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答申書(令和3年度答申第16号)

2023年2月17日

ページ番号:559869

諮問番号:令和3年度諮問第10号
答申番号:令和3年度答申第16号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 令和〇年〇月〇日、審査請求人は、新型コロナウイルスの影響によって、就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該個人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は廃業の場合と同等程度の状況にあるとして、生活困窮者住居確保給付金(以下「給付金」という。)の申請を行い、大阪市長(以下「処分庁」という。)は、同年〇月〇日付けで住居確保給付金支給決定を行った。
2 令和〇年〇月〇日、審査請求人は、減収状況が続いているとのことから「住居確保給付金支給申請書(期間(再)延長)」(以下「本件申請」という。)を処分庁に提出した。処分庁は、審査請求人に係る資産及び収入状況の把握・確認を要するとして、審査請求人に対し減収状態にあることが確認できる挙証資料の提出を求めた。
3 令和〇年〇月〇日、審査請求人は、処分庁からの電話連絡に対して、同月〇日午前11時に通帳及び給与明細書(3か月分)を持って来庁の上、提出すると応答した。
4 令和〇年〇月〇日、審査請求人は来庁せず、また、以降は処分庁からの電話連絡(同月〇日、〇日、〇日)にも応じること無く、資産及び収入状況の挙証資料の提出がなされなかった。
5 令和〇年〇月〇日付けで処分庁は、本件申請につき、支給要件の確認ができないことから、住居確保給付金不支給決定(以下「本件処分」という。)を行った。
6 令和〇年〇月〇日、審査請求人は、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。

第3  審理員意見書の要旨
 本件審査請求についての審理員意見書の要旨は次のとおりである。
1  審査請求人の主張
 審査請求人は、勤務先の都合により減収状態が続いていることから、給付金の受給要件に該当することを理由として、本件処分の取消しを求めている。
2  処分庁の主張
 弁明の趣旨は、「審査請求人の審査請求を棄却する」との裁決を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 審査請求人から減収状態にあることが確認できる挙証資料の提出がなされなかったこと、処分庁からの数回の電話連絡にも応答せず、状況の確認ができなかったこと、また、本市の事務取扱いにより申請書の提出後30日を経過したものについては、処分庁は、不支給決定を行うものとされていることから、本件審査請求には理由がなく、棄却されるべきである。
3  審理員意見書の結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
4  審理員意見書の理由
(1) 本件に係る法令等の規定について
ア 生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)(以下「支援法」という。)第3条第3項において、給付金は、離職又はこれに準ずる事由により経済的に困窮し、現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となったもの等であって、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるものに対して支給すると規定されている。
イ 生活困窮者自立支援法施行規則(平成27年厚生労働省令第16号)(以下「施行規則」という。)第3条第2号(審理員意見書では「第3条第2項」となっているが、誤記と思われる。)において、給付金の受給者となる生活困窮者とは、就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該個人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は前号の場合と同等程度の状況にある場合と規定されている。
ウ また、施行規則第10条第3号(審理員意見書では「第10条第3項」となっているが、誤記と思われる。)において、申請日の属する月における当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の収入の額を合算した額が、基準額及び当該生活困窮者が賃借する住宅の1月当たりの家賃の額(当該家賃の額が住宅扶助基準に基づく額を超える場合は、当該額)を合算した額以下であることと規定されている。
エ 加えて、施行規則第13条において、給付金の支給を受けようとする者は、生活困窮者住居確保給付金支給申請書に厚生労働省社会・援護局長が定める必要書類(収入状況及び資産状況の記載並びに事実を証明する資料等(直近の世帯収入月額・世帯預貯金額))を添えて、都道府県知事等に提出しなければならないと規定されている。
オ 法令等の解釈について、大阪市住居確保給付金事務取扱い要領(以下「事務取扱い要領」という。)の「11 住居確保給付金の支給期間の延長等」において、次のとおり示している。
(ア)支給期間の延長等
 給付金の支給期間は3月であるが、支給期間中に受給者が常用就職できなかった場合又は受給者の給与その他の業務上の収入を得る機会が改善しない場合であって、引き続き給付金の支給が就職の促進に必要であると認められる場合は、申請により、3月の支給期間を2回まで延長及び再延長をすることができる。
(イ)手続等
 受給者が支給期間を延長又は再延長を希望する際は、支給期間の最終の月の末日までに「住居確保給付金支給申請書(期間(再)延長)」を自立相談支援機関に提出する。本市は、当該受給者が受給期間中に求職活動等を誠実かつ熱心に行っていたか、支給要件に該当しているかを勘案の上、上記による延長等の要件を満たすと判断された場合は延長等の決定を行い、当該受給者に「住居確保給付金支給決定通知書(期間(再)延長)」を自立相談支援機関経由で交付する。
(2) 本件処分に違法又は不当な点があるかについて
ア 本件申請は、受給者の給与その他の業務上の収入を得る機会が改善しない場合であることによる給付金の支給延長申請であり、減収状況を証する挙証資料を確認する必要がある。審査請求人が令和〇年〇月〇日付けで本件申請を行った際、収入を得る機会が改善していない状況を確認できる証拠が提出されておらず、また、その後も提出の機会があったにもかかわらず、提出されることがなかったことから、処分庁は、延長等の要件を満たすとの判断ができない状況であった。
イ 審査請求人は、自らが減収状況を証する挙証資料をもって、当該個人の就労の状況が離職又は廃業の場合と同等程度の状況であるとのことを証する必要があったが、処分庁が定めている期日までに資料の提出を行わなかった。提出期日については、本市では、上記事務取扱い要領(審理員意見書では「上記マニュアル」となっているが、上記事務取扱い要領を指していると思われる。)に従い「大阪市住居確保給付金事務取扱い要領に基づく事務の手引き」を作成し、標準処理期間として申請書の提出後30日以内として取り扱っている。
 また、令和〇年〇月〇日付けで、審査請求人あて「弁明書の送付及び反論書の提出について」を審理員より郵送し、反論書の提出期限を令和〇年〇月〇日までとしていたが、こちらについても提出が無い状況にある。
ウ 以上のとおり、本件処分は、法令の規定及びその解釈に従い適正になされたものであり、何ら違法又は不当な点は存在しない。
(3) 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第4  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和3年10月21日 諮問書の受理
  令和3年11月12日 審査庁からの主張書面の収受
  令和3年11月14日 処分庁からの資料の収受
  令和3年11月22日 調査審議
  令和3年12月20日 調査審議

第5  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
 前記第3、4、(1)のとおり、及び下記のとおりであると認められる。
(1) 支援法第6条第1項において、都道府県知事等は、その設置する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する生活困窮者のうち第3条第3項に規定するもの(当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の資産及び収入の状況その他の事情を勘案して厚生労働省令で定めるものに限る。)に対し、給付金を支給するものと規定されている。
(2) 施行規則第10条において、支援法第6条第1項に規定する厚生労働省令で定める生活困窮者について、次の各号のいずれにも該当する者とする、と規定されている。(3号については、前記第3、4、(1)、ウのとおり)
一 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める者であること。
イ 離職の場合又は第3条第1号に規定する場合 生活困窮者住居確保給付金の支給を申請した日(以下この条、次条、第12条第1項において「申請日」という。)において、離職した日又は事業を廃止した日(以下「離職等の日」という。)から起算して2年を経過していない者
ロ 第3条第2号に規定する場合 申請日の属する月において、第3条第2号に規定する状況にある者
二 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める者であること。
イ 離職の場合又は第3条第1号に規定する場合 離職等の日においてその属する世帯の生計を主として維持していた者
ロ 第3条第2号に規定する場合 申請日の属する月においてその属する世帯の生計を主として維持している者
四 申請日における当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の所有する金融資産の合計額が、基準額に6を乗じて得た額(当該額が100万円を超える場合は100万円とする。)以下であること。
五 公共職業安定所に求職の申込みをし、誠実かつ熱心に機関の定めのない労働契約又は期間の定めが6月以上の労働契約による就職を目指した求職活動を行うこと。
(3) 施行規則第12条において、都道府県等は、生活困窮者住居確保給付金の支給を受けようとする者が、申請日において第10条各号のいずれにも該当する場合は、3月間生活困窮者住居確保給付金を支給する。ただし、支給期間中において生活困窮者住居確保給付金の支給を受ける者が第10条各号(第1号を除く。)のいずれにも該当する場合であって、引き続き生活困窮者住居確保給付金を支給することが当該者の就職の促進に必要であると認められるときは、3月ごとに9月までの範囲内で都道府県等が定める期間とすることができると、規定されている。
(4) 事務取扱い要領「11 住居確保給付金の支給期間の延長等」(1)において、「引き続き支給が必要と認められる場合」については、当該受給中に誠実かつ熱心に求職活動等要件を満たし、かつ、延長等の申請時において、支給要件を満たしている場合とする、とされている。
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は、支給要件を定めた施行規則第3条第2号「就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は前号の場合と同等程度の状況にある場合」に該当する事実を審査請求人においては認めることができないとした処分庁の判断は妥当か否か、である。
3 争点に係る審査会の判断について
 審査請求人は、本件処分の取消しを求める理由として、勤務先の都合により減収の状況が続いていることから、給付金の支給期間延長に係る支給要件に該当するとして、本件処分に理由がない旨主張するものである。
 そこで、本件において、支給要件を定めた施行規則第3条第2号「就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は前号の場合と同等程度の状況にある場合」に該当する事実が審査請求人に認められるか否か検討する。
 本件申請においては、処分庁が、審査請求人の主張する減収の状況が続いているという事実を説明するための資料の提出を求めたことに対し、一度審査請求人は、通帳及び給与明細書を処分庁に持参し提出する旨の応答をしたにもかかわらず、これを履践せず、それ以降の処分庁からの連絡にも応じていない事情が伺われる。
 処分庁においては、給付金の支給期間延長に係る支給要件充足を審査するに当たり、申請者が提出した資料を基礎として要件充足に係る事実認定をする以上、処分庁が減収の状況が続いているという事実に関する資料の提出を申請者に対して求めることは不合理なものではない。そして、審査請求人は、本件申請においては申請書を提出したのみであり、当該申請書以外には証拠書類がないことから、再延長の要件に該当するという事実の証明はなかったと言えるし、認定の基礎とする資料が得られなかったことにより、要件充足が無かったとする判断を処分庁がすることは、やむを得ないものであると言える。
 また、処分庁から再三にわたって申請者に対して連絡を試みていたことからしても、処分庁において調査不尽であるということも言えない。
 いずれにしても、本件の事件記録からは、審査請求人が主張する勤務先の都合により減収の状況が続いている事実を認定するために必要な証拠を確認することはできない。
 以上から、本件において、支給要件を定めた施行規則第3条第2号「就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は前号の場合と同等程度の状況にある場合」に該当する事実が審査請求人に認められるとは言えない。
 よって、審査請求人の申請に対して、支給要件に該当する事実を審査請求人においては認めることができないとした処分庁の判断は妥当であり、本件処分に違法又は不当な点があるとは認められない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由はないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。
6 付言
 本件処分に係る「住居確保給付金不支給決定通知書」には、本件処分の理由として、「支給要件に不適合のため(添付書類不備)」と記載されているが、一般的には、かかる記載のみから、給付金の支給期間延長に係る支給要件のうち、いかなる要件について非該当と判断されたのかが容易に了知できるとは必ずしも言えない。
 本件においては、審査請求人は令和〇年〇月〇日付けで処分通知を受け、同年同月〇日に本件審査請求を行っていること、当該審査請求書記載の審査請求の理由において「お給料は昨年の6分の1近くまで減少」している旨を記載していることから、審査請求人においては、少なくとも、減収の状況が続いているという点が本件申請の判断を左右するものであることを了知していると推認できることから、本件の処分理由の記載が直ちに行政手続法第8条に反して違法であるとまでは言えない。
 しかし、処分理由を具体的に記載することは、当該処分に係る公正の確保及び透明性の向上を図り、併せてその不服申立てに便宜を与えるという行政手続法第8条の規定の趣旨に適うと考える。
 確かに、処分庁においては、大量、反復かつ迅速に行われる全ての申込に対する住居確保給付金不支給決定通知書に詳細な理由を付すことは困難であるかもしれない。しかし、給付金の支給要件については支援法や施行規則の規定ぶりからもある程度類型化された事案が想定されるため、事案に応じた具体的な理由を付すことは手続の円滑な遂行を妨げるおそれがあるとまでは言えない。
 よって、住居確保給付金不支給決定に付すべき理由については具体的な事案に応じたものとする等、これからも市民にとってわかりやすい処分理由とするための工夫をすることが望ましいと思料する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第1部会
 委員(部会長) 井上武史、委員 北川豊、委員 常谷麻子

答申書(令和3年度答申第16号)

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