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答申書(令和3年度答申第7号)

2023年2月17日

ページ番号:550277

諮問番号:令和3年度諮問第2号
答申番号:令和3年度答申第7号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 令和〇年〇月〇日、審査請求人は、平成〇年〇月〇日付けでA会社を離職したこと、新型コロナウイルスの影響により仕事が見つからず、家賃が支払えないことを理由として、令和〇年〇月〇日を離職年月日とする雇用保険受給資格者証の写しを添付した上で、生活困窮者住居確保給付金(以下「給付金」という。)の申請を行った。
2 大阪市〇〇区保健福祉センター内に設置されている生活困窮者自立相談支援機関の担当職員は、審査請求人が平成〇年〇月分から平成〇年〇月分までの家賃につき、給付金を既に受給していたことから、再受給することができる要件として、解雇その他事業主の都合による離職により経済的に困窮した場合に限られることの説明を行うとともに、平成〇年〇月〇日付けの解雇を証明する資料の追加提出を求めた。
3 令和〇年〇月〇日、審査請求人は、平成〇年〇月〇日付けの解雇を証明する資料の提出は困難であるとして、「離職状況等に関する申立書」を提出した。
4 令和〇年〇月〇日、大阪市長(以下「処分庁」という。)は、本件申請につき、再受給の要件に該当しないものとして、給付金不支給決定(以下「本件処分」という。)を行った。
5 令和〇年〇月〇日、審査請求人は、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分の取消しを求める審査請求書を提出した。

第3  審理員意見書の要旨
 本件審査請求についての審理員意見書の要旨は次のとおりである。
1  審査請求人の主張
 審査請求の趣旨は、「本件処分を取り消す。」との裁決を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 A会社に平成〇年〇月〇日から勤務し、試用期間の終了である平成〇年〇月〇日をもって解雇されたこと、当該会社にアルバイトでも残りたい旨を申し出て会社が了承するも、その後、シフトが減少し週20時間を下回ったことから、令和〇年〇月〇日付けで離職に至ったというものである。そのため、平成〇年〇月〇日付けでの解雇の事実は存在し、給付金の再受給要件に該当する。
2  処分庁の主張
 弁明の趣旨は、「審査請求人の審査請求を棄却する」との裁決を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 審査請求人がA会社に勤務していたとする平成〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの期間内において雇用保険の資格が継続しており、解雇、離職の事実が客観的に確認できないこと、審査請求人から平成〇年〇月〇日付けの解雇を証する資料の提出がなされなかったこと、更に令和〇年〇月〇日付けの離職についても自己都合によるものとされていることから、本件処分に対する審査請求には理由がなく、棄却されるべきである。
3  審理員意見書の結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
4  審理員意見書の理由
(1) 本件に係る法令等の規定について
ア 生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)(以下「支援法」という。)第3条第3項において、給付金は、離職又はこれに準ずる事由により経済的に困窮し、現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となったもの等であって、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるものに対して支給すると規定されている。
イ 生活困窮者自立支援法施行規則(平成27年厚生労働省令第16号)(以下「施行規則」という。)第16条において、給付金の受給者には、支給終了後に、解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他事業主の都合による離職により経済的に困窮した場合等を除き、給付金を支給しないとして、再支給の制限が規定されている。
(2) 本件が、再支給の要件を充足するか否かについて
ア 法令等の解釈について、厚生労働省は「生活困窮者自立支援制度に係る自治体事務マニュアル」において、概要、次のとおり見解を示している。
(第7 住居確保給付金の支給 12再支給)
・受給者が給付金の受給期間中又は受給期間の終了後に、常用就職した後に、新たに解雇された場合等において、再支給することができるものとする。
・「常用就職した後に新たに解雇」とは、過去に複数回離職している場合は、「直前の離職」をいう。
 また、厚生労働省が示す「住居確保給付金の支給事務の取扱問答」において、再支給の取扱いとして、離職票上は、自己都合であっても、労働基準法の違反があったと疑われる事実が申請者により証明されれば、再支給の対象として差し支えないとされている。
イ 本件申請は、平成〇年〇月〇日付けで解雇されたことによる経済的困窮を理由としたものとなるが、再支給の要件を充足するか否かについては、直前の離職事由が「解雇その他事業主の都合による離職」によるかを確認することとなる。審査請求人が令和〇年〇月〇日付けで本件申請を行った際、令和〇年〇月〇日付け離職の事実は確認されるものの、審査請求人が主張する平成〇年〇月〇日付けの解雇については、その事実を確認できる証拠が提出されておらず、また、直前の離職にも当たらないことから、それを理由とした再支給の要件は充足しない。
ウ また、令和〇年〇月〇日付け離職においては、離職理由が自己都合とされている。厚生労働省の見解では、労働基準法の違反があった事実が、申請者により証明された場合には、再支給の対象となり得ることが示されているが、これは申請者に対して証明の義務が課されているものと解される。
 本件申請に際し、申請者の令和〇年〇月〇日付け離職が自己都合によることについては争いが生じていないことから、解雇その他事業主の都合による離職に該当すると認定することはできない。
エ 以上のとおり、本件処分は、法令の規定及びその解釈に従い適正になされたものであり、何ら違法又は不当な点は存在しない。

第4  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和3年6月1日 諮問書の受理
  令和3年7月26日 調査審議
  令和3年8月23日 調査審議
  令和3年9月27日 調査審議

第5  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
 前記第3、4、(1)のとおり、及び下記のとおりであると認められる。
(1) 支援法第6条において、都道府県知事等は、その設置する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する生活困窮者のうち第3条第3項に規定するものに対し、給付金を支給するものと規定されている。
(2) 大阪市住居確保給付金事務取扱い要領(令和2年4月20日改正)(以下「取扱い要領」という。)の「12 再支給」において、受給者が給付金の受給期間中又は受給期間の終了後に常用就職した後に、新たに解雇(受給者の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)された場合、取扱い要領2(1)に規定する支給要件に該当する者については、再支給することができるものとしている。
 そして、再支給に係る支給申請の際には、申請者は、従前の支給が中止となっていないこと及び従前の支給決定後に常用就職した後に新たに解雇(本人の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)されたことについて確認書により誓約をすることとしている。
 ここでいう、「従前の支給決定後」とは、過去に複数回の支給決定を受けている場合は、直前の支給決定後をいい、「常用就職した後に新たに解雇」とは、過去に複数回離職している場合は、「直前の離職」をいう、としている。
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は、審査請求人の主張する平成〇年〇月〇日をもって解雇されたとする点が、施行規則第16条「解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他事業主の都合による離職」に該当するか否か、である。
3 争点に係る審査会の判断について
 審査請求人は、本件処分の取消しを求める理由として、平成〇年〇月〇日にA会社に採用されたが、平成〇年〇月〇日付けで自己の責めに帰すべき理由によるものではない解雇の事実が存在することから、給付金の再支給を制限する規定の要件には該当しないとして、本件処分に理由がない旨主張するものである。
 そこで、本件において「解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他事業主の都合による離職」に該当する事実が審査請求人に認められるか否か検討する。
 本件では、審査請求人が申請において提出した「雇用保険受給資格者証」では、資格取得が平成〇年〇月〇日、離職年月日が令和〇年〇月〇日とする事実しか証明されていないため、処分庁は請求人が主張する平成〇年〇月〇日に自己都合ではない解雇をされた事実を確認するために当該事実を証明できる書類を再度提出するよう指示しており、処分庁の求めは不合理なものではない。そして、この処分庁の求めに対して審査請求人は離職関係資料の提出が困難であるとして離職状況等に関する申立書を提出したのみであり、当該申立書以外に証拠書類がないことから再支給の要件に該当するという事実の証明としては不十分であるといえる。
 一方で、審査請求人から離職関係資料の提出が困難であるとして離職状況等に関する申立書の提出があった後に、なお、処分庁においては審査請求人の勤務状況や勤務状況の変遷に関する他の資料を求める方法をとる余地があったことも否定できない。
 そこで、本審査会では、審査請求人が主張する平成〇年〇月〇日時点での解雇を認定するために、平成〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日の期間、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日の期間、令和〇年〇月〇日以降について、審査請求人における勤務状況(特に平成〇年〇月分、平成〇年〇月分、令和〇年〇月分、令和〇年〇月分、令和〇年〇月分、令和〇年〇月分について勤務先の名称、勤務形態、1か月あたりの勤務日数及び勤務時間、総支給額(月給)に関する内容)の変遷に関する事実の証明が必要であると考え、審査請求人に対して、当該事実に関する主張書面又は資料の提出の求めを行った。
 しかし、審査請求人より当該提出の求めに対して主張書面又は資料の提出はなく、本審査会としても、審査請求人が主張する平成〇年〇月〇日時点での解雇を認定するために必要な証拠を確認することはできなかった。
 以上から、本件において「解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他事業主の都合による離職」に該当する事実が審査請求人に認められるとはいえない。
 よって、施行規則第16条に従い、審査請求人の申請に対して、「解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他事業主の都合による離職」に該当する事実を審査請求人においては認めることができないとした処分庁の判断は妥当であり、本件処分に違法又は不当な点があるとは認められない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由はないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。
6 付言
 本件処分に係る「住居確保給付金不支給決定通知書」には、本件処分の理由として、「再支給の要件に該当しないため」と記載されているが、一般的には、かかる記載のみから、再支給の要件のうち、いかなる要件について非該当と判断されたのかが容易に了知できるとは必ずしもいえない。
 本件においては、審査請求人は令和〇年〇月〇日に処分通知を受け、同年同月〇日に本件審査請求を行っていること、当該審査請求書記載の審査請求の理由において「平成〇年〇月〇日をもって解雇された」旨を記載していることから、審査請求人においては本件申請に際して処分庁の担当者との間で、申請において審査請求人の主張する平成〇年〇月〇日をもって解雇されたとする点が、本件申請の判断を左右するものであることを了知していると推認できることから、本件の処分理由の記載が直ちに行政手続法第8条に反して違法であるとまではいえない。しかし、処分理由を具体的に記載することは、当該処分に係る公正の確保及び透明性の向上を図り、併せてその不服申立てに便宜を与えるという行政手続法第8条の規定の趣旨に適うと考える。
 確かに、処分庁においては、大量、反復かつ迅速に行われる全ての申込に対する住居確保給付金不支給決定通知書に詳細な理由を付すことは困難であるかもしれない。しかし、給付金の支給要件については支援法や施行規則の規定ぶりからもある程度類型化された事案が想定されるため、事案に応じた具体的な理由を付すことは手続の円滑な遂行を妨げるおそれがあるとまでは言えない。
 よって、住居確保給付金不支給決定に付すべき理由については具体的な事案に応じたものとする等、市民にとってわかりやすい処分理由とするための工夫をすることが望ましいと思料する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第1部会
 委員(部会長) 井上武史、委員 北川豊、委員 常谷麻子

答申書(令和3年度答申第7号)

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