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答申書(令和3年度答申第6号)

2023年2月17日

ページ番号:543249

諮問番号:令和2年度諮問第14号
答申番号:令和3年度答申第6号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 令和元年9月25日、審査請求人は、審査請求人の子ども(〇歳児)の「子どものための教育・保育給付保育認定(変更)申請書兼保育施設・事業利用調整申込書」(以下「本件申請」という。)を大阪市A区保健福祉センター所長(以下「処分庁」という。)に提出した。
 本件申請における保育施設・事業利用調整にかかる申込内容は、第1希望をB、第2希望をCとし、令和元年11月入所希望とするものであった。なお、第3希望以下の記載はなかった。
2 令和元年10月3日、審査請求人は、「保育施設・事業利用希望変更等届出書」を処分庁に提出した。
 同届出書では、利用希望の順位を入れ替え、第1希望をC、第2希望をBと変更するものであった。
3 処分庁は、11月入所申込の締切日の令和元年10月7日以降に、利用調整を行ったうえで、令和元年10月18日に審査請求人に「保育施設・事業利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書」を送付した(以下「本件処分」という。)。
4 令和元年11月5日、審査請求人は、再度、「保育施設・事業利用希望変更等届出書」を処分庁に提出した。
 同届出書では、利用希望の順位を再び入れ替え、第1希望をB、第2希望をC、第3希望をD、第4希望をEと変更するものであった。
5 令和元年11月20日、審査請求人は本件処分について不服であるとし、処分庁を経由して大阪市長(以下「審査庁」という。)に審査請求書を提出した。

第3  審理員意見書の要旨
 本件審査請求についての審理員意見書の要旨は次のとおりである。
1  審査請求人の主張
 審査請求の趣旨は、本件処分の取消しを求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 本件処分の処分理由として、利用申込みをした保育施設・事業(以下「保育施設等」という。)について利用可能数を上回る申し込みがあったためとされているが、実際に保育の重要性が高いことに対し慎重な審査がなされていない。
 具体的には、審査請求人は、育児休業が取得できず産休明け(産後8週後)すぐに仕事に復帰しなければならないこと、審査請求人の父母(子どもの祖父母)及び審査請求人の夫の父母は就労や疾病等のため保育を依頼できないこと、生後〇か月の子どもを預かってもらえる認可外保育施設に空き枠がないこと等を処分庁に説明していたにもかかわらず、保育利用調整基準に基づく点数のみで利用調整を行い、生後〇か月の子どもであり認可外施設等を利用できない事情があることなど点数以外の要素を慎重に考慮していないためである。
 また、審査請求人は、保育の必要性が高いにもかかわらず保育施設を利用できない状況となっているにもかかわらず、他の解決策についての相談に対して処分庁からは案内がなかった。
2  処分庁の主張
 弁明の趣旨は、「審査請求人の審査請求を棄却する」との裁決を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 第1希望のCについては生後〇か月以上の子どもを受入対象としているところ、審査請求人の子どもは令和元年11月1日時点では生後〇か月であり、受入対象の月齢ではなかったため、また、第2希望のBについては令和元年11月1日時点における〇歳児の受入可能数が0であったため、処分庁はやむを得ずに利用保留とする本件処分を行った。
 処分庁は、本件処分の通知を発送後に、審査請求人の自宅から2km圏内にある保育所の中で、利用可能な空き枠があり、かつ生後〇か月以上を受入対象としているE及びFを案内するとともに、審査請求人の夫の勤務先のあるG区の保育所やA区の認可外保育施設も案内している。
 処分庁としては、大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱に基づき適正に利用調整を行っており、本件処分は適法妥当なものと考えており、本件審査請求は、棄却されるべきであるものと思料する。
3  審理員意見書の結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
4  審理員意見書の理由
(1) 本件に係る法令等の規定について
ア 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第24条第3項において、「市町村は、保育の需要に応ずるに足りる保育所、認定こども園(子ども・子育て支援法第27条第1項の確認を受けたものに限る。以下この項及び第26条の2第2項において同じ。)又は家庭的保育事業等が不足し、又は不足するおそれがある場合その他必要と認められる場合には、保育所、認定こども園(保育所であるものを含む。)又は家庭的保育事業等の利用について調整を行うとともに、認定こども園の設置者又は家庭的保育事業等を行う者に対し、前項に規定する児童の利用の要請を行うものとする。」と規定されている。
イ 児童福祉法施行規則第24条において、「市町村は、法第24条第3項の規定に基づき、保育所、認定こども園(子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第27条第1項の規定による確認を受けたものに限る。)又は家庭的保育事業等の利用について調整を行う場合(法第73条第1項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)には、保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育を受ける必要性が高いと認められる児童が優先的に利用できるよう、調整するものとする。」と規定されている。
ウ 大阪市保育施設等の利用調整に関する事務取扱要綱第4条において、「保健福祉センター所長は、利用調整を行うにあたっては、利用調整会議を開催し、別表『保育利用調整基準』に基づき保育の必要性の高い児童から順に利用調整を行うものとする。」と規定されている。
(2) 本件処分が取り消されるべきか否かについて
 処分庁は、審査請求人の子どもは令和元年11月1日時点では生後〇か月であるところ、第1希望のCについては生後〇か月以上の子どもを受入対象としており、受入対象の月齢ではなかったこと、また、第2希望のBについては令和元年11月1日時点における〇歳児の受入可能数が0であったことから、その時点では利用を希望する保育施設等について利用することができないため、利用保留とする処分を行ったものである。
 そのうえ、処分庁は、本件処分の通知を発送した後に、審査請求人の自宅から2km圏内にある保育所の中で、利用可能な空き枠がありかつ生後〇か月以上を受入対象としているE及びFを案内するなどして、12月1日以降速やかな利用ができるように情報提供するとともに、保育利用調整基準に基づき適正な利用調整を続け、令和2年1月には令和元年11月1日利用申込に係る第1希望の施設ではないものの保育施設等を利用するに至っており、本件処分について、違法な点は見受けられない。

第4  調査審議の経過
当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
 令和3年1月13日 諮問書の受理
 令和3年3月16日 調査審議(審査庁による口頭説明・処分庁による陳述)
 令和3年4月19日 調査審議
 令和3年5月25日 調査審議
 令和3年6月10日 審査庁からの主張書面の収受
 令和3年6月17日 調査審議
 令和3年7月12日 調査審議

第5  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
 前記第3、4、(1)のとおりであると認められる。
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は次のとおりである。
(1) 審査請求人の児童の出生前に処分庁が申込みを受け付けなかったことが違法又は不当となるか否か(争点1)
(2) 審査請求人の児童を入所保留としたことに違法又は不当な点があるか否か(争点2)
3 争点に係る審査会の判断について
(1) 争点1に係る審査会の判断について
 審査請求人は、審査請求書において、「児童の出生前からA区役所の保育担当課に出向き相談をし、生後〇か月から入園可能な保育園の見学等も行い予定もたてておりました。しかし、申込自体は受け付けてもらえ」なかった旨主張していることから、本件処分庁の対応に違法又は不当な点があったか否か検討する。
 この点、処分庁が弁明書で主張するところによれば、「申込の際は入所する児童の面接を実施しているにもかかわらず出生前では面接が行えないから」とのことであり、審査会における審査庁の口頭説明によれば、面接を行う理由は対象児童の状態が保育に耐えうる状況なのかを確認する必要があるためとのことである。
 出生前に申込みを受け付けないことに関しては、審査庁自ら、出生前に保育の申込みができない旨の規程がないと述べているところであり、法的な根拠は認められない。
 しかし、審査庁が申込時に入所児童の面接を実施する理由として挙げる「対象児童の状態が保育に耐えうる状況なのかを確認する必要」があるためという点に不合理なところはなく、一方、審査請求人からは、出生前に申込みが受け付けられなかったことによって法的な不利益を被ったとの具体的な主張はなされていない。
 なお、仮にこの時点で申し込みを受け付けていたとしても、審査請求人は、令和元年11月1日からの入所を希望していたのであるから、審査開始は10月1日時点の空き状況をもって開始されざるを得ず、結論として審査結果は変わらなかったといえる。
 よって、審査請求人の児童の出生前に申込みを受け付けなかった処分庁の対応に不合理なところはなく、違法又は不当な点があるとは認められない。
(2) 争点2に係る審査会の判断について
 審査請求人は、審査請求書において、「保育の必要性の認定をうけているのにかかわらず、(中略)点数以外にも慎重に考慮し選考されていないことによる本件処分は、保育を利用する権利を侵害されている」旨主張していることから、本件処分に違法又は不当な点があったか否か検討する。
 この点、処分庁が弁明書で主張するところによれば、審査請求人の児童は令和元年11月1日時点では生後〇か月であるところ、第1希望としたCについては生後〇か月以上の子どもを受入対象としており、受入対象の月齢ではなかったこと、また、第2希望としたBについては令和元年11月1日時点における〇歳児の受入可能数が0であったことから、その時点では利用を希望する保育施設等について利用することができなかったとのことであり、「点数以外にも慎重に考慮し選考されていない」との審査請求人の主張は、前提がなりたっていない。
 なお、具体的にいかなる基準に基づいて利用調整を行うかについては、当該地域の保育事務に通暁する行政庁に広い裁量が認められ、当該基準が明らかに不合理な場合に限って違法又は不当となると解する。本件は、当該基準が適用された事案ではないが、念のために検討すると、審査請求人が主張する加点等が明らかに不合理とまでは認められず、保育利用調整基準のその他の部分についても明らかに不合理な点は見当たらない。
 よって、児童福祉法第24条第3項に従い、審査請求人児童を入所保留とした本件処分に違法又は不当な点は認められない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由はないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。
6 付言
 本件処分に係る「保育施設・事業利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書」には、本件処分の理由として、「利用申込をされた保育施設・事業については、利用可能数を上回る申込みがあったため、保育利用調整基準に基づく利用調整を行った結果による。」と記載されているが、かかる理由は、本件のように利用申込を行った保育施設・事業の受入対象の月齢ではなかったため入所保留となった場合には不適切といえる。仮に本件で、申込者の児童が利用可能年齢に達していなかったために入所保留となった旨の理由を付していれば、審査請求人が主張する選考の不備によって入所保留となったのではないことが容易に認識できたと思われることから、あえて審査請求を提起することまではしなかったのではないかということも考えられ得る。
 処分庁においては、大量、反復かつ迅速に行われる全ての申込に対する保育施設・事業利用調整結果通知書兼保育所入所保留通知書に詳細な理由を付すことは困難であるかもしれない。しかし、本件のように、保育利用調整基準に基づく利用調整が行われていない場合は多くの事例が考えられるわけでもなく、事案に応じた具体的な理由を付すことはさほど困難とも言えない。そのような具体的な理由を付すことは、処分に係る公正の確保及び透明性の向上を図り、併せてその不服申立てに便宜を与えるという行政手続法第8条の規定の趣旨に適うと考える。よって、このような例外的な場合において付すべき理由については具体的な事案に応じたものとする等、市民にとってわかりやすい処分理由とするための工夫をすることが望ましいと思料する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第2部会
 委員(部会長) 榊原和穂、委員 畠田健治、委員 海道俊明

答申書(令和3年度答申第6号)

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