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答申書(令和4年度答申第2号)

2023年2月17日

ページ番号:567490

諮問番号:令和3年度諮問第22号
答申番号:令和4年度答申第2号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 令和〇年〇月〇日〇時頃、大阪市客引き行為等の適正化に関する条例(平成26年大阪市条例第73号。以下「条例」という。)第9条第1項の規定により大阪市長(以下「処分庁」という。)により指定された客引き行為等禁止区域(以下「禁止区域」という。)である大阪市中央区〇〇〇において、審査請求人が西から東へ通行する30歳代男性2名に対し、右側から寄り添い何か声をかけながら、約3メートル追随したのを大阪市客引き行為等適正化指導員(以下「指導員」という。)が現認したので、男性2名に内容を確認したところ、「居酒屋どうですか。」と声をかけられたとの言辞が取れたことから、同条例第2条第1項に規定する客引き行為(以下「客引き行為」という。)を行ったとして、同条例第10条に違反しているものと認め、審査請求人に対して条例の趣旨を説明し、同条例第11条第1項に基づき指導書を作成交付し、指導書交付控に署名させた。
2 令和〇年〇月〇日〇時〇分頃、禁止区域である大阪市中央区〇〇〇〇〇〇路上において、審査請求人が西から南へ通行する40歳代男性2名に対し、右側から寄り添い何か声をかけたのを指導員が現認したので、男性2名に内容を確認したところ、「ごはんどうですか。」と声をかけられたとの言辞が取れたことから、客引き行為を行ったとして、条例第10条に違反しているものと認め、2回目の違反であることから、同条例第11条第4項及び同第5項に基づき勧告書を作成交付し、勧告書交付控に署名させた。
3 令和〇年〇月〇日〇時〇分頃、禁止区域である大阪市中央区〇〇〇〇〇〇路上において、審査請求人が西から南へ通行中の30歳代男性3名に対し、左側から寄り添い何か声をかけたのを指導員が現認したので、男性3名に内容を確認したところ、「お店開いてますよ。」と声をかけられたとの言辞が取れたことから、客引き行為を行ったとして、条例第10条に違反しているものと認め、3回目の違反であることから、同条例第11条第6項及び同第7項に基づき命令書を作成交付し、命令書交付控に署名させた。また、命令書の交付に先立ち、指導員は審査請求人に対し、次回、禁止行為を行った場合は、「ホームページでの氏名公表、5万円以下の過料、不服審査請求権があること」について説明を行った。
4 令和〇年〇月〇日〇時〇分頃、禁止区域である大阪市中央区〇〇〇〇〇〇路上(〇〇と〇〇が交差する十字路)で、審査請求人が、西から北に通行する30代男女に対し、右側から寄り添い何か声をかけたのを指導員が現認したとして、30代男女に内容を確認したところ「お店に寄ってください。」と声をかけられたとの言辞が取れたことから、客引き行為を行ったとして、条例第10条に違反しているものと認め、違反を現認した指導員3名は状況を記録化するために、同日「命令違反時の違反態様報告書」(以下「報告書」という。)を作成し、4回目の違反であることから、後日、処分庁の担当者からの電話に対応をするように審査請求人に伝えた。
5 処分庁は、審査請求人に対し、大阪市客引き行為等の適正化に関する条例施行規則(平成26年大阪市規則第142号。以下「市規則」という。)第10条第1項に基づいて告知書の交付及び弁明の機会に係る説明を行うための日程調整のため、令和〇年〇月〇日から同年〇月〇日にかけて、18回にわたり、審査請求人の携帯電話に架電したものの、審査請求人は電話に応答しなかった。
6 令和〇年〇月〇日、審査請求人と他1名が市役所に来庁し、その際、審査請求人は、最終的には告知書を受領し、告知書交付控に署名した。同日、審査請求人は処分庁から交付された弁明書様式を受領した。
7 令和〇年〇月〇日、審査請求人からの同年同月〇日付け弁明書が処分庁に到達した。同弁明書において、審査請求人は、「〇月〇日に〇〇〇の十字路で話をしていたところ、後ろから指導員の方が3人で来られた。」、「その際、指導員(中略)に客引きをしただろと言われ、あとの2人の方は、私が話をしていた人とは全く別の方に確認で話しかけに行かれた。」、「客引き行為も行っていなければ、ましてや声をかけてもいないのであるはずがないのに、2人の指導員様がこちらに来られて、お客様にも確認したところ客引きをされたと言っていたと言われた。」とし、上記1、2、3については「今までの過去にも何度か客引き行為をしてしまい注意された事に関しては認めて来ましたし、認めます。」としている。
8 令和〇年〇月〇日に、処分庁は、審査請求人の弁明を踏まえたうえで、過料処分を決定し、令和〇年〇月〇日付けで、条例第16条第1項の規定による過料の処分(以下「本件処分」という。)を行い、同日、審査請求人に対し、過料処分決定通知書を交付した。 
 また、同日、処分庁は、審査請求人に対し、条例第13条第1項の規定による氏名等を公表する場合に、条例第13条第3項に基づいて事前に意見聴取の機会があることを伝えたうえで公表理由等通知書を交付し、同日、審査請求人から、書面で、「公表理由等通知書を受け取りましたが意見することはありません」との回答を受けた。
9 令和〇年12月10日、審査請求人は、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。
 なお、審査庁によると、本件審査請求の形式審査において、本件の審査請求書における請求の趣旨が「過料処分決定に対する不服申し立て」とあることから、審査請求人に対して、令和〇年〇月〇日付け「審査請求書の補正等について」によって請求の趣旨の確認を行い、これに対して回答がないことから、さらに同年〇月〇日付け「審査請求の趣旨及び教示の有無について」によって請求の趣旨について「「令和〇年〇月〇日付けの審査請求人に対する大阪市客引き行為等の適正化に関する条例に基づく過料処分を取り消す」との裁決を求める。」のとおり解して審査を行うが、審査請求の趣旨について審査請求人の意図する趣旨と齟齬がある場合は回答を行うよう指示を行い、当該回答がない場合には、審査請求の趣旨については審査庁の解釈について異存がないものとして取り扱う旨の通知を行ったところ、これに対して審査請求人より回答は無かった。

第3  審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 以下を理由に、本件処分の取消しを求めている。
 審査請求人は、令和〇年〇月〇日、〇〇〇の十字交差で立ち話をしていたところ、後方より3名の指導員が来られ、禁止行為を行っていた旨の発言をされたが、根拠がそもそも無く、客引き行為の事実は無かったと認識しており、事実誤認である。
2  処分庁の主張
 弁明の趣旨は、「審査請求人の審査請求を棄却する」との裁決を求めるものであり、その理由は次のとおりである。
 指導員は4回目の違反行為を現認したのちに被迷惑行為者からの言辞を取り、また報告書の作成により違反の状況を記録するなど適切な手続を経たうえで、処分庁は、条例の規定に則り本件処分を行っていることから、不当な点はない。

第4 審理員意見書の要旨
1  結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
2 理由
(1) 争点
ア 令和〇年〇月〇日における禁止行為の存否(争点1)
イ 本件決定の違法性の有無(争点2)
(2) 争点1について
 本件処分については、指導員の現認が根拠となり、現認の信用性が論点となるところ、報告書は具体的に記載されていることが確認でき、審査請求人の主張と報告書の内容を基に令和〇年〇月〇日の状況について検討すると、指導員3人全員が、審査請求人の行動及び指導員が言辞を取るべき相手の双方を誤認したと考えるのは不自然・不合理であり、また、審査請求人の主張には一貫性が見られない。
 よって、審査請求人の主張は採用することはできない。
(3) 争点2について
 処分庁が、本件処分にかかるいずれの手続きにおいても、地方自治法(昭和22年法律第67号)、条例、市規則、大阪市客引き行為等の適正化に関する条例施行要綱(平成31年3月7日改正。以下「条例施行要綱」という。)及び大阪市客引き行為等適正化指導員業務マニュアル(令和2年3月改訂。以下「マニュアル」という。)の規定に則ったものであることが確認できることから、処分庁による一連の手続きについて不自然・不合理な点は見当たらない。

第5  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和4年1月14日 諮問書の受理
  令和4年2月4日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年3月18日 調査審議
  令和4年3月28日 調査審議

第6  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
(1) 条例及び市規則
ア 条例第1条において、「市民等と協働して誰もが安心して通行し、利用することができる快適な都市環境を形成することに資するため、本市及び市民等の責務を明らかにするとともに、公共の場所における客引き行為等の適正化に関し必要な事項を定めることにより、集客都市にふさわしい魅力とにぎわいのある安全で安心なまちづくりに寄与することを目的とする」と規定されている。
イ 条例第2条第1項において、「この条例において、「客引き行為等」とは、客引きをし、若しくは役務に従事するよう特定の人を勧誘し、又はこれらの行為を行うために相手方となるべき者を待つことをいう」とされ、同条第2項において「「市民等」とは、市民、本市の区域内に滞在し、又は本市の区域内を通過する者並びに市内で事業活動を行うすべての者及びその団体をいう」と規定されている。
ウ 条例第7条第1項において、「市長は、市民等と協働して客引き行為等の適正化を図るための施策に重点的に取り組む必要があると認める区域を客引き行為等適正化重点地区(以下「重点地区」という。)として指定することができる」と規定され、同条例第9条第1項において、「市長は、重点地区内の道路法(昭和27年法律第180号)第2条第1項に規定する道路その他の道路のうち、誰もが安心して通行し、利用することができる快適な環境を確保するため特に必要があると認める区域を客引き行為等禁止区域(以下「禁止区域」という。)として指定することができる」と規定されている。
 なお、平成26年10月27日を指定年月日とする「大阪市客引き行為等の適正化に関する条例に基づく客引き行為等適正化重点地区及び客引き行為等禁止区域の指定」(平成26年10月24日付大阪市告示第1406号)及び平成31年2月2日を指定年月日とする「大阪市客引き行為等の適正化に関する条例に基づく客引き行為等禁止区域の指定」(平成31年2月1日付大阪市告示第132号)によると、禁止区域は、以下のとおりである。
(区域)北区:曽根崎一丁目、同二丁目、兎我野町、太融寺町、角田町、堂山町、神山町、茶屋町及び芝田一丁目の区域内の道路
(区域)中央区:難波一丁目、同二丁目、同三丁目、同四丁目、同五丁目、難波千日前、千日前一丁目、同二丁目、道頓堀一丁目、同二丁目、宗右衛門町、心斎橋筋一丁目、同二丁目、東心斎橋一丁目、同二丁目、西心斎橋一丁目、同二丁目及び南船場三丁目の区域内の道路
エ 条例第10条第1項において、「市民等は、禁止区域において客引き行為等をし、又はさせてはならない」と規定されている。
オ 条例第11条第1項において、「市長は、前条の規定に違反しているものに対し、客引き行為等をし、又はさせる行為(以下「禁止行為」という。)を中止するよう指導することができる」と規定されており、同条第4項において、「市長は、第1項の規定による指導をしたにもかかわらず、当該指導を受けたものが禁止行為を中止しないときは、当該指導を受けたものに対し、禁止行為を中止するよう勧告することができる」と規定されており、同条第6項において、「市長は、第4項の規定による勧告をしたにもかかわらず、当該勧告を受けたものが当該勧告に従わないときは、当該勧告を受けたものに対し、禁止行為を中止するよう命ずることができる」と規定されている。
カ 条例第13条第1項において、公表について、次のとおり規定されている。
 「市長は、第11条第6項の規定による命令を受けたものが正当な理由なく当該命令に従わないときは、その旨及び次に掲げる事項を公表することができる。ただし、第4号に掲げる事項を公表することができるのは、当該命令に違反して行われた禁止行為の内容等を勘案して公表することが適当であると市長が認める場合に限る。
(1) 当該命令の内容
(2) 当該命令を受けたものの氏名及び住所(法人その他の団体にあっては、名称及び代表者の氏名並びに主たる事務所の所在地)
(3) 前2号に掲げるもののほか、当該命令に違反したものを特定するために必要な事項
(4) 当該命令に違反して行われた禁止行為に係る店舗、事務所その他の施設の名称及び所在地
キ 条例第16条第1項において、条例「第11条第6項の規定による命令に違反したものは、50,000円以下の過料に処する」と規定されている。
ク 市規則第3条第1項において、「条例第6条第2項、第11条第2項及び第12条第1項の職員として、大阪市客引き行為等適正化指導員(以下「指導員」という。)を置く」され、同第2項において、「指導員は、本市職員のうちから市長が命ずる」と規定されている。
(2) マニュアル
ア マニュアルの冒頭「1 はじめに」において、「ミナミやキタをはじめとする市内の繁華街においては、居酒屋やガールズバー等の酒類提供飲食店等の客引き行為等の悪質化が進み、繁華街を訪れる市民や観光客等の前に立ちふさがるという実態が常態化し、通行の妨げになり不安や不愉快な思いをさせるなど大きな問題となり、地元住民、地元商店会等から規制・取締りの強化に向けた声が多く上がりました。」「これらの客引き行為等については、本来は営業活動の一環であり、経済的自由として最大限尊重されるべきものです。」「しかし、大阪市として、国内外から多くの人が集まる魅力とにぎわいのある集客都市をめざすため、繁華街における安全・安心な通行環境を形成する観点から、過度な規制とならないかといった法的な精査も行い、(中略)条例を制定し、客引き行為や勧誘行為等の規制を盛り込んだものです。」「本条例で罰則規定を設けた趣旨は、違反者の摘発を行うためではなく、違反者に本条例の趣旨・目的を理解してもらい、まちづくりへの協働意識やマナーの向上等を図ることを目的としており、行為者等に、指導、勧告、命令を行った後、これに違反した場合に過料を科すというように段階的な対応を行うこととしています。」とされている。
イ マニュアル「11 対応要領 【禁止区域における指導要領(罰則あり)】」において、行政指導・行政処分の流れとして、具体的に以下のとおり記載されている。
① 行為者の発見・指導等(条例第11条第1項、同条第2項)
・口頭又は必要に応じて指導書(「大阪市客引き行為等の適正化に関する条例施行要綱」(以下「条例施行要綱」という)第1号様式)による指導を行う(条例第11条第1項)。
・指導書による指導を行う場合には、必ず、被迷惑者(行為を受けた者)から、「「居酒屋どうですか」と声をかけられた。」等の言辞をとることとする。
・言辞が取れない場合には、口頭の指導を行い、指導書の作成交付は行わないこととする。
 しかし、指導員が、客引き行為者が通行人に対して、まさに違反行為を行っていることを現認したときはこの限りでない。
・指導書による指導を行う場合は、人定事項、連絡先、客引き行為等に係る店舗名や受託業者名等を確認(相手方の回答は任意。)し(条例第11条第2項)、必要事項を記載した上、指導書を交付するとともに、指導書交付控(条例施行要綱第2号様式)に署名を求める。(あくまで求めればよく、相手方が署名に応じるまでは必要としない。)
・人定事項確認資料、被迷惑者の情報、氏名等を答えなかった状況、受領拒否状況、署名拒否状況等、事後の手続きの際に必要な事項がある場合には、指導書交付控の備考欄を活用して記載しておくこととする。
② 勧告(条例第11条第4項)
・勧告は、書面(勧告書(条例施行要綱第3号様式))により行う。
・行為者から勧告書の記載事項として必要な事項を聴取して記載した上で交付し、勧告書交付控(条例施行要綱第4号様式)に署名を求める。
・また、行為者が委託を受けた店舗や客引き専門業者についても聴取し、指導の要領と同様に店舗や客引き専門業者に対しても書面で勧告を行う。
・氏名等を答えない場合、勧告書を受け取らなかった場合、又は勧告書交付控に署名をしなかった場合の扱いは指導書と同様。
③ 命令(条例第11条第6項)
・命令は書面(命令書(条例施行要綱第5号様式))で行い、必要事項を記載した上で交付し、行為者から命令書交付控(条例施行要綱第6号様式)に署名を求める。
・進め方は指導や勧告と同じ。
④ 命令違反・告知
・命令の段階で、従わない場合は過料処分のほか、氏名等の公表の対象になる旨を伝えていることを前提として、違反行為を認めた場合は違反を告知書(条例施行要綱第16号様式)により告知する。
・告知書を交付した後、弁明の機会を与え(地方自治法第255条の3第1項、規則第10条第1項)、告知書交付控(条例施行要綱第17号様式)に署名を求める。弁明書の提出期限は告知日の翌日から起算してから最低2週間(14日目が閉庁日であるときは、翌開庁日)とする。
・弁明は弁明書(条例施行要綱第18号様式又は任意様式)として、書面で提出することとするが、弁明があるからといって違反が考慮されるというものでもない。
・「弁明がある」となった場合は、告知書の「弁明書の提出」のチェックボックスにレ点を記載し、弁明書の様式を交付する。
・弁明書は提出期限までに郵送又は市役所市民局まで持参するよう説明する。
・告知書の受領拒否、又は告知書の交付控への署名拒否については、勧告、命令と同じ。
⑤ 過料処分決定通知
・④の違反の告知、弁明の機会の付与の結果、弁明がない旨申し立てた者については、過料処分決定通知書に必要事項を記載の上交付し、過料処分決定通知書交付控(条例施行要綱第19号様式)に署名を求める。
・併せて、氏名等を公表する場合があること及び公表(条例第13条)する場合は公表通知書により事前に意見聴取の機会があることを伝える。
・過料処分決定通知書の受領拒否、又は過料処分決定通知書交付控への署名拒否については、勧告、命令と同じ。
2 争点等について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は次のとおりである。
(1) 令和〇年〇月〇日において、審査請求人について条例第11条第1項に規定する「禁止行為」があったか否か(争点1)
(2) 本件処分に違法又は不当な点があるか否か(争点2)
3 争点等に係る審査会の判断について
(1) 争点1について
 争点1についての当審査会の判断理由は、審理員意見書中の「第3 理由」と同旨であり、次のとおりである。
ア 本件について、審査請求人は、「〇〇〇の十字交差で立ち話をしていたところ、後方より3名の指導員が来られ、客引き行為を行っていた旨の発言をされたが、根拠がそもそも無」いと主張している。
 本件の処分は、指導員の現認した事実が根拠となっており、現認の信用性が論点となる。
イ ここで、処分庁は、審査請求人の弁明に対する反論書で、「違反者の違反行為を現認した指導員は、当日(令和〇年〇月〇日)に、『命令違反時の違反態様報告書』を作成している。」とあるが、記載内容を確認すると、禁止行為の態様について、当該行為が行われた日時、場所、被迷惑者に対して声をかけた方法に加え、被迷惑者の年齢層、性別、人数、通行した方向(方角)、指導員がこれらを現認した場所、及び現認後被迷惑者から得ることができた言辞の内容が具体的に記載されていることが確認できた。
ウ そこで、審査請求人の主張と、報告書の内容を基に、当日の状況について検討する。
エ まず、審査請求人と処分庁の双方において、主張に争いがないのは次の点である。
(ア)審査請求人と指導員が接触した場所は、〇〇〇と〇〇〇が交差する十字路の路上であること。(なお、当該場所は、禁止行為に係る店舗「〇〇」からの距離が1メートルを超える場所であり、かつ条例第9条第1項で定める禁止区域内である。)
(イ)審査請求人と接触した指導員の人数は3名であること。
(ウ)指導員が、審査請求人とは別の者に声を掛けに行ったこと。
オ 次に、審査請求人と処分庁において、主張が異なるのは、次の点である。
(ア)審査請求人は、「話(立ち話)をしていたところ、指導員が近づいてきた。」としているが、処分庁は、「違反者(審査請求人)が西から北に通行する30代男女に対し、右側から寄り添い何か声を掛けたのを指導員が現認した」としていること。
(イ)審査請求人は、「私が話をしていた人とは全く別の方に確認で話しかけに行かれた。」としているが、処分庁は、「直接現認した指導員が、違反者(審査請求人)から声をかけられた男女2名からの言辞を直ちにとっている」としていること。
カ 上記主張が異なる点について、審査請求人の主張が正しいと仮定すれば、指導員は、3人全員が、審査請求人の行動及び指導員が言辞を取るべき相手の双方を誤認したこととなるが、以下により、指導員3人全員が、審査請求人の行動及び指導員が言辞を取るべき相手の双方を誤認したと考えるのは不自然・不合理である。
(ア)指導員には、大阪市職員だけではノウハウに乏しく条例違反者に対しての指導や調査、過料徴収業務等の実効性を確保するのは困難であり、また、夜の繁華街での業務であり、悪質な客引き行為者等や酒に酔った市民とのトラブル等が多発することが予想されるため、捜査業務等の経験が豊富である元警察官を任用しているところ、元警察官であることから、指導員は捜査方法等のノウハウを有していること。
 さらに、指導員に対しては、条例の趣旨、関係法令、指導要領などを記載したマニュアルに基づき、適切な対応を行うよう、処分庁は適宜研修を行っていること。
(イ)指導員は、言辞を取るべき相手について、十字路の西から向かってくる姿を東側から確認しており、当該相手を正面から確認していることが窺えること。
(ウ)報告書を見ると、指導員は、審査請求人の禁止行為を現認した後、直ちに被迷惑者と思われる男女2人に言辞を取りに行っていること。
 なお、言辞を取った場所は、「〇〇」店舗やや北側の路上(グーグルマップによると、十字路から、言辞を取ったと思われる場所までの距離は20メートルを超え、30メートル未満と推察される。)と、十字路から近接した場所となっていることから、指導員は、当該言辞を取った場所まで直ちに向かうことができる程度の近接した場所で、十字路における審査請求人の行動及び指導員が言辞を取るべき相手を見ていたものと認めることができること。
キ なお、令和〇年〇月〇日に、審査請求人に対し、氏名等を公表する場合に、事前に意見聴取の機会があることを伝えたうえで、「令和〇年〇月〇日午後〇時〇分頃、同禁止区域である大阪市中央区〇〇〇〇〇〇路上において、通行人に対し、関係飲食店への客引き行為等を行った」旨を記載した公表理由等通知書を交付する際、審査請求人は、書面で、「公表理由等通知書を受け取りましたが意見することはありません」と回答しており、審査請求人の主張には一貫性が見られない。
ク また、本件事件記録からは、指導員について「私が話をしていた人とは全く別の方に確認で話しかけに行かれた」とする審査請求人の主張を裏付ける客観的証拠を確認することはできず、本件における指導員の現認の信用性を疑う事情もない。
ケ よって、審査請求人の主張を採用することはできず、令和〇年〇月〇日において、審査請求人について条例第11条第1項に規定する「禁止行為」があったとした処分庁の判断は妥当である。
(2) 争点2について
 争点2についての当審査会の判断理由は、審理員意見書中の「第3 理由」と同旨であり、次のとおりである。
 処分庁が、指導、勧告、命令、命令違反を現認した当日の対応、告知書の交付及び弁明の機会説明、告知書の交付及び弁明の機会付与及び過料処分決定にかかるいずれの手続きについて、地方自治法、条例、市規則、条例施行要綱及びマニュアルの規定に則ったものであることが確認できることから、処分庁による一連の手続きについて不自然・不合理な点は見当たらない。
(3) 結語
 以上により、本件処分について、違法又は不当な点は認められない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由はないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第1部会
 委員(部会長) 井上武史、委員 北川豊、委員 常谷麻子

答申書(令和4年度答申第2号)

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