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答申書(令和元年度答申第12号)

2023年2月17日

ページ番号:489683

諮問番号:令和元年度諮問第3号
答申番号:令和元年度答申第12号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2  審査請求に至る経過
1 平成30年1月24日、審査請求人は、A区保健福祉センター(以下「センター」という。)において、身体障がい者手帳(以下「手帳」という。)についての身体障害者福祉法施行令(昭和25年政令第78号。以下「令」という。)第10条に基づく再交付申請(等級変更)を大阪市長あて行った。
2 審査請求人は、B市においてC都道府県から手帳2級(以下「2級」という。)及び第1種身体障がい者(以下「1種」という。)の認定を受けていた。平成29年〇月〇日にB市から大阪市D区へ転入し、同区保健福祉センターに手帳の再交付申請を行ったところ、2級及び第2種身体障がい者(以下「2種」という。)の認定を受けた。
 その後、審査請求人は、平成29年〇月〇日にD区からA区に転入し、平成30年〇月〇日身体障害者診断書・意見書(以下「当該診断書」という。)により新たにE部位機能の著しい障害の追加診断を受けたことから、平成30年〇月〇日にセンターに手帳の再交付申請(以下「当該申請」という。)を行った。
3 センターでは昭和57年1月6日付け社更第4号各都道府県知事・各指定都市市長宛厚生省社会・児童家庭局長連名通知「身体障害者に対する旅客鉄道株式会社等の旅客運賃の割引について」により定められた基準(以下「当該基準」という。)及び当該診断書の内容に基づき、平成30年〇月〇日に2級2種の決定を行い、平成30年〇月〇日に審査請求人に対して同内容の手帳を再交付した(以下「本件処分」という。)。
4 審査請求人は、平成30年4月5日、A区役所において、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取り消し、B市においてC都道府県から受けていた身体障がい者等級及び種別と同じ、2級及び1種の認定を行うことを求める審査請求を提起した。

第3  審理員意見書の要旨
 本件審査請求についての審理員意見書の要旨は次のとおりである。
1  審査請求人の主張
 B市において2級1種の決定を受けていたうえに、新たにE部位機能著しい障がい4級が追加されたにも関わらず、センターから2級2種の決定を受けたことについて、地域により、内容が変更になるのは理解できない。
 以上の点から、本件処分の取り消しを求めるため、本審査請求を提起した。
2 処分庁の主張
(1) 身体障がい者に対する旅客鉄道株式会社等の旅客運賃の割引制度について
 1種と2種の種別(以下「障がい種別」という。)の認定については、当該基準に基づいて行われている。審査請求人が言う「身体障害者手帳の旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」とは、当該基準により認定された障がい種別に応じて適用される割引制度のことである。
 当該基準によると「割引の対象となる身体障害者」とは、次の各号の一に該当する障がいを有する者であり、当該基準に定める障がい種別に応じた割引を受けることとなる。
 ①視覚障害
 ②聴覚又は平衡機能の障害
 ③音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
 ④肢体不自由
 ⑤心臓、じん臓若しくは呼吸器又はぼうこう若しくは直腸、小腸。ヒト免疫不全  ウイルスによる免疫若しくは肝臓の機能の障害
(2) 障がい種別の認定基準について
 当該基準では、1種と認定される場合の障がいの区分及び程度が具体的に表(以下「種別表」という。)で示されるとともに、同表備考欄にて「前記上欄に掲げる障害を二つ以上有し、その障害の総合の程度が前記下欄に準ずるものも第一種身体障害者とされること。(身体障害者福祉法施行規則別表第五号身体障害者障害程度等級表備考一及び三参照のこと。)」となっている(以下「準基準」という。)が、どのような障がいの程度が準基準に該当するかについての判断は各自治体が行うこととされている。
(3) 本件処分に係る認定について
ア 審査請求人の障がい程度等級について
 審査請求人が平成30年〇月〇日に当センターに対して行った当該申請時に添付された当該診断書によると、障がい名は、「E部位機能の著しい障害」(以下「障がい1」という。)、「F部位機能全廃」(以下「障がい2」という。)、「G部位機能の著しい障害」(以下「障がい3」という。)、「H部位機能の著しい障害」(以下「障がい4」という。)の4種類となっている。これらをもとに障がい等級の認定を行うと、次のとおりとなる。
 障がい1は、身体障害者福祉法施行規則別表第五号(以下「等級表」という。)に記載の障がいのうち、「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能の著しい障害」に該当し、等級表では障がい等級5級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、等級表備考1(同一の等級について二つの重複する障害がある場合は、一級うえの級とする。)(以下「備考欄1基準」という。)に基づき、上肢障がいは4級該当となる。
 障がい2は、等級表記載の障がいのうち、「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能を全廃したもの」に該当し、等級表では障がい等級4級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、上肢障がい3級該当となる。
 障がい3は、等級表記載の障がいのうち、「一下肢の股関節又は膝関節の機能の著しい障害」に該当し、等級表では障がい等級5級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、下肢障がい4級該当となる。
 障がい4は、等級表記載の障がいのうち、「一下肢の足関節の機能の著しい障害」に該当し、等級表では6級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、下肢障がい5級該当となる。
 すなわち、審査請求人の障がい程度等級については、上肢障がい4級、上肢障がい3級、下肢障がい4級、下肢障がい5級がそれぞれ該当するが、さらに等級表備考3(異なる等級について2以上の重複する障害がある場合については、障害の程度を勘案して当該等級より上の級とすることができる、)及び平成15年1月10日付け障発第0110001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」(以下「認定基準」という。)における「六 2つ以上の障害が重複する場合の取扱い」に基づいて上肢障がい及び下肢障がい4級となり、最終的な障がい程度等級は全ての障がいの状況を総合して2級と決定した。
イ 審査請求人の障がい種別について
 審査請求人の各障がいの程度に基づいて障がい種別の判定を行うと、まず、上肢障がい2級については、当該基準によると、障がい区分が上肢不自由の場合に1種の認定となる範囲は「一級、二級の一及び二級の二」となるが、二級の一は「両上肢の機能の著しい障害」、また二級の二は、「両上肢のすべての指を欠くもの」とあるため、1種には該当しない。
 なお、二級の一「両上肢の機能の著しい障害」については、認定基準において、「一上肢の機能障害」における「著しい障害」とは「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうちいずれか2関節の機能を全廃したもの」と規定されているところ、審査請求人については、F部位は全廃しているものの、E部位は著しい障がいに相当し、I部位については障がいの診断はされておらず、左右のいずれも「一上肢の著しい障害」には該当しないことから、二級の一には当たらないものである。
 また、下肢障がい4級については、当該基準によると、障がい区分が下肢不自由の場合に1種の認定となる範囲は、「一級、二級及び三級の一」とあることから、1種には該当しないものである。
 最後に、前記2(2)のとおり、準基準に該当すれば1種とすることについてであるが、大阪市では24区の行政区ごとに判定をおこなっていることから、判定にあたっては統一的な取扱い(以下「当該運用」という。)を行うこととしている。
 当該運用については、1種の範囲を示した当該基準の制定趣旨を鑑みるとともに、大阪市において身体障害者福祉法第11条第2項の規定にある「前条第1項第2号ハ」に掲げる業務を行うもの、すなわち、身体障害者の医学的、心理的及び職能的判定を行う者の意見を踏まえるなど「障がいの状態に伴う移動の困難性」に着目し、肢体不自由の障がいを二つ以上有するために1種とされる障がいの程度の組み合わせを事務取扱いで示し、これまで運用を行ってきたところである。
 同事務取扱いでは、上肢障がい2級及び下肢4級の総合2級に該当する場合、下肢障がいが合わせて4級の場合、1種が認められるためには、等級表における2級の4である「一上肢の機能を全廃したもの」であることが要件となっている。
 ところが、審査請求人はF部位機能を全廃し、E部位機能が著しい障害となっているものの、I部位及び手指の全ての機能については障がいの診断はされておらず、一上肢の機能を全廃しているとは認められないことから2種と認定したものである。
(4) 結論について
 これらのことから、センターでは、審査請求人は2級2種に該当するとの認定を行い、当該交付決定を行ったものであり、本件処分に違法又は不当な点はないものである。
3 審理員意見書の結論
 本件審査請求には理由がないから、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
4 審理員意見書の理由
(1) 本件に係る法令等の規定及び運用について
ア 障がいの等級認定について
 手帳については、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号。以下「法」という。)第15条において、交付申請の手続、認定事務及びその取扱い等が規定されており、法別表において身体障がい者としての認定する基準が示されている。
 手帳の交付にあたっては、法施行規則第5条及び等級表において示されている障がいの級別を判定することになっている。
 令第10条第1項においては、手帳の交付を受けた時に比較して、その障がい程度に重大な変化が生じ、若しくは手帳の交付を受けた時に有していた障がいに加えてそれ以外の障がいで法別表各項のいずれかに該当するものを有するに至った者からの手帳の再交付申請について規定されており、また、同条第2項において当該申請について令第4条の規定を準用する旨が記載されている。
 令第4条は、法第15条第1項の規定による手帳の交付の申請に関する規定である。
 これら法令のほか、自治体の手帳交付申請に関する事務においては、国が定めるガイドラインである認定基準、「身体障害者認定基準の取扱い(身体障害認定要領)について」(平成15年1月10日障企発第0110001号)及び「身体障害者認定基準等の取扱いに関する疑義について」(平成15年2月27日障企発第0227001号。以下「疑義解釈」という。)に基づいて運用されることが通常であり、処分庁においても、他の自治体と同様にこれらのガイドラインに従って手帳交付申請に関する事務が行われている。なお、認定基準の「第2個別事項 六 1」(以下「重複障がい認定基準」という。)に、2つ以上の障がいが重複する場合の障がい等級の認定方法が記載されている。
イ 障がいの種別認定について
 障がい種別の認定は、当該基準に基づいて行うこととされており、当該基準の「第二 介護者に対する割引」において、1種と認定される障がいの程度が等級表に定める等級に基づいて示されている。特に、審査請求人が認定を受けている「肢体不自由」の障がい区分について、1種に該当する場合の障がいの程度は次のとおりとなっている。
 上肢不自由 一級、二級の一及び二級の二
 下肢不自由 一級、二級及び三級の一
 体幹不自由 一級から三級までの各級
 乳幼時期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害
  上肢機能障害 一級及び二級(一上肢のみに運動機能障害がある場合を除く)
  移動機能障害 一級から三級までの各級(一下肢のみに運動機能障害がある場合を除く)
 さらに、等級表には備考欄に示された準基準の中で、等級表にある障がいの程度に該当しない場合でも、同障がいの程度と同じと見なされる障がいについては1種とされることとなっている。ただし、準基準に該当する障がいの程度については法令上の明確な定めがないことから、障がい種別を判定する統一基準が存在せず、各自治体において準基準に基づく1種判定を行うにあたっては、各自治体で個別に判断している。
(2) 本件における適用について
ア 審査請求人の障がい等級について
 重複障がい認定基準1(1)において、「2つ以上の障害が重複する場合の障害等級は、重複する障害の合計指数に応じて、認定する」こととされており、さらに、同1(2)アにおいて、「合計指数は、次の等級別指数表により各々の障害の該当する等級の指数を合計したもの」とされており、「障がい等級1級は指数を18とし、2級は指数を11とし、3級は指数を7とし、4級は指数を4とし、5級は指数を2とし、6級は指数を1とし、7級は指数を0.5とする」と定められている。
 また、疑義解釈の〔総括事項〕11において、「複数の障害を有する重複障害の場合、特に肢体不自由においては、指数の中間的な取りまとめ方によって等級が変わる場合があるが、そのレベルまで細分化した区分によって指数合算するべきか。という質疑に対する回答として、「肢体不自由に関しては、個々の関節や手指等の機能障害の指数を、視覚障害や内部障害等の指数と同列に単純合算するのではなく、原則として「上肢、下肢、体幹」あるいは「上肢機能、移動機能」の区分の中で中間的に指数合算し、さらに他の障害がある場合には、その障害の指数と合算することで合計指数を求めることが適当である。」との基準(以下「指数の取りまとめ基準」という。)が示されている。
 審査請求人の障がいについては、障がい1は、等級表に記載の障がいのうち、「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能の著しい障害」に該当し、等級表では障がい等級5級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、上肢障がいは4級該当となる。
 障がい2は、等級表記載の障がいのうち、「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能を全廃したもの」に該当し、等級表では障がい等級4級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、上肢障がい3級該当となる。
 障がい3は、等級表記載の障がいのうち、「一下肢の股関節又は膝関節の機能の著しい障害」に該当し、等級表では障がい等級5級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、下肢障がい4級該当となる。
 障がい4は、等級表記載の障がいのうち、「一下肢の足関節の機能の著しい障害」に該当し、等級表では6級相当の障がいが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、下肢障がい5級該当となる。
 すなわち、審査請求人の障がい程度等級については、上肢障がい4級、上肢障がい3級、下肢障がい4級、下肢障がい5級がそれぞれ該当する。
 これらの重複する障がいについては、さらに重複障がい認定基準に基づいて認定を行うこととなるが、審査請求人の障がいのうち、障がい1及び障がい2はいずれも上肢の障害、また障がい3及び障がい4はいずれも下肢障がいであることから、指数のとりまとめ基準により、上肢と下肢それぞれで中間的に指数合算することとなる。すなわち、重複障がい認定基準(2)アにより、上肢障がい4級は指数4、上肢障がい3級は指数7、下肢障がい4級は指数4、下肢障がい5級は指数2となる。これらを、中間的に指数合算すると、上肢障がいの合計指数は11、下肢障がいの合計指数は6となる。次に、重複障がい認定基準(1)により、上肢については、合計指数11から17の区分に該当することから上肢障がいとしての認定等級は2級となり、下肢については、合計指数4から6の区分に該当することから下肢障がいとしての認定等級は4級となる。
 ここで、重複障がい認定基準1(2)イにおいて、「合計指数算定の特例」として、「同一の上肢または下肢に重複して障害がある場合の当該一上肢又は一下肢に係る合計指数は、機能障害のある部位(機能障害が2か所以上あるときは上位の部位とする。)から上肢又は下肢を欠いた場合の障害等級に対応する指数の値を限度とする。」とされていることから、重複障がい認定基準(2)アにより、上肢障がい2級は指数11、下肢障がい4級は指数4となる。つまり、審査請求人の重複障がいの合計指数は11と4の合計である15となり、重複障がい認定基準(1)により合計指数11から17の区分に該当することから最終的な障がい認定は2級となる。
イ 審査請求人の障がい種別について
 審査請求人の障がい等級は重複障がいとして総合的に認定されていることから、障がい種別の判定にあたっては、上肢障がいと下肢障がいのそれぞれで当該基準に該当するかどうかを確認する必要がある。指数の取りまとめ基準により、上肢障がいについては2級、下肢障がいについては4級がそれぞれ認定できる。
 当該基準によると、障がい区分が上肢不自由の場合に1種の認定となる範囲は、「一級、二級の一及び二級の二」となるが、二級の一は「両上肢の機能の著しい障害」、また二級の二は「両上肢のすべての指を欠くもの」とあるため、上肢障がい2級では1種に該当しない。
 なお、二級の一「両上肢の機能の著しい障害」については、認定基準「第2 四 2(1)ア(イ)」において、「一上肢の機能障害」における「著しい障害」とは「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうちいずれか2関節の機能を全廃したもの」と規定されているが、審査請求人については、F部位は全廃しているものの、E部位は著しい障がいに相当し、I部位については障がいの診断はされておらず、左右のいずれも「一上肢の著しい障害」には該当せず、二級の一には当たらない。
 また、同様に当該基準によると、障がい区分が下肢不自由の場合に1種の認定となる範囲は、「一級、二級及び三級の一」とあるが、審査請求人は下肢障がい4級であることから、やはり1種には該当しない。
 最後に、準基準に該当するかどうかについてであるが、先述のとおり、準基準に該当する障がいの程度については法令上の明確な定めがなく、障がい種別を判定する統一基準が存在しない。そのため、各自治体において準基準に基づく1種判定を行うにあたっては、各自治体で個別に判断することとなるが、処分庁である大阪市においても、判定にあたっては当該運用によって判定を行っている。
 また、当該運用は、1種の範囲を示した当該基準の制定趣旨を鑑み、専門家の意見を踏まえるなど「障がいの状態に伴う移動の困難性」に着目して作成された事務取扱いとのことであり、これまで当該運用により事務が実施されてきた経過も踏まえれば、一定の合理性を確保されているものであると考えられる。
 なお、大阪市では準基準を、肢体不自由の重複障がいの場合は、次に示す当該運用のとおり取り扱っている。
 ①同一障がい総合等級1級
 ②一上下肢全廃(2級+3級) 総合1級
 ③一上肢全廃(2級)+一下肢著しい障がい(4級) 総合2級
 ④一上肢著しい障がい(3級)+一下肢全廃(3級) 総合2級
 ⑤一上肢全廃(2級)+一下肢著しい障がい(4級)と同程度の両下肢機能障がいの重複 総合2級
 ⑥一上肢全廃(2級)と両下肢が合せて3級相当 総合1級
 ⑦一上肢著しい障がい(3級)と両下肢が合せて3級相当 総合2級
 ⑧両上肢が合わせて3級相当と一下肢が合せて3級相当 総合2級
 ⑨脳原性による運動機能障がいで、一上肢(2級)と移動機能(3級) 総合1級
 当該運用では、障がい種別の判定を一上肢または一下肢の障がい等級から判定しており、審査請求人の障がい等級を一上肢または一下肢で判定することが必要となる。審査請求人の障がいを、一上肢という視点で見た場合は、障がい1が5級相当、また障がい2が4級相当となる。重複障がい認定基準1(2)によって5級は指数が2、また4級は指数が4であるため、一上肢の指数の合計は2と4の和の6となる。つまり、合計指数4から6に該当することから、一上肢については重複障がい認定基準(1)により4級となる。
 同様に一下肢という視点で見た場合、障がい3が5級相当、また障がい4が6級相当となる。重複障がい認定基準1(2)によって5級は指数が2、また6級は指数が1であるため、一下肢の指数の合計は2と1の和の3となる。つまり、合計指数2から3に該当することから、一下肢については重複障がい認定基準(1)により5級となる。
 つまり審査請求人は一上肢4級かつ一下肢5級に相当するが、これは当該運用で1種となる要件のいずれにも該当していないことから、障がい種別は2種と判定される。
 次に、C都道府県における障がい種別の判定について確認するが、大阪市の調査によれば、C都道府県における準基準の取り扱い(以下「C都道府県運用」という。)は、平成18年から現在と同様の基準により運用しており、審査請求人がC都道府県に障がい種別の認定を受けた平成12年〇月〇日時点でどのような基準で1種の判定を受けたのかは資料がなく現在確認することはできない。しかし、審査請求人がC都道府県において1種判定を受けたことを、本件処分の不服理由として挙げていることから、現在であればC都道府県運用において障がい種別がどのように判定されるのかを確認しておく必要がある。
 なお、C都道府県運用は次のとおり取り扱われている(ただし、C都道府県運用の「機能障がい」は「著しい障がい」を意味する(C都道府県に確認済み))。
 ①一上下肢に重複して障がいがある場合
  ・一上肢の機能全廃(2級)+一下肢の機能全廃(3級)
  ・一上肢の機能全廃(2級)+一下肢の機能障がい(4級)
  ・一上肢の機能障がい(3級)+一下肢の機能全廃(3級)
  ・一上肢の機能障がい(3級)+一下肢の機能障がい(4級)
 ②下肢
  両下肢機能の障がいが重複し、下肢の総合等級が2級となるもの
 ③上肢
  右上肢に次のいずれかの障がいがあり、かつ左上肢にも次のいずれかの障がいがある場合
  ・一上肢の機能全廃(2級)または機能障がい(3級)
  ・一上肢の肩・肘・手関節で3級以上の場合
  ・一上肢の手指で3級以上(4指以上の全廃、欠損)の場合
  ・一上肢の肩・肘・手関節すべてが著しい障がいかつ手指の障がいが6級以上の場合
 ④肢体不自由で合計指数により1級となる場合
 上述のとおり、審査請求人の障がいについては、一上肢4級かつ一下肢5級に該当しているが、一下肢5級であることからC都道府県運用の①には該当しない。また、下肢障がいとしては4級であることからC都道府県運用の②にも該当しない。C都道府県運用の④についても、審査請求人は前号に記載したとおり肢体不自由で合計指数により2級であることから該当しない。
 最後にC都道府県運用の③について、各項目を確認する。1つ目の「一上肢の機能全廃(2級)または機能障がい(3級)」だが、C都道府県運用において機能障がいとは著しい障害を意味しているが、審査請求人の障がいは機能障がいであることから当てはまらない。2つ目の「一上肢の肩・肘・手関節で3級以上の場合」だが、審査請求人の上肢の障がいを個々に見た場合、いずれも4級もしくは5級であることから、該当しない。3つ目の「一上肢の手指で3級以上(4指以上の全廃、欠損)の場合」だが、審査請求人に手指の全廃や欠損は認められないため、該当しない。4つ目の「一上肢の肩・肘・手関節すべてが著しい障がいかつ手指の障がいが6級以上の場合」についても審査請求人の障がいは機能障がいであることからやはり該当しないこととなる。
 つまり、C都道府県運用においても審査請求人の障がい種別は2種に該当しており、当該運用とC都道府県運用におけるそれぞれの障がい種別判定は同じ結果となることが分かる。このことより、審査請求人の「地域により、内容が変更になる」という主張は本件には当てはまらない。
ウ まとめ
 ここまでの内容を踏まえ、本件処分に関する妥当性の判断について整理すると次のとおりとなる。
 まず、審査請求人の主張を「C都道府県の基準と処分庁の基準が異なることがそもそも誤りである」と解した場合の当該運用の妥当性についてであるが、準基準に該当する障がいの程度については法令上の明確な定めがなく、障がい種別を判定する統一基準が存在しない。すなわち、当該運用とC都道府県運用が異なっているとしても、それをもって当該運用が誤っているということにはならず、さらに、その結果、処分庁の障がい種別の判定結果がC都道府県の判定結果と一致しないとしても、それぞれの運用に基づいて行った判定結果についても妥当性を欠いているとは言えない。
 最後に、当該運用そのものの妥当性について、当該運用の作成においては、先述のとおり、大阪市において合理的かつ客観的な妥当性を確保するための十分な措置が取られていると認められる。
 なお、C都道府県運用においては、審査請求人の障がい種別が2種と判定されることが確認できている。
 これらのことから、当該運用に基づいて審査請求人の障がいを2級2種とした本件処分には、違法又は不当な点は認められない。
(3) 上記以外の違法性又は不当性についての検討など
 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第4  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  平成31年4月15日 諮問書の受理
  令和元年8月13日 審査請求人からの主張書面の収受
  令和元年8月23日 調査審議(審査庁の口頭説明、処分庁の陳述)
  令和元年9月12日 審査庁からの主張書面の収受
  令和元年9月19日 調査審議
  令和元年10月29日 調査審議

第5 審査会の判断の理由
1 本件に係る法令等の規定について
 前記第3、4、(1)に記載のとおりである。また、そこで引用されている国の通知についても、不合理な点はない。よって、これらを前提として以下検討する。
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は次のとおりである。
(1) 厚生省通知に定める「準ずるもの」の判断基準として処分庁が審査基準を制定すること及びその内容が適法か否か(争点1)
(2) 当該基準にあてはめて行った本件処分が適法か否か(争点2)
3 争点1に係る審査会の判断について
(1) 身体障がい者手帳における種別認定について
 本件で「1種」か「2種」か問題となっている種別の認定については、昭和57年1月6日付け社更第4号各都道府県知事・各指定都市市長宛厚生省社会・児童家庭局長連名通知「身体障害者に対する旅客鉄道株式会社等の旅客運賃の割引について」を根拠に行われている。
 そして、1種となる基準については、種別表にて示されるとともに、同表に準ずるものとして、「前記上欄に掲げる障害を二つ以上有し、その障害の総合の程度が前記下欄に準ずるものも第一種身体障害者とされること」とされ、どのような状態が準ずるものとされるかは、交付自治体の判断に委ねられているところである。
 よって、申請毎に「準ずるもの」の判断を行うか、あらかじめ「準ずるもの」の判断基準を設けるかについて各自治体に裁量があり、基準を設ける場合にどのような基準とするかについても裁量があるといえる。そして、大阪市では、当該運用基準という形で定めている。よって、以下、当該運用基準について、検討する。
(2) 当該運用基準の合理性について
 いかなる基準を定めるかにつき裁量が認められるとしても、その内容が不合理である場合には、裁量を逸脱・濫用したものとして違法となる(例えば、ある障がいについて1種となるにも関わらず、それより重い障がいが2種となる場合には一般的に合理性はなく違法との疑いが生じる)。よって、当該運用基準に合理性が認められる必要がある。そこで、以下、当該運用基準の合理性について手続き面、内容面から検討する。
 まず、当該運用基準の制定手続きについてみると、事件記録によれば、当該運用基準の制定にあたっては、「身体障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行う者の意見を踏まえ」とあり、身体障がいに係る専門家の意見を踏まえて制定したことが伺える。
 次に、内容的には、第3の4(2)イ記載の当該運用基準の内容を見れば、種別表において示された障がいを複数有する場合のうち、点数化のうえで、一定の点数を上回る場合に、1種と認定する運用となっており、特段不合理な点は認められない。また、事件記録によれば、他都市の運用基準に係る審査基準と比較しても、障がいの組み合わせにおいて大きな違いはない。
 よって、当該運用基準に不合理な点はなく、制定において裁量の逸脱・濫用は認められないため適法といえる。
(3) 審査請求人の主張について
 審査請求人は地域により種別が変更されることが理解できないと主張するが、上記のとおり、本件種別認定の根拠となる当該基準において、種別表において1種とならないもののうちいかなる範囲のものを1種とするかについては各自治体の判断とされている。よって、本制度を前提とする限り、地域により種別が変更されることはやむを得ない結果といえ、それ自身で違法となることはない。
4 争点2に係る審査会の判断について
(1) 種別表へのあてはめについて
 まず、種別認定の前提となる障がいについては、申請書添付の診断書に基づき判定され、それによると、審査請求人の障がいは、「E部位機能の著しい障がい」、「F部位機能全廃」、「G部位機能の著しい障がい」、「H部位機能の著しい障がい」であり、当該基準の第一(4)肢体不自由に該当する。そして、これらを等級表にあてはめると、以下の通りである。
 「E部位機能の著しい障害」(障がい1)は、等級表に記載の障がいのうち、上肢5級の「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能の著しい障害」に該当し、それが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、上肢障がいは4級該当となる。
 「F部位機能全廃」(障がい2)は、等級表記載の障がいのうち、上肢4級の「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能を全廃したもの」に該当し、それが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、上肢障がいは3級該当となる。
 「G部位機能の著しい障がい」(障がい3)は、等級表記載の障がいのうち、下肢5級の「一下肢の股関節又は膝関節の機能の著しい障害」に該当し、それが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、下肢障がいは4級該当となる。
 「H部位機能の著しい障がい」(障がい4)は、等級表記載の障がいのうち、下肢6級「一下肢の足関節の機能の著しい障害」に該当し、それが左右合わせて2か所あることから、備考欄1基準に基づき、下肢障がいは5級該当となる。
 すなわち、審査請求人の障がい程度等級については、上肢障がい4級、上肢障がい3級、下肢障がい4級、下肢障がい5級がそれぞれ該当する。
 これらの重複する障がいについては、さらに重複障がい認定基準に基づいて認定を行うこととなるが、審査請求人の障がいのうち、障がい1及び障がい2はいずれも上肢の障害、また障がい3及び障がい4はいずれも下肢障がいであることから、指数のとりまとめ基準により、上肢と下肢それぞれで中間的に指数合算することとなる。すなわち、重複障がい認定基準(2)アにより、上肢障がい4級は指数4、上肢障がい3級は指数7、下肢障がい4級は指数4、下肢障がい5級は指数2となる。これらを、中間的に指数合算すると、上肢障がいの合計指数は11、下肢障がいの合計指数は6となる。次に、重複障がい認定基準(1)により、上肢については、合計指数11から17の区分に該当することから上肢障がいとしての認定等級は2級となり、下肢については、合計指数4から6の区分に該当することから下肢障がいとしての認定等級は4級となる。
 ただし、重複障がい認定基準1(2)イにおいて、「合計指数算定の特例」として、「同一の上肢または下肢に重複して障害がある場合の当該一上肢又は一下肢に係る合計指数は、機能障害のある部位(機能障害が2か所以上あるときは上位の部位とする。)から上肢又は下肢を欠いた場合の障害等級に対応する指数の値を限度とする。」とされている。当該規定を本件にあてはめると、上肢は等級表2級3の「一上肢を上腕の2分の1以上で欠くもの」が限度となり、下肢は等級表4級3の「一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの」が限度となる。そして、当該限度を踏まえ、中間指数を算出すると、上肢は限度と同じで指数11、下肢は限度が採用され指数4となり、上肢障がいについては2級、下肢障がいについては4級となる。
 なお、等級に関して言えば、審査請求人の重複障がいの合計指数は11と4の合計である15となり、重複障がい認定基準(1)により合計指数11から17の区分に該当することから最終的な障がい認定は2級となる。
 等級判定の際には、審査請求人の障がい等級は重複障がいとして総合的に認定されているが、障がい種別の判定にあたっては、上肢障がいと下肢障がいのそれぞれで当該基準に該当するかどうかを確認する必要がある。そして、それらは、前述の通り上肢障がいについては2級、下肢障がいについては4級となる。
 当該基準によると、障がい区分が上肢不自由の場合に1種の認定となる範囲は、「一級、二級の一及び二級の二」であるが、二級の一は「両上肢の機能の著しい障害」、二級の二は「両上肢のすべての指を欠くもの」とあるため、上肢2級の本件がそれらに該当するか、以下検討する。
 まず、二級の一「両上肢の機能の著しい障害」については、認定基準「第2 四 2(1)ア(イ)」において、「一上肢の機能障害」における「著しい障害」とは、「握る、摘む、なでる(手、指先の機能)、物を持ち上げる、運ぶ、投げる、押す、ひっぱる(腕の機能)等の機能の著しい障害をいう」とされている(3級「著しい障害」の定義として記載されているが、認定基準に別途2級の定義はなく3級と同じと考える)。
 また、「著しい障害」の具体例として、「一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうちいずれか2関節の機能を全廃したもの」があげられている。それを本件にあてはめると、審査請求人については、F部位は全廃しているものの、E部位は機能の著しい障がいであり、I部位については障がいの診断はされていない。よって、二級の一には当たらない。
 次に、二級の二「両上肢のすべての指を欠くもの」については、審査請求人に指の欠損は認められず、あてはまらない。よって、二級の二にも当たらない。
 したがって、上肢障がいについては、1種には該当しない。
 また、同様に当該基準によると、障がい区分が下肢不自由の場合に1種の認定となる範囲は、「一級、二級及び三級の一」とあるが、審査請求人は下肢障がい4級であることから、やはり1種には該当しない。
 以上から、審査請求人の障がいは、種別表の1種には該当せず、次に当該運用基準により1種となるか否かが問題となる。
(2) 当該運用基準へのあてはめについて
 当該運用基準では、障がい種別の判定を一上肢または一下肢の障がい等級から判定しており、審査請求人の障がい等級を一上肢または一下肢で検討することが必要となる。
 審査請求人の障がいを、一上肢という視点で見た場合、備考欄1基準が適用されず、障がい1は5級該当、障がい2は4級該当となる。そして、重複障がい認定基準1(2)アによって5級は指数が2、4級は指数が4であるため、一上肢の指数の合計は2と4の和の6となる。つまり、合計指数4から6に該当することから、一上肢については重複障がい認定基準(1)により4級となる。
 同様に一下肢という視点で見た場合、障がい3が5級該当、障がい4が6級該当となる。重複障がい認定基準1(2)アによって5級は指数が2、6級は指数が1であるため、一下肢の指数の合計は2と1の和の3となる。つまり、合計指数2から3に該当することから、一下肢については重複障がい認定基準(1)により5級となる。
 よって、審査請求人は一上肢4級かつ一下肢5級に該当するが、第3の4(2)イ記載の当該運用基準の1種となる要件のいずれにもあたらない。
 したがって、当該運用基準を適用した結果からも、障がい種別は2種となる。
5 小括
 以上のとおり、処分庁が本件処分を行ったことについて、違法又は不当な点は認められない。
6 審査請求に係る審査手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
7 結論
 よって、本件審査請求は理由がないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第1部会
 委員(部会長) 田中宏、委員 片桐直人、委員 北川豊

答申書(令和元年度答申第12号)

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