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答申第145号

2019年9月9日

ページ番号:584742

概要

(1)開示請求の内容

「特定日付けで東淀川区保健福祉センター所長が母に対して行った老人福祉法第11条の規定に基づく特別養護老人ホーム入所措置処分(後見開始申立ての記録を含む)の全記録(音声記録と映像記録を含む)」を求める旨の開示請求がありました。

(2)実施機関(=大阪市長)の決定

実施機関は、本件請求に係る保有個人情報のうち「特定日付けの成年後見申立て(市長審判請求)について」(以下「本件情報1」といいます。)と特定した情報については、開示請求者以外の個人に関する部分を大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「条例」といいます。)第19条第2号に、開示請求者以外の第三者から提供された情報及び聴取した情報に関する部分並びに成年後見申立て(市長審判請求)に記載されている本市の所見や意見に関する部分を条例第19条第6号に該当することを理由に開示しないとする部分開示決定(以下「本件決定1」といいます。)を行いました。

実施機関は、本件情報1を除き「特定日付けで東淀川区保健福祉センター所長が母に対して行った老人福祉法第11条の規定に基づく特別養護老人ホーム入所措置処分」に係る情報(以下「本件情報2」といいます。)については、存在しないことを理由として、不存在による非開示決定(以下「本件決定2」といい、本件決定1とあわせて「本件各決定」といいます。)を行いました。

(3)審査請求の内容

本件各決定を取り消し、上記(2)で開示しないこととした部分(以下「本件非開示部分」といいます。)及び本件情報2を開示すること並びに本件決定1で開示した文書以外にも保有個人情報を特定して開示することを求めて、審査請求がありました。

(4)答申の結論

実施機関が、本件決定1で開示しないこととした部分のうち、別表1に掲げる部分を開示すべきであり、また、別表2に掲げる情報を改めて特定した上で、開示決定等すべきである。その余の部分は妥当である。

実施機関が行った本件決定2は、結果として妥当である。

(5)答申のポイント

審議会は次のとおり判断しています。

ア 本件請求に係る保有個人情報について

(ア) 本件情報1について

本件情報1は、審査請求人の母に係る成年後見市長申立審判書類であり、「後見等開始の審判請求に係る申立関係書類の送付について」、「申立ての実情」、「本人に関する照会書」、「成年後見制度申立に係るケース記録票」、「住民基本台帳」、「戸籍謄本」、「親族関係図」、「改製原戸籍」、「戸籍の附票」及び「相続税がかかる財産の明細書」で構成されている。

審議会で本件非開示部分を見分したところ、本件非開示部分は審査請求人本人に係る記載部分(以下「本件非開示部分1」といいます。)と審査請求人本人に係る個人情報の記載がなく審査請求人の母に係る記載部分(以下「本件非開示部分2」といいます。)であると認められる。

(イ) 本件非開示部分1について

本件非開示部分1を非開示とした理由について、改めて実施機関に確認したところ次のとおり説明があった。

A 「後見等開始の審判請求に係る申立て関係書類の送付について」における審査請求人本人に係る記載部分(以下「本件非開示部分1-1」といいます。)は、開示することにより特定の個人を識別されるおそれがあることから条例第19条第2号本文に該当し、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しない。

また、虐待防止法第8条に「その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。」と規定されており、開示することにより通報者が特定されるおそれがあることから条例第19条第8号にも該当する。

B 「申立ての実情」及び「成年後見制度申立に係るケース記録票」における審査請求人本人に係る記載部分(以下、順にそれぞれ「本件非開示部分1-2」及び「本件非開示部分1-3」といいます。)は、実施機関が関係機関から聴き取った情報であり、開示することにより通報者が推測され、虐待防止法第8条の規定に反するおそれがあり、本市と関係機関の信頼関係を崩壊させることとなる。その結果、今後関係機関より虐待通報が行われなくなる等、将来の本市の虐待対応業務及び成年後見市長申立業務の執行に著しい支障を生じるおそれがあることから、条例第19条第6号に該当する。

C 「親族関係図」における審査請求人本人に係る記載部分(以下「本件非開示部分1-4」といいます。)は、関係者から提供を受けた情報が記載されており、その事実を知る者が限定されることから通報者が推測されるおそれがあるため、上記Bと同様に、条例第19条第6号に該当する。また、上記Aと同様に、開示することにより通報者が特定されるおそれがあることから条例第19条第8号にも該当する。

D 「相続税がかかる財産の書類」における審査請求人本人に係る記載部分(以下「本件非開示部分1-5」といいます。)は、成年後見市長申立を行うにあたって実施機関が審査請求人以外から入手した文書であり、開示することにより、誰から当該文書を入手したかが明らかとなり、情報提供者と本市との信頼関係が損なわれることとなり、今後情報提供や協力が得られなくなる等、本市の成年後見市長申立の業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため条例第19条第6号に該当する。また、実施機関より情報提供者に要請し、取扱いに気をつける約束で提出された情報であることから、条例第19条第4号にも該当する。

 

イ 本件非開示部分の審査請求人を本人とする保有個人情報該当性について

(ア) 死者に関する情報に係る開示請求について

条例に基づく開示請求の対象となる個人情報は、条例第2条第2号において、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と規定されている。

この定義に照らせば、条例に基づく保有個人情報の開示請求権を行使できる主体は、生存する請求者本人であり、死者に関する情報は制度の対象外とされていることから、死者に関する情報を他者が開示請求することは認められない。

しかしながら、死者に関する情報のすべてが開示請求の対象とならないと解することは相当ではなく、死者に関する情報であっても、それが同時に請求者本人の情報でもあると認められる事情がある場合には、請求者本人の情報として扱い、開示請求の対象となると解される。

例えば、相続財産に関する情報のように、死者に関する情報であると同時に相続人である請求者本人の個人情報の性質も有し、当該個人を識別することができる情報については、当該請求者の個人情報として開示請求の対象となると解される。

(イ) 審査請求人を本人とする保有個人情報該当性について

本件情報1は、審査請求人の母の老人福祉法(昭和38年法律第133号。以下「老福法」といいます。)に基づく入所措置に係る情報で、相続財産のように他者と共有し、又は他者に帰属する余地があるものではないため、審査請求人本人の情報と同視すべき情報であるとはいえない。

したがって、本件非開示部分のうち審査請求人本人に係る個人情報の記載がない本件非開示部分2は、条例第17条の「自己を本人とする個人情報」に該当しないため、本来、実施機関が本件請求の対象外とすべきであった部分と認められるが、実施機関は本件非開示部分2を条例第19条第2号及び第6号に該当するとして非開示としており、本件非開示部分2が開示されないという点では同様であり、結果として妥当である。

 

ウ 本件非開示部分1の条例第19条第2号、第6号及び第8号該当性について

(ア) 本件非開示部分1-1の条例第19条第2号及び第8号該当性について

本件非開示部分1-1には、審査請求人の母に係る親族の状況として、同居している審査請求人の状況が記載されていることが認められる。

審査請求人は、「自分の不適切な介護により母と分離が必要である」と実施機関に判断されたことを、審査請求人の母に対する老福法第11条に基づく特別養護老人ホーム入所措置処分(以下「本件措置処分」といいます。)があった際に実施機関の職員から伝えられているとのことであり、実施機関に確認したところ、確かに審査請求人は既に当該情報を了知しているとのことである。そうすると、本件非開示部分1-1は審査請求人が了知している事実であるため、通報者が特定できる情報を新たに開示するとは言えず、虐待防止法第8条が定める「通報又は届出をしたものを特定させる」情報に該当しないことから、条例第19条第8号に該当しない。

また、本件非開示部分1-1は、実施機関が関係機関から聴取した情報で、当該情報を了知している者が限られるとのことであるため、他の情報と照合することにより審査請求人以外の特定の個人を識別することができると認められ、これらは条例第19条第2号本文に該当する。

しかし、上記のとおり、審査請求人は本件非開示部分1-1に記載されている情報については実施機関から伝えられ、既に了知していることから、本件非開示部分は条例第19条第2号ただし書アに該当する。

(イ) 本件非開示部分1-2及び1-3の条例第19条第6号該当性について

A 本件非開示部分1-2及び1-3のうち別表1の情報を除いた部分には、審査請求人の母の状況について、関係機関や実施機関の所見を含めて率直に記載されていることが認められる。これらの情報を開示することにより、関係機関及び実施機関と本人との信頼関係が損なわれるのみならず、本人との信頼関係が損なわれることをおそれて関係機関や実施機関が虐待に関する事情を率直に記載することができなくなると考えられ、そうすると将来の虐待対応業務及び成年後見市長申立業務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があると認められる。

したがって、本件非開示部分1-2及び1-3のうち別表1の情報を除いた部分は、条例第19条第6号に該当する。

B 本件非開示部分1-2及び1-3のうち別表1に掲げる情報については、審査請求人が了知している、審査請求人の母の介護に係る客観的な事実及び事務取扱要綱により定められた様式の記載欄名であることが認められる。

よって、本件非開示部分1-2及び1-3のうち別表1に掲げる情報を開示しても、将来の虐待対応業務及び成年後見市長申立業務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があるとは認められず、条例第19条第6号に該当しない。 

(ウ) 本件非開示部分1-4の条例第19条第6号及び第8号該当性について

審議会において本件非開示部分1-4を見分したところ、「親族関係図」で既に開示されている審査請求人の住所とは異なる居所が記載されていることが認められる。実施機関によると、成年後見制度に係る市長審判の請求に係る事務において、実施機関は親族の状況を把握する必要があったことから、戸籍等により本人以外の親族の状況を確認していたものであり、審査請求人については母と同居であったが、関係機関から住所以外の居所がある旨の情報提供があり、当該情報を手書きで追記したとのことである。

実施機関は、本件非開示部分1-4が開示されることにより、情報提供した特定の個人が明らかになることから、通報者が特定されるおそれがあるとして条例第19条第8号に該当すると主張しているが、当該情報は複数の関係者が知っており通報者のみが知っている情報ではないとのことであることから、開示することにより通報者が特定できる情報とは言えず、また、将来の虐待対応業務及び成年後見市長申立業務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があるとは認められない。   

したがって、本件非開示部分1-4は条例第19条第6号及び第8号のいずれにも該当しない。

(エ) 本件非開示部分1-5の条例第19条第6号該当性について

審議会で本件非開示部分1-5を見分したところ、本件非開示部分1-5が記載された文書は、審査請求人の父を被相続人とした相続税の申告に係る文書であり、審査請求人本人の氏名を除く部分が非開示とされていることが認められる。

実施機関によれば、当該文書は審査請求人の母の財産に係る情報として、市長審判申立てを行うために実施機関が審査請求人以外の者から入手した情報であるとのことである。

本件非開示部分1-5は審査請求人本人の氏名を除く情報であり、実施機関が当該文書を審査請求人以外の者から入手したことからすると、当該文書に記載されている情報は、審査請求人以外の第三者の個人情報であると考えられる。そうすると、本件非開示部分1-5を開示することにより、当該文書の入手元である、審査請求人以外の第三者が特定されることになり、今後の市長審判申立てに係り関係者から情報提供が受けられなくなる等、将来の虐待対応及び成年後見市長申立業務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があると認められる。

したがって、本件非開示部分1-5は条例第19条第6号に該当する。

 

エ 本件情報1以外に特定すべき保有個人情報の存否について

 (ア) 審査請求人は、本件情報1以外に、「審査請求人の母に係る緊急一時保護の決定に係る情報」及び「審査請求人の母及び審査請求人自身に対して実施機関が行った面会制限に係る情報」を本件請求に係る保有個人情報として特定すべきであると主張している。

これらの情報について実施機関に確認したところ、審査請求人の母に係る緊急一時保護は本件措置処分の日以前に行われていることから、本件請求の対象情報でないと考え、また、面会制限については、やむを得ない措置を行う際に虐待防止法第13条の規定により面会制限を行うことができるものであることから、面会制限に係る記録のみを作成する取扱いをしておらず、やむを得ない措置である入所措置処分に係る記録に含まれる情報とのことである。

本件請求において審査請求人が特定日の本件措置処分に係る情報と表示して請求していることを踏まえると、実施機関が本件請求の趣旨を、本件措置処分に限定して当該処分に係る保有個人情報を求めるものと解し、本件情報1のみを本件請求に係る保有個人情報として特定したことに、不自然、不合理な点は認められない。    

(イ) また、実施機関に確認したところ、審査請求人の母に係る市長審判後見申立てに関するすべての文書のうち、審査請求人本人の記載がなかった文書については、本件請求に係る保有個人情報として特定していないとのことであったため、審議会において、実施機関が本件決定1で特定しなかった当該文書を見分したところ、別表2に掲げる情報に審査請求人本人に係る記載が認められた。

したがって、実施機関は別表2に掲げる情報について本件請求に係る保有個人情報として特定すべきであった。

 

オ 本件情報2の存否について

審査請求人は、本件措置処分は「行政処分」に関するものであるため、大阪市公文書管理条例(平成18年大阪市条例第15号。以下「公文書管理条例」といいます。)別表の保存期間5年として区分されている「許認可、免許、承認、取消等の行政処分に関するもの」に該当し、存在するはずであると主張する。

実施機関に改めて確認したところ、次のとおり説明があった。

・入所措置処分は行政処分であることから、本来5年保存すべきであったところ、誤って3年保存の簿冊に編綴したため、保存期間満了により廃棄した。

・当該簿冊を廃棄したことを証する平成29年度の廃棄簿冊目録は確認できず 、その所在については定かではない。

そこで、実施機関に対して簿冊の廃棄手続について確認したところ、通常は、簿冊を保管している担当課等の公文書管理を所管する文書主任が廃棄する簿冊を確認した上で、文書管理を電子的に行う文書管理システムにより「廃棄簿冊目録」をPDF形式で出力し、廃棄の意思決定及び廃棄簿冊件数の庶務担当への報告(以下「簿冊の廃棄手続」といいます。)に係る電子決裁文書に当該PDFデータを添付しており、決裁完了後、庶務担当課へ報告する流れとなっているとのことである。

しかしながら、平成29年度に廃棄する簿冊の廃棄手続については、廃棄手続に係る電子決裁文書が文書管理システムに存在せず確認できないことから、廃棄の意思決定及び廃棄簿冊件数の庶務担当への報告については当該意思決定に係る決裁行為の有無も含めてどのように手続を行ったかは定かではないとのことであった。

以上の事実を踏まえると、公文書の保存及び廃棄について公文書管理条例及び同条例施行規則に基づく適正な手続が実施機関において取られておらず、本件情報2については廃棄簿冊目録が確認できないため、審議会としては、本件情報2を誤って保存期間が短い簿冊に編集したことにより本件情報2の保存期間満了前に廃棄してしまったとの実施機関の説明を裏付ける証拠はないと言わざるを得ないものの、一方で実施施関の当該説明を覆すことができる特段の事情も見当たらない。

したがって、本件情報2は廃棄したため存在しないとする実施機関の主張については、これを是認するほかないが、実施機関の文書管理は極めて不適切であったと言わざるを得ず、今後、実施機関において適切な文書管理がなされるよう強く要請する。

答申第145号

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