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答申書(令和3年度答申第17号)

2023年2月17日

ページ番号:561502

諮問番号:令和3年度諮問第16号
答申番号:令和3年度答申第17号

答申書

第1 審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、令和2年11月26日付けで、別紙徴収金明細記載の各徴収金について、令和2年12月から令和3年7月までの全8回の分割納付計画(以下「本件納付計画」という。)に基づき、猶予期間を令和3年7月12日までとする職権による換価の猶予(以下「本件猶予」という。)を行った。
2 処分庁は、本件納付計画において、2回目から6回目について不履行であったため、令和3年5月26日付けで、地方税法(以下「法」という。)第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号に該当するとして本件猶予の取消処分(以下「本件処分」という。)を行った。
3 審査請求人は、令和3年8月27日、処分庁に対し、本件処分の取消しを求めて審査請求をした。

第3 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張の要旨
 市税事務所には、勤務先におけるコロナ禍による指示で月に2日間休むようになり、給与が月に1万円から2万円減額になっているため、市税の支払いが滞っていると伝えていた。電話で、市税事務所に出向いて説明した方がよいか尋ねたが、「具体的な支払についての提示がなければ、来てもらっても…」と言われたので、その突き放した対応に問題はあるが、そのままにしていた。コロナ禍で、通常の猶予よりも理解してもらっているものと思っていたが、突然、猶予取消しの通知をもらった。
 私生活上のトラブルを抱えていることから、想像よりもはるかに険しい生活を送っている。
 困難なトラブルの渦中であるがゆえ、払えない状況を続けてしまっているので、差押えの強行は回避してほしい。
2 処分庁の主張の要旨
 令和2年11月24日、審査請求人より滞納している徴収金について、生活困窮であるので、毎月1万円の納付を希望するとの申し出があり、12月から翌年6月まで毎月1万円、翌年7月に残額の分納を約束し、令和2年11月26日付けで職権による換価の猶予を決議した。
 納付計画の1回目の納付はあったものの、2回目、3回目と不履行であったが、令和3年2月17日に、審査請求人より電話で新型コロナウイルスの影響で1、2月の給料がさらに減少したため納付できなかったが、4回目は納付できる可能性があるとの連絡があり、令和3年3月15日までに近況等を報告するよう指示したが、4回目も不履行であった。
 令和3年3月16日、審査請求人より納付困難で来所したいとの申し出があった時に、納付の予定が立たないのであれば、今後猶予を取消す可能性について説明したが、5回目、6回目も不履行であった。令和2年11月26日付け換価の猶予通知に記載された分割納付金額をその分割納付期限までに納付していなかったため、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号に該当し、本件処分に至ったものであり、処分は適法である。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきものと判断する。
2 理由
 本件猶予は、審査請求人の資力を勘案し、令和2年11月26日付けで職権により行われている。
 処分庁は、本件納付計画の2回目以降度重なる納付の不履行があったことから、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号により、令和3年5月26日付けで本件処分を行ったと主張している。
 また審査請求人は、コロナ禍で通常の猶予よりも理解してもらっていると思っていたと主張しているが、不履行を繰り返している点や処分庁が本件猶予の取消しの可能性についても伝えている点を鑑みると、処分庁は、適切に対応しているものと考える。
 もっとも、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号かっこ書きにおいて、「地方団体の長がやむを得ない理由があると認めるときを除く」と規定されている。
 本件では、本件猶予後の令和3年2月17日に、審査請求人から処分庁に対して、新型コロナウイルスの影響で給料が減額されたため、2回目、3回目について納付が出来ていないとの事情が伝えられている。
 この点、2回目、3回目は不履行であったが、4回目は払える可能性があるという審査請求人からの連絡を受けて、処分庁は本件猶予を取り消すことなく継続している。
 しかしながら、令和3年3月16日の電話において、処分庁が換価の猶予を取り消す可能性について説明してから、審査請求人は、処分庁から具体的な支払い可能額について提示を求められていたにも関わらず、提示することなく、その後も不履行を続けていた。
 処分庁は、前記のような状況を踏まえて令和3年5月26日付けで本件処分を行っている。
 前記事情を総合的に勘案すると、やむを得ない理由があると認められるとはいえず、処分庁が本件猶予を取り消したことに違法又は不当な点はない。
 さらに、審査請求人は自身の抱える私生活上のトラブルについても言及し、コロナ禍における収入減とともに、困難なトラブルの渦中であることも滞納に至った理由として主張している。審査請求人が抱えるトラブルについては、本件処分に対する違法又は不当に関するものではないため、審査請求人の主張は採用することができない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和3年12月7日 諮問書の受理
  令和3年12月7日 調査審議
  令和3年12月17日 審査請求人から主張書面の収受
  令和3年12月17日 処分庁から資料の収受
  令和3年12月20日 審査請求人から主張書面の収受
  令和3年12月20日 調査審議
  令和4年1月7日 審査請求人から主張書面の収受
  令和4年1月7日 調査審議
  令和4年1月18日 審査請求人から主張書面の収受
  令和4年1月18日 調査審議

第6 審査会の判断
1 関係法令等の定め
(1) 職権による換価の猶予の要件等について
ア 地方団体の長は、滞納者の財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められるときや、滞納者の財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る地方団体の徴収金及び最近において納付し、又は納入すべきこととなる他の地方団体の徴収金の徴収上有利であるときに該当すると認められる場合において、その者が当該地方団体に係る地方団体の徴収金の納付について誠実な意思を有すると認められるときは、その納付すべき地方団体の徴収金につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。ただし、その猶予の期間は、1年を超えることができない(法第15条の5第1項)。
イ 地方団体の長は、当該徴収金の納付について、当該地方団体の条例で定めるところにより、当該換価の猶予をする期間内において、当該換価の猶予を受ける者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当なものに分割して納付させることができる(法第15条の5第2項において読み替えて準用する法第15条第3項)。
ウ 市長は、法第15条第3項の規定により、同条第1項若しくは第2項の規定による徴収の猶予に係る徴収金を分割して納付させる場合には、当該分割納付の各納付期限ごとの納付金額を定める(大阪市市税条例において条例第6条において準用する条例第4条)。
(2) 職権による換価の猶予の取消しについて
ア 地方団体の長は、次に該当する場合には、当該換価の猶予を取り消し、当該換価の猶予に係る徴収金を一時に徴収することができる。
(ア) 換価の猶予を受けた者が、分割して納付することを認めた徴収金をその期限までに納付しないとき(地方団体の長がやむを得ない理由があると認めるときを除く)(法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号)。
(イ)換価の猶予を受けた者の財産の状況その他の事情の変化により当該換価の猶予を継続することが適当でないと認められるとき(法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第6号)。
イ 地方団体の長は、当該換価の猶予を取り消したときは、その旨を当該換価の猶予の取消しを受けた者に通知しなければならない(法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項及び第3項)。
2 争点等について
(1) 審査請求人は、勤務先からのコロナ禍による指示で月に2日間休むようになり、給与が減額になっているため、支払いが滞っていることを理由に本件処分の取り消しを求める旨を主張している。
 職権による換価の猶予については、前記1(2)ア(ア)のとおり、猶予を受けた者が分割して納付することを認めた地方団体の徴収金をその期限までに納付しないときは、地方団体の長は、当該徴収の猶予を取り消し、その猶予に係る地方団体の徴収金を一時に徴収することができるとされているところ、審査請求人は、本件処分のあった令和3年5月26日時点で、本件納付計画のうち、2回目から6回目について履行していないことが認められる。
 したがって、当該納付計画の不履行を理由に、本件処分を行ったことに、違法又は不当な点はない。
 なお、前記1(2)ア(ア)のとおり、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号かっこ書きにおいては、換価の猶予が取り消される場合の除外要件として、「地方団体の長がやむを得ない理由があると認めるときを除く」と規定されており、大阪市においては、「猶予制度の取扱いについて(通知)」(平成28年2月16日付け通知、直近改正令和3年3月29日)において、「個々の事情など、猶予段階では予測できなかった事情により、猶予を許可した状況に変化が生じ、かつ、猶予を継続しても徴収上の支障がないと認められるとき」には猶予を取り消さないこととしている。
 これを本件においてみると、審査請求人は、勤務先におけるコロナ禍による対応で、給与が月1万円から2万円減額になっている旨主張している。このことが、仮に、前記通知における「個々の事情など、猶予段階では予測できなかった事情により、猶予を許可した状況に変化が生じ」たことに該当するとしても、本件納付計画の最初の不履行(令和3年1月12日期限分)から約4か月を経過した本件処分を行った時点(令和3年5月26日)に至るまで、処分庁から猶予取消しの可能性を示唆され、新たな納付計画の提示を促されていたにもかかわらず、本件納付計画の不履行部分についての支払い時期や新たな納付計画の提示もなかったことからすると、猶予を継続しても徴収上の支障がないと認められるとはいえず、本件猶予を取り消さないやむを得ない理由がある場合には該当しないとするのが相当である。
(2) 審査請求人は、市税事務所に出向いて説明した方がよいか尋ねたが、「具体的な支払についての提示がなければ、来てもらっても…」と言われたので、その突き放した対応に問題はあるが、そのままにしていた旨及びコロナ禍で、通常の猶予よりも理解してもらっていると思っていたが、突然、猶予取消しの通知をもらった旨も主張している。
 この点について、前記1(2)イのとおり、換価の猶予を取り消す場合には、当該猶予を取り消した旨を通知するよう定められているものの、取消しに当たって事前に通知するよう定めた法令等の規定はない。
 とはいえ、処分庁は、納付回数が8回の本件納付計画のうち、2回目、3回目が不履行であった時点で本件猶予を取り消す要件は満たしているものの、4回目は払える可能性があるという審査請求人からの連絡を受けて、本件猶予を取り消すことなく継続している。また、処分庁は、電話で換価の猶予を取り消す可能性について説明し、具体的な支払い可能額について提示を求めたにもかかわらず、審査請求人から金額の提示はなく、その後も不履行が続いていたため、本件処分を行ったことが認められ、処分庁の対応についても違法又は不当な点はない。
(3) 以上のことからすると、本件処分は、法第15条の5の3第2項において準用する法第15条の3第1項第2号の規定に基づき、適正になされている。
(4) 審査請求人は、本件審査請求に係る審査請求書や反論書、審査会に提出された資料等において、私生活上のトラブルについて詳細に言及し、そのようなトラブルの渦中であるがゆえ、払えない状況を続けてしまっているので、差押えの強行は回避してほしい旨主張している。
 しかしながら、審査請求人が抱える私生活上のトラブルや、本件処分の後に審査請求人が想定する差押えについては、本件猶予を取り消さないやむを得ない理由とはいえず、また本件処分に対する違法又は不当に関するものではないため、審査請求人のこれらの主張は採用することができない。
3 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
4 結論
 よって、本件審査請求には理由がないものと認められるので、当審査会は第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第2部会
 委員(部会長) 永井秀人、委員 野村宏子、委員 櫻井多美

別紙省略

 

上記答申書に関する問合せ先
財政局税務部管理課(審査監察グループ)
電話:06-6208-8236  ファックス:06-6202-6953

答申書(令和3年度答申第17号)

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