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【第77号】「子育てに『絵本の力』を活用しませんか?」 よみきかせボランティアサークル三丁目の鷹 鈴木健司

2022年10月30日

ページ番号:463956

はじめに

 今日こどもに怒鳴ってしまった方はいませんか?始まりはほんの些細なことだったはず。ちょっと話せば解決するかと思ったのに、こどもの態度を見ているうちにイライラしてきてとうとう怒鳴ってしまう。最初はこどもに大事なマナーやしつけを教えるつもりだったのに、いつのまにかけんかになっている。そんなときにはどうしたらいいのでしょうか?

 最初に分かっておいて欲しいのは、このコラムを最後まで読んでも答えは書いてありません。なぜかというと、私も毎日こどもにイライラして、つい感情的に怒鳴ってしまい悩んでいる張本人だからです。みなさんに「こうすればイライラしませんよ」という解決策はお答えできそうにありません。ただ、怒鳴ってしまうのは止められなくても、怒鳴ってしまった後にウチではこんなふうにしていますよ、ということはお伝えできるかもしれません。もしこのコラムを読んで「いいことを聞いた。やってみよう」と思う方がいらっしゃればうれしく思いますし、私のこどもも少しは怒鳴られた甲斐があったというものかもしれません。

自己紹介と子育てに関する私の考え方


 私にはいま4歳になる娘がいます。私と妻はともにフルタイムの正社員。娘は5ヵ月から保育園に通っていて、それ以来ずっと朝は私が送りに行っています。と書くと、「送り迎えなんてウチのパパは全然やってくれない。やっぱり絵本を仕事にしている人は違うのね」という声が聞こえてきそうです。絵本の講座の後にも参加者の方から「きっとすごくいいパパなんでしょうね」と言われます。ところが私にとってはそのイメージがすごくつらい。そういうふうに必死で見せているけど、実際はこどもに怒鳴ってしまい悩んでいるのです。特に危ないのは朝。よく「こどもと大人の時間は違うので、こどもの時間に合わせてあげて」と言われますが、会社のタイムカードはこどもの時間に合わせてはくれません。ノロノロしたこどもの態度に、今日もまた怒鳴ってしまう。そして、イライラしているときほど、なぜか周りの親の態度がおだやかで立派に見えて、自分だけがダメなんだと余計に落ち込む。


 そんなときに思い出してほしいのは、いま子育てをすることがどれほど困難なことなのかということです。おそらく人類の歴史の中で、いまが1番こどもを育てづらい時代です。こんなことを言うと「他の時代のことを本当に知っているのか!」と怒られそうですが、家族や地域社会の結びつきが薄れる時代背景で、今ほど親だけが孤独に子育てをする時代はかつてなかったのではないかと感じます。だから、あえて思いましょう。育てているだけで私は花丸なんだ、と。そう思わないと正直やっていられません。

子育てに「絵本の力」を

 そして、最近怒鳴ってばかりだな、と思ったらとっておきの方法があります。こどもをひざに抱いて絵本を読んでください。絵本を1冊読んだら、前回絵本を読んだ時から今日までにこどもを怒鳴ったことが、オセロのようにパタパタッとひっくり返って帳消しになります(と思いましょう)。何を根拠にと言われそうですが、大人が思いがけないほど、ひざに抱いて絵本を読んでもらう体験はこどものこころの奥深くに届きます。これはずっとよみきかせを続けてきて実感することです。ひとつ例を挙げます。

 集団に対してよみきかせをするとき、そこにはいろんなこどもたちがいます。絵本が好きな子、嫌いな子。日本語がわからない子、じっとしていられない子。視覚や聴覚の支援を受けている子。どの子も同じ空間で、同じ時間を楽しんでほしいと思って読みます。そのために大切なことは、1人1人に「あなたのことを見てるよ」と伝える気持ちで読むことです。きちんと聞けたか、内容が伝わったかはあまり考えません。とにかくこどもが「自分のことを見てくれた」と感じてくれることが重要です。


 そんな気持ちで読んでいると、こどものこころがふと開く瞬間に出会うことができます。あるとき私がネコが出てくる絵本を読んでいると、1人の男の子のお話が止まらなくなりました。「ぼくのおばあちゃんもネコ飼ってて黒い猫で白い猫でおばあちゃん家にいてて…」と話し続けます。後から聞くと、その子は園でほとんどしゃべったことがなく、主任先生は「あの子の声を初めて聞いた」と驚いていました。これはおそらく、周りのこどもたちが楽しそうにやりとりをしているのを見て、ついしゃべってしまったのでしょう。これこそ絵本の力だなぁと感じました。


 絵本は「あなたのことを見てるよ」と伝えるための道具です。やりとりができれば絵本の内容はなんでも構いません。極端に言えば、絵本が手元になければ洋服のチラシでも大丈夫。ひざに抱いて「どの服着たい?」と聞いてみる。もし「この服着てどこ行こう?」とお話が発展すれば花丸、100点です。精一杯子育てをしているのですから、怒鳴ってしまったら自分を責めるのではなく、こどもをひざに抱いてやりとりをして、怒鳴ったことをパタパタとひっくりかえして過ごしましょう。絵本はそのためのとても便利な道具です。

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