特別賞「思いは ひとつ」
2024年9月5日
ページ番号:579250
受賞者
徳永 優子 様
概要
エピソードを通じて伝えたい「福祉・介護の仕事」の魅力
介護の仕事はキツイ、キタナイ、と思われることもあると思います。
でも、それに勝る素敵な出会いや関わりがあります。「やりがい」とも言うかもしれませんが、自分にしか出来ない介護を見つけて、プライドを持って働ける仕事だと思います。
本文
私は、高校卒業後看護学校に入学し看護師を目指していましたが、高齢者施設に実習に行った際に「介護の仕事がしたい!」と思い看護学校を辞めて無資格で介護職員を始めました。その後、介護福祉士を取得し、主任介護支援専門員となり地域包括支援センターで働いたこともあります。しかし介護施設の現場が大好きであった為、もともと興味のあった認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で施設長をさせて頂くことになりました。利用者の方やご家族が最期を過ごす場として選んでもらって本当に良かったと思ってもらえる施設を作ることを目指して現在も働いています。その中での取り組みを一つ発表させて頂きたいと思います。
KYさん男性、入居された時は79歳でした。脳に腫瘍があり入院されており、ご家族からの相談で病院に面接に行かせて頂きました。長女様が立ち会われましたが、とても熱心にお父様の事をお話して下さったことが印象的でした。ご本人は自宅で過ごしたいと思われていた為、ご本人が拒否される中の入居には施設側も不安がありましたが、ご家族の思いを聞き、最期を病院で過ごすことに抵抗があり、出来る限り家族が寄り添って過ごしたいという思いが強く伝わってきた為、その思いに少しでも力になれればと思いました。ご家族も悩まれていましたが、入居することとなりました。
入居当日は、ご本人の拒否も強く、このまま入居してもらうのは難しいかもしれないと思いましたが、職員が何度も繰り返しお話をして何とかその日は泊まって頂くことができました。それからも帰宅願望があったり、仕事として施設に来ていると思われている所もあった為、帽子を被って帰ろうとされたり、施設長の私宛に何度も退職届を書かれることが続いていました。しかし、常にそのような状態ではなく、同じフロアで生活される他の利用者の方や職員と家族のように過ごして頂いていたと思います。2人の娘様たちは毎日のように面会に来られお父様と過ごされていました。しかし、もともと脳に腫瘍があった為、少しずつ体調が悪くなり、そろそろ・・・、という時期がやってきました。
何度もご家族とお話をし、お父様が家のように過ごしている施設で最期を迎えさせてほしいと言われた為、私達も施設で出来る限り快適に安心して過ごして頂けるように考えました。グループホームは看護師が24時間配置されていないことや、Dr.も24時間対応の往診医ではなかった為、医療面での不安が大きく残りました。それでも看護師が、ご本人やご家族が安心できるよう、現場の介護職が不安なく介護できるようにと地域の往診医や訪問看護と連携を図り、医療体制も安心できる体制となりました。娘様二人のお父様への思いも強く、一緒に色々なことを考えることが出来ました。そんな中、80歳の誕生日を迎えることとなり、ご家族が黄色のちゃんちゃんこを用意し、看護師はKY様が入居されてからの思い出の動画を作成し、介護職員が誕生日の準備をして誕生日会を開催しました。立つことも難しくなっておられましたが、動画や音楽を流した際にKY様が急に立ち上がられ、介護職員とダンスを踊ってくださいました。ご本人、ご家族、看護師も介護職員も皆が温かい気持ちで過ごせた瞬間だと思います。
それからどんどん体調は悪くなっていきました。娘様たちも、職員も、ご本人がお元気な時にいつも家に帰りたいと言われていた為、それを叶えたいという気持ちが出てきました。階段しかない団地でしたが、布担架を使い娘様たちと職員3名で担架を担ぎ自宅に帰れることで出来ました。その後も私たちのご本人の思いを叶えたい気持ちは、どんどん強くなり、もともとお元気な時に奥様と大阪城によく行かれていたということを聞き、ご家族やフロアの仲の良い他利用者の方、職員で大阪城に行くことが出来ました。いつも、皆の笑顔があったと思います。
最後は、ご家族、他利用者の方や職員がいる中、旅立たれました。「もっと何かできたのではないか。」という思いもありますが、ご家族はここを選んで本当に良かったと言って下さり、職員も皆大きな自信につながったと思います。ご家族とは今でも交流があり、「ここで働きたい!」と言ってくださるぐらいです。
このような経験が出来たことに本当に感謝しています。私はこの介護の仕事がとても大好きです。まだまだ人材不足であり、人気もない職種かもしれませんが、いつか人気の職業トップ3に入るような職業になればと思っています。
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