもはそのような行動はしないので、ああ、Aちゃんとのやり取りを聞いていただんだなぁとすぐに気づきました。
 とても嬉しかったのですが、それ以上に児童に気を遣わせてしまったことに情けなさを感じました。情けなく、悔しくてその場は堪えたのですが、バイバイと声をかけて門を出てすぐからは涙がとまりませんでした。
 私はこの出来事をきっかけにもっと強くなろうと決めました。いつでも笑顔で過ごそうと。施設で働く以上「試し行動」はつきもので、毎回悩むのは時間がもったいない、その時間があったらもっと関わっていこうと。
 今でもよく対応に悩むことはあります。しかし以前に比べるとだいぶと色々な関わりができるようになってきたと感じていて、それは自分の心にゆとりが出来ているからだと考えています。いっぱいいっぱいな関わり方をしていると、自分に余裕がなくなり「今は無理!」と言ってしまいがちになってしまいます。その結果、当然児童も断られてばかりだと不満がたまります。
 できるだけ児童からの希望は叶えてあげられるように心がけ、今は話すことができないという場合は「この時間だったら聞けるよ」と伝えます。何事も楽しくないことはやる気にならないと思うので、楽しみを見つけられるようにしています。最近だと、小学校にお迎えに行った時に「帰るよ」と声をかけていたのを「早く宿題を終わらせて一緒に遊ぼう!」と変えてみたのがよかったです。それまでもっと遊びたいから帰らない!と時間がかかってしまっていたのですが、すぐに用意をして帰るようになりました。早く帰ることで一緒に遊ぶ時間も確保でき、お互い楽しい気持ちで過ごすことができています。
 これからも「心のゆとり」を大切に、柔軟な支援をしていきたいです。

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