魚介類による食中毒について
2024年3月5日
ページ番号:621609
はじめに
魚介類を原因食品とする食中毒として、これまでもっとも発生件数の多かったのは腸炎ビブリオによるものです。この細菌は海水や海中の泥に潜み、夏になり海水温が上がると活動が活発になるため、食中毒が発生しやすくなります。平成13年に生食用鮮魚介類の規格基準が制定され、予防対策が強化されたことなどにより、発生件数は減少していますが、油断をせずにしっかりと、対策を続けていくことが重要です。
一方、近年、魚介類を原因食品とする食中毒で増加しているのが寄生虫によるものです。
その多くは「アニサキス」と「クドア・セプテンプンクタータ」という寄生虫によるものです。
全国的にみても、平成22年以降、これらの寄生虫による食中毒は増加傾向にあることから、注意が必要です。
また、魚介類による食中毒対策として注意が必要なものに「ヒスタミン」があります。
ヒスタミンは赤身魚に多く含まれるアミノ酸(ヒスチジン)から、細菌の働きによって作り出されるもので、一度、産生されたヒスタミンは加熱では分解されないので非常に厄介です。
令和5年6月には、ヒスタミンが検出されたアンチョビが自主回収される事例が報告されています。
アニサキスによる食中毒について
アニサキスは、魚介類やクジラ、イルカなどの海獣に寄生する寄生虫です。
アニサキスが寄生した魚介類を生で食べた場合、アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して、食中毒症状を引き起こすことがあります。
症状は?
食後、数時間で激しい胃痛、吐き気、嘔吐などの症状がでます。
原因となる食品は?
アニサキスはサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類を生(不十分な冷凍又は不十分な加熱のものも含む)で食べた場合に発症することがあります。
【サバの内臓に寄生するアニサキス(幼虫)】
▲で示した場所にアニサキスが寄生しています。
(写真:(地独)大阪健康安全基盤研究所提供)
【サバから取り出したアニサキス(幼虫)】
(写真:(地独)大阪健康安全基盤研究所提供)
予防方法は?
アニサキスによる食中毒を防ぐためには、食べる前に「とりのぞく」か「やっつける」必要があります。
「とりのぞく」
- アニサキスは、主に魚の内臓に寄生しているが、宿主の魚が死ぬと、内臓から筋肉に移りやすくなる。
- 新鮮なうちに内臓を取り除き、冷蔵庫で保管する。
- アニサキスは目で見える大きさなので、十分に確認して調理を行う。
- 内臓に多くのアニサキスが寄生していた場合は、内臓に近い部分(ハラス)を生食用として提供することは控える。
「やっつける」
- アニサキスは熱に弱いので加熱を行う。
- -20℃で24時間以上冷凍する。
※アニサキスは食酢やワサビ、にんにく、しょう油などでは死にません!
実際にしめ鯖によるアニサキス食中毒が発生しています!
クドア・セプテンプンクタータによる食中毒について
クドア・セプテンプンクタータは、クドア属の寄生虫(粘液胞子虫)の一種で、ヒラメの筋肉に寄生することが知られています。この寄生虫が多く寄生したヒラメを生で食べると、食後数時間で下痢、嘔吐、胃部の不快感などの症状がでますが、ほとんどの場合、速やかに回復します。
この食中毒は、ヒラメを冷凍(-20℃以下で4時間以上)又は加熱(中心温度75℃以上で5分間以上)すれば防ぐことができます。しかし、アニサキスと違い、クドア・セプテンプンクタータは大きさが0.01mm程度と非常に小さいため、肉眼で確認して取り除くことはできません。
なお、ヒラメは生で食べることが好まれていますが、冷凍すると品質が低下することから、現在、冷凍以外の食中毒予防方法についての研究が進められているところです。また、生産地(養殖場)でも、クドア・セプテンプンクタータ保有稚魚の排除、出荷前のモニタリング検査や、飼育環境の清浄化などの取り組みが進められています。
【クドア・セプテンプンクタータの顕微鏡拡大写真】
クドア・センプテンプンクタータは非常に小さいため、肉眼で確認することはできません。
(写真:(地独)大阪健康安全基盤研究所提供)
その他の魚介類から人に感染する主な寄生虫
魚介類から人に感染する可能性のある主な寄生虫を表に示しました。
これらの寄生虫の感染(食中毒)を予防するために、ホタルイカやサケ・マス類は冷凍(-20℃で24時間以上)してから生食すること、淡水産の魚介類の生食を避ける必要があります。
寄生虫名 | 主な原因 | 主な症状 |
---|---|---|
シュードテラノーバ※1 | サバ、ニシン、タラ、スルメイカ、アジ、アンコウなどの生食 | 激しい胃痛、吐き気、嘔吐など |
旋尾線虫 | ホタルイカの生食※2 | 腹痛、嘔吐、腸閉塞、皮膚爬行症※3など |
横川吸虫 | シラウオ、アユ、コイなどの生食 | 腹痛、下痢など |
肝吸虫 | ワカサギ、モロコ、コイなどの生食 | 食欲不振、下痢、黄疸、貧血など |
顎口虫 | ドジョウ、ナマズ、雷魚などの生食 | 皮膚爬行症※3など |
日本海裂頭条虫 広節裂頭条虫 | サケ、マスなどの生食 | 下痢、腹痛など |
肺吸虫 | モクズガニ、サワガニなどの生食 | 咳、血痰、気胸など |
※1 シュードテラノーバはアニサキスと外見、原因食品、症状も類似しています。予防方法はアニサキスと同じです。
※2 市場に流通しているホタルイカの多くは冷凍処理をして寄生虫を死滅させています。
※3 皮膚爬行症とは、寄生虫が皮膚の下を移動するときに生じるみみず腫のことです。
ヒスタミンによる食中毒について
魚介類を原因食品とする食中毒のうち、注意が必要なものの一つに「ヒスタミン」による食中毒があります。ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンを大量に含む食品を食べることにより起こる食中毒で、アレルギーのような症状を起こすのが特徴です。
原因となる食品は?
ヒスチジンというアミノ酸が多く含まれる赤身魚(マグロ、ブリ、サバ、イワシ、サンマ等)とその加工品が原因食品の多くを占めています。
ヒスチジンを多く含む魚を不適切な温度管理や長期保存をした結果、ヒスタミン産生菌の酵素の働きにより、ヒスチジンからヒスタミンが産生されます。このようなヒスタミンが多く産生された魚やその加工品を食べることにより発症します。
症状は?
通常、食後数分~30分程度で、顔面、特に口のまわりや耳たぶが紅潮し、頭痛やじんま疹、発熱などのアレルギー様症状がでます。重症になることは少なく、たいてい6~10時間ほどで回復するといわれています。なお、大量のヒスタミンが含まれる食品を食べた場合は、唇や舌先にピリピリとした刺激を感じることがあります。
予防方法は?
ヒスタミンは熱に安定しているため、一度産生されたヒスタミンは加熱調理では分解できず、食品に残ったままとなります。
そのため、「ヒスタミンを作らせない」ことが一番の予防方法となります。
- 魚は常温で放置しない。冷蔵でも、長時間の保存でヒスタミンが増えることがあるため、冷蔵の場合でも安心せずできるだけ早く調理する。
- 鮮度の低下した魚はヒスタミンが増えている可能性があるので使用しない。
- 解凍は冷蔵庫で行い、常温での解凍を避ける。
- 一旦解凍したものを再凍結して使用しない。
※食品中にヒスタミンが産生されていても、外見や臭いに変化はありません。
ヒスタミン食中毒の発生状況は?
下に示したグラフは平成25年1月~令和4年12月にかけて全国で発生したヒスタミン食中毒97件(患者数1,786名)の原因を分析したものです。ヒスタミン食中毒事件の平均患者数は約40名と通常の食中毒と比べ多くなっています。これはグラフ1にもあるとおり、保育所や学校などの給食施設における発生が多いためと考えられます。
また、グラフ2に示したとおり原因食品はサバやブリなどのヒスチジン含有量の高い赤身魚が多くなっています。
グラフ3には加熱調理の有無を示しました。これを見ると、約8割の原因食品は加熱調理されていることがわかります。「予防方法」で説明したように、ヒスタミンは熱に強いため、加熱調理では分解できません。「加熱するから大丈夫」ではなく、「ヒスタミン食中毒は加熱では防げない」ことに注意してください!
こちらの「STOP!魚介類による食中毒」もご参照ください。
- STOP!魚介類による食中毒(PDF形式, 1.96MB)
魚介類による食中毒のリーフレットです。
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