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給食施設における災害時の食事提供に関する取り組み事例

2025年3月4日

ページ番号:597097

 近年各地で大規模な地震や災害が発生しており、今後も南海トラフを震源とする大地震など甚大な被害が想定されています 。給食施設では災害時においても利用者に安全で安心な食事を提供し、適切な栄養管理を行うことが求められます 。
 そこで災害時の食事提供について、研修や対応訓練等を行っている事例を集めましたので、 災害対策の充実に向けてぜひ参考にしてください。

 また、給食施設の災害時の食事提供を支援するため給食施設における災害時等の食事提供に関する手引きを作成し、掲載していますのでご活用ください。

災害時の食事提供に関する取り組み事例

掲載施設

事例1 大阪整肢学院

施設情報

所在地 : 北区

病床数 : 100床

施設の概要

 大阪整肢学院は3歳から18歳までの子どもたちを対象とした医療型障害児入所施設です。病院として各種の治療を行いながらリハビリテーションを進めて社会への旅立ちをサポートしています。
 栄養科では、子どもたちの成長・病態に合わせ、常食からペースト食まで4段階の食事を提供し、健康管理と栄養管理を行っています。

取り組みの背景

危機管理体制づくりの経緯について

 当初は、備蓄食品やマニュアルなどが整備されていませんでしたが、平成17年頃からトップダウンにより学院全体の取り組みとして体制づくりが行われたため、他部署の方や管理職の方が協力的でした。以降は、月1回開催の防災委員会などでの意見を取り入れ少しずつ改正を行い現在に至っております。

取り組みの内容

取り組み1 給食対応マニュアルの内容について

 災害の種類や被害状況により、食事の提供方法が異なることから、バターン別に作成する必要があると考えました。
 震災の場合については、3パターンを想定し、1) ライフライン維持の場合、2) ライフライン停止の場合、3) 半壊・全壊の場合の対応状況を記載しています。

取り組み2 災害時の食事提供に関する研修・対応訓練について

 備蓄食品については賞味期限が近づきましたら防災委員会・栄養委員会で提案を行い、食事提供の実施方法を話し合います。賞味期限が5年程ありますので、これまで5回程度実施しています。実施内容は以下のとおりです。

  • 4月の職員新人研修を学院のお花見イベントと合わせて実施しました。アルファ化米をおにぎりにして提供しましたが、イベントの際に提供することで普段と違う味・食感の米飯でも抵抗が少なかったです。
  • 災害訓練を兼ねた炊き出し

  1)栄養科以外の職員でも対応出来るよう、栄養科は見守る形で炊き出しを行い、入所児を中庭に避難させる訓練を行うとともにアルファ化米と備蓄用のレトルトカレーを提供しました。 

  2)全職員を対象に3日間に分けてアルファ化米を提供しおかずは各自準備いただく形で実施しました。

取り組み3 備蓄食品の選定方法等について

 当院では約半数で軟食・ペースト食を提供しており年齢は3歳~18歳の子どもでアレルギー児もいます。

 軟食対応の児も食べられる子ども用のレトルトカレーやハヤシライス、ふりかけなどを日々の献立にも取り入れて、ローリングストックにより管理しています。レトルトカレーやハヤシライスは、アレルギー児にも提供でき、子ども用の味付けで、温めなくても美味しいものを選定しています。また食べ慣れない食品を受け付けない児がいることから普段の食事で提供しやすいものを選んでいます。ペースト食はスプーンで崩しながら提供します。

 この他に、25年保存のサバイバルフーズ、5年保存のアルファ化米とレトルトのおかず、飲料水などを備蓄しています。

今後の課題

 備蓄食品の必要日数について

 当院の備蓄食品は3日間分程度のため、支援物資配給まで期間が長期になった場合の対策について課題を感じています。災害時、健常の大人でも毎食災害食を食べ続けるのはつらいものと考えます。そんな時に求められるのは、炊き立てのごはんと味噌汁ではないかと考え、真空パック包装の無洗米を1日分備蓄しています。なお、無洗米は米穀店の計らいで賞味期限1年のものを半年で無償入れ替えをしてもらっています。災害が長期化した場合に何をどのように確保しておくべきかが今後の課題です。


備蓄食品の保管場所(1)


備蓄食品の保管場所(2)

事例2 大阪市立総合医療センター

施設情報

所在地 : 都島区

病床数 : 1,063床

取り組みの背景

栄養部門の役割

 大阪市立総合医療センター栄養部門の役割は、災害時においても患者食の提供が継続できるように日常から備えるとともに、災害発生時には食事全般の統括と患者食の調理と提供を行うことです。
 大規模災害対策マニュアルでは災害発生時の指揮命令系統と任務にあたる職員が定められており、災害対策本部には、本部長、副本部長、診療統括、診療支援統括1、診療支援統括2、看護師統括、情報統括、施設安全統括、職員統括、渉外報道統括などの要員が配備さます。診療支援統括2が薬剤班長、診療材料班長、給食班長を指揮することになっており、栄養部門の職員は、給食班長と給食担当の任務に当たります。
 管理栄養士の長は、給食班長として患者食・職員食を統括し、食材の確保や食事の配膳が円滑に実施できるよう災害対策本部(診療支援統括2)と連絡調整を行い、給食担当に具体的な指示を出します。栄養部門の職員は、給食班長の指揮命令の下で給食担当として受託会社と協力しながら食事の調理と提供、食材の調達と管理、配膳に係る病棟等関係部門との調整を担います。

取り組みの内容

取り組み1 アクションカード

 アクションカードは簡易の初動マニュアルを兼ねており、上位の指揮者からカードを受け取って担当が任命されます。
 病院作成の大規模災害対策マニュアルは、任務にあたる担当者の行動がアクションカード形式でまとめられており、カードには、担当者、任務内容、行動内容、活動場所、報告相手が簡潔に箇条書きで記載されています。栄養部門が正式な担当者となっているものは給食班長と給食担当のカードです。
 カードの内容を一部紹介すると、

  • 給食班長カード
      任務:給食(患者、職員)を統括
      行動:療支援統括2からの指示を受け調理場内で活動する
          適切な栄養部職員を給食担当に任命しアクションカードを配布
          食材確保、食事の配膳が円滑に実施できるよう統括 
  • 給食担当カード
      任務:給食受託会社と連携し食事の調理と提供を行う
      行動:院内の患者・職員への給食業務を行う
          院内在庫不足については受託会社と連携し確保に努める
          非常用備蓄食を使用する場合には、各部門への指示、調整、
          在庫状況の把握を行う 
    などが記載されています。
取り組み2 災害用備蓄食と保管場所
災害用備蓄食

 災害用備蓄食は、個包装の食品、飲料水、乳児用粉乳(一般調整粉乳・ミルクアレルギー用ミルク)、ディスポ哺乳瓶、紙コップを患者用として備蓄しています。個包装の食品は食器や箸などを別に用意しなくて良いことを条件に災害対策委員会で多職種による検討を行い、アルファー化米、レトルト飯、パンを選択しました。

保管場所

 食品、紙コップ、ディスポ哺乳瓶と飲料水の大部分は3階以上の上層階を保管場所とし、約1日分は4階と6階から18階の各病棟フロアに分散して保管しています。これは、地下エリアが浸水した場合や中央配膳が出来ない場合に備えた措置です。
 災害用備蓄食の配給や調整に関する業務は給食担当が担いますが、栄養部スタッフが参集できない場合への備えとして、保管場所などは看護部門とも情報共有しています。
 乳児用粉乳はローリングストックしているため、保管場所は地下1階調理施設内の食品庫ですが、一部のミルクは9階の新生児病棟内に保管し、賞味期限を管理しながら入替を行っています。

その他

 また、これらの食品とは別に、調理施設からの配膳が可能な場合に継続して食事提供ができるように、給食受託会社には米1週間分と缶詰や冷凍食品などの在庫食品を常に冷蔵庫や食品庫にローリングストックしておき、これらの食品を利用した3日分の災害時献立計画を準備しておくことを求めています。

取り組み3 訓練について

 当院では、病院幹部層向けBCP訓練、災害医療研修、医師向け災害医療、院内災害総合訓練を毎年開催しています。また、その他にも部門からの依頼があれば救命救急部の医師が講師とした短時間のワークショップを実施します。
 院内災害総合訓練の実施に当たっては、災害対策委員会の訓練運営委託を受けて災害対策企画WG(ワーキンググループ)が訓練を企画します。WGの主な業務はサブシナリオ・被害想定の作成と配付、訓練の各部門への周知、訓練の黒子、訓練の安全管理、模擬患者の仕込み等です。
 令和4年度の訓練から、栄養部内でもプレーヤーを任命し、プレイヤーには実際に上司への連絡相談や、受託会社や病棟への対応を検討し行動してもらいました。

今後の課題

 災害時には普段と異なる条件の中で、提供できる食事を判断し、食数を把握し、配給方法を選択する必要があります。
 状況によっては給食管理システムが利用できないことも想定されますし、災害発生の時刻や参集可能なスタッフ数など、その時の条件は様々です。日常も含めたシステム障害時対応マニュアルや従業員の参集人数による食事対応の基準は定めていますが、災害発生時の状況を判断して必要な情報を検索し、適切に対応できなければ意味を成しません。
 訓練経験のあるスタッフはごく一部に限られているため、より多くのスタッフが訓練に参加できるよう、サブシナリオを用いた訓練に経験のないスタッフを毎年参加させていく事などを検討しているところです。訓練を重ねる中で、マニュアルを誰が見ても行動できるものへとブラッシュアップしていきたいと思います。
 また平時からの取り組みとして、BCPの一環として備蓄食品の管理や給食受託会社のBCPの内容と整合性を持たせたものへと見直す予定です。

事例3 特別養護老人ホーム阪和苑

施設情報

所在地 : 阿倍野区

入所定員 : 140名、ショートステイ20名

取り組みの内容

取り組み1 災害時の食事提供に関する備えの現状

 現在、3日分の備蓄食品と水を常備しています。備蓄食品は1階の厨房に保管してあり、普通、一口大、キザミ食に対応した食品と、極キザミ、ペースト、ゼリー食に対応した食品の2種類を準備しています。また、厨房付近の倉庫にはディスポ食器と水を保管しています。

 さらに、入所者の食形態やアレルギーの一覧表を毎月更新し、備蓄食品とあわせて保管しています。

取り組み2 エレベーター停止訓練

 令和5年8月には、BCP訓練に付随して、エレベーター停止に伴う食事提供への影響を想定した訓練を行いました。

 訓練実施のきっかけは、管理職からの提案です。『エレベーターの停止』は災害時でなくても起こりうる可能性があり、食事提供にも大きな影響が出ます。そのような状況でも、入所者ができるだけ安心して食事をとれるようにと、訓練が実現しました。

 この訓練は階段を使って備蓄食品を運ぶことを想定して、栄養部門以外の様々な職種の職員が15名程度参加しました。備蓄食品は想像以上に重く、1階から居室のある5階まで運ぶ大変さと、定期的な訓練の重要性を実感しました。

取り組み3 施設全体で取り組むために

 実際の災害時には必ずしも栄養部門の職員がいるとは限らないため、どの職員でも食事の対応ができるよう共有しています。毎月開催している栄養委員会では、他部門の職員を備蓄食品の保管場所に案内し、情報共有することもあります。栄養委員会で周知するだけでは共有できる職員が限られるため、できるだけ多くの職員と共有できるよう衛生委員会などでも共有しています。

 今後は、深夜に災害が起こった場合に夜勤職員だけでも対応できるよう、もれなく共有していきたいと考えています。

今後の課題

 まずは、マニュアルの充実を図りたいと考えています。「災害時の食事提供に関する手引き(大阪市保健所作成)」の様式集を参考に、災害発生時の初動のフローチャートを作成中です。完成後は、他部門とも共有し、栄養士が不在の場合でも対応できるよう体制を整える予定です。

 さらに、今後は食事提供に関する訓練や研修についても、他職種と連携を取りながら積極的に行っていきたいと考えています。


訓練の様子


備蓄倉庫

事例4 すみれ乳児院

施設情報

所在地 : 旭区

入所定員 : 35名

取り組みの内容

取り組み1 震災の日をきっかけに

 単発での取り組みは不定期開催していたものの、現在につながる形へとなったきっかけは2019年度に「阪神淡路大震災のあった日に防災食を提供しよう」という給食委員会の試みからです。

 実施してみると災害時の食事の備えの重要性に気づき、継続して行う必要性を感じました。以来2020年度より給食委員会にて毎年ねらいを決め、防災食の訓練・提供を定期的に行っています。

取り組み2 防災食の日

 月に1度「防災食の日」を決め、防災食の提供をしています。献立は給食委員会にて検討し、レシピは栄養士が作成、調理・提供は各フロアの職員が行います。2020年度には「職員全員が防災食を作れること」を目標にしたことで、普段あまり調理をしない職員も防災食の調理に抵抗なく取り組めるようになりました。提供後は給食委員会にて参加した職員から意見のフィードバックも行い、課題を検討、次回の取り組みや来年度の目標につなげるようにしています。

 また、毎年9月には防災対策委員会と給食委員会の共催で炊き出し訓練を行っています。今年度は「実際の被災状況を想定し、対応できるようにする」のねらいにあわせライフラインが止まり、栄養士・調理師不在の状況を想定した訓練を行いました。

 防災食の日や炊き出し訓練を通して、職員にとって災害時の食事への備えが「より身近なもの」になってきていると感じています。


取り組み3 備蓄食品について

 子どもたちの各部屋には防災バック(非常袋)があり、乾物や缶詰を中心に食材の準備もしています。また、1階の食品庫、4階倉庫に分散しミルク、レトルト食品、缶詰、乾物などをローリングストックしています。備蓄食品は「非常食在庫表」に一覧にしてまとめ、食材ごとのアレルギー対応についても記載し、アレルギーのある子どもにも対応できるようにしています。食品庫や倉庫はだれが入っても食品や器材の場所がわかるように、どこに何が置いてあるかも書いています。

 防災食の提供には子どもたちが防災食に慣れる目的や子どもの嗜好を知り、食べられる食品を探す目的もあります(まだ離乳食を食べていない子へは液体ミルクの提供も行っています)。幼児食を食べている子どもたちには、食べ慣れていないレトルト食品を災害時でも抵抗なく食べられるよう、防災食の日を利用して子どもたちが防災食を食べる機会を作っています。

今後の課題

 現在、備蓄食品は子どもたちの分として3日分以上の確保を行っています(ミルク、食材合わせて)。職員分については十分な量の確保には至っていないため、順次確保をすすめているところです。レトルトの防災食には1歳以上を対象としているものも多いため、ミルクと幼児食の間である離乳食段階の非常食の検討も必要だと考えています。

 災害時の実際の献立やマニュアルについてはBCP計画にて作成はしていますが、より実際の状況に即した献立作成について、今後も検討と作成を進めていきたいと思います。


「炊き出し訓練」の様子


備蓄倉庫

事例5 貴生病院

施設情報

所在地 : 淀川区

病床数 : 115床

取り組みの内容

取り組み1 災害への取り組みを行うことになった経緯

 2021年3月の摂食・嚥下のカンファレンスの時に、医療安全の観点から災害時の食事提供に関する議題が浮上したことがきっかけで災害時の食事提供に関する取り組みが始まりました。

 初めての訓練は、病棟を対象とし、参加した職員は病棟看護師、管理栄養士、調理師(調理補助含む)でした。その時患者さまに提供した非常食は、レトルトパウチの蓋を切ってお盆に乗せたものでしたが、配膳した看護師からは「具体的な説明資料がほしい。」、参加していなかったコメディカルスタッフからは「訓練に参加していないと食事の提供方法がわからない。」など意見がよせられました。

 その後何度か訓練を行いましたが、病院全体を巻き込んで訓練を行う必要があると感じ、初めての訓練から1年後、医療安全会議にて全職種に対し参加依頼をしました。そこから徐々に職員の意識が変わり、今ではすべての職種が一体となって訓練を行っています。

取り組み2 あたたかい食事提供のために

 備蓄食はローリングストック法で缶詰や米、冷凍食品等を保管し、約3日分を維持しています。

 当初の訓練では、職員・患者さまともに「冷たくてたべにくい」といった意見が多くあがりました。できるだけあたたかい食事を提供したいとの思いから、米や缶詰を調理することを想定し、加熱できる備品をそろえています。

 3か月に1度の災害食の調理・提供する訓練は、ライフラインがすべて停止した状態で行います。カセットコンロで調理したおにぎり・汁物を5階の調理室から職員が階段で運びます。


取り組み3 緊急時の誤嚥リスクを回避する工夫(安全な食事提供のため)

 嚥下機能が低下している方については誤嚥のリスク回避のため、30度程度体を起こして食事をとる必要があります。

 停電時に電動ベットで体を起こせない場合は、強度確保のために組み合わせた丸椅子を、ベット下に差し込み、約30度の角度を保って食事をしていただける工夫をしています。

今後の課題

 課題は人手不足と考えています。食事提供に関しては、横(フロアの往復)の動きはもとより、縦(階段の往復)の動きに手が取られるためです。

 今後は地域の方や他の病院等と連携できような仕組みや体制を構築し、実際の災害が起きた際に地域の方々の中心となれるような病院をめざしていきたいです。


訓練で階段にて食事を運搬する様子


丸椅子でベットアップしている様子

事例6 東住吉森本病院

施設情報

所在地 : 東住吉区

病床数 : 329床

取り組みの背景

 当院には以前から、災害委員が作成したアクションカードがありましたが、内容は「人員の安全確保」や「施設の状況確認」といった基本的なものに限られていました。

 また、2022年から2023年にかけて、栄養科に複数の新入職員が加わり、委託業者も変更になったことから、資料の整備が急務であると感じました。

 そこで、既存の資料を充実させ、給食提供までを含む内容に改訂しました。

取り組みの内容

取り組み1 マニュアルとアクションカードの改訂

 マニュアルとアクションカードの改訂に際しては、大阪市保健所が作成している「災害時の食事提供に関する手引き」も参考に、当院のBCPに記載している基本的な事項を、マニュアル等に落とし込むようにしました。マニュアル等の作成は、どう取り組めばよいか悩ましいですが、大まかなロードマップを作っていただいているのでありがたかったです。

 災害時には、現場がパニック状態になって、平時では考えられないようなミスコミュニケーションが発生する可能性があるため、詳細な指示と行動内容を示したマニュアルが重要だと考えています。そこで、頭の中で発災時に食事を提供するシミュレーションを行い、必要な指示内容と具体的な行動をすべて記載することを意識しました。

 完成後は、栄養科職員を対象に、説明会を開催し、共有を図りました。


アクションカード(1)


アクションカード(2)

取り組み2 食事提供訓練を実施

 2024年には栄養科職員で食事提供訓練を実施しました。訓練は、マニュアルとアクションカードを使用して、アルファ化米(50人分)と水を保管場所から運搬するところから、調理、盛り付けまで行いました。

 訓練では、備蓄食品がアクションカードに記載してある場所から変更されていることが判明しました。また、実際に調理してみると、マニュアルで定めた量をディスポ容器に盛り付けることに、想像以上に時間がかかりました。災害時には、正確さとスピードのバランスが重要であると感じました。

 これらは、訓練を通じて気づいたことであり、訓練の意義を深く感じました。

今後の課題・やっていきたいこと

 課題の1つは、現行のマニュアルが、栄養科や給食委託会社の職員による調理を想定していることです。他職種の職員でも、問題なく使えるマニュアルに改訂し、さらにそのマニュアルを使用して、他職種の職員が調理や盛付けを行う訓練を実施したいです。

 訓練を行うことで、多くの職員が災害時の食事提供について意識するきっかけとなると考えています。また、暗闇の中での訓練等、より実践的な訓練も企画していきたいです。

付記:賞味期限が近づいた備蓄食品の活用方法

 当院では、賞味期限が近づいた備蓄食品の活用方法として、アルファ化米で作ったお粥と普段提供しているお粥を半分ずつ混ぜて提供しています。こうすることで、普段のお粥と遜色ないものになります。

 賞味期限が近づいたアルファ化米の活用方法にお困りの施設等ありましたら、ぜひ一度お試しください。

事例7 阪和第二住吉病院

施設情報

所在地 : 住吉区

病床数 : 200床

取り組みの背景

 当院は、2018年の台風21号による停電を経験しました。既存のマニュアルや備蓄食をもとに対応しましたが、備えが十分ではなかったことを痛感しました。それ以降も、大雨等によるリスクが年々高まっており、危機管理体制の見直しが必要だと感じていました。

取り組みの内容

取り組み1 誰でも行動できるマニュアルの作成

 以前のマニュアルで不十分だったのは、詳細な対応方法が記載されていなかったことです。改訂後のマニュアルでは、給食業務の経験や知識がない方でも行動できるよう心がけました。

 例えば、非常食の保管場所は、栄養部以外のスタッフには馴染みがないため、写真を添えて、直感的に分かりやすくしました。また、管理栄養士が給与栄養量を計算した提供量が細かすぎると、手間取ってしまう可能性があるため、全ての患者さんにスピーディーに食事を提供できることを優先し、調理量の設定を見直しました。

 さらに、停電時の食事提供についても、復電のタイミングに応じた基準を具体的に設定しました。例えば、食事提供の2時間前までに復電した場合、主食は通常食・その他は非常食を、復電していない場合は全て非常食を提供する、等です。

 マニュアルは、改訂ごとに栄養委員会等で他職種のスタッフにも共有しています。また、ファイルに綴じて各病棟にも配置し、すぐに見られる状態にしています。


写真を添えたマニュアル(一部)

取り組み2 非常食の内容を見直し

 当院は療養型の病院で、ご高齢の患者さんが多くいらっしゃいます。

 以前はアルファ化米を備蓄していましたが、普段の食形態に比べてかなり硬くなってしまうという問題がありました。また、備蓄していたゼリーも、冷蔵保存していないと形状がゆるくなってしまうため、停電時には嚥下に配慮が必要な患者さんに提供できないという課題もありました。

 そこで、アルファ化米はおかゆに変更しました。そして、ゼリーについても、保存温度に関係なく形状が一定のものに変更しました。

 さらに、非常食の見直しによって減少したエネルギーを補うため、新たにパン粥のもとを備蓄し、パン粥をメニューに加えました。パン粥は調理が必要になりますが、少し甘くてなめらかで食べやすく、患者さんにも人気があることから、採用することにしました。

今後の課題・やっていきたいこと

 栄養部以外のスタッフにも調理してもらう訓練を実施したいです。

 栄養部が、停電経験を通じて備えを見直したように、実際に調理等を体験してもらうことで、非常時の食事提供に対する、スタッフひとりひとりの意識が高まると考えています。食事提供訓練は必要だという声をいただいているので、ぜひ取り組んでいきたいと思います。

付記:照明器具の備え

 2018年には、停電発生から1時間30分後に非常灯も完全に消え、厨房内や階段が真っ暗になり、大変危険な状態になりました。この経験を活かし、非常用ランタンやヘッドライトの備蓄も拡充しました。

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大阪市 健康局大阪市保健所管理課健康栄養グループ

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