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【第124号】乳幼児期からの性教育 その1 ふくち助産院 福地理子

2024年11月22日

ページ番号:638307


私は学校での性教育の授業の講師を務めたり、保護者さんや幼児さん向けのお話会を開催したりしている助産師です。
大阪市の性教育に関わって7年目になります。私自身8歳、5歳の子どもがいます。子どもが産まれてから「乳幼児期の性教育」を悩みながらも実践してきた母親でもあります。

「おうち性教育」がプレッシャー?!

コロナ禍以来、性教育関連の絵本や本は出版ブームとなっており、その多くが3歳頃から読める絵本や保護者向けのものです。本屋さんで目にされた方も多いのではないでしょうか。

また、2023年に明るみになったアイドル事務所の性加害事件は、多くの人に衝撃を与えました。華やかな世界の裏で起っていた性暴力、そして男性から男性への性加害もあるということに不安を覚えた方も少なくないでしょう。性教育の大切さがメディアでも取り上げられることが増え、「何か始めないと!」と思っている方も多いと思います。とは言え、「何から?」という気持ち。

そして「自分に伝えられる気がしない!」という気持ちを持たれている方もいるでしょう。「おうち性教育」という言葉にプレッシャーを感じる、そんな保護者の方の声も聞いたことがあります。


「日々の生活で精一杯なのに、さらに性教育まで親がしないといけないの?!」なんて思われている方もいるかもしれません。そんな気持ちになって当たり前です。なぜなら私たち大人世代は性教育を十分に受けてきていないから。

みなさんの性教育のイメージって、思春期に入ってから受ける「二次性徴」や「避妊」「性感染症」あたりではないでしょうか。

そう、「性教育=知識を伝えていくこと」というイメージです。



でも実は、今国際的にスタンダードとなっている「包括的性教育」は、「科学と人権」をベースにもっともっと幅広いテーマを扱います。(詳しくはユネスコ発行:国際セクシュアリティ教育ガイダンスをご参照くださいね。2009年に発行された包括的性教育の国際的な指針です。)

誰もが「性」と共に生きていきます。

その人生が幸せであるためには、ただ知識があるだけでなく、安心な人間関係が築けることや自分という存在が「大切」と思える感覚を持てることが重要です。その礎が乳幼児期にあります。そしてそれは、何も特別なことではなく、すでに保護者のみなさんが実践していることも沢山あるということなのです。

乳幼児期の性教育のポイント


乳幼児期の子ども達への性教育は、何かを教えこむことではありません。
乳幼児期の性教育のポイントはズバリ2つ。
①大人に世話をしてもらわないといけない時期に「あなたの体は大切」というメッセージを送ること
②「男らしさ」「女らしさ」にとらわれず、自分は自分で良いと子ども自身が思えること(『乳幼児期の性教育ハンドブック』“人間と性”教育研究協議会乳幼児の性と性教育サークル著を参考に記載しています。)

いかがでしょうか。

人は、「大切にされる」経験なくして「自分を大切にする」という感覚は育っていきません。排泄や食事など、どう言っても大人からのケアを必要としているこの時期に、子ども自身が「私の体は私だけの大切なもの」と感じられること。その先に「私もみんなも大切」「自分は自分でいい」という感覚を育てていくのが乳幼児期の性教育です。

と、ここまで読んで「性教育できてなかった〜(涙)」と落ち込む必要はありません。気づいた時からいつからでも始められます。それくらい、性教育は暮らしとともにあります。では、具体的にどんなことができるかみていきましょう。


一声かけて丁寧に


乳幼児期の子どもが「あ〜大切にされているなあ」と感じる経験ってどんなことがあるでしょうか。
例えば、乳幼児期のお世話と言えばオムツ交換があります。その時に、何の声かけもなかったり、「くさっ!」なんて言われたりしたら、子どもはどう感じるでしょうか。反対に、まず「オムツ替えるね」と声をかけてもらって、「スッキリしたね」「気持ちよかったね」と言われたらどうでしょうか。「あ〜自分の体を大切にしてくれているなあ」と感じるのではないでしょうか。
『一声かけて丁寧に』がお世話の基本です。
毎日行うお世話の中で、「あなたは大切」「自分の体は大切」を何度も子どもに伝えるチャンスがあると言えます。


「快」から始めるスキンシップ


乳幼児期の子ども達は、大人の関わりを通して「快」の感覚を育んでいきます。自分を大切に思っている人とのスキンシップはこんなに心地良いのだなあ、安心できるのだなあという感覚です。この感覚があるからこそ、自分に対して加害をしてこようとする人のタッチに「なんか怖い」「気持ち悪い」「近づかない方が良さそうだぞ」と危険を察知することができるようになります。

なので大人は、子どもが快の感覚(気持ちいいな、安心だな、嬉しいな、などポジティブな気持ち)になれる関わりを多く持ちたいものです。

さらに大人ができることは、快・不快の感覚に伴う気持ちを言語化してあげること。「気持ちいいね」「ホッとするね」「怖かったね」などです。自分が何に快不快を感じるのかが分かり、それを表現する力が身につくことは、嫌なことをされそうになった時に「嫌だ」「やめて」を言う力につながります。


いかがですか。
「あれ、性教育ってそういうこと?」と思われた方もいるかもしれません。
次回も具体的にどんなことができるか考えていきましょう。



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