大阪市人権行政基本方針
2024年4月30日
ページ番号:4585
大阪市人権行政基本方針の概要
はじめに
市民ニーズが高度化・多様化し、行政が果たすべき役割も増加しているなか、行政としては、市民公益活動の主体性・自立性を尊重しつつ、パートナーとして連携し協力していくことがさらに重要になっています。
また、他都市に比べて高齢者世帯や外国籍住民の比率が高いことなどの本市の特性にも留意しながら、人権が尊重される社会の実現をめざしていかなければなりません。
この「基本方針」で明らかにした人権行政の基本理念と方向性に基づき、市民一人ひとりの人権が尊重され、心豊かでいきがいのある社会の実現をめざして、たゆまぬ努力を傾注してまいります。
人権行政の基本理念
地方自治体の役割は、「日本国憲法」の理念を地域において住民自治によって具体化していくことです。「日本国憲法」の基本理念は平和主義、民主主義、そして基本的人権の尊重であり、とりわけ基本的人権の尊重は地方自治体にとって最も住民に直結した課題です。
市民生活の中から生起するニーズに対し、行政は市民の信託に基づき、市民の協力を得ながらそのニーズに応えていく責務があります。行政施策は、もともと市民生活に直接・間接を問わず関わっており、これを推進していくことは住民の福祉を増進することであり、人権を尊重し、擁護していくことです。
人権行政とは、市政において日常の業務はもちろんのこと、すべての施策の企画から実施にいたる全過程を通じて、すなわち行政運営そのものを人権尊重の視点から推進していくことにほかなりません。
大阪市がめざす人権行政を推進するに当たっては「だれもが個人として等しく尊重され、共生していく差別のない社会を実現し、自らの人生を自分で切り拓き、自己の能力を発揮でき、いきがいのある人生を創造できる社会を実現していくこと」を基本理念としています。このような基本理念に基づく社会を築いていくためには、行政はもとより、市民一人ひとりが主体的に努力していくことが必要です。そのためにも、市民自らが社会の構成員としての責任を持ち、一定のルールを守り、相互の人権を尊重していくことが求められます。この基本理念を具体的に実現していくために、次の基準の達成を基本目標として施策を実施していくこととします。
1 「人間の尊厳」の尊重
人間は人間であるという、ただそれだけで至高の価値を持っています。こういった意味を持つ「人間の尊厳」こそが、人権を支える根拠となっています。
「日本国憲法」は、「すべて国民は、個人として尊重される」(第13条前段)と規定し、また家族に関する法が「個人の尊厳」に立脚していなければならないと定めていますが(第24条)、「人間の尊厳」について明示的に言及していません。しかし、一般に、個人として尊重されるということは、それぞれが「一人の人間」として尊重されるということであり、これはすべての人の「人間の尊厳」を認めたものだと考えられています。
したがって、行政施策においては、まず何よりも、「人間の尊厳」を尊重することが求められます。
2 平等の保障
すべての人は、一人の人間として平等に扱われる権利を有しています。このことは、まず本市の直接行う行政サービスについて、すべての人が平等な機会を保障されるべきことを意味します。また、教育や就職など、あらゆる生活分野においても、すべての人が平等な機会を保障されるよう行政として努めることが求められています。さらに、平等な機会の保障に当たっては、必要に応じ、それぞれの人の置かれている状況や状態に対応した措置をとることも求められます。
3 自己決定権の尊重
すべての人が「人間の尊厳」を持っているということは、すべての人が自己実現をめざし、自分の人生を自ら決定して生きていくことのできる人間として尊重されるべきだということを意味します。したがって、それぞれの人の選んだ生き方をそのようなものとして尊重していくことが必要となります。つまり、それぞれの自己決定権を尊重すべきだということです。このことは、画一的な価値観を押しつけるのではなく、一定のルールの中で人々の多様な生き方を受け入れ、それぞれがお互いの多様な生き方を認め合うことを意味します。
新たな人権行政推進のためのシステム
今存在しているさまざまな人権問題、また、今後新たに生じてくる人権問題についても、人権教育・啓発をはじめ、あらゆる施策において人権尊重の視点からその問題の解決に向けた取組を進めていかなければなりません。
大阪市では、この「基本方針」に基づき、人権行政の基本理念の実現に向け、本市人権行政の推進体制を有効に機能させながら「大阪市人権施策推進本部(※)」により人権行政の進捗管理を進めるとともに、各種の施策が人権尊重を基礎として展開されるよう施策の企画・運営システムを構築していく必要があります。
(※)「大阪市人権行政推進本部」に改称(以下同様)
人権問題は環境問題とともに、人類共通の重要な課題であるとの認識が地球規模で共有されつつあり、また地域自らの創造性と主体性を最大限に発揮しなければならない地方分権の時代を迎えています。市民の日常生活に関わっている地方自治体の行政施策の推進に当たっては、人権を尊重し、擁護することが特に求められており、対症療法的な対応でなく、政策課題の設定から施策実施までのすべての分野にわたって変革していくことが重要です。
そのためには、人権尊重を基礎とした施策を総合的・体系的に推進する全庁的な体制として設置した「大阪市人権施策推進本部」及び「大阪市人権尊重の社会づくり条例」に基づき設置した「大阪市人権施策推進審議会」など人権行政推進のための体制の整備とともに、行政運営、施策を立案・実施する過程そのものに人権尊重の理念を軸としたシステムを確立していくことが重要です。
また、人権行政を展開していくに当たっては、各行政部局が有機的連携を図り、これまで総合的に取り組んできた同和行政で培われた実績を積極的に活用していくことに留意していくべきです。
さらに、真の意味で人権が尊重される社会を実現するためには、市民が人権問題に関心を持ち、市民一人ひとりが自らの問題として主体的に努力することが重要です。そのためにも、各分野の施策の進捗状況を市民に広く情報提供します。また、市民の理解と協力を得ながら施策を進めていくために、行政の公平性・透明性の確保に努めなければなりません。
1 人権尊重を基礎とした業務の遂行と、施策の企画・運営システムの構築
(1)人権尊重を基礎とした業務の遂行
(2)施策の企画・運営のシステム
ア 現状の分析と政策課題の設定
イ 施策の企画・検討
ウ 施策の策定と実施
施策は、「基準」に基づき明確な目的・目標を立て、より効果的で実効あるものを策定します。施策を実施する事業の優先順位などの決定時においても、この「基準」が考慮されなければなりません。また、既存の施策は「基準」に照らし、必要に応じて適切に改善します。
施策の実施は、具体的な事務事業として展開され、そのすべての過程において「基準」を踏まえ業務を進めていきます。
施策を実施する際には、その内容を市民に対して適切に情報提供し広報に努めます。そのことは、市民が具体的に人権問題を知り、身近なものとしてとらえる機会の拡大にもつながり、より効果をあげるためにも施策の実施と市民啓発を一体的に推進します。さらに、施策の実施に際してNGO・NPO(※)などのボランティアの自主的な活動との連携も重要となっています。
(※) NGO(非政府組織)は、もともとは国際連合の経済社会理事会と協議資格などを持つ国際的市民団体のことでしたが、現在では広く市民団体全般を指します。特に国際的な課題に取り組む市民団体を指して、多く使われています。NPO(非営利組織)は、政府機関・企業ではない民間公益団体を指します。政府や企業では取り組みにくいが、社会的に必要であり公共性を有する事業を行う社会組織として注目されています。わが国は、その活動を保証するため、平成10(1998)年3月に「特定非営利活動促進法」(NPO 法)を制定しました。
エ 施策の実施効果についての評価・検証
2 人権行政推進のための体制
(1)大阪市人権施策推進本部
本市では、人権が尊重される社会の実現が、全市をあげて全職員が取り組むべき重要課題であることを内外に明確にするとともに、あらゆる行政施策に人権尊重の視点を織り込むために施策の企画・運営システムを効果的に運用し、総合的・体系的な人権施策の積極的な推進を行う体制として、平成11(1999)年4 月から市長を本部長とする全庁的な「大阪市人権施策推進本部」を設置しています。
同「推進本部」は、次のような役割を果たし、人権施策を総合的に推進します。
ア
イ
ウ
本市が取り組んできた人権教育・人権啓発や職員研修の取組を継続的かつ総合的に進めるために策定した「大阪市人権教育・啓発推進計画(※)」に基づき、関係局相互の緊密な連携・協力を確保し、総合的・効果的な推進を図り全庁的な取組を進めます。
(※)「大阪市人権行政推進計画~人権ナビゲーション~」に統合
エ
オ
(2)大阪市人権施策推進審議会
3 市民参加の促進
(1)市民公益活動(ボランティア・NPO)のインセンティブ(誘導策)の企画
(2)市民ニーズの反映
ア 各種相談のネットワーク化
市民が日常生活の中で直面する人権に関わる相談については、現在、本市が行っている法律相談、消費生活相談をはじめ、高齢者、障害のある人、女性など相談内容に応じた専門の窓口を開設してきており、さらに市民ニーズに応え、認知症高齢者・知的障害者・精神障害者などに対するいじめや虐待、財産侵害などの権利侵害についての相談、こころの健康に関する相談やスクールカウンセラーによる「いじめ」の相談窓口の開設など、その充実に努めています。
人権相談については、平成14(2002)年9 月から区役所において窓口を開設しており、事案に応じて情報提供や専門相談機関に紹介・取次ぎを行うなどの具体的な対応を行っています。また、本市においては、「人権相談ネットワーク人権施策推進連絡会(※)」及び「専門相談機関連絡会」を設置して、相談機関相互の連携に努めており、法務局や大阪府、弁護士会などでも人権相談窓口を設けています。
今後とも、これら相談機関との連携を進めるとともに、国や府とも連携を図り、必要な機関への紹介など、さまざまな人権問題に対応する相談窓口の整備、体制の充実を図ります。
(※)「人権相談ネットワーク連絡会」に改称
イ 新たな相談ニーズへの対応
ウ 「市民の声」を市政に反映させる仕組み
そのため、全市的な視点で「市民の声」から市民ニーズを的確に把握し、施策・事業への反映や現行の行政システムの改善を図る仕組みを活用し、市民ニーズをより一層市政に反映させる取組を進めます。
エ 実態調査などの実施
人権が尊重される社会の実現をめざす施策を企画・検討し、実施するためには、本市における人権啓発についての施策効果を把握するとともに、人権問題に関わる実態とそれを生み出している原因を的確に知ることが必要です。また、時代の変化に対応した新たな市民ニーズに適切に応えていくことが重要となっています。
そのため、本市における人権問題、人権状況についての実態調査などを行います。
大阪市人権行政基本方針(概要版)
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大阪市人権行政基本方針(全文)
大阪市人権行政基本方針(平成11年4月策定、平成17年4月改訂)
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