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答申書(令和4年度答申第3号)

2023年2月17日

ページ番号:569740

諮問番号:令和4年度諮問第1号
答申番号:令和4年度答申第3号

答申書

第1 審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)は、審査請求人が平成27年3月16日に○○税務署へ提出した平成26年分所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。) 確定申告書(以下「平成27年3月16日受付申告書」という。)の内容に基づき、市民税及び府民税(以下「市府民税」という。)の税額を決定し、平成27年6月1日付けで審査請求人あて平成27年度市民税・府民税納税通知書兼税額決定(充当)通知書を送付した。
2 審査請求人は、平成27年4月28日付けで大阪市から○○市に住所を異動した。
3 審査請求人の住所を管轄する○○税務署は、令和元年7月3日付けで平成27年3月16日受付申告書に基づく平成26年分所得税等の課税標準等及び税額等を増額する更正(以下「令和元年7月3日付け更正」という。)を行い、審査請求人の住民登録のある○○市あて更正の連絡が送付された。その内容が納税者の住所異動等により他市町村の賦課に関する情報であった場合は、当該連絡を収受した市町村から関係市町村に送付される取扱いになっているところ、令和元年7月3日付け更正の連絡は、収受した○○市から大阪市へ送付されなかったため、処分庁はその存在を了知せず、当該更正の金額に基づく税額変更処分を行わなかった。
4 ○○税務署は、令和3年4月14日付けで、令和元年7月3日付け更正による平成26年分所得税等の課税標準等及び税額等を減額する更正(以下「令和3年4月14日付け再更正」という。)を行い、○○市を経由して大阪市あて再更正の連絡を送付した。処分庁は、令和3年4月14日付け再更正の内容に基づき、令和3年7月30日付けで平成27年度市民税及び府民税税額変更決定処分(以下「本件処分」という。)を行い、同日付けで、平成27年度市民税・府民税納税通知書兼税額変更(決定)通知書(以下「本件通知書」という。)を審査請求人あて送付した。
5 審査請求人は、令和3年9月30日、大阪市長に対して、本件処分のうち、期間制限を超えて賦課決定を行った部分の取消しを求めて、審査請求をした。

第3 審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
(1) 本件通知書では、税額変更の理由を「令和3年4月14日付更正通知に基づく税額の変更」としているが、実際には、令和元年7月3日付け更正と令和3年4月14日付け再更正を合算して、市府民税の賦課決定が行われた。地方税法(以下「法」という。)第17条の6第3項第1号では、賦課決定は、所得税について更正があった場合、当該更正の通知が発せられた日の翌日から起算して2年間はすることができるとされていることから、本件処分のうち、令和元年7月3日付け更正に基づく税額変更は令和3年7月4日以降できない。
 また、法第17条の6第3項第1号及び国税通則法(以下「通則法」という。)第24条、第26条、第28条から、賦課決定の期間制限は、通知日で特定される更正ごとに判定されるとともに、通則法第29条第1項及び第2項から、更正が複数回行われていても、個々の更正の効力は当該更正前の更正に及ぶものではなく、個々の更正の増減部分のみに限られる。
 さらに、所得税の処分等に基因する賦課決定とは、その所得税の処分等ごとに納付又は還付すべき地方税額を確定する処分であるから、当該賦課決定により確定する地方税額は、その前に確定済みの地方税額は含まれない。本件処分では、所得税の申告書の提出に基因する賦課決定、更正に基因する賦課決定、再更正に基因する賦課決定が別個独立してあったはずなので、それぞれの処分に係る期間制限も賦課決定ごとに適用される。 
 したがって、令和元年7月3日付け更正に基づく地方税額の増額部分は不適法な処分である。
(2) 本件通知書の税額変更理由は、「令和3年4月14日付更正通知に基づく税額の変更」となっており、「令和元年7月3日付更正通知及び令和3年4月14日付更正通知に基づく税額の変更」とはなっていない。このことは、実際に行った処分とその処分理由とが符合しておらず、納税者が処分の適法性を判断するための正確性を欠いている。本件処分のように2つの所得税の更正を合算して地方税を賦課決定する場合は、それぞれの更正通知に基づく処分であることを明示すべきである。
(3) 処分庁の担当者は、再更正がなければ賦課決定ができないとの判断を示しており、再更正の有無により当初の更正に係る賦課決定ができるかできないかが分かれることになり、結果的に納税者に不公平な処分をすることになる。本件において、審査請求人は本来負担すべきであった税額を負担すべきだと結論付ける処分庁の立論は、処分庁に対し期間制限を設けている税法の趣旨(納税者の法的安定性等)を認めない不当な解釈である。
2 処分庁の主張
(1) 本件処分は、所得税等に更正又は決定があった場合は、当該更正又は決定の通知が発せられた日の翌日から起算して2年間においても賦課決定(税額変更処分)ができるとする期間制限の特例規定(法第17条の6第3項第1号)に基づくものである。市府民税は所得税等の課税標準を基準とするため、所得税等に異動があれば、その異動に従って賦課決定すべきものであるところ、所得税等に複数回の更正又は決定が行われる場合、市府民税は最新の所得税等における更正又は決定から2年間は、当該更正又は決定に基づいて賦課決定(税額変更処分)ができる。
 また、通則法第29条における「国税についての納税義務に影響を及ぼさず」の趣旨は、更正又は再更正により税額の増減が生じた場合に、既に確定した税額に対する納付、滞納処分、不服申立及び訴えの提起が遡って無効になることにより租税法律関係の安定性が損なわれることがないよう、それらの効力に影響を受けないものとする規定であり、更正によって、課税要件事実(課税標準)の内容を変更することを否定するものではない。なお、当該規定は、国税における更正の効力に関する規定である。
 本件処分は、政府が更正した総所得金額を基準として総所得金額を算定するとともに、法定の期間制限内に賦課決定したものであり、適法である。
(2) 本件通知書における異動事由の記載は、前記を踏まえて、「令和3年4月14日付更正通知に基づく税額の変更」としている。また、本件処分は、令和3年4月14日付け再更正に基づく総所得金額を基準として賦課決定したもので、更正及び再更正を合算して賦課決定したものではない。
 したがって、本件通知書における異動事由の記載は適正である。
(3) 令和元年7月3日付け更正は、審査請求人による申告書の内容が関係法令の規定に従っていないことなどにより行われ、また令和3年4月14日付け再更正による総所得金額が関係法令に従ったものであることから、本件処分による市府民税の税額が、他の納税者との公平性からも、本来審査請求人が負担すべき税額である。

第4 審理員意見書の要旨
1 結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第45条第2項の規定により、棄却されるべきものと判断する。
2 理由
 市府民税の所得割の賦課決定は、所得税等の課税標準に基づいて行われ、所得税等の更正、再更正等により所得税等の課税標準に異動があれば、その異動に従って市府民税の賦課決定をすべきであることから、本件のように更正又は再更正が続く場合は、最新の課税標準に基づいて賦課決定が行われなければならない。
 本件処分における所得割額は、令和3年4月14日付け再更正により確定した課税標準に基づき算出され、令和3年4月14日付け再更正の通知が発せられた日の翌日から起算して2年間のうちに賦課決定が行われており、適法である。
 なお、「国税通則法精解」(一般財団法人大蔵財務協会発行)によると、更正等の効力について規定する通則法第29条は、更正や再更正により課税標準等に異動が生じ、その結果として税額が増減した場合に、既に確定していた納付すべき税額における納付義務に影響がないことを定めたものにすぎず、税額算出の基礎となる課税標準等に及ぼす効力について定めたものではない。
 また、本件処分は、令和3年4月14日付け再更正により確定した課税標準に基づいた賦課決定であることから、処分の理由を「令和3年4月14日付更正通知に基づく税額の変更」とした本件処分の手続きに問題はない。
 以上のことから、本件処分は適正であり、他に本件処分に違法又は不当な点は認められない。

第5 調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和4年4月1日 諮問書の受理
  令和4年4月12日 調査審議
  令和4年4月26日 調査審議
  令和4年5月20日 調査審議

第6 審査会の判断
1 関係法令等の定め
(1) 市府民税の納税義務者等
 市町村内に住所を有する個人の市府民税は、均等割額及び所得割額の合算額により課する(法第24条第1項第1号、法第294条第1項第1号)。
(2) 市府民税の所得割の課税標準
 市府民税の所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額(以下「総所得金額等」という。)とされ(法第32条第1項、第313条第1項)、これらの総所得金額等は、所得税法における計算の例によって算定する(法第32条第2項、第313条第2項)。
 その算定にあっては、個人が所得税に係る申告書を提出し、又は政府が総所得金額等を更正し、若しくは決定した場合においては、当該申告書に記載され、又は当該更正し、若しくは決定した金額を基準として算定する(法第315条第1項第1号)。
(3) 所得税の課税標準
 居住者に対して課する所得税の課税標準は、総所得金額等とする(所得税法第22条第1項)。
(4) 市府民税の賦課決定の期間制限の特例
 市府民税の所得割に係る賦課決定については、所得税について更正又は決定があった場合は、当該更正又は決定の通知が発せられた日の翌日から起算して2年間においてもすることができる(法第17条の6第3項第1号)。
(5) 国税の更正
 税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する(通則法第24条)。
(6) 国税の再更正
 税務署長は、通則法第24条(更正)、第25条(決定)、第26条(再更正)の更正又は決定をした後、その更正又は決定した課税標準等又は税額等が過大又は過少であることを知ったときは、その調査により、当該更正又は決定に係る課税標準等又は税額等を更正する(通則法第26条)。
(7) 国税の更正等の効力
 通則法第24条(更正)又は第26条(再更正)の規定による更正で既に確定した納付すべき税額を増加させるものは、既に確定した納付すべき税額に係る部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない(通則法第29条第1項)、また、既に確定した納付すべき税額を減少させる更正は、その更正により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない(通則法第29条第2項)。
(8) 不利益処分の理由の提示
 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、当該不利益処分の理由を示さなければならない(大阪市行政手続条例第14条、大阪市市税条例第11条)。
2 争点等について
(1) 市府民税の所得割の課税標準は、前記1(2)のとおり、前年の所得について所得税法における計算の例によって算定した総所得金額等とされており、その算定にあっては、個人が提出した所得税に係る申告書における総所得金額等の額又は政府が更正若しくは決定した総所得金額等の額を基準とするとされている。
 そうすると、市府民税の所得割の賦課決定は、申告又は更正若しくは決定における個人の所得税の総所得金額等の額によってなされることが予定されており、仮に総所得金額等に異動があって申告又は更正若しくは決定があった場合には、市府民税の所得割の賦課決定は、その異動後の所得税の総所得金額等の額に従ってなされるものというべきである。このことは、例えば、更正と再更正が続いた場合であっても同様である。
 これを本件についてみると、本件処分における所得割額は、令和3年4月14日付け再更正により確定した審査請求人の所得税の総所得金額等の額に基づき算出されている。
 したがって、本件処分における計算過程に違法な点はない。
(2) 審査請求人は、前記1(4)のとおり、市府民税の賦課決定については更正又は決定の通知が発せられた日の翌日から起算して2年間の期間制限が適用されるところ、通則法第29条第1項及び第2項から、更正が申告後複数回行われている場合、個々の更正の効力は当該更正より前にされた更正に及ぶものではなく、個々の更正の増減部分のみに限られるのであるから、当該期間制限は、通知日で特定される個々の更正ごとに判定されるべきであると主張し、本件処分のうち、令和元年7月3日付け更正に基づく地方税額の増額部分については当該期間制限を超過しており不適法であると主張する。
 しかしながら、市府民税の賦課決定に係る期間制限が、所得税についての更正又は決定という処分ごとに適用されるべきであるという審査請求人の主張や、これを前提にして、令和元年7月3日付け更正に基づく地方税額の増額部分については期間制限を超過する違法があるとする審査請求人の主張は、前記(1)で述べたことからすると、いずれも独自のものであるといわざるを得ない。むしろ、本件処分は、令和3年4月14日付け再更正の通知が発せられた日の翌日から起算して2年のうちに行われており、この点に違法な点はない。
 また、審査請求人が引用する通則法第29条は、更正によって前の申告等に基づいてされた納付や徴収処分が無効にはならず、それらの納付義務に影響を及ぼさないことを定めたものにすぎず、税額算出の基礎となる課税標準等に係る効力について定めたものではない。
 したがって、審査請求人の前記主張は採用することができない。
(3) 審査請求人は、本件通知書の税額変更理由が「令和3年4月14日付更正通知に基づく税額の変更」とされていることから、納税者として、令和元年7月3日付け更正が税額に反映されていることをうかがい知ることができず、処分の適法性を判断するための正確性を欠いていると主張する。
 しかしながら、前記(1)で述べたとおり、更正又は再更正が続く場合であっても、市府民税の所得割の賦課決定は、その異動後の所得税の総所得金額等の額に従ってなされるものというべきであるから、処分庁が、処分の理由を、「令和3年4月14日付更正通知に基づく税額の変更」として総所得金額等の額の異動に求めたことに不備はない。
 したがって、審査請求人の前記主張は採用することができない。
(4) 審査請求人は、再更正の有無で当初の更正に係る賦課決定の可否が決まることは処分の公平性を欠くと主張する。
 しかしながら、令和3年4月14日付け再更正によって総所得金額等の額が確定し、それに伴い審査請求人が負担すべき市府民税の賦課決定がなされていることから、他の納税者との公平性に問題はない。
 したがって、審査請求人の主張は採用することができない。
3 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
4 結論
 よって、本件審査請求には理由がないものと認められるので、当審査会は第1記載のとおり答申する。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会税務第2部会
 委員(部会長) 永井秀人、委員 野村宏子、委員 櫻井多美

 

上記答申書に関する問合せ先
財政局税務部管理課(審査監察グループ)
電話:06-6208-8236  ファックス:06-6202-6953

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