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監督のことば

2026年4月16日

ページ番号:677586

映画「生きる」 大川小学校 津波裁判を闘った人たち

寺田 和弘(本作監督)の画像

寺田 和弘(本作監督)

監督プロフィール

 1999年から2010年までテレビ朝日「サンデープロジェクト」特集班ディレクター。シリーズ企画「言論は大丈夫か」などを担当。
 2011年からNHKや民放各局で主に社会問題を中心に番組制作を行う。
 2023年ドキュメンタリー映画「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たちの監督を務める。同作品は第78回毎日映画コンクールでドキュメンタリー映画賞、第97回キネマ旬報文化映画ベスト・テン第2位、第10回浦安ドキュメンタリー映画大賞、第13回江古田映画祭特別賞を受賞。
 その他の受賞作に2006年JCJ賞「シリーズ言論は大丈夫か~ビラ配り逮捕と公安~」(テレビ朝日・ABC サンデープロジェクト)、2015年テレメンタリー年間最優秀賞・ギャラクシー賞奨励賞「DNA鑑定の闇~捜査機関“独占”の危険性~」(テレビ朝日)がある。

監督のことば

「裁判なんてしたくなかった」これは原告となった遺族の声です。

 なぜ遺族は裁判に踏み切らざるを得なかったのか。画期的と言われる仙台高裁判決を社会はどう生かしていくのか。こうした思いから、「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たちを制作しました。

 映画は、津波が大川小学校を襲った後、わが子を見つけるために保護者が必死になって学校に駆けつけた、その日から始まります。「あの日何があったのか」「なぜわが子が学校で最期を迎えたのか」、ただそれだけを知りたくて、親たちは石巻市教育委員会の説明会や事故検証委員会などに出席し、その様子を記録し続けました。この映画は、遺族が撮影してきたその映像記録を軸に描いています。

 私は遺族が記録した映像を何度も何度も繰り返し見続けました。しかし遺族の求めた答えを、そこから探し出すことはできませんでした。その一方で、説明会を開催するたびに遺族と行政側の溝が広がり、深まっていくように感じました。そして私は、この様子を映画を見てくださる方々に追体験してもらいたいと考えるようになりました。遺族の立場になって、自分事として、この映画を見ていただければと思っています。

 映画の中でも触れていますが、裁判を起こした遺族は約3分の1です。原告遺族の中でも、考えや思いはそれぞれ違います。私もまだ一度も話したことがない方もいます。まだまだ分からないことが多い、いや、それどころか遺族が求め続けている「あの日何があったのか」や「なぜわが子が学校で最期を迎えたのか」ということすら、未だに明らかにされてはいません。

映画を制作しませんかと原告団会議で初めて提案したとき、出席した遺族らの多くは反対しました。私が何をしたいのか具体的に提示できなかったこともありますが、一緒に闘った仲間がまた殺害予告されるのではないか、それを防ぐためにはもう表に出ない方がいいのはないかと考えたと映画完成後にある遺族がその時の思いを話してくれました。

 この映画を通じて、裁判で闘わざるを得なかった遺族の苦悩、子どもが生きるはずであった人生を生きなければと葛藤し続け、前を向き始めた遺族らの姿を知っていただきたいと思っています。共感しやすい感動的な奮闘ストーリーがある映画ではありません。起きた事実を記録しているため、見ていて、苦しく、つらい場面があるかも知れません。それでも「誰にも同じ思いを二度としてほしくない」と闘った親たちの生き様を、劇場で多くの方々と一緒に観ていただければ嬉しく思います。

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