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答申書(令和4年度答申第5号)

2023年2月17日

ページ番号:590749

諮問番号:令和3年度諮問第12号
答申番号:令和4年度答申第5号

答申書

第1  審査会の結論
 本件審査請求は棄却されるべきである。

第2 審査請求に至る経過
1 令和2年6月22日、審査請求人は、大阪市A区保健福祉センターにおいて、大阪市療育手帳交付規則(平成23年規則第106号。以下「規則」という。)第4条第1項に基づく、療育手帳(以下「手帳」という。)の新規交付申請を大阪市長(以下「処分庁」という。)宛てに行った。
2 令和2年12月2日、処分庁は、知的障がいの程度の判定機関である大阪市こども相談センター心理相談担当(以下「こども相談センター」という。)において、発達検査実施・行動観察及び発育歴と現況の聴取を行い、大阪市療育手帳交付要綱(以下「要綱」という。)等に基づき判定手続きを行った。その結果、審査請求人(判定時a歳bか月)については、発達指数は50であり、社会生活上又は行動・医療保健面であまり介助を要しない者であったことから、中度の知的障がいと判定した。
 当該判定を踏まえ、令和2年12月24日、処分庁は、障がいの程度をB1として、手帳の交付(以下「本件処分」という。)を行った。
3 令和3年2月2日、審査請求人は、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取り消し、障がいの程度をAと認定することを求める審査請求を提起した。

第3  審理員意見書の要旨
本件審査請求についての審理員意見書の要旨は次のとおりである。
1  審査請求人の主張
 審査請求の趣旨は、本件処分を取り消すとの裁決を求めるものである。
 審査請求人の主張の理由の要旨は、以下のとおり。
 握力やハイハイができず、運動能力が低く感じ、睡眠、排便などの日常生活のリズムが整っていない。また、あやした時の反応や表情が薄いことから、療育手帳の交付にかかる決定の不服を申し立てた。B1の判定ではなくAの判定を求める。
2  処分庁の主張
 処分庁の弁明の趣旨は、本件処分に違法又は不当な点はないことから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求めるものである。
 処分庁の弁明の理由の要旨は、以下のとおり。
 今回の手帳の新規交付に当たって、こども相談センターにおいて発達検査(新版K式発達検査2001)を実施したところ、(中略)といった結果が得られた。
 新版K式発達検査2001において、通過項目の数による得点から、三領域(姿勢・運動領域、認知・適応領域、言語・社会領域)それぞれの得点及び合計得点が算出されたが、数値が低いため実施手引書の付表によって定められている発達年齢を求めることができなかった。発達年齢が得られなかったことで、そこから導かれる発達指数も換算できなかった。
 そのため、父母からの聴取と行動観察をもとにKIDS乳幼児発達スケール(タイプA 1か月~11か月)を実施したところ、c歳dか月との発達年齢で、発達指数は50であった。かつ、社会生活上又は行動・医療保健面であまり介助・介護を要しない者であったことから、総合的に障がいの程度が中度であるB1と判定された。
 なお、新版K式発達検査2001では、各領域の発達年齢、発達指数は、換算不能となったが、仮に三領域(姿勢・運動領域、認知・適応領域、言語・社会領域)の合計得点e点をもとに、あてはまる年齢水準を算定したところ、発達年齢がc歳dか月~f歳gか月の範囲に該当する。この中で、下限年齢のc歳dか月を採用したとしても、発達指数は50となり、大阪市の療育手帳判定基準に照らして、障がいの程度が中度であるB1となる。
 処分庁は、これらのことから、審査請求人からの申請について、こども相談センターにおける判定結果に基づき、当該児童における療育手帳の等級についてB1との決定を行ったものであり、本件処分に違法又は不当な点は認められない。
3  審理員意見書の結論
 本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、棄却されるべきである。
4  審理員意見書の理由
(1) 本件に係る法令等の規定について
ア 手帳制度は、厚生省通知「療育手帳制度について」(昭和48年9月27日発156号厚生事務次官通知。以下「通達①」という。)により定められた療育手帳制度要綱に基づき実施されている。手帳交付対象者は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障がいであると判定された者となっており、実施主体は都道府県知事(指定都市にあっては、市長)となっている。
 大阪市においては、手帳事務の実施に当たり、規則及び要綱を制定しており、規則第6条及び要綱第3条別表(以下「要綱別表」という。)において知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第11条第1項第2号ハの判定の基準が規定されている。
 規則第2条で手帳の交付対象者及び判定機関が、同第7条で手帳の交付に関する事項が、同第8条で手帳の更新に関する事項がそれぞれ規定されている。
イ 要綱別表に定められている判定の基準は、「標準化された知能検査で測定された指数」及び「社会生活上又は行動・医療保健面で介助・介護を要する程度」となっている。
(2) 判定基準について
 療育手帳制度については、規則に基づいて実施しており、18歳未満の対象者については、規則第2条第1項において、居住区を管轄するこども相談センターを判定機関としている。判定基準については、規則第6条第1項において「市長が別に定める基準」によると定められ、障がいの程度に応じて、重度である場合がA、中度である場合がB1、軽度である場合がB2と判定される。なお、「市長が別に定める基準」は、要綱別表において定められている。
 障がいの程度が中度であるB1の判定基準は、「知能の障がいの程度が中度(標準化された知能検査で測定された指数が概ね36以上50以下に該当)であって、社会生活上又は行動・医療保健面であまり介助・介護を要しない者。若しくは、知能の障がいの程度が軽度(標準化された知能検査で測定された指数が概ね51以上75以下に該当)であって、社会生活上又は行動・医療保健面において、かなりの介助・介護を要する者。」とされている。また、障がいの程度が重度であるAの判定基準は、「重度障害児支援加算費について(平成24年8月20日障発第0820第3号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)2(1)又は(2)に該当する程度の障がいであって、日常生活において常時介護を要する程度の者。若しくは、知能の障がいの程度が中度(標準化された知能検査で測定された指数が概ね36以上50以下に該当)であって、社会生活上又は行動・医療保健面において、かなりの介助・介護を要する者。」と定められ、2(1)は「知能指数がおおむね35以下の児童であって、次のいずれかに該当するもの。ア食事、洗面、排泄、衣服の着脱等の日常生活動作の介助を必要とし、社会生活への適応が著しく困難であること。イ頻繁なてんかん様発作又は失禁、食べられないものを口に入れる、興奮、寡動その他の問題行動を有し、監護を必要とするものであること。」、(2)は「盲児(強度の弱視を含む。以下同じ。)若しくはろうあ児(強度の難聴を含む。以下同じ。)又は肢体不自由児であって、知能指数がおおむね50以下と判定されたもの。」とされている。
(3) 今回の判定について
 今回の手帳の新規交付に当たっては、発達検査(新版K式発達検査2001)を実施し、認知・適応領域で、(中略)といった結果が得られた。
 新版K式発達検査2001において、通過項目の数による得点から、三領域(姿勢・運動領域、認知・適応領域、言語・社会領域)それぞれの得点及び合計得点が算出されたが、数値が低いため実施手引書の付表によって定められている発達年齢を求めることができなかった。発達年齢が得られなかったことで、そこから導かれる発達指数も換算できなかった。
 そのため、父母からの聴取と行動観察をもとにKIDS乳幼児発達スケール(タイプA 1か月~11か月)を実施した。c歳dか月との発達年齢で、発達指数は50であった。かつ、社会生活上又は行動・医療保健面であまり介助・介護を要しない者であったことから、総合的に障がいの程度が中度であるB1と判定した。
ア 発達検査について
 令和2年12月2日にこども相談センターにおいて実施した新版K式発達検査2001は、相談機関や医療機関で児童の知的能力のアセスメントに用いられる代表的な検査方法であり、近隣府市児童相談所での療育手帳判定を含め一般的に用いられる発達検査である。標準化された発達検査は、標準化された知能検査と同等に知能の程度を測定するものと考えられており、発達検査の中でも、新版K式発達検査2001は0歳から成人までと適用範囲が広い。この汎用性の高い発達検査を用いることで、公平かつ一貫した適正な評価ができると考えられることから、こども相談センターでの療育手帳判定では、新版K式発達検査2001が用いられる。
 また、同日に実施したKIDS乳幼児発達スケールは、多くの乳幼児発達検査や行動観察の中から厳選された項目をもとに標準化され、生活全体から評価ができる特長を持ち、発達年齢や発達指数がわかることから、近隣府市児童相談所において、広く用いられている。こども相談センターでは、新版K式発達検査2001が様々な事情で実施不可の際に、身近な養育者からの聴取をもとに実施され、行動観察とともに総合的な判定の一助として実施、活用されている。
 今回、新版K式発達検査2001及びKIDS乳幼児発達スケールはそれぞれの検査内容と検査技法に則り適切に実施された。
イ 行動観察
 母に抱っこされて来所。児童心理司が目の前に来ると、じっと見つめてくる。物に対しても注視や追視が認められるが、多少ぼんやりとした表情で、反応が乏しいことが時々ある。鐘の音に対してあまり反応せず、提示された物をつかむ仕草もほとんどない。発声や表情の変化といった感情表現もあまり見受けられなかった。
ウ 社会生活上又は行動・医療保健面で「あまり介助・介護を要しない者」とする判定について
 自閉症スペクトラム障がい等、他の精神障がいの診断を併せ持っているかどうかに関わらず、知的障がいに加え、(中略)場合に「社会生活上又は行動・医療保健面において、かなり介助・介護を要する者」と判定される。
 また、知的障がいの水準を超える行動上の問題、対人関係に関する問題、その他情緒面の問題がみられるが、概ね日常的な支援によって対応できる状態の場合には「社会生活上又は行動・医療保健面において、あまり介助・介護を要しない者」と判定される。
 今回の判定における聴取から、社会生活上の介助としての身辺自立においては(中略)と評価している。
 父母からの令和2年12月2日の聴取内容及び令和3年2月2日に受理した審査請求書では、「握力やハイハイができず、運動能力が低く感じ、睡眠、排便などの日常生活のリズムが整っていない。また、あやした時の反応や表情が薄い。」とある。
 審査請求の内容からは、身体運動面における発達の未熟さに加え、生活リズムの不安定さ、対人反応の弱さが窺える。身体運動面は、KIDS乳幼児発達スケールタイプAにてc歳dか月の発達年齢を算出しており、これは総合発達年齢とも一致し、知能の障がいの程度が中度と判定できる。生活リズムの不安定さは、監護を要する状態であると言えるが、生活年齢a歳bか月の児童は、常時大人の監護を要する時期であり、発達的にまだ一日の体内リズムが確立しにくいため、生活リズムが変動することは一般的に珍しいことではない。さらに、上述のような特筆すべき問題行動が認められるわけでもないことから、通常の養育による対応の範囲内であると考えられる。反応や表情の薄さについては、対人関係に関する問題に関係するが、これも日常的な支援によって対応可能と判断でき、「社会生活上又は行動・医療保健面であまり介助・介護を要しない者」にあてはまる。
(4) 審査請求の理由についての弁明
 「握力やハイハイができず、運動能力が低く感じ、」について、新版K式発達検査2001の検査項目では、積木の「掌把握」、腹臥位の「四つ這い」に相当するが、審査請求の内容のとおり、いずれも不通過として評定されている。ただ、ガラガラなど対象の形状によっては、保持して振り鳴らすことは行動観察で認められ、新版K式発達検査2001、KIDS乳幼児発達スケールともに当該の項目について正しく評定されている。運動能力の低さに関しては、(3)、ウのとおり、c歳dか月の発達年齢である。「睡眠、排便など日常生活のリズムが整っていない。」も、(3)、ウの記述のとおりと考える。「あやした時の反応や、表情が薄い。」は、新版K式発達検査2001での対人反応として、(中略)にし、KIDS乳幼児発達スケールでは、(中略)評定している。審査請求の内容のこれらの状況をふまえつつ、KIDS乳幼児発達スケールは、総合発達年齢としてc歳dか月を算出する。なお、新版K式発達検査2001では、各領域の発達年齢、発達指数は、換算不能となったが、仮に三領域の合計得点e点をもとに、あてはまる年齢水準を算定したところ、発達年齢がc歳dか月~f歳gか月の範囲に該当する。この中で、下限年齢のc歳dか月を採用したとしても、発達指数は50となり、大阪市の療育手帳判定基準に照らして、障がいの程度が中度であるB1となる。
(5) 本件に係る障がいの程度の判定について
 本件は、審査請求人が規則第4条第1項に規定されている新規交付の申請を令和2年6月22日に行ったものである。
 申請に基づき、こども相談センターにおいて、審査請求人の発達検査(新版K式発達検査2001)を実施した。当該発達検査は、相談機関や医療機関で児童の知的能力のアセスメントに用いられる代表的な検査方法であり、近隣府市児童相談所での療育手帳判定を含め一般的に用いられる発達検査である。標準化された発達検査は、標準化された知能検査と同等に知能の程度を測定するものと考えられており、発達検査の中でも、新版K式発達検査2001は0歳から成人までと適用範囲が広い。この汎用性の高い発達検査を用いることで、公平かつ一貫した適正な評価ができると考えられることから、こども相談センターでの療育手帳判定では、新版K式発達検査2001が用いられている。
 また、同日に実施したKIDS乳幼児発達スケールは、多くの乳幼児発達検査や行動観察の中から厳選された項目をもとに標準化され、生活全体から評価ができる特長を持ち、発達年齢や発達指数がわかることから、近隣府市児童相談所において、広く用いられている。こども相談センターでは、新版K式発達検査2001が様々な事情で実施不可の際に、身近な養育者からの聴取をもとに実施され、行動観察とともに総合的な判定の一助として実施、活用されている。
 今回、新版K式発達検査2001及びKIDS乳幼児発達スケールはそれぞれの検査内容と検査技法に則り適切に実施された。
 併せて、こども相談センターにおいて、父母から請求人の行動観察及び発育歴と現況を聴取すると共に、審査請求人の行動観察を行っている。社会生活上の介助としての身辺自立においては、(中略)と評価している。
 これらを踏まえ、こども相談センターは、審査請求人について知能の障がいが中度(標準化された知能検査で測定された指数が概ね36以上50以下に該当)であって、社会生活上又は行動・医療保健面であまり介助・介護を要しない者と認め、障がいの程度を中度(B1)と判定した。
 処分庁は、当該判定結果に基づき、障がいの程度をB1とする手帳の交付決定をしたものであり、かかる処分庁の判断に、違法、不当な点は認められない。
(6) 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 本件処分に関し、他に違法又は不当な点は認められない。

第4  調査審議の経過
 当審査会は、本件審査請求について、次のとおり調査審議を行った。
  令和3年11月30日 諮問書の受理
  令和3年12月24日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年1月18日 調査審議
  令和4年2月14日 調査審議
  令和4年3月10日 調査審議(審査庁による口頭説明・処分庁による陳述)
  令和4年3月22日 調査審議
  令和4年3月24日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年4月11日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年4月18日 調査審議
  令和4年5月24日 審査庁からの主張書面の収受
  令和4年5月31日 調査審議
  令和4年6月7日 調査審議(審査庁による口頭説明・処分庁による陳述)
  令和4年7月25日 調査審議
  令和4年9月9日 調査審議
  令和4年9月30日 調査審議
  令和4年10月18日 調査審議
  令和4年11月15日 調査審議
  令和4年11月29日 調査審議

第5  審査会の判断
1 本件に係る法令等の規定について
(1) 第3、4、(1)の誤りの指摘について
 本件に係る法令等の規定については、第3、4、(1)に記載のとおりであるが、次の点について指摘しておく。これらについては裁決書において修正されたい。
ア 「療育手帳制度要綱に基づき実施されている。」は「療育手帳制度要綱に沿って自治事務として実施されている。」と記載するのが適切である。
イ 「知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第11条第1項第2号ハの判定」は「児童福祉法(昭和22年法律第164号)第11条第1項第2号ハの判定」の誤りである。
ウ 「要綱別表に定められている判定の基準は、『標準化された知能検査で測定された指数』及び『社会生活上又は行動・医療保健面で介助・介護を要する程度』となっている。」は「要綱別表に定められている判定の基準は、『標準化された知能検査で測定された指数』及び『社会生活上又は行動・医療保健面で介助・介護を要する程度』の観点から定められている。」と記載するのが適切である。
(2) 第3、4、(1)への追加について
 また、第3、4、(1)の記載に加えて、以下のような法令等がある。
ア 法律
 知的障害者福祉法第2条第1項は、「国及び地方公共団体は、前条に規定する理念が実現されるように配慮して、知的障害者の福祉について国民の理解を深めるとともに、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するための援助と必要な保護(以下「更生援護」という。)の実施に努めなければならない。」と規定している。
 児童福祉法第11条第1項第2号ハは、「児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行うこと。」と規定している。
イ 通達
 第3、4、(1)、アの記載の通り、手帳制度は、通達①により定められた療育手帳制度要綱に沿って自治事務として実施されており、同要綱は、「第1 目的」として、「この制度は、知的障害児(者)に対して一貫した指導・相談を行うとともに、これらの者に対する各種の援助措置を受けやすくするため、知的障害児(者)に手帳を交付し、もって知的障害児(者)の福祉の増進に資することを目的とする。」と定め、その他、交付対象者、実施主体、手帳の名称及び記載事項、手帳の交付手続等を明らかにしている。
 加えて、厚生省児童家庭局長が要綱と同日付けで「療育手帳制度の実施について」(児発第725号。以下「通達②」という。)と題する通知を発出し、「第1 療育手帳の活用」として、「1 療育手帳のねらいの一つは、知的障害児及び知的障害者(以下「知的障害者」という)に対して、一貫した指導・相談等が行われるようにすることにあるので、指導・相談等を行う機関に対し、療育手帳の趣旨を十分徹底するとともに、指導・相談等を行った場合は、療育に参考となる事項を手帳に記録するよう指導されたい。あわせて、保護者等に対しても、指導・相談等を受ける場合は、必ず療育手帳を提示するよう指導されたい。 2 知的障害者に対する援助措置として次に例示するようなものがあるが、これらの援助措置を受け易くすることも療育手帳のもう一つのねらいである。これらの援助措置を受ける場合には必ず療育手帳を提示するよう保護者等を指導するとともに、関係機関と十分協議のうえ療育手帳の提示があった時は、療育手帳により資格の確認等を行いすみやかにこれらの援助措置がとられるよう措置されたい。(以下略)」と示し、「第3 障害の程度の判定」として、「1 障害の程度は、次の基準により重度とその他に区分するものとし、療育手帳の障害の程度の記載欄には、重度の場合は「A」と、その他の場合は「B」と表示するものとする。 (1) 重度 18歳未満の者 平成24年8月20日障発0820第3号(「重度障害児支援加算費について」)の2対象となる措置児童等についての(1)又は(2)に該当する程度の障害であって、日常生活において常時介護を要する程度のもの 18歳以上の者 昭和43年7月3日児発第422号児童家庭局長通知(「重度知的障害者収容棟の設備及び運営について」)の1の(1)に該当する程度の障害であって、日常生活において常時介護を要する程度のもの (注)前記通知の解釈にあたっては、知能指数が50以下とされている肢体不自由、盲、ろうあ等の障害を有する者の身体障害の程度は、身体障害者福祉法に基づく障害等級が1級 2級又は3級に該当するものとする。 (2)その他 (1)に該当するもの以外の程度のもの 2 障害の程度の区分については、1に定める区分のほか中度等の他の区分を定めることもさしつかえないものとする。 3 障害の程度については、交付後も確認する必要があるので、その必要な次の判定年月を指定するものとする。なお、次の障害の程度の確認の時期は、原則として2年後とするが、障害の状況からみて、2年を超える期間ののち確認を行ってさしつかえないと認められる場合は、その時期を指定してもさしつかえないものとする。」と示している。その他、交付手続等の制度内容の詳細を示している。
ウ 裁判例
 療育手帳の認定に係る処分性の判断の中で、東京高裁平成13年(行コ)第49号同年6月26日判決・裁判所ウェブサイト(以下「東京高判」という。)は、「知的障害者に対して、その障害の程度に応じた合理的な援助措置を講じるためには、知的障害者の認定手続制度の存在は不可欠であるというべきであること、身体障害者、精神障害者については、いずれも法律に手帳制度が規定されているが、知的障害者の場合には、これを不要とする合理的な理由がないことに鑑みても、知的障害者福祉法は、知的障害者の認定手続の創設を行政機関に委ねたものと解すべき」であるとして、療育手帳制度要綱に基づく療育手帳制度について、「知的障害者福祉法が予定している知的障害者の認定制度である」と判示している。また、療育手帳制度要綱において、療育手帳制度は、「知的障害児(者)に対して 一貫した指導・相談を行うとともに、これらの者に対する各種の援助措置を受け易くするため、知的障害児(者)に療育手帳を交付し、もって知的障害児(者)の福祉の増進に資することを目的とする」とされているところ、東京高判は、療育手帳の交付について、「一旦療育手帳の交付を受ければ、個々の援助措置ごとに知的障害者である旨の認定を受ける必要がなく、知的障害者福祉法に基づく知的障害者としての地位、障害の程度が公証されるとともに、障害の程度に応じた統一的な援助措置を受けることができるという地位を付与されるもので、その意味で、療育手帳の交付は、諸々の福祉措置を知的障害者に付与するために必要な一連の手続のいわば要というべきものである」と判示している。
エ 内規
 内規として、療育手帳判定ガイドライン(18歳未満)(以下「ガイドライン」という。)がある。
 ガイドラインについては、審査基準(行政手続法第5条)である要綱別表の内容についてさらに具体化したものであるが、公開すると客観的かつ正確な判定が困難になるとして非公表とされているものである(なお、非公表との点について、付言(3)参照)。
 ガイドラインには、以下のような記述が認められる。
 「1 療育手帳の判定」については、「1-1 知的機能の障がいの程度」として、「原則として標準化された知能検査により測定された知能指数または発達検査により測定された発達指数に基づいて評価する。」とされている。
(以下略)
2 争点について
 審査請求人及び処分庁の主張を踏まえると、本件審査請求における争点は次のとおりである。なお、第3、「1 審査請求人の主張」の「審査請求の趣旨」としては、記載がないところであるが、審査請求人は、本件処分の取消しとともに、「障がいの程度をAとする裁決を求めるものである」。
(1) 要綱及びガイドラインの合理性(争点1)
(2) 上記要綱及びガイドラインに従いB1とした判断に違法又は不当な点があるか否か(争点2)
3 争点に係る審査会の判断について
(1) 争点1について
 まず、前提として、療育手帳制度は、第3、4、(1)、ア及び第5、1、(2)の通り、知的障がい者に対する援助等必要な保護の実施を行うことを求める知的障害者福祉法第2条第1項の趣旨に基づき、通達①により定められた療育手帳制度要綱に沿って自治事務として実施されている制度であり、実施するか否かや実施内容については、各自治体の裁量に委ねられていると言える(現に、審査会において確認したところでも、要件は自治体により異なる。)。よって、処分庁には、当該自治体における療育手帳制度をどのような制度とするかについて広範な裁量が認められるのであり、要綱やガイドラインが、知的障害者福祉法の趣旨に反していたり(例えば、知的障がいとまったく関係のない事実を主たる考慮要素としているような場合に趣旨に反すると言える。)、これらが規則に反していたりした場合に不合理なものとなると解される。
 そこで、以下検討する。
ア 要綱について
 規則第2条では、「対象者」として、「知的障害があると判定されたもの」とされており、規則第6条第2項では、「障害の程度が重度である場合 A」、「障害の程度が中度である場合 B1」、「障害の程度が軽度である場合 B2」とされている。
 要綱別表は、規則の「障がいの程度」を「知能の障がいの程度」と「介助・介護の必要度」から判定すると定めるもので、その内容は、通達②の「第3 障害の程度の判定」に準拠したものであり、知的障害者福祉法の趣旨や規則に反するものとは言えない。
 その他、要綱について、知的障害者福祉法の趣旨や規則に反するようなところはない。
イ ガイドラインについて
 ガイドラインは、こども相談センターが、要綱別表に基づき判定を行うための非公表の審査基準である(要綱第3条第3項)。
 ガイドラインでは、「1-1 知的機能の障がいの程度」において、「原則として標準化された知能検査により測定された知能指数または発達検査により測定された発達指数に基づいて評価する。」とされている。
 この点、要綱別表においては、「標準化された知能検査で測定された指数」とあるのに対し、ガイドラインでは、「または発達検査により測定された発達指数」が追加されており、一見すると、上記アにより合理性が肯定されるところの要綱と齟齬があるようにも見える。
 そこで、審査会において職権で確認したところ、審査庁の口頭説明によれば、「知能検査から派生したのが発達検査であり、発達検査では援助措置を受けやすくするために、知能検査よりも幅広い検査ができるとのことである。そういった意味から、大阪市としては、乳幼児に知能検査を行うことはなかなか困難であることから、発達検査を使用することにしているが、この発達検査においては、ビネー式知能検査で知能指数を算出する計算式と同じ考え方が用いられていることから、同等のものと考えている。」とのことであり、それについては、審査庁提出資料によっても、一定程度裏付けられているところである。
 よって、上記の要綱との齟齬は、ガイドラインの合理性を否定する根拠となるとまでは言えない。なお、後記付言(1)において言及しているように、ガイドラインで「発達検査により測定された発達指数」を許容している以上、その旨要綱に記載を行うことが望ましいと考える。
 また、ガイドラインでは、介助・介護の必要度の判定方法について具体的に記載されており、(中略)との認定が要件である。
 この要件については、未だ一般的に歩くことも難しい0歳児については、ほとんど全部の項目が非該当となると考えられ、その点、審査会において職権で確認したところ、審査庁提出主張書面によれば、「(中略)体格や筋力・動作等の運動機能の発達上、上記調査結果〔事例なし〕のように起こりえません。」(〔〕内審査会補足)とのことであった。(以下略)
 この点については、後記付言(2)でも述べている通り、審査会としては可能な限り年齢に応じた基準とすることが望ましいと考えるところであるが、認定判断の一貫性・公平性の観点からは、一律の基準で判定を行うことが知的障害者福祉法の趣旨に反し著しく不合理とまでは言えない。
 その他、ガイドラインについて、知的障害者福祉法の趣旨や規則に反するようなところはない。
(2) 争点2について
 まず、前提として、上記1、(2)のとおり18歳未満の者に係る手帳の等級については、(ア)知的機能の障がいの程度、(イ)介助・介護の必要度及び(ウ)身体障がい者手帳の等級から判定されていることが認められ、上記3、(1)で検討したとおり、その点に不合理な点はない。
 そこで、それぞれの判断過程について、事実誤認や評価の誤りがないか、以下検討する。
ア 知的機能の障がいの程度について
(ア)判定方法について
 本件では、審査請求人に対しこども相談センターにおいて新版K式発達検査2001を用いた発達検査が実施され、第3、4、(3)及び(4)のとおり、換算不能となったとのことであるが、この点について検査方法を誤った等の事実は認められない。
 次に、KIDS乳幼児発達スケールを用いた発達検査が実施されたとのことであるが、処分庁陳述における質疑応答によれば、「KIDS乳幼児発達スケールは、新版K式発達検査に代わるものとして用いているわけではなく、参考に実施しているものに過ぎないので、新版K式発達検査の代わりにそのまま用いることができるものではない。」とのことであった。
 そこで、審査会から、「KIDS乳幼児発達スケールの結果を参考資料として判定を行う場合の判定方法」について、審査庁に確認したところ、審査庁の回答は、「新版K式発達検査が実施不能であった場合、こどもの行動観察と生活状況の聴取を行いつつ、KIDSを用いてその結果を参考資料として判定を行っている。」とのことであるが、そのような判定方法(以下「本件判定方法」という。)を記したマニュアル等は存在しないとのことであった。
 そこで、果たして、本件判定方法により判定を行ったことが適切かという点が問題となるが、審査会で確認した限り、本件審査請求人の月齢である生後b´か月の段階において、確実に判定が可能となるような知能検査等は存在せず、仮に、換算不能となり要綱別表のいずれにも該当しないとして手帳を不交付とすれば、知的障害者の福祉の増進という制度趣旨に反し、申請者にとってはかえって不利益としかならないことから、処分庁が要綱やガイドラインに記載のない本件判定方法を採用したこと自体は不合理とは言えない。
 次に、本件判定方法の客観性、及び、それによって発達年齢をc歳dか月、知的機能の障がいの程度「中度」と判定したことの適否が問題となる。
(イ)本件判定方法の客観性について
 要綱及びガイドラインにない判定方法を採用すること自体に問題はないとしても、当該判定方法の客観性が担保されていない場合には、「知的障害児(者)に対して一貫した指導・相談を行う」(通達①)ことを目的とする療育手帳制度にあっては、不適切な運用と言える。
 そこで、本件判定方法が客観的なものであるか否かについて、以下検討する。
 この点について、審査会において、処分庁陳述を求めて確認したところ、「乳幼児の発達については、判定方法について、明文化されたものはないが、各育児書や専門書にあるように、〔乳幼児は〕順を追って発達していくということを各児童心理司は把握しており、これに基づいて行動観察している。月齢・年齢に応じてできるようになることと、実際とのズレを把握し、当該児童の発達が何歳(か月)相当になるのかということを確認している。」(〔〕内審査会補足。)とのことであり、実際に行動観察を行い一般的な発達段階の特徴との比較により判断する方法は、発達検査や知能検査が適用できない状況では、一定の合理性を有すると言える。
 また、判定に係る研修を受けた児童心理司が行動観察を行っているとのことであり、さらに、「c歳dか月程度と考えられ、これにズレがないかなどを判定会議にかけて、決定した」とのことであるから、慎重な手続きによって判定が行われていることが認められる。
 よって、本件判定方法については、一定の客観性が担保されていると言える。
(ウ)本件判定の適否について
 次に、本件判定方法に従ってなされた発達年齢をc歳dか月とした判定の適否が問題となる。処分庁によれば、その方法は、「こどもの行動観察と生活状況の聴取を行いつつ、KIDSを用いてその結果を参考資料として判定を行っている。」とのことであるから、以下、検討する。
 行動観察については、処分庁陳述によれば、そもそも「KIDSやK式の発達検査の項目自体が行動観察によって評価できるような項目になっている。」とのことであり、さらに、審査庁の主張によれば、検査者が検査中に検査対象者を観察した結果をもとにして判断を行っているとのことである。
 そして、検査時の審査請求人の様子は、「検査者が目の前に来ると検査者をじっと見る様子はは(ママ)みられる。物への注視や追視もみられるが、ややぼんやりした表情で反応が薄い時もある。鐘を耳元で鳴らすと、ビクッと瞬きをする様子が1度だけみられたが、それ以外は音への反応が乏しい印象をうける。物を提示しても自発的に把握する様子はほとんどない。握らせると、ガラガラは掴むことは可能だが、積木は1秒程度ですぐ落としていた。発声はほとんどなく、検査者を見てにっこりと笑ったり、ぐずり出すような声を上げるなどの感情表現もあまり見受けられなかった。」とのことであった。
 また、生活状況については、現況聴取票によれば、(中略)とされている。
 これらの事実については、KIDS乳幼児発達スケールや現況聴取票は母親への聴き取りをもとに検査者が記載したものであり、行動観察記録についても当日の検査対象者の様子を記録したものであることから、事実誤認は考え難く、また、審査請求人の主張と矛盾するところもない。
 そして、c歳dか月程度の発達年齢であるという点については、大阪市こども青少年局「にこにこ~赤ちゃんのために~ 3か月児~18か月児」(令和4年4月発行版)によれば、「からだと心の発達」例として、(以下略)
 また、新版K式発達検査2001の結果からも、(中略)が認められることから、発達年齢c歳dか月との判断と矛盾するところはない。
 さらに、参考として行われたKIDS乳幼児発達スケールについても、第3、4、(3)の通り、発達年齢c歳dか月とのことである。
 よって、本件判定方法に則り検査を行った結果、審査請求人の発達年齢をc歳dか月と判定したことは、適切であると言える。
(エ)知的機能の障がいの程度「中度」との判定について
 そうすると、発達指数は、
発達年齢÷生活年齢×100
で算出され、本件審査請求人の発達年齢c歳dか月、判定時の生活年齢a歳bか月を代入すると、
〇÷〇×100=50
となることから、知能の障がいの程度は、「知能または発達指数36以上50以下」に該当する。
 よって、知的機能の障がいの程度「中度」と判定したことは、適切であると言える。
イ 介助・介護の必要度について
 介助・介護の必要度は、上記1記載の通り、「行動面」と「医療・保健面」の両者の観点から判定されるものであり、審査請求人はhと判定されているところである。
 そこで、まず、行動面から検討すると、(中略)必要がある。
 本件審査請求人は、判定時点で月齢b´か月であり、「知的障がいの水準」、つまり、発達年齢c歳dか月程度に照らして、問題と認められるような行動、対人関係、情緒面の問題は、記録上認められない。また、(中略)についても、いずれも記録上認められない。
 なお、審査請求人は、(中略)
 次に、医療・保健面であるが、審査請求人に(中略)があることは記録上認められず、また、(中略)とも記録上認められない。
 以上より、処分庁が総合して、介助・介護の必要度をhと判定したことは、適切であると言える。
ウ (略)
エ 障がいの程度
 上記ア、イ及びウを踏まえると、審査請求人の「障がいの程度」は、(中略)に該当することとなる。
(3) 小括
 以上より、処分庁が審査請求人にB1の手帳を交付したことについて、違法又は不当な点は認められない。
(4) 審査請求人の主張について
 審査請求人は、審査請求書(補正書)において、「①握力やハイハイなど、運動能力が低く感じる。②食事、睡眠、排便など日常生活のリズムが整っていない。③授乳後、離乳食後は、必ず吐き戻す。また、④あやした時の反応が薄く、泣き方も弱い。」(丸数字審査会追記)と主張するが、①、④については、KIDS乳幼児発達スケールにおいて適切に反映されていることが見受けられ(ハイハイができるは不通過)、②、③については、介助・介護の必要度に関係するが、介助・介護の必要度のi以上には当たらないという上記の結論を左右するものではない。
4 審査請求に係る審理手続について
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
5 結論
 よって、本件審査請求に理由はないと認められるので、当審査会は、第1記載のとおり判断する。
6 付言
(1) 要綱への発達検査の記載について
 本答申の時点の大阪市の要綱別表では、「知能の障がいの程度が中度(標準化された知能検査で測定された指数が概ね36以上50以下に該当)」といった記載となっており、知能の障がいの程度は知能検査により測定を行うように読めるが、ガイドラインでは「原則として標準化された知能検査により測定された知能指数または発達検査により測定された発達指数に基づいて評価する。」とされ、実際の運用としては、主として「新版K式発達検査2001」、つまり、発達検査で測定が行われているとのことである。
 「知能検査」に替えて「発達検査」を用いることそのものは、当該発達検査が代替性を有する限り、上記3、(1)、イで述べた通り不合理とまでは言えないが、一般的には、知能検査と発達検査は別の検査と考えられるものであり、市民に無用な誤解を与えないためにも、要綱別表への記載については、「標準化された知能検査又は発達検査で測定された指数が」とすることが望ましいと考える。
 なお、堺市療育手帳に関する要綱第7条に規定する判定基準では、「標準化された知能検査又は発達検査によって測定された知能指数又は発達指数が、おおむね35以下の者で、社会生活を営む能力が中度以上であって、行動及び医療保健などで若干の介助及び介護を要するもの。」等とされている点も参考にされたい。
(2) 年齢に応じた介助・介護の必要度の検討について
 上記3、(1)、イで検討を行ったように、介助・介護の必要度については、(中略)概ねそれにより1等級変わる仕組みとなっている。
 このような仕組みは、(中略)それ自体不合理なものとは言えない。
 しかし、介助・介護の必要度は、(中略)のみによって判断されるものではなく、現状では、上記3、(1)、イで述べたとおり、介助・介護の必要がある乳幼児に関して障がいの程度を重くすることは難しいことから、例えば、就学前の乳幼児と就学後の児童とで基準を異なるものとする等制度の改善が望まれる。
 なお、東京都においては、要綱が非公表のため細部まではわからないが、ホームページや答申からは、幼児と児童(6~17歳)で異なる基準を用いていると思われるところである。
(3) ガイドラインについて
 本件の審査にあたって、当審査会が審査庁に対して行った主張書面又は資料の提出の求めに対し、審査庁からガイドラインが提出され、あわせて求めた行政不服審査法第81条第3項において準用する第78条第2項及び大阪市行政不服審査会運営要領第10条第2項に基づく意見として、「療育手帳判定は知能検査による知能指数あるいは発達検査による発達指数、及び行動・医療保健面の介護の程度を勘案して判断するが、介護の程度は主に保護者からの聞き取り内容に基づいて判断している。〔ガイドラインに記載している〕介護の程度評価に関する詳細な記述が閲覧された場合、保護者から〔評価〕基準等に合わせた報告がなされるおそれがあること、ひいては、判定機関において、客観的かつ正確な判定を困難にするおそれがあるため、大阪市情報公開条例第7条第1項第5号アに基づき、審査請求人への写し等の送付は適当でないと思料される。」(〔〕内審査会補足)と述べられている。
 しかし、ガイドラインは、手帳の交付/不交付や交付する場合の等級を決定する際の基準となっており、行政手続法第2条第8号ロに該当することから、同法第5条第3項に基づき、「公にしておかなければならない」ものと考えられる。
 この点に関し、同項の「公にしておかなければならない」とは、一般財団法人行政管理研究センター編『逐条解説 行政手続法〔改正行審法対応版〕』136頁(ぎょうせい、平成29年)によれば、「申請をしようとする者の求めに応じ提示する」という方法も認められると解されており、周知のために「公表」(行政手続法第36条参照)することまでは求められていない。本件においては、申請時から現在に至るまで、申請者たる審査請求人から、処分庁たる大阪市長に対し、そのような求めはなされていない。他方で、行政不服審査法第81条第3項において準用する第78条第1項に基づく閲覧・交付請求がなされた場合、実質的には行政手続法第5条第3項の審査基準に係る上記「求め」がなされたものと評価し、審査会において、行政不服審査法第78条第2項に基づく審査庁の意見を聴いたうえで、なお必要と思料した場合には、職権により審査基準を含む資料の閲覧又は交付を行うことも可能と考える。しかしながら、本件においてはそのような閲覧・交付請求はなされていないことから、審査庁意見を踏まえて職権送付を行ってきた。本答申をするに当たっても、審査会として積極的にガイドラインの内容を明らかにすることまでは必要ないと考え、網掛け部分については黒塗りにした上で、行政不服審査法第81条第3項において準用する第79条に基づき、審査請求人に写しの送付を行うこととする(網掛け部分以外については、そもそも、「客観的かつ正確な判定を困難にするおそれがある」とは認められないと考える。)。
 もっとも、審査庁及び処分庁においては、今後、ガイドラインが行政手続法第5条第3項の審査基準に該当するとの認識の下、申請者から上記求めがあった場合にはこれを提示する必要があること、不服審査手続においても閲覧・交付請求があった場合には、審査会において、黒塗りの処理をすることなく資料を送付する可能性があることに留意されたい。なお、行政手続法第5条第3項では、「行政上特別の支障があるときを除き」との例外要件が定められているが、高木光ほか『条解 行政手続法』166頁(弘文堂、第2版、平成29年)によれば、「単に行政がやり難くなるといった事情は含まれない」とされており、本件は上記例外要件に該当しないと思われる(大阪地裁平成10年(行ウ)62号・同12年(ワ)8897号同14年6月28日判決・裁判所ウェブサイト参照)。

(答申を行った部会名称及び委員の氏名)
 大阪市行政不服審査会総務第2部会
 委員(部会長) 榊原和穂、委員 畠田健治、委員 海道俊明

答申書(令和4年度答申第5号)

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