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答申書(令和4年度答申第1号)

2023年2月17日

ページ番号:567478

諮問番号:令和3年度諮問第14号
答申番号:令和4年度答申第1号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 令和2年6月17日、審査請求人は、新型コロナウイルスの影響によって、就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該個人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は廃業の場合と同等程度の状況にあるとして、生活困窮者住居確保給付金(以下「給付金」という。)の申請を行い、大阪市長(以下「処分庁」という。)は、同年7月31日付けで住居確保給付金支給決定を行った。
2 令和2年9月9日、審査請求人は、減収状況が続いているとのことから「住居確保給付金支給申請書(期間(再)延長)」(以下「本件申請」という。)を処分庁に提出した。処分庁は、審査請求人における受給期間中の求職活動状況、また審査請求人に係る資産及び収入状況の把握・確認を要するとして、同月24日、審査請求人に対し同年6月から8月の間にそれぞれ毎月提出することとなっていた「求職活動状況報告書(参考様式9)」(以下「報告書」という。)の必要項目の記載及び報告書の提出並びに減収状態にあることが確認できる挙証資料の提出を求めた。
3 令和2年10月5日、審査請求人は郵送にて同年6月・7月・8月の報告書及び収入状況について処分庁に提出した。
 審査請求人は、6月・7月・8月の各報告書の様式中にある【求職活動について(必須回答)】「この1か月間に求職活動を行いましたか?✓を入れてください。」の項目の中で、それぞれ「□はい」、「□いいえ」を選択する箇所については、「□いいえ」に✓を入れ提出をしている。
4 令和2年10月27日付けで処分庁は、本件申請につき、支給要件の確認ができないことから、住居確保給付金不支給決定(以下「本件処分」という。)を行った。
5 令和2年11月26日、審査請求人は、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。

第3  審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 下記を理由に、本件処分の取消しを求めている。
 審査請求人は、給付金の受給期間中、公共職業安定所での求職活動は行っていないが、他の求職活動は行っており、自身の営業収入についても営業自粛などによる減収が続いていることから、給付金の支給要件に該当する。
2  処分庁の主張
 弁明の趣旨は、「審査請求人の審査請求を棄却する」との裁決を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 審査請求人が本件申請を行った時点では、当初支給期間における月1度提出の必要がある報告書、「収入状況にかかる申告書(自営業・フリーランスの方)」等の書類が全く提出されていなかった。そのことを令和2年9月24日、自立相談支援機関が審査請求人に指摘したところ、「各書類が見当たらない」との供述があったため、同日、自立相談支援機関より当該書類を審査請求人に送付したことに対して、審査請求人より同年10月5日付けで当該書類の提出があった。
 審査請求人は、「求職活動はしています」と主張しているが、審査請求人が提出した報告書では、必須回答項目である「この1か月間に求職活動を行いましたか」の設問に対し、全月いずれも「いいえ」にチェックがされており、求職活動を実際にやっている旨の報告はされていない。そのため、給付金受給中の誠実な求職活動義務違反と判断したものであるから、本件審査請求には理由がなく、棄却されるべきである。

第4 審理員意見書の要旨
1  結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
2 理由
(1) 本件処分に違法又は不当な点があるかについて
ア 給付金の申請者は、申請書に加えて自らの求職活動状況を証する報告及び挙証資料をもって、給付金の手続を行うこととなっている。「生活困窮者自立支援制度に係る自治体事務マニュアルの改訂について(令和2年7月3日付社援発0702第2号厚生労働省社会・援護局長名通知)」の「生活困窮者自立支援制度に係る自治体事務マニュアル」(令和2年7月3日第7版。以下「事務マニュアル」という。)「第6 支援決定」3 相談受付から支援決定までの流れ(3)支援決定 ア形式審査において、提出された書類に不備がないか確認し、必要に応じて期限を定めた上で補正を求めると示されている。また、「大阪市住居確保給付金事務取扱い要領」(令和2年7月3日改正。以下「事務取扱い要領」という。)の「6支給決定までのプロセス等」(2)支給申請の受付において、申請書の提出後、必要な書類の提出は30日以内に行う必要があるとしている。
イ 本件申請は、受給者の給与その他の業務上の収入を得る機会が改善しない場合であることによる給付金の支給延長申請であり、減収状況を証する挙証資料等を確認する必要があるところ、審査請求人が令和2年9月9日付けで本件申請を行った際、収入を得る機会が改善していない状況を確認できる証拠及び受給期間中の求職活動等の報告が出されたが、求職活動については全く行っていないとの報告内容であった。なお、口頭での報告では求職活動を行っている旨の申告はされているが、活動に伴う挙証資料の提出はされていない状況であった。
ウ 受給者は、給付金の受給中、求職活動等を行う必要があり、月に1回求職活動状況報告書を自立相談支援機関に提出する必要がある(生活困窮者自立支援法施行規則(平成27年厚生労働省令第16号。以下「施行規則」という。)第14条第2項)。しかしながら、審査請求人からは求職活動実績の確認資料の提出が無く、申請手続が滞っている状態であった。上記より、処分庁は、正当な理由がなく就労支援に関する指示に従わない場合にあたるため、延長等の要件を確認できないとして本件処分を行っている。
エ 以上のとおり、本件処分は、法令の規定及びその解釈に従い適正になされたものであり、何ら違法又は不当な点は存在しない。
(2) 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第5  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和3年12月3日 諮問書の受理
  令和3年12月22日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年1月24日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年2月1日 処分庁から資料の収受
  令和4年2月16日 調査審議
  令和4年3月15日 処分庁から資料の収受
  令和4年3月17日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年3月18日 調査審議
  令和4年3月28日 調査審議

第6  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
(1) 生活困窮者自立支援法及び生活困窮者自立支援法施行規則
ア 生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号。以下「支援法」という。)第3条第3項において、給付金は、離職又はこれに準ずる事由により経済的に困窮し、現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となったもの等であって、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるものに対して支給すると規定されている。
イ 支援法第6条第1項において、都道府県知事等は、その設置する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する生活困窮者のうち第3条第3項に規定するもの(当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の資産及び収入の状況その他の事情を勘案して厚生労働省令で定めるものに限る。)に対し、給付金を支給するものと規定されている。
ウ 生活困窮者自立支援法施行規則(平成27年厚生労働省令第16号。以下「施行規則」という。)第3条第2号において、給付金の受給者となる生活困窮者とは、就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該個人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は前号の場合と同等程度の状況にある場合と規定されている。
エ 施行規則第10条において、支援法第6条第1項に規定する厚生労働省令で定める生活困窮者について、次の各号のいずれにも該当する者とする、と規定されている。
一 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める者であること。
イ 離職の場合又は第3条第1号に規定する場合 生活困窮者住居確保給付金の支給を申請した日(以下この条、次条、第12条第1項において「申請日」という。)において、離職した日又は事業を廃止した日(以下「離職等の日」という。)から起算して2年を経過していない者
ロ 第3条第2号に規定する場合 申請日の属する月において、第3条第2号に規定する状況にある者
二 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める者であること。
イ 離職の場合又は第3条第1号に規定する場合 離職等の日においてその属する世帯の生計を主として維持していた者
ロ 第3条第2号に規定する場合 申請日の属する月においてその属する世帯の生計を主として維持している者
三 申請日の属する月における当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の収入の額を合算した額が、基準額及び当該生活困窮者が賃借する住宅の1月当たりの家賃の額(当該家賃の額が住宅扶助基準に基づく額を超える場合は、当該額)を合算した額以下であること
四 申請日における当該生活困窮者及び当該生活困窮者と同一の世帯に属する者の所有する金融資産の合計額が、基準額に6を乗じて得た額(当該額が100万円を超える場合は100万円とする。)以下であること。
五 公共職業安定所に求職の申込みをし、誠実かつ熱心に期間の定めのない労働契約又は期間の定めが6月以上の労働契約による就職を目指した求職活動を行うこと。
オ 施行規則第12条において、都道府県等は、生活困窮者住居確保給付金の支給を受けようとする者が、申請日において第10条各号のいずれにも該当する場合は、3月間生活困窮者住居確保給付金を支給する。ただし、支給期間中において生活困窮者住居確保給付金の支給を受ける者が第10条各号(第1号を除く。)のいずれにも該当する場合であって、引き続き生活困窮者住居確保給付金を支給することが当該者の就職の促進に必要であると認められるときは、3月ごとに9月までの範囲内で都道府県等が定める期間とすることができると規定されている。
カ 施行規則第13条において、給付金の支給を受けようとする者は、生活困窮者住居確保給付金支給申請書に厚生労働省社会・援護局長が定める必要書類(収入状況及び資産状況の記載並びに事実を証明する資料等(直近の世帯収入月額・世帯預貯金額))を添えて、都道府県知事等に提出しなければならないと規定されている。
キ 施行規則附則第4条において、新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2年1月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。)に伴う経済情勢の変化に鑑み、当分の間、第10条第5号及び様式第1号(裏面)の適用については、第10条第5号中「公共職業安定所に求職の申込みをし、誠実かつ熱心に期間の定めのない労働契約又は期間の定めが6月以上の労働契約による就職を目指した求職活動」とあるのは「誠実かつ熱心に求職活動」と、様式第1号(裏面)中「受給中は、公共職業安定所に求職の申し込みを行うとともに、誠実かつ熱心に求職活動」とあるのは「受給中は、誠実かつ熱心に求職活動」とすると規定されている。
(2) 事務取扱い要領
ア 事務取扱い要領「2 支給要件 (1) 支給要件」の「カ 求職活動等要件(則第10条第5号関係)」において、
① 求職の申込
 申請者は、公共職業安定所への求職申込みを行うこととする。申請者が申請時に求職申込みを行っていない場合、自治体は、公共職業安定所への求職申込みを指示する。
② 求職活動
 申請時、常用就職を目指した求職活動等を行うことを確認書によって確認するとともに、支給開始後は、求職活動を確認することとする。
と示されており、また、「2 支給要件 (2)求職活動等要件」において、
① 自立相談支援機関は、支給対象者に対し、常用就職に向けた次のイ)~ハ)の求職活動等を行うことを指示するものとする。
イ)月4回以上、総合就職サポート事業の支援員から面接等の支援を受ける
ロ)月2回以上、公共職業安定所で職業相談等を受ける
ハ)原則週1回以上、求人先へ応募を行う又は求人先の面接を受ける
と示されている。
イ 事務取扱い要領の「11 住居確保給付金の支給期間の延長等」において、次のとおり示されている。
(ア)支給期間の延長等
 給付金の支給期間は3月であるが、支給期間中に受給者が常用就職できなかった場合又は受給者の給与その他の業務上の収入を得る機会が改善しない場合であって、引き続き給付金の支給が就職の促進に必要であると認められる場合は、申請により、3月の支給期間を2回まで延長及び再延長をすることができる。
 なお、引き続き支給が必要と認められる場合とは、当該受給中に誠実かつ熱心に求職活動等要件を満たし、かつ、延長等の申請時において、支給要件を満たしている場合とする。
(イ)手続き等
 受給者が支給期間を延長又は再延長を希望する際は、支給期間の最終の月の末日までに「住居確保給付金支給申請書(期間(再)延長)」を自立相談支援機関を経由して区保健福祉センターに提出する。
 区保健福祉センターは、当該受給者が受給期間中に求職活動等を誠実かつ熱心に行っていたか、支給要件に該当しているかを勘案の上、上記による延長等の要件を満たすと判断された場合は延長等の決定を行い、当該受給者に「住居確保給付金支給決定通知書(期間(再)延長)」を自立相談支援機関経由で交付する。
(3) 大阪市住居確保給付金事務取扱い要領に基づく事務の手引き(令和2年8月。以下「事務の手引き」という。)
ア 事務の手引き「Ⅴ 住居確保給付金の支給決定時の事務の詳細 2 支給決定通知書の交付 (3) 求職活動等 ① 受給者への説明・助言」では、給与等の収入を得る機会が減少し、就労の状況が離職又は廃業の場合と同等程度の状況にある者の求職活動等について、「副業や転職を視野に入れた職業相談を公共職業安定所や自立支援相談機関と行うこと。」とし、「毎月2回以上、担当公共職業安定所の職業相談等を受け、職業相談票に公共職業安定所担当者から相談日、担当者名、支援内容について記入を受けるとともに担当公共職業安定所確認印を受けること」及び「毎週1回以上、求人先への応募・面接を行うこと」については求めない、とされている。
イ 事務の手引き「Ⅵ 求職活動状況等の確認事務の詳細」では、給付金の受給者については、求職活動等が義務付けられていることから、自立相談支援機関は、毎月のシステム入力締切日までに直近1か月の求職活動状況等について区保健福祉センターに報告を行い、区保健福祉センターは報告に基づき、受給者の活動状況等を確認し、誠実かつ熱心に求職活動等を行っていると認められるものについては「支給」の決定を行い、支給が適当でないと判断されたものについては、「保留」「中止」の決定を行うとされている。
ウ 事務の手引き「Ⅸ 住居確保給付金の延長等の考え方」では、支給期間延長等の判断について、「「生活困窮者住居確保給付金支給申請書(期間(再)延長)」(様式1-2)の提出があった場合は、支給期間の最終月において、取扱い要領の2(1)(②イを除く)の支給要件を満たしているかを確認するとともに、併せて、受給中に誠実かつ熱心に求職活動等を行っていたかどうかを判断する」とされている。
(4) 関係通知及び事務連絡等
ア 新型コロナウイルスに関連した生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金の活用について(令和2年3月9日付厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室名事務連絡)は、施行規則第10条第5号に基づく受給者の求職活動について、次のとおりとされている。
 「本日以降当面の間、地域における感染の状況や就職面接会等の中止、学校の休校による子の監護の必要性等を勘案し、自治体等が必要と認めたときは、「住居確保給付金の支給事務の取扱問答」問3-2①受給中に常用就職した場合を準用することとし、受給者の求職活動要件を以下のとおり緩和して差し支えない。
・月4回の自立相談支援機関への相談については、その実施方法については、面談が原則であるが、勤務状況や地域の感染状況等により来庁が困難な場合は、電話等の手段により状況を報告させるとともに、給与明細の郵送をもって収入の確認にかえることができる。
・「月2回以上の公共職業安定所の職業相談等」及び「週1回以上の応募又は面接」については回数を減ずる又は免ずることができる。」
イ 生活困窮者自立支援事業における緊急事態宣言期間中の住居確保給付金支給にかかる求職活動等要件の緩和について(令和2年4月16日付大阪市福祉局生活福祉部生活困窮者支援担当課長名通知)は、施行規則第10条第5号に基づく受給者の求職活動について、次のとおりとされている。
「1 離職等によるものについては、「毎月2回以上、ハローワークの職業相談を受けること」「毎週1回以上、求職先へ応募するか、求人先の面接を受けること」について、当面の間においては免ずることとします。
2 現在、支援に入っている受給者については、本人に説明し1の取扱いでお願いします。」
ウ 「「生活困窮者自立支援制度に関する手引きの策定について」の一部改正について」の一部修正について(令和2年4月20日付社援地発0420第1号厚生労働省社会・援護局地域福祉課長名通知)別添2「住居確保給付金の支給事務の取扱問答2020-03」(以下「取扱問答」という。)問3-5は、「(離職又は事業を廃止した場合と同等程度の状況にある者の求職活動)」について、次のとおり回答されている。
 「住居確保給付金は、住居を失った又は失うおそれがある方に対し、所要の求職活動等を要件に家賃相当額を支給することにより、安定した住居の確保と就労自立を支援することを目的としている。
 したがって、今般住居確保給付金の対象者として拡大した、離職や廃業に至っていないがこうした状況と同程度の状況に至っている方においても、一定の求職活動をしつつ就労自立を目指すというその趣旨は同様である。一方、今般の新型コロナウイルス感染症の影響による就労環境の変化等を踏まえ、既に求職活動の要件については緩和し、例えば、月2回以上求めていた公共職業安定所への職業相談等については自治体の判断で回数を減らすことができるようにするなど、各自治体の柔軟な対応をお願いしている。更に、今般の省令改正とあわせて、公共職業安定所に対する求職の申し込みについて、当面の間、インターネットでの仮登録をもって正式な求職の申し込みとみなすこととした。
 この求職活動については、現在の就業先について離職又は廃業することを必ずしも前提とするものではなく、例えば、現在の就業先と併せて新たな雇用先を探すことなども含めて検討する場合を認めるなど、各自治体において新型コロナウイルスの感染の影響や雇用情勢等も踏まえて、柔軟に対応いただきたい。」
エ 住居確保給付金 今回の改正に関するQA(vol4)(厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室作成、令和3年4月30日付。以下「改正QA」という。)Q5は、「(離職又は事業を廃止した場合と同等程度の状況にある者の求職活動)」について、取扱問答問3-4の回答のうち、上記下線部分について、「更に、今般の省令改正とあわせて、公共職業安定所に対する求職の申し込みについて、当面の間、不要としている」とされている。
 また、改正QAのQ7は、「(雇用契約のない者)」について、次のとおり回答されている。
 「フリーランスや自営業者など雇用契約によらない就業形態の方について、住居確保給付金を受けられるのか。
A7.
〇住居確保給付金は、生活困窮者の自立を支援するという観点から、その支給に際して満たすべき条件の一つとして求職活動要件を設定している。
〇この求職活動要件については、今般の新型コロナウイルス感染症による影響等を踏まえて、当分の間、ハローワークへの求職申込みについては不要としている。
〇フリーランスや自営業者など雇用契約によらない就業形態の方については、その状況は多様であるため、自立相談支援機関等と定期的(当分の間、月1回)にやりとり等をしながら、住居確保給付金の支給を受け、自立に向けた活動を行っていただきたいと考えている。その際、本人の意向や状況に応じ、雇用契約によらない現在の就業形態を維持しつつ、それに加えて、例えば、アルバイトなどの短期的な雇用で当面の生活費をまかなうといった対応も可能である。
〇したがって、フリーランスや自営業者など雇用契約によらない就業形態の方から相談があった場合には、本給付金の支給要件として雇用契約によらない現在の就業を断念していただくものではない旨を丁寧に説明するよう、改めて留意いただきたい。」
オ 支給決定時の説明資料について(令和2年4月30日付大阪市福祉局生活福祉部生活困窮者支援担当課長名通知)では、自立相談支援機関の窓口対応での説明が困難な状況において郵送で受給者に対して支給決定期間中の施行規則第10条第5号に基づく受給者の求職活動について説明するための資料である「住居確保給付金の給付を受けられる方へ」において、「住居確保給付金受給中については、次のとおり自立相談支援機関に活動及び申告などをいただく必要があります。(支給期間は原則3か月です)」とし、「〇報告・申告いただくこと」の「求職活動の報告」について「月に1度、「求職活動状況報告書(参考様式9)」(3か月分を同封しています)をメール・FAX・郵送等で毎月月末までに報告してください。また、来所相談を希望する方は、面接支援を行います。なお、電話による状況の報告・相談も受け付けます。(求職活動等の確認)」とされている。
 さらに、報告書の様式中の記載は、「生活困窮者住居確保給付金の支給決定日から1か月以内に自立相談支援機関に提出し、以降毎月末(提出期限)までに報告をお願いいたします」とし、様式中の回答欄については、【求職活動について(必須回答)】「この1か月間に求職活動を行いましたか?✓を入れてください。」の項目の中で、それぞれ「□はい」、「□いいえ」を選択する方式とし、選択欄の直下の記載として、「(求職活動の例)」として「企業に応募した(パート・アルバイト等可)」、「企業等の説明会・セミナーに参加した(合同説明会可)」、「ハローワークや転職エージェントでの職業相談を行った」、「就職に資する自己研鑽活動を行った」、「自立相談支援機関の相談支援員と就職に関する相談をした」が記載されており、また、「その他の求職活動を行った」として自由記載ができる欄も設けられており、これらの報告の記載について、「上記報告に虚偽がないことを申告いたします。」としたうえで署名押印を求める様式とされている。
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は、支給要件を定めた施行規則附則第4条で読み替えられた同規則第10条第5号の「誠実かつ熱心に求職活動を行うこと」(以下「求職活動要件」という。)に該当する事実を審査請求人においては認めることができないとした処分庁の判断は妥当か否か、である。
3 争点に係る審査会の判断について
(1) 審査請求人は、本件処分の取消しを求める理由として、給付金の受給期間中、公共職業安定所での求職活動は行っていないが、他の求職活動は行っており、この点については、給付金の支給期間延長に係る支給要件を充足するとして、本件処分に理由がない旨主張するものである。
 そこで、本件において、求職活動要件に該当する事実が審査請求人に認められるか否か検討する。
(2) 求職活動要件について
 処分庁において求職活動要件に該当するか否かを判断するためには、上記1(2)乃至1(4)からすると、給付金の受給中の期間において、毎月1度、自立相談支援機関に対して各記載事項を満たした報告書を受給者に提出させる方法によって、受給者が受給中の期間に、実際に求職活動を行っていることを確認する必要がある。
 そして、上記(4)エの改正QA及び上記(4)オの報告書の様式中の記載に照らすと、ここで言う求職活動とは、企業への応募、企業等の説明会・セミナーへの参加、ハローワークや転職エージェントでの職業相談の実施、就職に資する自己研鑽活動、自立相談支援機関の相談支援員と就職に関する相談の実施などを想定しているものと解される。
 本件についてみると、審査請求人が提出した報告書は、審査請求人の署名押印があり、審査請求人本人が作成したものであるところ、給付金の受給期間である令和2年6月から同年8月の3月分の各報告書の【求職活動について(必須回答)】について、「□いいえ」に✓を入れ提出をしていることから、少なくとも、審査請求人本人からは給付金の受給期間である令和2年6月から同年8月の期間において実際に求職活動は行っていない旨の報告がなされたと理解せざるを得ない。
 この点、報告書中の「その他の求職活動を行った」として自由記載ができる欄において、6月分の報告書では「アルバイト解雇になりました」旨の記載があるが、審査請求人より報告書提出に際して、その他の求職活動に係る資料の提出が無いことからも、当該記載があることについて、令和2年6月から同年8月の期間において実際に求職活動は行っていない旨の報告がなされたとの判断を左右するものとは言えない。
 そして、処分庁においては、求職活動要件の充足を審査するに当たり、申請者が提出した報告書の報告内容を基礎として事実認定をする以上、当該報告書における審査請求人本人の記入に基づき、審査請求人本人からは給付金の受給期間である令和2年6月から同年8月の期間において実際に求職活動は行っていない旨の報告がなされたと処分庁が理解することはやむを得ないものであると言える。
 また、審査請求人は、本件申請においては報告書を提出したのみであり、当該報告書以外には証拠書類がないのであって、自立相談支援機関に対して各記載事項を満たした報告書を受給者に提出させる方法を採用している以上、認定の基礎とする報告書の報告内容から実際に求職活動を行っていた事実を確認できなかったことにより、要件充足が無かったとする判断を処分庁がすることもやむを得ないものであると言える。
 なお、審査請求人は、報告書の【求職活動について(必須回答)】で「□いいえ」に✓を入れ提出をしたことについては、ここでいう求職活動は公共職業安定所に行くことであるという理解のもとに、自身は受給期間中に公共職業安定所には行っていないため、「□いいえ」を選択したものであると主張するが、報告書の「(求職活動の例)」で列挙されている記載の内容に照らせば、受給者が報告書の当該箇所で回答を求められている求職活動が公共職業安定所に行くことに限定されていると誤解する余地があったとは言い難く、令和2年6月から同年8月の期間において実際に求職活動は行っていない旨の報告がなされたとの判断を左右するものとは言えない。
 いずれにしても、本件の事件記録からは、審査請求人が主張する給付金の受給期間中、求職活動を行っている事実を認定するために必要な証拠を確認することはできない。
 以上から、本件において、求職活動要件に該当する事実が審査請求人に認めることができないとした処分庁の判断が不合理とは言えない。
 よって、審査請求人の申請に対して、支給要件に該当する事実を審査請求人においては認めることができないとした処分庁の判断は妥当であり、本件処分に違法又は不当な点があるとは認められない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由はないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第1部会
 委員(部会長) 井上武史、委員 北川豊、委員 常谷麻子

答申書(令和4年度答申第1号)

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