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最優秀賞「日々の彩りを求めて」

2023年4月1日

ページ番号:607514

受賞者

倉橋 果歩 様

概要

 福祉とは縁のない大学生活を送っていた私は、人と関わり合う仕事がしたいと考え、今の仕事を選びました。障がい者支援施設で働き2年目になりましたが、利用者の心を明るくする支援をすることに取り組んでいます。
 今年83歳になる利用者O様。コロナ禍で沈んだO様の明るい笑顔を取り戻すため、吉本新喜劇への訪問を提案しました。最初は躊躇していたO様ですが、施設でも交通機関を使った外出ができるようになると、大変喜び、笑顔がこぼれるようになりました。O様との外出に対して、施設内での介助は日常していた私ですが、初めての外出介助ということもあり、上司の勧めで、ガイドヘルパーの資格を急遽取らせていただき、自身のスキルアップもできました。
 利用者の支援からは、対話を重ね、信頼関係を築き上げることの重要性を学びました。より良い支援を実現するため、日々成長したいです。

エピソードを通じて伝えたい「福祉・介護の仕事」の魅力

 このエピソードを通して伝えたいことは、人との関わりや対話を重ねることで、その思いはきっと相手に伝わるということです。障がい者支援は、利用者と一緒に経験し、その笑顔を見たり、喜びを共感できる仕事で、自分自身の成長も実感できます。学生時代、福祉を勉強していなかった自分だからこそ、伝えられることがあると思い、応募をしました。


本文

 私は現在、障がい者支援施設に入職して2年目になります。大学時代は文学部で福祉とはあまり縁がない学生生活を送っていました。福祉について関心を持ったのは就職活動をしていた際にある人から「あなたには福祉職とか向いているんじゃない?」と言われたのがきっかけでした。もともと、人と関わり合う事や問い続けながらも日々の営みを支える仕事がしたいと漠然と考えていました。そんな中、人と人とが関わり合い、対話を重ね合い、その人にあった支援とはなんなのか問い続ける福祉の仕事に魅力を感じ、今の仕事を選びました。今回、私が入職し、担当を持たせて頂くことになったO様のお話をしていきたいと思います。
 外に出て、好きな場所へ自由に赴くことがどれだけ心を晴れやかにするか身に染みて久しい昨今。今年に入りようやく世間が遠出解禁になったと共に私が働いている障がい者支援施設でも公共交通機関を利用した外出が可能になりました。
 私が担当している利用者のO様は今年で83歳になられました。お出かけや買い物が大好きで、いつもオシャレして色んな所に積極的に赴く元気で穏やかな方です。しかし今までコロナ禍の中では近隣の散歩しかできず、ご本人の中にある、「遠くに行きたい。お出かけして美味しいものを食べ、楽しいことをいっぱいしたい」という気持ちをくすぶらせていました。また、今年に入ってからはどことなく暗い表情で過ごされることが増え、口数も少なくなっていました。私が担当職員としてできる限りのことでどうすればO様の曇った表情を晴れやかにする支援ができるだろう。と考えました。そんな中、コロナの制限緩和に伴い施設でも交通機関の利用が再開になるという報告を受け、これはすぐに行動を起こさなければならないと思いました。コロナ以前はよく施設の利用者様と一緒に吉本新喜劇へ鑑賞しに足を運んでいたため、よく「吉本新喜劇に行きたい」と話されていました。複数人で行く事は難しいので私が一緒に吉本新喜劇に行って楽しい思い出を作りたいと思い立ちました。
 最初O様に「吉本新喜劇を見に行きましょう!」と言うと「そんな無理やで。行かれへんよ」とすっかり沈んだ様子で返答がありました。私は遠くへの外出が可能になったこと、私と一緒に二人で外出することを何度も繰り返し伝えました。するとだんだんと新喜劇に行くことが本当のことなんだとO様にも伝わり、周囲の職員などに「新喜劇にね、行くねん」と嬉しそうにお話されるようになりました。同時にすっかり暗くなってしまった表情に明るさが戻り生活のなかに笑顔がこぼれるようになりました。
 そしていよいよ当日。居室に行くと満面の笑みのO様がいました。こぼれんばかりに瞳を輝かせてこちらまで笑顔が溢れてくるようでした。しっかりとご飯を食べておめかしもして出発。天気にも恵まれて絶好のお出かけ日和でした。久しぶりの電車からの景色や乱雑とした難波の街並みをただただじっと見つめているO様に自分にはあまりにもありふれた風景でもO様には恋しかった場所なのかもしれないと感じました。
 なんばグランド花月に到着してさっそく私は記念撮影を提案し、「え~私恥ずかしいわ~」と照れ臭そうにされつつもカメラを向けるとしっかりピースしてくださりその茶目っ気に気持ちがふんわり明るくなりました。
 そしていよいよ開演の時間です。幕が上がるといっきに舞台に目を向け集中モードのO様。芸人さんたちのめくるめく軽快なトークにO様は目を細めて小さく、けれども確かに笑っていました。少し前までの陰っていた表情を思い返すと見違えるようでした。この場所がO様の変化の乏しい日常に光を一筋与えてくれる場所の一つなのだと思いました。また、「ちょっといつもより特別なこと」というのはいつでもどんな年齢になっても心を潤すものなのだと実感しました。
 終演後O様は「楽しかったよ」「また見たいなあ」と微笑まれていました。普段、あまり自分の楽しかったという感情を自ら出さない方だったので私はその少しの変化に提案して良かったな無事に来ることができて良かったなと胸が震えるような、そんな気持ちになりました。
 それから、O様にみるみると明るい表情が戻っていきました。「今度はあの人とも一緒に行きたいなあ」とか「あの公演に行きたいの」など今後のやりたいことがどんどん増えていきました。その変化が嬉しく、これからも頑張ろうと思いました。また今回の支援を通してO様と私との間に信頼関係を築くことが出来たのではないかと考えており、こういった希望を私に提示して下さるのは信頼の証なのだと感じています。
 今後コロナウイルスがどうなっていくのかや、他の感染症といった未曾有の状況にいつ陥るか、わかりません。しかし今回の支援を通して、日々の生活を彩っていく支援を続けようと強く思わせてくれたそんな経験でした。またそんな風に日々を色づかせて行くためにはその人との対話を重ね、信頼関係を築きあげていくことが大事なのだと感じました。
 実は今回の外出について、私自身施設内の車椅子介助は日常的にしていましたが、コロナ禍では初めて外出支援を行いました。そんな中、上司の提案により法人で行われている研修センターのガイドヘルパーの資格を急遽取りました。新たなことを提案し、行動していくことは非常に重要であることは自覚していますがそこに自分自身の技術も向上していかなければ思いを現実のものにすることは難しいのだと実感しました。自身も成長していきながら利用者のやりたいことを考え、実現に向けて切磋琢磨していきます。
 日々はせわしなく過ぎていきますが、時間を重ねながら関係性を丁寧に作りあげていきたいと思います。そしてこの経験を胸にさらに良い支援へと紡いでいきます。

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