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平成31年3月19日付け裁決(答申第21号)

2023年2月17日

ページ番号:469870

裁決書

審査請求人
〇〇〇〇
同代理人
〇〇〇〇
処分庁
大阪市長 

 審査請求人が平成29年11月2日に提起した処分庁 大阪市長(以下「処分庁」という。)による旅館業営業許可申請に対する不許可処分に係る審査請求について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 平成29年1月11日、審査請求人から大阪市保健所長に対して旅館業施設の建築計画届出書の提出が行われた。
2 審査請求人に対して「届出のあった建築物について旅館業法及び大阪市旅館業法の施行等に関する条例上、営業を許可するにあたり支障がない」旨の通知書を平成29年2月23日付けで審査請求人に交付した。
3 平成29年7月20日、審査請求人から処分庁に旅館業営業許可申請(以下「本申請」という。)が行われ、大阪市保健所環境衛生監視課が受付したが、旅館業営業許可に係る審査基準(以下「本審査基準」という。)で定める建築基準法に基づく検査済証の写しが添付されていなかったため、平成29年8月10日、建築基準法違反施設の疑い物件として健康局健康推進部生活衛生課に報告を行った。
4 平成29年9月1日、都市計画局建築指導部監察課から健康局健康推進部生活衛生課に対し「当該建築物は、都市計画法で第二種中高層住居専用地域であり、建築基準法上、簡易宿所の用途に変更できない。立ち入り調査を行わない。」旨の回答があった。
5 平成29年10月18日、処分庁は当該申請に対し旅館業営業許可に関する不許可処分を行った。
6 平成29年11月2日、審査請求人は大阪市長に対し本件処分の取消しを求める審査請求を行った。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1)審査請求人は本件処分の取消しを求める理由を次のとおり主張している。
ア 処分庁は、不許可理由として「建築基準法担当部局から施設が安全である旨の回答が得られず、本審査基準に適合しない」と述べているが、施設を調査した建築基準法担当部局から、用途地域に関する指摘を受けたが「施設が安全でない」との指摘は一切受けていない。また、施設はすでに建築確認検査を受け、消防法令適合通知書も交付されており、「施設が安全でない」という事実は存在しない。
イ 加えて、本施設は、「大阪市旅館業法の施行等に関する条例」第5条に規定する簡易宿所営業の施設の構造設備の基準を満たし、かつ、本審査基準を満たしていることから、本件処分は、旅館業法第3条の規定に違反しており、違法である。
(2)また、審査請求人は、処分庁の主張に対し次のとおり反論している。
ア 審査請求人は、平成29年2月23日付けで「旅館業法及び大阪市旅館業法の施行等に関する条例上、営業を許可するにあたり支障がない」旨の通知を受け、消防法令に適合すべく、消防設備工事を行ったうえで本申請を行った。
イ 旅館業法第3条第2項において、「都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号の一に該当するときは、同項の許可を与えないことができる。」と規定されており、本件については、そのいずれにも該当しないことは処分庁自身も認めている。
ウ したがって、「旅館業法及び大阪市旅館業法の施行等に関する条例上、営業を許可するにあたり支障がない」本案件に対する「営業許可不許可」処分は旅館業法第3条第2項に違反する違法な処分であり、本件処分を取り消すべきである。
(3)また、処分庁が弁明書で主張している「建築基準法担当部局からの回答において旅館業の用途として使用した場合の安全性を判断できる回答が得られなかった」ことを理由として不許可処分に至った件について、次のとおり見解を述べている。
ア 建築基準法担当部局は、本案件の属する地域が、建築基準法上、簡易宿所の用途に変更できない地域であることを理由として、立ち入り調査自体を行わず、「安全性の判断」自体を行わなかったのである。これは、本審査基準の趣旨に反する、建築基準法担当部局による不作為であり、直ちに立ち入り調査を行い、処分庁あてに報告すべきである。
イ 旅館業施設の建築計画届には、用途地域の記載箇所があり、審査請求人は用途地域を誤って「第一種住居地域」と記載したものである。しかしながら、処分庁は、用途地域も含めて審査した上で、「旅館業法及び大阪市旅館業法の施行等に関する条例上、営業を許可するにあたり支障がない」と判断したものであり、処分庁の責任は重大である。
ウ また、用途地域制限に関しては、旅館業法及び大阪市旅館業法の施行等に関する条例にも制限規定はなく、現行法令上は、建築基準法第9条において、違反建築物に対する措置規定が設けられている。
エ したがって、本案件については、旅館業法による営業許可不許可処分でははなく、建築基準法第9条による必要な措置をとるえきである。
(4)審査請求人の申出を受け、平成30年3月22日に実施した口頭意見陳述において、審査請求人は、前記アの内容に加え、建築基準法担当部局が立入調査を実施しなかったことは職務怠慢であり、建築基準法担当部局に審査請求を行う旨の主張を行っている。
2 処分庁の主張
(1)本審査基準において、「当該建築物について、建築基準法違反が疑われる場合は、建築基準法担当部局から施設が安全である旨の回答を得られること。」と規定されている。
(2)審査請求人は、「施設を調査した建築基準法担当部局から用途地域に関する指摘を受けたが、施設が安全でないとの指摘を一切受けていない。」こと及び「施設は既に建築確認検査を受け、消防法令適合通知も交付されている」ことを理由に「施設が安全でないという事実は存在しない」と主張している。
(3)しかしながら、審査請求人が主張する建築確認検査については旅館業の用途としての確認検査ではないこと、申請時に旅館業の用途として使用する際の安全性を確認できる検査済証の添付が無かったこと、建築基準法担当部局からの回答において旅館業の用途として使用した場合の安全性を判断できる回答が得られなかったことから、本審査基準の規定を満たさないものである。
(4)したがって、本件審査請求を棄却すべきである。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
(1)旅館業法はその目的を「公衆衛生及び国民生活の向上に寄与すること」とし(同法第1条)、旅館業の営業許可の申請に係る「施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき」には、市長は旅館業の営業の許可を与えないことができることとされている(同法第3条第2項)他、同許可の申請に係る施設の設置場所において所定の周辺施設の「清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるとき」においても、同様に営業の許可を与えないことができるとされている(同条第3項)。
(2)また、本審査基準については、次に記載のとおりと認められる。
ア 審査基準とは、行政手続法(平成5年法律第88号)第2条第8号ロにおいて「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。」と定義され、また、大阪市行政手続条例第5条第1項において「申請により求められた許認可等をするかどうかをその条例等の定めに従って判断するために必要とされる基準」と定義されている。
イ 本審査基準において、「許可申請書には、次の書類が添付されていること」とされ、その添付書類として、建築基準法に基づく検査済証の写し又は仮使用承諾書の写しが定められている。
ウ 本審査基準において、建築基準法に基づく検査済証等の書類は添付されていない場合の代替措置として「当該建築物について、建築基準法違反が疑われる場合は、建築基準法担当部局から施設が安全である旨の回答が得られていること。」と規定されている。
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は、審査請求人による本申請が、旅館業法第3条による営業許可に係る本審査基準の要件に適合しているか否かである。
3 争点に係る判断について
(1)前掲のとおり、本審査基準は、旅館業法第3条による営業許可の申請に際して、建築基準法に基づく検査済証の写し又は仮使用承諾書の写しの添付を求めるとともに、(本審査基準第1項第3号)、当該建築物について、建築基準法違反が疑われる場合は、建築基準法担当部局から施設が安全である旨の回答を得られることを必要としている(本審査基準第2項第4号)。
 上記のような本審査基準の内容に照らせば、本審査基準は、旅館業法第3条による許可に際して、当該建築物が建築基準法の定めに適合するか否かをチェックするための枠組みを定めたものといえ、本審査基準第2項第4号に定める基準もまたその一環として、施設の安全性の観点から、当該施設の建築基準法への適合性をチェックしようとしたものといえる。
 この点、前掲の旅館業法の目的(同法第1条)や同法の定める営業の許可に係る条件(同法第3条)、並びに法体系の整合性の見地に照らしても、同法第3条の許可に際して、当該施設の建築物としての側面に着目し、当該施設の安全性や、当該施設の設置場所周辺の清純な環境を維持する目的により当該施設の建築基準法への適合性を勘案することは、同法の趣旨に沿うものであり、不合理な点は認められない。
 こうしたことを踏まえ、審査請求人による本申請が、旅館業法第3条による営業許可に係る本審査基準の要件に適合しているか否かという点について、本件の事実関係に照らして検討を行った。
(2)審理員意見書、事件記録、審査会における調査審議によれば、審査請求人においては、本申請に際して本審査基準第1項第3号に係る検査済証の写し等の添付がなく、このことから、当該旅館の建築物について建築基準法違反が疑われるところ、建築基準法担当部局より「施設が安全である」旨の回答が得られていないことが認められる。
 なお、本件においては、建築基準法担当部局が「施設が安全である」旨の回答を行うか否かの前提としての、同部局による当該建築物への立入調査すら実施されていないところではあるが、審理員意見書、事件記録、審査会における調査審議によれば、本審査に係る建築物が建築基準法の定める用途地域に係る規制に違反するものであることは客観的に明らかであって、当該建築物において旅館業を営むことを前提とする限り、建築基準法担当部局において当該建築物に立入調査を行ったところで、用途地域に係る規制に対する違反が是正される余地はなく、建築基準法違反が解消されるものではない。したがって、本件において、建築基準法担当部局が当該建築物の立入調査自体を実施しなかったことは、妥当な対応であるというべきである。
 以上のとおりであることから、本申請は本審査基準に適合しないものといわざるを得ない。
(3)なお、審査請求人は、当該旅館の建築物につき、「施設が安全でない」との指摘は受けていないこと、そもそも当該旅館の建築物につき既に建築確認検査等を受けていることから「施設が安全でない」との事実は存在しないことを主張する。
 しかしながら、本審査基準第2項第4号は、前掲のとおり、施設が「安全でない」との指摘を受けていないことを許可の基準としているものではなく、許可の基準として、建築基準法担当部局から施設が「安全である」旨の回答が得られることを求めるものである。そして、当該施設が安全であるか否かにかかわらず、上述のとおり、当該旅館の建築物が建築基準法に違反するものであることは明らかなのであるから、当該施設が安全であるか否かを議論する実益はない。
 しかも、そもそも審査請求人が既に受けていると主張する建築確認検査は、旅館業の営業を前提としない、「共同住宅」としての用途を前提に受けたものと思われる。
(4)また、審査請求人は、建築基準法担当部局が「施設が安全である」旨を判断する前提として、そもそも、当該建築物に対する立ち入り調査を行わなかったことの不作為を主張する。
 この点については、上述のとおり、本件において、建築基準法担当部局が当該建築物の立ち入り調査自体を実施しなかったことは、妥当な対応であるというべきであって、処分庁の違法な不作為を構成するものではなく、本審査基準への不適合を解消するものではない。
(5)さらに、以上に述べたとおり、当該建築物に建築基準法違反が認められるということは、本審査基準に適合していないということになるのであることから、本件不許可処分に先立ち、建築基準法に基づく是正措置を先行させるべき法的義務が処分庁に課されるものでもないというべきである。
(6)したがって、本件不許可処分に違法又は不当な点は認められない。
4 結論
 以上のとおり、本件審査請求には理由がないことから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

平成31年3月19日
審査庁  大阪市長 吉村 洋文

裁決書(平成30年度答申第21号)

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