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答申書(令和3年度答申第10号)

2023年2月17日

ページ番号:552893

諮問番号:令和3年度諮問第4号
答申番号:令和3年度答申第10号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 審査請求人は、平成〇年〇月〇日にA病院へ入院し、その後、同年〇月〇日にB病院へ転院した。
2 審査請求人は、審査請求人代理人が手続代理人として行った令和〇年〇月〇日付けの審査請求人の後見開始の審判申立てにより、令和〇年〇月〇日、大阪家庭裁判所から本件審査請求人代理人を成年後見人(以下「後見人」という。)に選任する旨の後見開始の審判を受け、同年〇月〇日、この審判が確定した。
3 審査請求人は、胃ろう手術を行うために令和〇年〇月にC病院へ転院した。
4 審査請求人は、令和〇年〇月〇日、退院と同時に、現住居のグループホームに入居した。審査請求人は令和〇年〇月〇日から生活保護を受給し、本件審査請求時においてもこれを受給している。
5 審査請求人代理人は、令和〇年〇月〇日、大阪家庭裁判所に対し、審査請求人代理人が審査請求人の後見人に就職した日から令和〇年〇月〇日までの期間(以下「本件後見期間」という。)に係る後見報酬の付与を求める審判を申立て、これに対し同裁判所は同年〇月〇日審査請求人代理人に対し審査請求人の財産の中から金〇〇円を報酬(以下「本件報酬」という。)として付与する旨の審判(以下「本件報酬付与の審判」という。)を行った。
6 審査請求人代理人は、審査請求人については報酬の捻出が困難な者であるとして、令和〇年〇月〇日、大阪市長(以下「処分庁」という。)に対し、「成年後見制度に係る大阪市長による審判の請求等に関する要綱」(以下「要綱」という。)第6条第2項に基づき、本件報酬額に相当する金〇〇円の助成を申請した(以下「本件申請」という。)。
 処分庁は、同月〇日及び〇日に、審査請求人代理人に審査請求人の入院期間の確認を行い、審査請求人代理人が後見人として就職した時から令和〇年〇月〇日まで審査請求人は入院しており、退院と同時に、グループホームに入居した旨を確認した。
7 処分庁は、本件申請について、要綱第6条第2項に基づき、審査請求人代理人が後見人として就職した令和〇年〇月から令和〇年〇月までの期間の報酬助成額について要綱第6条第3項第1号に規定する施設入所者の区分の上限額により、令和〇年〇月から同年〇月までの期間の報酬助成額について要綱第6条第3項第2号に規定する在宅生活者の区分の上限額により算定し、助成金額を〇〇円と決定する処分(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に対して同年〇月〇日付けで通知した。
8 審査請求人は、令和〇年〇月〇日、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取消し、本件報酬付与の審判の報酬決定記載の報酬を助成するとの裁決を求める審査請求をした。

第3  審理員意見書の要旨
 本件審査請求についての審理員意見書の要旨は次のとおりである。
1  審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、概ね次のとおりである。
 審査請求人の後見申立ては、審査請求人が退院し、在宅生活をするために行ったものであり、本件報酬付与の審判も、退院に伴う手続等の後見業務を行った経過を踏まえてなされたものであるから、処分庁の報酬助成もこの経過を考慮し、決定すべきである。
 それにもかかわらず、令和〇年〇月〇日まで、審査請求人が病院に入院していたことから、審査請求人を要綱第6条第3項にいう「施設入所者」と決めつけた上、経過の考慮のために追加資料を求めることなく本件処分を行ったことは違法であり、その取消し及び本件報酬付与の審判の報酬決定記載の報酬を助成するとの裁決を求める。
2  処分庁の主張
 処分庁の主張は、概ね次のとおりである。
 本件処分は、要綱及び要綱に基づく審判の請求等に係る事務について必要な事項を定めた「成年後見制度に係る大阪市長による審判の請求等に関する事務取扱要領」(以下「要領」という。)に基づき行われたものである。
 具体的には、審査請求人代理人が処分庁あて提出した要領第9号様式「大阪市成年後見制度後見人等報酬助成申請書」(以下「第9号様式」という。)に添付された書類及び審査請求人代理人に対象期間中の審査請求人の居場所の確認を行い、要綱の規定に沿って、対象期間のうち、令和〇年〇月〇日までの病院への入院期間中は、施設入所者の区分の上限額を、グループホーム入居以後は在宅生活者の区分の上限額を適用して、本件処分を行ったものである。
 入院中の審査請求人を施設入所者として取り扱った点については、第9号様式において、施設入所者の居住形態の一類型として入院が位置づけられており、第9号様式の内容については、審査請求人代理人も申請の際に当然確認していることから、審査請求人の入院期間中は施設入所者の区分が適用されるとの認識があったと考えるのが自然である。
 また、審査請求人代理人は、施設入所者と在宅生活者の区分の基準として、要綱第6条第4項には「家庭裁判所により報酬付与の対象とされた期間の各月の初日の状態による」と定められているのみで、将来的な居場所の見通しや後見業務の目標を考慮すべきと主張しているが、かかる解釈は、審査請求人代理人独自の見解であり、同意することはできない。
 以上より、本件処分は、要綱及び要領に基づき適切に行われたものであり、何ら違法又は不当な点は認められないことから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
3  審理員意見書の結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
4  審理員意見書の理由
(1) 本件に係る法令等の規定について
ア 介護保険法(平成9年法律第123号)(以下「法」という。)第115条の45第3項第3号において、市町村は、「その他介護保険事業の運営の安定化及び被保険者(当該市町村の区域内に所在する住所地特例対象施設に入所等をしている住所地特例適用被保険者を含む。)の地域における自立した日常生活の支援のため必要な事業」を行うことができるとされている。
 これは、いわゆる任意事業である地域支援事業を定めたものであり、当該規定を根拠として市町村が要綱等を定める等により、財政状況等に応じて任意で、同事業を実施するものである。
イ 本市においては、要綱及び要領を定め、地域支援事業として、成年後見制度利用支援事業(審判請求費用助成及び後見人等報酬助成)を実施している。要綱及び要領の関係規定は、概ね次のとおりである。
(ア)要綱第6条第1項及び第2項において、第3条の規定による市長審判請求を行った場合又は市長以外の者(他の市区町村長を除く。)が本人に係る審判請求を行った場合において、真に報酬の捻出が困難な者に対して、後見人等の報酬の支払いに要する費用の一部又は全部を助成することができると規定している。
(イ)要綱第6条第3項において、報酬助成の額は、民法第862条(第876条の5第2項〔保佐人の場合〕及び第876条の10第1項〔補助人の場合〕において準用される場合を含む。)の規定により家庭裁判所が定める報酬の額の範囲内であって、かつ、次に掲げる区分に定める額を上限として、市長が認める額とするとし、同項第1号で施設入所者の報酬助成額の上限を月額18,000円、同項第2号において、在宅生活者の報酬助成額の上限を月額28,000円と規定している。
(ウ)要綱第6条第3項に掲げる施設入所者と在宅生活者の区分については、同条第4項において、家庭裁判所により報酬付与の対象とされた期間(以下「対象期間」という。)の各月の初日の状態によるものと規定している。
(エ)要領第11条において、報酬助成の方法を定めており、第1項第1号において報酬助成を受けようとする者は、第9号様式に必要な資料を添付の上、市長に申請することと規定し、第9号様式の処分庁記入欄の「対象期間の居住形態」欄において「施設等」に分類されるものとして「入院」、「特養」、「有老」、「その他」が列挙されている。
(2) 令和〇年〇月当時の審査請求人が要綱第6条第3項にいう「施設入所者」に該当するか否かについて
ア 審査請求人代理人は、現在審査請求人が生活するグループホームの入居契約を締結したのは令和〇年〇月〇日である旨主張する。
 しかし、報酬付与事情申立書添付資料「入居契約書」は、令和〇年〇月〇日付けで作成されており、同契約書に記載の「利用開始日」は、同月〇日となっている。
 また、処分庁が審査請求人代理人に、審査請求人の入院期間の確認を行ったところ、審査請求人代理人が後見人として就職した時から令和〇年〇月〇日まで入院しており、退院と同時に、グループホームに入居した旨を聴き取っていることから、退院及びグループホーム入居日については令和〇年〇月〇日で間違いないと考えられる。
 第9号様式処分庁記入欄の「対象期間の居住形態」欄において「施設等」に分類されるものとして「入院」、「特養」、「有老」、「その他」が列挙されているとおり、入院は「施設入所者」に分類され、施設入所者と在宅生活者の区分については、要綱第6条第4項において、対象期間の各月の初日の状態によるものと規定しており、令和〇年〇月の初日は入院していたため、令和〇年〇月に審査請求人は「施設入所者」に該当すると処分庁が認定したことは、要綱及び要領に基づいたものであり、何ら不合理な点はない。
 したがって、本件処分は、適切になされたものであり、何ら違法又は不当な点は存在しない。
イ  審査請求人は、審査請求人の後見申立ては、審査請求人が退院し、在宅生活をするために行ったのであり、本件報酬付与の審判も退院に伴う手続等の後見業務を行った経過を踏まえてなされたものであるから、本市の報酬助成もこの経過を考慮し、決定すべきであるにもかかわらず、本件処分がなされたことには納得できない旨を主張する。
 しかし、要綱第6条第3項において、報酬助成の額は民法第862条(第876条の5第2項及び第876条の10第1項において準用される場合を含む。)の規定により家庭裁判所が定める報酬の額の範囲内であって、かつ、次に掲げる区分に定める額を上限として、市長が認める額とするとし、同項第1号で施設入所者の報酬助成額の上限を月額18,000円、同項第2号において、在宅生活者の報酬助成額の上限を月額28,000円と規定しており、令和〇年〇月の審査請求人が要綱第6条第3項にいう「施設入所者」に該当することは前述(1)イのとおりである。
 また、本件報酬付与の審判は、民法(明治29年法律第89号)第862条「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。」との規定に基づき行われており、本来、成年被後見人(以下「被後見人」という。)本人の財産の中から支払われるものである。要綱における家庭裁判所が定める報酬額との関係に関する規定は、要綱第6条第3項の「家庭裁判所が定める報酬の額の範囲内であって」のみであり、本件報酬付与の審判で決定された報酬額を報酬助成決定額とすべき等と述べる審査請求人の主張は、本件処分の取消し及び本件報酬付与の審判の額を助成するとの裁決を求める理由としては、採用することはできない。
(3) 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第4  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和3年7月7日 諮問書の受理
  令和3年7月26日 審査請求人からの主張書面の収受
  令和3年7月28日 審査庁からの主張書面の収受
  令和3年8月23日 調査審議
  令和3年9月1日 審査請求人からの主張書面の収受
  令和3年9月27日 調査審議(審査請求人の口頭意見陳述)
  令和3年10月18日 審査請求人からの主張書面の収受
  令和3年10月25日 調査審議
  令和3年11月22日 調査審議

第5  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
 前記第3、4、(1)の記載に加えて、下記のとおりであると認められる。
(1) 厚生労働省が発出している「地域支援事業の実施について」(平成18年6月9日付老発0609001号厚生労働省老健局長通知)において定める「地域支援事業実施要綱」(以下「国要綱」という。)では、法第115条の45第3項第3号に規定する事業の対象として「成年後見制度利用支援事業」を掲げ、「市町村申立て等に係る低所得の高齢者に係る成年後見制度の申立てに要する経費や成年後見人等の報酬の助成等を行う。なお、本事業は、市町村申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等についてもその対象となりうるものであることに留意されたい。」としている(国要綱別記4任意事業の3事業内容(3)ア)。
(2) 地方自治法第232条の2は、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」とし、当該規定においては補助の要件及び効果を具体的に定めていないことから、助成金を交付するかについては、地方公共団体の長が、当該地方公共団体における経済的、社会的、文化的な諸要素や各種の行政施策の在り方等の諸事情を総合的に考慮した上で、住民の福祉の増進に寄与するという見地から判断すべきものであり、地方公共団体の長に広く裁量権が認められているものと解することができる。
 一方で、同規定が公益上必要であることを要件としたのは、恣意的な助成金の交付によって、地方公共団体の財政秩序を乱すことを防止することにあると解することができるため、当該地方公共団体の長による公益上必要であるかに関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったか否かは、当該助成金の交付の目的、助成の対象となる事業の目的や性質等の諸般の事情を総合的に考慮して判断されるものであり、その判断が著しく不合理であったといえる場合には、裁量権の逸脱又は濫用があったといえると解する。
2 本件審査請求における請求の趣旨について
 本件審査請求書記載の「3 審査請求の趣旨」では、「審査請求人に対する〇〇第〇〇号決定処分を取り消し」とするとともに、「大阪家庭裁判所令和〇年〇月〇日付報酬決定記載の報酬を助成するとの裁決を求める。」とされているが、令和3年9月27日に実施した口頭意見陳述においては、審査請求人代理人は、本会の「家裁の審判で決定された報酬額全額を助成すべきことを求めているのではなく、大阪市の助成制度の枠(区分、各区分における助成の上限額)の中での満額を求めていると理解してよいか。そして、今回の区分の振り分けがおかしいので、「施設入所者」ではなく「在宅生活者」と振り分けるべきであり、「在宅生活者」の区分の上限額での認定をすべきであると求めているという理解でよいか」という質問に対して、そうである旨陳述し、さらに、本会の「本人が入院中も「在宅生活者」で上限額28,000円を助成すべきという主張でよいか」という質問に対して、そうである旨陳述しており、審査請求書記載の請求の趣旨とは異なる陳述を行っている。
 この点につき、審査請求人代理人の口頭意見陳述における陳述の全趣旨から、本会では、本審査請求における請求の趣旨は、大阪家庭裁判所の令和〇年〇月〇日付け報酬付与審判記載の報酬〇〇円全額の助成をするとの裁決を求めるものではなく、「令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月間については、大阪市成年後見制度に係る大阪市長による審判の請求等に関する要綱第6条第3項2号に規定する「在宅生活者」の区分にあたるとして月額28,000円(8か月の対象期間全体で総額224,000円)による助成をするとの裁決を求める」ものと理解できる可能性もあるため、あらためて審査請求人代理人にこの点について主張を求めたところ、「本年9月27日付口頭意見陳述での当職の発言は、ご指摘のとおり「大阪市の助成制度の枠」で「『施設入所者』ではなく『在宅生活者』と振り分けるべき」というものである。
 したがって、本審査請求における請求の趣旨は月額28,000円(8か月の対象期間全体で総額224,000円)による助成をするという裁決を求めるものである。」として請求の趣旨を訂正する旨の回答があったことから、本会は、本件審査請求における請求の趣旨については、「審査請求人に対する〇〇第〇〇号決定処分を取り消し」とするとともに、「令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月間については、要綱第6条第3項第2号に規定する「在宅生活者」の区分にあたるとして月額28,000円(8か月の対象期間全体で総額224,000円)による助成をするとの裁決を求める」と理解して以下判断を行う。
3 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は、本件処分において、本件後見期間の内、令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月間について、審査請求人は病院に入院していたとして、要綱第6条第3項第2号に規定する「施設入所者」の区分にあたると認定し、報酬助成額として月額18,000円と判断したことが不合理であるか否か、である。
4 争点に係る審査会の判断について
(1) 要綱は、法の規定を受け成年後見制度利用支援事業の一環として処分庁が後見人等報酬助成を実施するために定めたものである。
 要綱第6条第1項及び第2項において、後見人等の報酬の支払いに要する費用の一部又は全部を助成することができるとし、要綱第6条第3項において、報酬助成の額は、民法第862条の規定により家庭裁判所が定める報酬の額の範囲内であって、同項第1号で施設入所者の報酬助成額の上限を月額18,000円、同項第2号で在宅生活者の報酬助成額の上限を月額28,000円として市長が認める額とし、当該区分については、同条第4項において、対象期間の各月の初日の状態によるものとしていることについては、助成の対象や要件及び効果について具体性のある規定となっていること、地域支援事業を実施するにあたり当該地域における利用者間に格差を生じさせないよう配慮しつつ公益上の見地から助成を実施するために平準的かつ客観的な要件とすべきなかで、処分庁は厚生労働省が発出している「老人福祉法第32条に基づく市町村長による法定後見の開始の審判等の請求及び「成年後見制度利用支援事業」に関するQ&Aについて」(平成12年7月3日付厚生労働省老健局計画課長名事務連絡)のQ6の回答にある参考単価を参考に、上限額の基準を定めたものであることに鑑みると、処分庁が定めた要綱は法の趣旨からみても相当なものであり、著しく不合理なものとはいえない。
 また、要綱第6条第1項、第2項及び第3項第1号及び同項第2号の規定については、処分庁による助成は必ずしも家庭裁判所の決定した報酬額の全額が助成される性質のものではなく、家庭裁判所が決定した報酬額の範囲で、後見人について「在宅生活者」又は「施設入所者」の区分に応じた上限額を超えない額で助成額が決定されるものであることが客観的に認識できる規定になっているといえる。
 そして、被後見人が要綱第6条第3項の「在宅生活者」又は「施設入所者」のどちらにあたるかの認定について、申請に係る処分を公平に処理する必要に鑑み、処分庁は申請における被後見人の居場所に関する外形的な事実に基づいて居住形態を認定せざるを得ず、そうであれば、外形的に医療機関に入院している状態にある被後見人の居住形態について、要領上、「施設入所者」の区分に該当する者であると認定する運用となっていることが、不合理とまではいえない。
(2) そこで、令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月間における審査請求人の客観的な状況について検討すると、まず審査請求書添付の後見開始申立書並びに報酬付与申立事情説明書及びその添付書類から、令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月において審査請求人は医療行為を受けることを目的に病院に入院している状態にあったということが認められる。
 この点、審査請求人は、処分庁に対して、令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月において審査請求人は医療行為を受けることを目的に病院に入院している状態にあったことを証する客観的な資料の提出は行っていないが、処分庁が令和〇年〇月〇日及び同月〇日に審査請求人代理人に対して入院期間を電話で確認したことに対し、審査請求人代理人は同代理人が後見人に就職した時から令和〇年〇月〇日まで入院していた旨を回答していることは弁明書及び審査請求書、反論書の記載からも明らかであり、当該入院期間については審査請求人においても異論は述べていないところである。
 いずれにしても、令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月において審査請求人は病院に入院している状態にあったということが認められ、当該事実に基づき、処分庁が、被後見人の居住形態を「施設入所者」の区分に該当する者であると認定したことについて不合理な点はないというべきである。
 以上から、処分庁が令和〇年〇月から令和〇年〇月の4か月について、審査請求人は病院に入院していたとして、要綱第6条第3項第2号に規定する「施設入所者」の区分にあたると認定し、報酬助成額として月額18,000円とした判断に違法又は不当な点は認められない。
(3) なお、上記の争点以外についても審査請求人代理人は、本件処分について憲法第31条の観点から違法不当であるとする点、さらに理由付記の規定に反することから違法不当であるとする点をそれぞれ主張するが、それらの主張の趣旨は上記争点における審査請求人の主張に収斂されるものであるから、本件処分について処分庁の判断に違法又は不当な点は認められないとする結論に影響を与えるものではない。
5 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
6 結論
 よって、本件審査請求は理由がないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。
7 付言
(1) 法に基づく地域支援事業の一つとして実施される成年後見制度利用支援事業については、これを実施する各地方公共団体において諸般の事情を考慮した上で制度設計をするものではあるが、法で定める目的(法第1条で掲げる「この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。」)に鑑みれば、介護保険制度を利用する者が利用しやすい制度であることが望ましいといえる。
 そうであれば、後見人等報酬助成を申請する利用者にとって、申請手続きにあたり助成を受けることができるのか否かについて予測可能性を担保しておくことが求められ、助成額の認定の基準となる要綱については、申請する者が申請にあたり誤解などをしないよう、要綱の規定の明確性をあげることが望ましいといえる。
 さらに、決定書において決定された助成額の内訳についても申請者が把握できるような様式等にするなどの工夫が望ましいと思料する。
(2) また、後見人においては、被後見人が入院中であったとしても、退院を目指し、被後見人が病院以外の場所において多様な生活をしていくことを目的として後見業務を行うことについても理解できるところがあるといえ、被後見人の居住形態だけでは具体的な後見業務の内容について測りきれない側面も否定できないものである。
 後見人の業務の対価としての後見報酬に対する助成である点を踏まえ、被後見人の形式的な居住形態からのみ後見業務を評価する方法以外にも後見業務の目的等の事情も実質的に考慮できるような方法が助成制度として採用できるか等を財政的事情も勘案したうえで検証をするなど、真に後見報酬の捻出が困難な者にとって受け皿となるような制度となっているかについて、今後も検証されることを切に望む。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第1部会
 委員(部会長) 井上武史、委員 北川豊、委員 常谷麻子

答申書(令和3年度答申第10号)

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