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答申書(令和4年度答申第7号)

2023年2月17日

ページ番号:590798

諮問庁(審査庁):大阪市長
諮問日:令和4年3月11日
諮問番号:令和3年度諮問第24号
 

答申書

原処分の文書番号:令和3年度〇〇第a号
答申日:令和4年12月15日
答申番号:令和4年度答申第7号

大阪市長 松井一郎様

大阪市行政不服審査会
会長 榊原和穂 

 住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第20条第5項が準用する第12条第6項に基づく戸籍の附票の写しの不交付決定に係る令和3年8月26日付け審査請求についての上記審査庁の行政不服審査法第43条第1項の規定に基づく諮問に対し、次のとおり答申する。

第1  結論
・本件審査請求の対象となった戸籍の附票の写しの不交付決定は取り消されるべきである。
・下記第9、1のとおり、本件審査請求人が処分庁に対し戸籍の附票の写しの請求を行った際の処分庁担当者の対応について、付言を付す(付言1)。
・下記第9、2のとおり、意見付与機関が意見付与を行う際に検討すべき事項について、付言を付す(付言2)

第2 事案の概要
 本件は、大阪市A区長(以下「処分庁」という。)が、審査請求人が行った自身の子(以下「子」という。)の戸籍の附票の写しの交付請求(以下「本件申請」という。)について、令和3年7月9日付けで行った住民基本台帳法(以下「法」という。)第20条第5項が準用する第12条第6項の規定に基づく戸籍の附票の写しの不交付決定(以下「本件処分」という。)に対し、審査請求人が、本件処分は、自身がドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為及び児童虐待等(以下「DV等」という。)を行っていないにもかかわらず支援措置申出者の意見から一方的になされた決定であり、違法又は不当なものである等と主張して、処分の取消しを求める事案である。

第3 事実関係
1 関係法令等の定め(本件処分に係る根拠法令等)
(1)住民基本台帳法
本件に関係する法律として、法では、以下のように規定する。なお、四角囲み内は、条文等の引用である(以下同)。
(目的)
第1条 この法律は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もつて住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。
(本人等の請求による住民票の写し等の交付)
第12条 市町村が備える住民基本台帳に記録されている者(当該市町村の市町村長がその者が属していた世帯について世帯を単位とする住民票を作成している場合にあっては、当該住民票から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によってされ、かつ、当該記載が消除された者を除く。)を含む。次条第1項において同じ。)は、当該市町村の市町村長に対し、自己又は自己と同一の世帯に属する者に係る住民票の写し(第6条第3項の規定により磁気ディスクをもって住民票を調製している市町村にあっては、当該住民票に記録されている事項を記載した書類。以下同じ。)又は住民票に記載をした事項に関する証明書(以下「住民票記載事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 前項の規定による請求は、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 当該請求をする者の氏名及び住所
二 現に請求の任に当たっている者が、請求をする者の代理人であるときその他請求をする者と異なる者であるときは、当該請求の任に当たっている者の氏名及び住所
三 当該請求の対象とする者の氏名
四 前3号に掲げるもののほか、総務省令で定める事項
3 第1項の規定による請求をする場合において、現に請求の任に当たっている者は、市町村長に対し、個人番号カード(番号利用法〔行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律〕第2条第7項に規定する個人番号カードをいう。以下同じ。)を提示する方法その他の総務省令で定める方法により、当該請求の任に当たっている者が本人であることを明らかにしなければならない。(〔〕内審査会補足)
4~5 (略)
6 市町村長は、第1項の規定による請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
7 (略)
(戸籍の附票の写しの交付)
第20条 市町村が備える戸籍の附票に記録されている者(当該戸籍の附票から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によってされ、かつ、当該記載が消除された者を除く。)を含む。次項において同じ。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、当該市町村の市町村長に対し、これらの者に係る戸籍の附票の写し(第16条第2項の規定により磁気ディスクをもつて戸籍の附票を調製している市町村にあっては、当該戸籍の附票に記録されている事項を記載した書類。次項及び第3項並びに第46条第2号において同じ。)の交付を請求することができる。
2~4 (略)
5 第12条第2項から第7項までの規定は第1項の請求について、第12条の2第2項から第5項までの規定は第2項の請求について、第12条の3第4項から第9項までの規定は前2項の申出について、それぞれ準用する。この場合において、これらの規定中「総務省令」とあるのは「総務省令・法務省令」と、「住民票の写し又は住民票記載事項証明書」とあるのは「戸籍の附票の写し」と読み替えるほか、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
表 (略)
(行政手続法の適用除外)
第32条 この法律の規定により市町村長がする処分については、行政手続法(平成5年法律第88号)第2章及び第3章の規定は、適用しない。
(2)配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律
本件に関係する法律として、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)では、以下のように規定する。
(定義)
第1条 この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第28条の2において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2 この法律において「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3 (略)
(国及び地方公共団体の責務)
第2条 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力を防止するとともに、被害者の自立を支援することを含め、その適切な保護を図る責務を有する。
(被害者の保護のための関係機関の連携協力)
第9条 配偶者暴力相談支援センター、都道府県警察、福祉事務所、児童相談所その他の都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は、被害者の保護を行うに当たっては、その適切な保護が行われるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。
(3)住民基本台帳事務処理要領
本件に関係する国からの通知として、住民基本台帳事務処理要領(昭和42年10月4日法務省民事甲第2671号・保発第39号・庁保発第22号・42食糧業第2668号(需給)・自治振第150号。以下「法務省要領」という。)では、以下のように定められている。
第5 その他
10 住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付並びに戸籍の附票の写し等の交付におけるドメスティック・バイオレンス及びストーカー行為等の被害者の保護のための措置
(略)
ア 申出の受付
(ア)申出者
市町村長は、その備える住民基本台帳に記録又はその作成する戸籍の附票に記載されている者で、次に掲げる者から、コに掲げる支援措置の実施を求める旨の申出を受け付ける。
A 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるもの
B ストーカー規制法第6条に規定するストーカー行為等の被害者であり、かつ、更に反復してつきまとい等又は位置情報無承諾取得等をされるおそれがあるもの
C 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり、かつ、再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがあるもの
D その他AからCまでに掲げるものに準ずるもの
(イ)申出者と同一の住所を有する者
市町村長は、申出者が、その同一の住所を有する者について、申出者と併せて支援措置を実施することを求める場合には、その旨の申出を併せて受け付ける。
(ウ)~(オ)(略)
イ 支援の必要性の確認
(ア)申出者
当初受付市町村長は、申出者が、ア‐(ア)に掲げる者に該当し、かつ、加害者が、当該申出者の住所を探索する目的で、住民基本台帳の閲覧等を行うおそれがあると認められるかどうかについて、警察、配偶者暴力相談支援センター等の意見を聴取し、又は裁判所の発行する保護命令決定書の写し若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求めることにより確認する。
この場合において、市町村長は、上記以外の適切な方法がある場合には、その方法により確認することとしても差し支えない。
(イ)申出者と同一の住所を有する者
当初受付市町村長は、ア‐(イ)の申出を受けている場合には、加害者が、申出者の住所を探索する目的で、当該申出者と同一の住所を有する者の住民基本台帳の閲覧等の申出を行うおそれがあると認められるかどうかについて、併せて(ア)と同様の確認を行う。
ウ~オ (略)
カ 支援措置の期間
支援措置の期間は、いずれの市町村における支援措置についても、ウに基づき当初受付市町村長が確認の結果を申出者に連絡した日から起算して1年とする。
キ 支援措置の延長
当初受付市町村長は、支援措置の期間終了の1月前から、支援措置の延長の申出を受けるものとし、申出があった場合には、イからオまでの例により処理する。延長後の支援措置の期間は、いずれの市町村における支援措置についても、延長前の支援措置の期間の終了日の翌日から起算して1年とする。
ク、ケ (略)
コ 支援措置
(ア)住民基本台帳の一部の写しの閲覧の申出に係る支援措置
A 市町村長は、支援対象者に係る住民基本台帳の一部の写しの閲覧について、以下のように取り扱う。
(A)~(B) (略)
(C)その他の第三者から申出がなされた場合
加害者が第三者になりすまして行う申出に対し閲覧させることがないよう、十分留意して厳格に本人確認を行うことが適当である。
加害者の氏名が変更している場合、加害者が旧氏や通称を用いて申出を行う場合、被害者が加害者を旧氏や通称のみをもって把握しており、かつ、加害者が旧氏や通称を変更している場合等があり得るため、住民基本台帳ネットワークシステムの本人確認情報を利用して申出者が加害者であるかを確認することが適当である。
また、加害者の依頼を受けた第三者からの閲覧に対し閲覧させることがないよう、利用の目的等について十分留意して厳格な審査を行うことが適当である。
なお、加害者が国又は地方公共団体の機関の職員になりすまして閲覧を請求することも考えられるため、法第11条に基づく請求であっても、閲覧者については、十分留意して厳格に本人確認を行うことが適当である。
B (略)
(イ)住民票の写し等及び戸籍の附票の写し等の交付の請求又は申出に係る支援措置
市町村長は、支援対象者に係る住民票(世帯を単位とする住民票を作成している場合にあっては、支援対象者に係る部分。また、消除された住民票及び改製前の住民票を含む。)の写し等及び戸籍の附票(支援対象者に係る部分。また、消除された戸籍の附票及び改製前の戸籍の附票を含む。)の写しの交付について、以下のように取り扱う。
 (A)加害者が判明しており、加害者から請求又は申出がなされた場合
不当な目的があるものとして請求を拒否し、又は法第12条の3第1項各号、第15条の4第3項各号、第20条第3項各号若しくは第21条の3第3項各号に掲げる者に該当しないとして申出を拒否する。
ただし、(ア)-A-(C)に準じて請求事由又は利用目的をより厳格に審査した結果、請求又は申出に特別の必要があると認められる場合には、交付する必要がある機関等から交付請求を受ける、加害者の了解を得て交付する必要がある機関等に市町村長が交付する、又は支援対象者から交付請求を受けるなどの方法により、加害者に交付せず目的を達成することが望ましい。
(B)~(C)(略)
サ (略)
(4)大阪市住民基本台帳事務処理要領
本件に関係する大阪市の内規として、大阪市住民基本台帳事務処理要領(令和2年12月大阪市市民局。以下「市要領」という。)では、以下のように定められている。
第7章 その他
8 ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為及び児童虐待等(以下「DV等」という) の被害者の保護のための支援措置
DV等の被害者及び加害者について、申出に基づきあらかじめ把握することで、加害者が、住民票の閲覧や写し等の交付並びに戸籍附票の写し等の交付制度を不当に利用して、被害者の住所の(ママ)探索することを防止し、もって被害者の保護を図ることを目的とするものである。
(1) 申出の受付
① 住民基本台帳又は戸籍附票に記載されている者で、次に掲げる者から支援措置の実施を求める旨の申出を受け付ける。
ア 配偶者暴力防止法第1条第1(ママ)項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるもの
イ ストーカー規制法第2条に規定するストーカー行為等の被害者であり、かつ、更に反復してつきまとい等をされるおそれがあるもの
ウ 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり、かつ、再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがあるもの、及び18歳以上であって、児童福祉施設に入所しているもの
エ その他アからウまでに掲げるものに準ずるもの
例)・児童虐待を受けた児童が18歳に達した後も引き続き支援を必要とするもの
・高齢者や障害者虐待の被害者等
② 申出者と併せて同一の住所を有する者について、支援措置を実施することを求める場合には、併せてその申し出を受け付ける。
③~⑤ (略)
(2)、(3) (略)
(4) 支援措置の期間
確認の結果を申出者に連絡した日から起算して1年とする。
(5) 支援措置の延長
支援措置の期間終了の1月前から、支援措置の延長の申出を受けつけるものとする。延長後の支援期間は、延長前の支援期間終了日の翌日から起算して1年とする。
(6) (略)
(7) 支援措置
① (略)
② 交付請求(申出)における支援措置
ア 加害者からの請求がなされた場合
A 住民票の写し等の交付申出には、法第12条の3第1項の各号に掲げる者(法第20条3(ママ)の附票の写しの交付申出について同じ)に該当しないものとして、法第12条第6項(これを準用する法第20条1項に係る附票の写しの交付請求についても同じ)に基づき、不当な目的によるものとして拒否をする。
B ただし、請求(申出)に特別の必要があると認められる場合には、交付する必要がある機関等からの直接請求を受ける、加害者の了解を得て交付する必要がある機関等に直接交付することとする。
C 加害者等から訴訟手続きで被害者の住民票の写し等交付請求があった場合は、裁判所において手続の教示を受けられることを説明した上で、具体的な手続については裁判所に相談するよう案内する。
裁判所から、訴訟の被告に関する民事訴訟法第151条若しくは第186条又は家事事件手続法第62条に基く、被告の住所に関する調査嘱託があればこれに回答する。
以下 (略)
(5)ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等及び児童虐待等の被害者支援にかかる住民基本台帳事務処理マニュアル
本件に関係する大阪市の手続マニュアルとして、ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等及び児童虐待等の被害者支援にかかる住民基本台帳事務処理マニュアル(令和2年4月1日改正。以下「市マニュアル」という。)では、以下のように定められている。
1~2 (略)
3 住民登録地における支援
(1) (略)
(2) 支援の必要性の確認
申出を受けた区は、申出書に記載された内容について、住民基本台帳事務における「支援の必要性の有無」について確認を行うこととする。
支援の確認については、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等又は区役所保健福祉センター(以下「警察等」という。)の意見若しくは裁判所が発行した保護命令・禁止命令にかかる決定の謄本により行うこととする。この場合は、決定の謄本を複写することとし、申請書とともに保管する。
意見については、以下により相談を受けている所轄の警察署、配偶者暴力相談支援センター、保健福祉センター、児童相談所等へ確認することとする。

支援の必要性の確認方法
 事例確認方法 
被害者について、警察等から事前に連絡がなされている場合申出者が持参している申出書の「警察等の意見欄」で確認する。
事前に連絡はないが、申出書に警察等の意見が付されている場合当該意見が間違いでないか意見を付している機関に確認する。
申出者が「相談先欄」に警察等の連絡先を記入している場合当該相談先に電話確認のうえ、申出書を送付し、書面により意見を聴取する。
早急に被害者支援を行う必要がある場合当該相談先に電話等により意見を聴取し確認する。

以下(略)
2 処分の内容及び理由
 処分庁は、審査請求人の戸籍の附票の写しの請求において対象とする者(以下「請求対象者」という。)が支援対象者であることから、法第20条第5項が準用する第12条第6項に基づき、不当な目的によることが明らかであるとして、不交付決定を行ったものである。
 なお、上記支援対象者であることの前提となった支援措置は、請求対象者の母親である審査請求人の元配偶者(以下「元配偶者」という。)から、令和2年12月24日付け相談機関の意見を付した支援措置申出書が提出されたことを受けて処分庁により決定され、さらに、令和3年5月6日付けで戸籍の附票の写しも対象に加える旨の変更申し出がなされたものである。
 そして、その適否については、住民基本台帳事務処理要領第5‐10及び大阪市住民基本台帳事務処理要領第7章‐8に当てはめた結果から、適切とするものである。
3 審理員による審理手続及び調査審議の経過
 令和3年8月26日、審査請求人は、行政不服審査法第2条に基づいて、本件処分に対する審査請求を行った。
 令和3年9月6日、審理員が指名された。
 令和3年9月29日、処分庁より弁明書が提出された。
 令和3年11月17日、審査請求人より、反論書が提出された。
 令和3年12月10日、処分庁より再弁明書が提出された。
 令和3年12月28日、審査請求人より、再反論書が提出された。
 令和4年3月1日、審理員より審理員意見書が提出された。
 令和4年4月11日、審査請求人及び審査庁より、主張書面が提出された。
 令和4年4月25日、審査庁より、主張書面が提出された。
 令和4年4月27日、当審査会において審議を行った。
 令和4年5月26日、審査請求人より、主張書面が提出された。
 令和4年6月7日、当審査会において審議を行った。
 令和4年6月23日、当審査会において審議を行った。
 令和4年6月30日、当審査会において審議を行った。
 令和4年7月8日、当審査会において審査請求人の口頭意見陳述及び審議を行った。
 令和4年8月17日、当審査会において審議を行った。
 令和4年9月15日、審査請求人及び審査庁より、主張書面が提出された。
 令和4年9月30日、当審査会において審議を行った。
 令和4年10月18日、審査請求人及び審査庁より、主張書面が提出された。
 令和4年11月15日、当審査会において審議を行った。
 令和4年11月29日、当審査会において審議を行った。

第4  審理員意見書の要旨
1  審理段階における審理関係人の主張
 審査請求人の主張は、審査請求人がDV等の加害者であるという理由により本件処分がなされたことは、事実誤認(被害者が虚偽の申請をしており、事実無根であり、捏造されたものである)かつ審査請求人への事情聴取なしの一方的な決定であり、具体的にどのようなDV等を行ったのか説明がないため、本件処分の取消しを求める、というものである。
 処分庁は、法務省要領第5‐10に基づき、被害者からの支援措置申出を受け、支援の必要性を確認し、住民票の写し等について、加害者からの交付請求について、市要領第7章‐8‐(7)‐②‐ア‐Aに基づき、不当な目的によるものとして拒否していることから、本件処分は、上記両要領に則った適正な処分であると主張している。
 また、支援の必要性については、法務省要領第5‐10に基づき「警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所又は区役所保健福祉センター等の意見を聴取し、又は裁判所の発行する保護命令決定書の写し等の提出を求めることにより確認する」ことになっており、事実誤認、審査請求人への事情聴取なし及び審査請求人への具体的な説明なしであることについての審査請求人の主張は失当である旨弁明している。
2  審理段階における論点整理
 審理員意見書によれば、審理員は、処分庁が、法務省要領第5‐10に基づき適切に支援の必要性を確認したかが論点と考え、その点について検討を行っている。
3  審理員意見の理由
 上記2の検討の結果、審理員意見書によれば、「警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等の意見を聴取し、又は裁判所の発行する保護命令決定書の写し若しくはストーカー規制法に基づく警告等実施書面等の提出を求め、支援の必要性を確認することで、確認していることを認定し、本件処分は、法務省要領及び市要領に基づく適正なものである。」としている。

第5  調査審議における審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張の要旨
 審査請求人は、本件申請は、子の身に何かあった際に駆け付けることができるように、あらかじめ住所を把握しておくことを目的としたものであると主張する(主張書面、口頭意見陳述)。
 その上で、審査請求人は、元配偶者や子に対して、DV等を行った事実がないことから、本件処分は違法・不当であると主張するものである。
2 審査庁の主張の要旨
 審査庁は、支援措置は、意見付与機関(相談機関中支援措置希望者からの相談を受けて支援の必要性を認めた場合に支援措置申出書に意見付与を行う機関をいう。以下同)が支援措置申出者に適切に聴取を行った結果により付与した意見に基づいて判断しており、意見付与機関の支援が必要との意見に基づき支援措置を決定している以上、審査請求人に「不当な目的」があるとして不交付としたことは、適法・妥当であると主張するものである。

第6  論点整理
 法第20条第5項が準用する第12条第6項は、「請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」と規定しているが、どういった場合に、「不当な目的によることが明らか」であるかは、法令に規定がなく、処分庁の裁量に委ねられているところである。
 その基準を具体的に示したものが法務省要領及び市要領であり、仮にそれらが法の趣旨に反するものであれば、当該基準に当てはめた結果も違法となり得ることから、まず、それらの合理性について判断する必要がある(論点1)。
 次に、基準が合理的であっても、事実誤認や評価の誤り等があれば、基準に当てはめて導き出した結果は不合理なものとなることから、事実誤認等の有無についても判断する必要がある(論点2)。
 その際、本件では、請求対象者が支援措置の対象者となっていることが本件処分に係る判断の前提となっていることから、支援措置実施決定が適切になされたか否かを検討することとなる。なお、支援措置実施決定は、それ自体は、法令に根拠を有しない非処分としての性質を有すると解される。
 上記検討にあたっては、支援措置の判断の前提となる行政調査が適切に行われたかがまず問題となり、次に適切な行政調査により集められた情報に基づき、合理的な判断がなされたか否かが問題となる(審理関係人間でもこの点が主たる争点となっているところである。)。

第7 答申の理由
1 認定した事実
 審理関係人及び審査庁から提出された証拠や審査会にて行った職権調査から、以下の事実が認められる。なお、事実記載の後ろの「()」内には、当該事実についての証拠を記載している。
(1)令和2年b月c日、審査請求人と元配偶者及び子が別居することとなった(令和2年d月e日付け「家事調停申立書」)。
(2)令和2年f月g日、元配偶者がB市長に対して支援措置申出を行い、同月h日、支援措置が決定された(B市長「住民基本台帳事務における支援措置実施決定通知書」)。
(3)令和2年12月24日、元配偶者が大阪市へ転入(元配偶者の個人番号カード)するとともに、処分庁に対し、「加害者」を審査請求人、「申出者の状況」欄は「A 配偶者暴力防止法」を選択、「併せて支援を求める者」に子の氏名を記載して、大阪市A区長あて「住民基本台帳事務における支援措置申出書」の提出を行い(令和2年12月24日付け大阪市A区長あて「住民基本台帳事務における支援措置申出書(新規)」)、同日支援措置の実施が決定された(令和2年12月24日付け大阪市A区長あて「住民基本台帳事務における支援措置申出書(新規)」の処分庁担当者の追記から推認)。
(4)上記(3)の支援措置にあたって、令和2年12月24日に、意見付与機関たるCが、「相談機関等の意見」欄に記名・押印を行っているが、意思表示の内容を示す「1 上記申出者の状況に相違ないものと認める。」、「2 上記併せて支援を求める者について、申出者を保護するため支援の必要性があるものと認める。」、「3 1、2以外の場合に、相談機関等において、特に把握している状況(※一時保護の有無、相談時期等)がある場合把握している状況」の選択肢のいずれにも、選択を示す印は行っていない(令和2年12月24日付け「住民基本台帳事務における支援措置申出書(新規)」)。
(5)上記(4)のような意見付与がなされた支援措置申出書を受け取った処分庁は、意見付与機関であるC´の担当者に口頭で1~3のうち、1及び2である旨の確認を行い、支援の必要性を判断した(処分庁陳述)。
(6)令和3年5月6日、元配偶者より処分庁あて支援措置の変更申出がなされ、「支援措置を求めるもの」に、戸籍の附票の写しの交付が追加された(令和3年5月6日付け「住民基本台帳事務における支援措置申出書(変更)」)。
(7)令和3年7月6日、審査請求人は、処分庁に対し、請求対象者を子、使用目的を「確認のため」と記載して、本件申請を行った(令和3年7月6日付け「住民票の写し・印鑑登録証明書・戸籍の附票の写し等請求書」)。
2 論点に対する判断
(1)論点1について
ア 法務省要領について
 住民票等の交付事務に関しては、法に則り自治事務として行われているところであり、法務省要領が直接的に大阪市の行う住民基本台帳事務の裁量基準となるわけではない。しかし、「国は、市町村に対し、住基法〔住民基本台帳法のこと。〕の目的を達成するため、同法の規定により市町村が処理する事務について、必要な指導を行うものとするとされている(同法第31条第1項)ところ、支援措置の運用に関しては、国により事務処理要領が定められているのであるから、各市町村長は、その定めが明らかに法令の解釈を誤っているなど特段の事情がない限り、これにより事務処理を行うことが法律上求められているといえる」(大阪高裁平成29年(行コ)第158号同30年1月26日判決・判時2375・2376号182頁、〔〕内審査会補足)と判示されており、加えて、処分庁の弁明書や審査庁の諮問資料等によれば、大阪市としても、法務省要領に従って運用することとしていることから、まず、当該法務省要領が合理的か否かが問題となる。
 本件において法務省要領が問題となるのは、第5‐10のア、イ、及びコの部分であり、これらは一体として、住民票の写し等を交付するかどうかの判断基準としての性質を有していると考えられる。これに関し、本件処分の適用法条たる法第20条第5項が準用する第12条第6項は、「市町村長は、第1項の規定による請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」と規定しているところ、法務省要領では、DV等の加害者とされる者から請求があったとしても、「不当な目的があるものとして請求を拒否し、又は法第12条の3第1項各号、第15条の4第3項各号、第20条第3項各号若しくは第21条の3第3項各号に掲げる者に該当しないとして申出を拒否する。」(第5‐10‐コ‐(イ)‐(A)、傍点審査会)とされている。
 この点、法第12条第1項は、請求対象者の直系尊属に住民票の写し等の交付を請求する権利を認めているところであるが、当該権利も無制限に認められるものではなく、請求対象者の保護法益を理由に一定の制限がなされることはやむを得ないところである。
 そして、法務省要領は、「配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるもの」(第5‐10‐ア‐(ア)‐A)等、住所等が知られると支援措置申出者に身体等への危険が生じる場合に限って、受付市町村長が支援の必要性を確認の上支援措置を行うこととしており、無限定に制限を行うものではなく、住民票等の「請求又は申出に特別の必要があると認められる場合には、交付する必要がある機関等から交付請求を受ける、加害者の了解を得て交付する必要がある機関等に市町村長が交付する、又は支援対象者から交付請求を受けるなどの方法により、加害者に交付せず目的を達成することが望ましい。」(第5‐10‐コ‐(イ)‐(A))として、代替措置を設けることにより、住民票等を必要とする請求者の目的を達成する方途を残している。
 よって、法務省要領の上記部分は、住民に関する記録の適正な管理を図り、住民のプライバシー保護に配慮するという法の目的に合致するとともに、国及び地方公共団体は、配偶者暴力防止法に基づきDV被害者の適切な保護を図る責務を果たす(同法第2条、第9条)という観点からも合理的なものと言える(大阪高裁平成29年(行コ)第158号同30年1月26日判決・判時2375・2376号182頁参照)。
イ 市要領について
 市要領の法的な位置付けについては、処分庁や審査庁から明確な主張がなされているわけではないが、本要領が公表されており、処分庁は本要領に従い事務を行っていることが窺われることから、いわゆる「審査基準」と考えられる。そこで、当該要領の合理性について検討する(なお、法第32条が行政手続法(平成5年法律第88号)第2章及び第3章の規定を適用除外としているため、審査基準の制定・公表義務はなく、本件処分の審査基準がいかなるものか対外的に明らかにされているものではない。)。
 市要領では、「加害者からの請求がなされた場合」の対応として、「A 住民票の写し等の交付申出には、法第12条の3第1項の各号に掲げる者(法第20条3(ママ)の附票の写しの交付申出について同じ)に該当しないものとして、法第12条第6項(これを準用する法第20条1項に係る附票の写しの交付請求についても同じ)に基づき、不当な目的によるものとして拒否をする。B ただし、請求(申出)に特別の必要があると認められる場合には、交付する必要がある機関等からの直接請求を受ける、加害者の了解を得て交付する必要がある機関等に直接交付することとする。C 加害者等から訴訟手続きで被害者の住民票の写し等交付請求があった場合は、裁判所において手続の教示を受けられることを説明した上で、具体的な手続については裁判所に相談するよう案内する。裁判所から、訴訟の被告に関する民事訴訟法第151条若しくは第186条又は家事事件手続法第62条に基く、被告の住所に関する調査嘱託があればこれに回答する。」(第7章‐8‐(7)‐②‐ア)とされている。
 これについて、加害者とされる者から請求があれば、B又はCの対応を取りつつ、Aのとおり拒否するということであるから、法務省要領と矛盾するところはなく、合理的なものと言える。
ウ 結論
 以上、処分庁が基準とした法務省要領及び市要領の該当部分は、いずれも合理的なものである。
(2)論点2について
 市マニュアルによれば、「〔支援措置の〕申出を受けた区は、申出書に記載された内容について、住民基本台帳事務における『支援の必要性の有無』について確認を行うこととする。支援の確認については、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所等又は区役所保健福祉センター(以下「警察等」という。)の意見若しくは裁判所が発行した保護命令・禁止命令にかかる決定の謄本により行うこととする。この場合は、決定の謄本を複写することとし、申請書とともに保管する。意見については、以下により相談を受けている所轄の警察署、配偶者暴力相談支援センター、保健福祉センター、児童相談所等へ確認することとする。」(3‐(2)、〔〕内審査会補足)とされている。
 つまり、支援措置の実施決定にあたっては、処分庁が直接判断するのではなく、DV等について一定の知見を有する第三者の意見や裁判所の決定を踏まえて判断する仕組みになっている。この点、当該仕組みは、客観性を担保する観点から適切な手続であると言え、不合理なものではない。
 次に、裁判所が発行した保護命令・禁止命令にかかる決定の謄本(これらについては、被申立人の主張も聞いた上でなされるものであり、真正性さえ確認できれば、処分庁が判断の根拠とするのにそれのみで十分なものである。)による場合以外の警察等の意見付与機関の意見の確認方法が問題となるが、上記市マニュアルによれば、
・被害者について、警察等から事前に連絡がなされている場合は、申出者が持参している申出書の「警察等の意見欄」で確認する。
・事前に連絡はないが、申出書に警察等の意見が付されている場合は、当該意見が間違いでないか意見を付している機関に確認する。
・申出者が「相談先欄」に警察等の連絡先を記入している場合は、当該相談先に電話確認のうえ、申出書を送付し、書面により意見を聴取する。
・早急に被害者支援を行う必要がある場合は、当該相談先に電話等により意見を聴取し確認する。
とされている。
 これについては、さらに、処分庁として、意見付与機関へどういった確認をすべきかが問題となる。
 この点、法は、請求対象者の親族に戸籍の附票の写しの請求を権利として認めている(法第20条第1項)一方で、「市町村長は、第1項の規定による請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。」(法第12条第6項)として一定の制限を規定し、法務省要領において「不当な目的があるもの」として申出を拒否する場合を定めている(法務省要領第5‐10‐ア‐(ア))。
 支援措置制度は、支援措置申出者の申出により「加害者」とされた者への意見を聴取することなく支援措置申出の可否が判断される制度であり、加害者と扱われる者に一定の不利益を与えるものである。
 そうであるとすれば、処分庁は、支援措置申出者について 、配偶者からの暴力が、配偶者暴力防止法第1条第1項に規定する配偶者からの暴力(身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動)に該当するか、配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者(同条第1項にいう配偶者からの暴力を受けた者)に該当するかという点について、意見付与機関に対し聴取し、支援の必要性の判断をすべきであると言える。
 そして、DV等について一定の知見を有する第三者の意見を踏まえるとしても、実際に請求があった際の戸籍の附票の写しの交付等の判断は処分庁の権限かつ責任でなされるものであることを考慮すると、処分庁が行うべき確認は、意見付与機関に対し、付された意見が間違いでないかのみを確認するような形式的な確認では足りず、意見付与機関が意見付与にあたり、支援措置申出者から聴取したDV等に関する事実関係を確認するなど、処分庁が意見付与機関に対して判断するに足りる根拠の提示を求め、これを確認することが必要であると考えられる。
 この点、国家賠償請求事件の裁判例においても、支援措置の適法性については、①被害者要件と②危険性要件に分けて要件充足性の判断を行っていることが認められる(名古屋高裁平成30年(ネ)第453号同31年1月31日判決・判時2413・2414号41頁、その下級審判決である名古屋地裁平成28年(ワ)第3409号同30年4月25日判決・判時2413・2414号55頁参照)。
 よって、少なくとも処分庁が上記意見付与機関に確認するに際しては、①被害者要件に該当する事実、②危険性要件に該当する事実を確認する必要がある。
 そして、仮に警察等の意見付与機関が①被害者要件、②危険性要件を判断するに足りる十分な事実関係を把握していないことが判明した場合には、処分庁は、意見付与機関に対し、処分庁が判断するのに足りるだけの根拠を提示するよう求めるべきである(なお、意見付与機関に対する付言について、下記第9、2参照)。
 そこで、本件において、支援措置決定者である処分庁が、意見付与機関に対してどのような確認を行ったかについて、審査会の職権により、処分庁陳述において調査したところ、「『相談機関等の意見』欄については、1および2に該当する旨、相談機関であるC´´に口頭で確認し、支援の必要性を判断した。」とのことであった。
 しかし、このような当該意見が間違いでないかのみを確認するような形式的な確認では、処分庁は、支援措置申出者が過去どのようなDV等の被害を受け、また、申出時点においてどのような危険性があるのかについて、判断を行うに足りる十分な情報を把握できたとは考えられない。
 よって、支援措置実施の可否に係る処分庁の行政調査は、不十分なものであったと言える。
(3)小括
 そうであれば、処分庁の元配偶者及び子に対して支援措置を行うべきとの意思決定は、要件判断をするに足りるだけの十分な情報に基づき行われたとは言えず、法の趣旨に反する違法なものである。
 そして、そのような不十分な情報をもとに行われた支援措置実施決定を理由として行われた本件処分は、法第20条第5項が準用する第12条第6項の「不当な目的によることが明らか」との要件を満たさず、取消事由たる瑕疵ある処分と言える。

第8 まとめ
 以上の点から、その余の点について検討するまでもなく、本件処分は取り消されるべきである。
 よって、結論記載のとおり答申する。

第9 付言
1 付言1について
 法務省要領では、加害者が判明しており、加害者から請求又は申出がなされた場合として、「不当な目的があるものとして請求を拒否し、又は法第12条の3第1項各号、第15条の4第3項各号、第20条第3項各号若しくは第21条の3第3項各号に掲げる者に該当しないとして申出を拒否する。ただし、(ア)‐A‐(C)に準じて請求事由又は利用目的をより厳格に審査した結果、請求又は申出に特別の必要があると認められる場合には、交付する必要がある機関等から交付請求を受ける、加害者の了解を得て交付する必要がある機関等に市町村長が交付する、又は支援対象者から交付請求を受けるなどの方法により、加害者に交付せず目的を達成することが望ましい。」とされている。
 ここで、法務省要領が、代替措置(上記「ただし」以下のような対応)を行うことが望ましいとする趣旨は、支援対象者を保護するとともに、一定の者が住民票の写し等を請求することについて、権利として認めていることにも配慮したものと考えられる(上記第7、2参照)。
 そうであれば、本件のように、住民票等交付請求書の「使用目的」欄が、「確認のため」とのみの記載であれば、記載のみからは代替措置により目的を達成できるかどうかが不明なため、請求者にその目的をより詳細に記載するよう求めるべきであると言える。
 この点、本件において、審査請求人の交付請求時に、処分庁がより詳細な確認を行ったか否かについて、審査会の職権により、処分庁陳述において調査を行ったところ、「〔戸籍の附票の写しの〕使用目的について口頭で確認を行った。その際、請求者からは『子どもの住所を確認したい』旨の回答のみであった。」(〔〕内審査会補足)とのことであった。
 また、審査請求人に対しても、口頭意見陳述において、「窓口の担当者から、この使用目的のところ、それから提出先について詳しく書いてくださいということは言われなかった」か確認を行ったところ、「言われてない。」とのことであった。
 よって、詳細な確認が行われたか否かについては、上記以外に物証等もなく、真偽不明である。
 一方、法は第32条において、行政手続法第2章を適用除外としており、行政手続法第7条は適用されないが、同条では形式上の要件に適合しない申請については、補正を求めるか拒否することとされており、本件における処分庁による口頭の確認が補正命令と言えるかどうかはともかく、速やかに拒否処分がなされており、行政手続的観点からは違法又は不当とまでは言えない(なお、仮に、申請書の記載が不十分な場合は、形式的な不備を理由に拒否処分を行うべきである。)。
 しかしながら、法務省要領の趣旨を踏まえると、請求対象者が支援対象者である場合、「使用目的」欄は重要な項目であることから、今後請求書の記載が不十分であった場合には、補正を求める等適切な対応が望まれる。
2 付言2について
 仮に本件答申の第1記載のとおり裁決がなされるなら、本件処分は取り消され、処分庁は、再度、本件申請について交付あるいは不交付の決定を行うことになる。
 そして、ここからは若干先取りになるところであるが、審査会において、審査庁を通じて、職権で、本件の意見付与機関であるCが意見付与の前提とした聴取記録を入手し、それを確認したところ、上記第7,2、(2)で述べたような支援措置の適否を判断するに足りるだけの情報は認められないものであった(少なくとも、②危険性要件を判断するに足りるだけの事情は記載されていなかった。)。
 そうであれば、意見付与機関(あるいは処分庁)において、再度、支援措置申出者に①被害者要件、②危険性要件を判断するに足りるだけの確認を行う必要が生じるところである。
 そこで、以下、今後の支援措置決定事務の改善のため、意見付与機関に対しても付言を付すこととする。
 意見付与機関は、支援の必要性について独立した立場で判断することになるが、支援措置は、①被害者要件と②危険性要件に分けて検討を行い、両要件を充足する場合に適法となると考えられる(また、処分庁はその観点から意見付与機関に事実等の確認を行うことになる。)。
 そうすると、意見付与機関としても、要件ごとに分けて、どういった事実から①被害者要件を満たす/満たさないのか、どういった事情から②危険性要件を満たす/満たさないのかを検討し、それぞれについて、支援措置申出者から聴取したどういった事実/事情から、要件充足を判断したのかがわかる文書を作成・保存することが望まれる。

大阪市行政不服審査会総務第2部会
委員(部会長) 榊原和穂
委員 畠田健治
委員 海道俊明

答申書(令和4年度答申第7号)

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