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平成31年3月28日付け裁決(答申第25号)

2023年2月17日

ページ番号:471235

裁決書

審査請求人
○○○○

処分庁
大阪市○○区保健福祉センター所長

 審査請求人が平成29年9月5日に提起した処分庁による生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第78条の規定に基づく徴収金決定処分(○○第○○号。以下「本件処分」という。)に係る審査請求(以下「本件審査請求」という。)について、次のとおり裁決する。

主文
本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 平成29年3月1日、処分庁が審査請求人に対し、法による保護を開始した。
2 平成29年○月○日、処分庁に対し、審査請求人が、居住実態がないにもかかわらず生活保護を受けているという内容の情報提供があった。
3 平成29年○月○日、処分庁がC株式会社から、審査請求人の電気契約に係る直近3か月の月別使用量及び請求金額に関する法第29条に基づく調査に対する回答を受理した。同回答には、平成29年3月の使用量が○kWhであり、同年4月の使用量が○kWhであった旨の記載があった。
4 平成29年6月1日、処分庁が審査請求人に対し、居住実態に関する聞き取り調査を行うとともに、審査請求人の居宅(以下「本件住宅」という。)について実地調査を行った。
5 平成29年6月7日、処分庁が審査請求人に対し、同月1日付けで法による保護を廃止した。
6 平成29年6月19日、処分庁が本件処分を行った。
7 平成29年9月5日、審査請求人が大阪市長に対し、本件処分の取消しを求める審査請求をした。

審理関係人の主張の要旨
1  審査請求人の主張
 本件処分の決定理由において審査請求人が「住んでいない」と回答したと記載されているが、住んでいないとは一言も言っておらず、これは虚偽である。 
 洗剤やゴミ箱は置いてあり、トイレットペーパーは箱ティッシュを使用していたし、衣類に関しては最低限着るものだけを衣類ケースにしまっていた。洗濯はコインランドリーで行っていた。
 夜はキャンドルを焚いて生活していたが、キャンドルを使わなくても近くのビルの窓の明かりで夜でも部屋の中は立っていても足元が見えるほど明るかった。
 住んでいる形跡を無くそうとした理由は、不動産業者の方から迷惑行為を受けており、同人に住んでいないと思わせるためであった。
 よって、本件処分は不当である。

2 処分庁の主張
 本件住宅については、オール電化のマンションであるが、平成29年4月分の電気使用量が○kWhであった。審査請求人は、キャンドルを使用していた、ビル明かりで足元が見えたと述べるが、家庭訪問時にそのローソクは確認出来なかったし、ビルの明かりのみで生活の継続は困難である。
 また、冷蔵庫のコンセントは抜かれており、洗濯機にいたっては入居後一度も使ったことが無いという審査請求人の弁もある。そして、自炊もしていたとのことであるが、その痕跡がなかった上に、オール電化のマンションで電気を使用せず自炊することは不可能である。浴室についても、排水口はきれいで洗剤類は一切置いてなかった。そのほかにも、生活に最低限必要であろうと思われる物品が無かった。
 さらに、家庭訪問時に、審査請求人が自ら「住んでいない」と答えており、その答えは、処分庁の職員二名で聞いている。
 これらの事実を踏まえ処分庁は、審査請求人について、平成29年○月○日から同年○月○日までの間、A区○○で居住している実態がないと判断したのであり、A区○○で居住していることを前提として行われた審査請求人に対する同期間の住宅扶助費は、審査請求人が、居住実態を偽り、法第78条における「不実の申請」によって受給したものであることが明らかであるため、本件処分を行ったものである。
 よって、本件処分には違法又は不当な点はない。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
(1) 法第4条は、生活保護制度における基本原理の一つである「保護の補足性」について規定しており、その第1項において、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と定めている。また、法第5条は、「この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基づいてされなければならない。」と定めている。
(2) 法第8条第1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」と定めている。
 これは、生活保護制度により保障されるべき最低限度の生活は、生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日厚生省告示第158号。以下「保護の基準」という。)によって、要保護者各々について具体的に確定され、その保護の程度は、保護の基準によって測定された需要と要保護者の資力(収入)とを対比し、その資力で充足することのできない不足分について扶助されることを定めているものである。
(3) 法第28条及び第29条で保護の実施機関には積極的な調査権限が付与されているが、併せて、法第61条では、「被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。」と規定し、被保護者に対し、届出の義務を課している。
(4) 法第78条第1項は、「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の額の全部又は一部を、その者から徴収するほか、その徴収する額に100分の40を乗じて得た額以下の金額を徴収することができる。」と規定している。
(5) 生活保護行政を適正に運営するための手引について(平成18年3月30日社援保発第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知。以下、「18年課長通知」という。)で提示されている「生活保護行政を適正に運営するための手引」のⅣ-3-(1)の注)において、「『不実の申請その他不正な手段』とは、積極的に虚偽の事実を申し立てることはもちろん、消極的に事実を故意に隠蔽することも含まれる。刑法第246条にいう詐欺罪の構成要件である人を欺罔することよりも意味が広い。」と示されている。
(6) 生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて(平成24年7月23日社援保発0723第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知。以下「課長通知」という。)の「2 法第78条に基づく費用徴収決定について」では、「法第63条は、本来、資力はあるが、これが直ちに最低生活のために活用できない事情にある要保護者に対して保護を行い、資力が換金されるなど最低生活に充当できるようになった段階で既に支給した保護金品との調整を図るために、当該被保護者に返還を求めるものであり、被保護者の作為又は不作為により保護の実施機関が錯誤に陥ったため扶助費の不当な支給が行われた場合に適用される条項ではない。被保護者に不当に受給しようとする意思がなかったことが立証される場合で、保護の実施機関への届出又は申告をすみやかに行わなかったことについてやむを得ない理由が認められるときや、保護の実施機関及び被保護者が予想しなかったような収入があったことが事後になって判明したとき等は法第63条の適用が妥当であるが、法第78条の条項を適用する際の基準は次に掲げるものとし、当該基準に該当すると判断される場合は、法第78条に基づく費用徴収決定をすみやかに行うこと。」と述べたうえで、法第78条の条項を適用する際の基準について、「①保護の実施機関が被保護者に対し、届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらず被保護者がこれに応じなかったとき、②届出又は申告に当たり明らかに作為を加えたとき、③届出又は申告に当たり特段の作為を加えない場合でも、保護の実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又は虚偽の説明を行ったようなとき、④課税調査等により、当該被保護者が提出した収入申告書が虚偽であることが判明したとき」と示されている。
 よって、法第78条の適用にあたっては、保護費を不当に受給しようとする意思があることが求められるとともに、課長通知における各基準はその客観的事情を示しているものと解され、かかる解釈に不合理な点はない。
(7) 生活保護問答集について(平成21年3月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)の問13-22の答において、法第78条による「徴収額は、不正受給額を全額決定するものであり、法第63条のような実施機関の裁量の余地はないもの」とされており、また、問13-23の答の「(3)法第78条を適用する場合」において、「意図的に事実を隠蔽したり、収入の届出を行わず、不正に保護を受給した者に対しては、各種控除を適用することは適当ではなく、必要最小限の実費を除き、全て徴収の対象とすべきである。」と示されている。さらに、問13-25の答において、「法第78条に基づく費用の徴収は、いわば損害追徴としての性格のものであり、法第63条や法第77条に基づく費用の返還や徴収の場合と異なり、その徴収額の決定に当たり相手方の資力(徴収に応じる能力)が考慮されるというものではない」と示されている。
2 争点
審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は次のとおりである。
(1) 審査請求人が居住地であるとして申請した住宅に居住実態があったか否か(争点1)
(2) 審査請求人に保護費を不当に受給しようとする意思があったか否か(争点2)
3 争点に係る判断
(1) 争点1について
 審査請求人は、居住地であるとして申請した本件住宅に居住実態があったと主張する。しかし、平成29年4月分の電気使用量が○kWhであり、また、同年5月分の電気使用量も○kWhであったことが認められる。審査請求人は、電気を使用していなかったことについて、キャンドルを使用していた等主張するが、不自然であり、生活保護費により最低限の生活が保障されている中で、あえて電気を使用せずに生活する理由を見出しがたい。
 また、事件記録によれば、処分庁による実地調査において、カーテン、各種洗剤、トイレットペーパー、衣類等生活に最低限必要であろうと思われる物品が本件住宅に存在しなかったことが認められる。
 これらのことから、審査請求人は、本件住宅に一時的に立ち寄ることはあっても、寝食を行う生活の本拠としては使用していなかったと考えられる。
 むしろ、事件記録によれば、審査請求人は、本件住宅への転居後も、転居前の元夫が家賃を負担している住宅(以下「転居前住宅」という。)の鍵を所有しており、当該住宅で猫の世話をしていたということであるから、転居前住宅を生活の本拠として使用していたと考えるのが自然である。
 以上より、本件住宅に居住していたとの審査請求人の主張は信用できず、遅くとも平成29年4月以降は、本件住宅における居住実態はなかったと認められる。
(2) 争点2について
 前記(1)で認定した事実を前提にすると、審査請求人は、平成29年6月1日の処分庁の実地調査の際に事実を隠蔽し、居住実態について虚偽の説明を行ったと言えることから、課長通知の③「届出又は申告に当たり特段の作為を加えない場合でも、保護の実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず、又は虚偽の説明を行ったようなとき」に該当し、保護費を不当に受給しようとする意思をもって居住実態の変更について申告しなかったことが認められる。
(3) 小括
 以上から、4月、5月分の住宅扶助費について、法第78条の規定を適用した本件処分に違法又は不当な点は認められない。
4 結論
 以上のとおり、本件審査請求は理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

平成31年3月28日
審査庁 大阪市長職務代理者
大阪市副市長 田中 清剛

裁決書(平成30年度答申第25号)

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