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令和4年12月27日付け裁決(答申第10号)

2023年2月17日

ページ番号:590810

裁決書

審査請求人地位承継人 ○○ ○○
審査請求人地位承継人 ○○ ○○
処分庁 大阪市長        

 審査請求人(○○ ○○)が令和2年11月6日に提起した処分庁による「成年後見制度に係る大阪市長による審判の請求等に関する要綱第6条に基づく大阪市成年後見制度後見人等報酬助成決定処分」に係る審査請求について、次のとおり裁決する。

主文
 本件審査請求を棄却する。

事案の概要
1 審査請求人は、平成○年○月○日にA病院へ入院し、その後、同年○月○日にB病院へ転院した。
2 審査請求人は、審査請求人代理人が手続代理人として行った令和○年○月○日付けの審査請求人の後見開始の審判申立てにより、令和○年○月○日、大阪家庭裁判所から本件審査請求人代理人を成年後見人(以下「後見人」という。)に選任する旨の後見開始の審判を受け、同年○月○日、この審判が確定した。
3 審査請求人は、胃ろう手術を行うために令和○年○月にC病院へ転院した。
4 審査請求人は、令和○年○月○日、退院と同時に、現住居のグループホームに入居した。審査請求人は令和○年○月○日から生活保護を受給し、本件審査請求時においてもこれを受給している。
5 審査請求人代理人は、令和○年○月○日、大阪家庭裁判所に対し、審査請求人代理人が審査請求人の後見人に就職した日から令和○年○月○日までの期間(以下「本件後見期間」という。)に係る後見報酬の付与を求める審判を申立て、これに対し同裁判所は同年○月○日審査請求人代理人に対し審査請求人の財産の中から金○○円を報酬(以下「本件報酬」という。)として付与する旨の審判(以下「本件報酬付与の審判」という。)を行った。
6 審査請求人代理人は、審査請求人については報酬の捻出が困難な者であるとして、令和○年○月○日、大阪市長(以下「処分庁」という。)に対し、「成年後見制度に係る大阪市長による審判の請求等に関する要綱」(以下「要綱」という。)第6条第2項に基づき、本件報酬額に相当する金○○円の助成を申請した(以下「本件申請」という。)。
 処分庁は、同月○日及び○日に、審査請求人代理人に審査請求人の入院期間の確認を行い、審査請求人代理人が後見人として就職した時から令和○年○月○日まで審査請求人は入院しており、退院と同時に、グループホームに入居した旨を確認した。
7 処分庁は、本件申請について、要綱第6条第2項に基づき、審査請求人代理人が後見人として就職した令和○年○月から令和○年○月までの期間の報酬助成額について要綱第6条第3項第1号に規定する施設入所者の区分の上限額により、令和○年○月から同年○月までの期間の報酬助成額について要綱第6条第3項第2号に規定する在宅生活者の区分の上限額により算定し、助成金額を○○円と決定する処分(以下「本件処分」という。)を行い、審査請求人に対して同年○月○日付けで通知した。
8 審査請求人は、令和○年○月○日、大阪市長(以下「審査庁」という。)に対し、本件処分を取消し、本件報酬付与の審判の報酬決定記載の報酬を助成するとの裁決を求める審査請求をした。

審理関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張
 審査請求人の後見申立ては、審査請求人が退院し、在宅生活をするために行ったものであり、本件報酬付与の審判も、退院に伴う手続等の後見業務を行った経過を踏まえてなされたものであるから、処分庁の報酬助成もこの経過を考慮し、決定すべきである。
 それにもかかわらず、令和○年○月○日まで、審査請求人が病院に入院していたことから、審査請求人を要綱第6条第3項にいう「施設入所者」と決めつけた上、経過の考慮のために追加資料を求めることなく本件処分を行ったことは違法であり、その取消し及び令和○年○月から令和○年○月の4か月間については、要綱第6条第3項第2号に規定する「在宅生活者」の区分にあたるとして月額28,000円(8か月の対象期間全体で総額224,000円)による助成をするとの裁決を求める。
2 処分庁の主張
 本件処分は、要綱及び要綱に基づく審判の請求等に係る事務について必要な事項を定めた「成年後見制度に係る大阪市長による審判の請求等に関する事務取扱要領」(以下「要領」という。)に基づき行われたものである。
 具体的には、審査請求人代理人が処分庁あて提出した要領第9号様式「大阪市成年後見制度後見人等報酬助成申請書」(以下「第9号様式」という。)に添付された書類及び審査請求人代理人に対象期間中の審査請求人の居場所の確認を行い、要綱の規定に沿って、対象期間のうち、令和○年○月○日までの病院への入院期間中は、施設入所者の区分の上限額を、グループホーム入居以後は在宅生活者の区分の上限額を適用して、本件処分を行ったものである。
 入院中の審査請求人を施設入所者として取り扱った点については、第9号様式において、施設入所者の居住形態の一類型として入院が位置づけられており、第9号様式の内容については、審査請求人代理人も申請の際に当然確認していることから、審査請求人の入院期間中は施設入所者の区分が適用されるとの認識があったと考えるのが自然である。
 また、審査請求人代理人は、施設入所者と在宅生活者の区分の基準として、要綱第6条第4項には「家庭裁判所により報酬付与の対象とされた期間の各月の初日の状態による」と定められているのみで、将来的な居場所の見通しや後見業務の目標を考慮すべきと主張しているが、かかる解釈は、審査請求人代理人独自の見解であり、同意することはできない。
 以上より、本件処分は、要綱及び要領に基づき適切に行われたものであり、何ら違法又は不当な点は認められないことから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。

理由
1 本件に係る法令等の規定について
(1) 介護保険法(平成9年法律第123号)(以下「法」という。)第115条の45第3項第3号において、市町村は、「その他介護保険事業の運営の安定化及び被保険者(当該市町村の区域内に所在する住所地特例対象施設に入所等をしている住所地特例適用被保険者を含む。)の地域における自立した日常生活の支援のため必要な事業」を行うことができるとされている。
 これは、いわゆる任意事業である地域支援事業を定めたものであり、当該規定を根拠として市町村が要綱等を定める等により、財政状況等に応じて任意で、同事業を実施するものである。
(2) 要綱第6条第1項及び第2項において、第3条の規定による市長審判請求を行った場合又は市長以外の者(他の市区町村長を除く。)が本人に係る審判請求を行った場合において、真に報酬の捻出が困難な者に対して、後見人等の報酬の支払いに要する費用の一部又は全部を助成することができると規定している。
(3) 要綱第6条第3項において、報酬助成の額は、民法第862条(第876条の5第2項〔保佐人の場合〕及び第876条の10第1項〔補助人の場合〕において準用される場合を含む。)の規定により家庭裁判所が定める報酬の額の範囲内であって、かつ、次に掲げる区分に定める額を上限として、市長が認める額とするとし、同項第1号で施設入所者の報酬助成額の上限を月額18,000円、同項第2号において、在宅生活者の報酬助成額の上限を月額28,000円と規定している。
(4) 要綱第6条第3項に掲げる施設入所者と在宅生活者の区分については、同条第4項において、家庭裁判所により報酬付与の対象とされた期間(以下「対象期間」という。)の各月の初日の状態によるものと規定している。
(5) 要領第11条において、報酬助成の方法を定めており、第1項第1号において報酬助成を受けようとする者は、第9号様式に必要な資料を添付の上、市長に申請することと規定し、第9号様式の処分庁記入欄の「対象期間の居住形態」欄において「施設等」に分類されるものとして「入院」、「特養」、「有老」、「その他」が列挙されている。
(6) 厚生労働省が発出している「地域支援事業の実施について」(平成18年6月9日付老発0609001号厚生労働省老健局長通知)において定める「地域支援事業実施要綱」(以下「国要綱」という。)では、法第115条の45第3項第3号に規定する事業の対象として「成年後見制度利用支援事業」を掲げ、「市町村申立て等に係る低所得の高齢者に係る成年後見制度の申立てに要する経費や成年後見人等の報酬の助成等を行う。なお、本事業は、市町村申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等についてもその対象となりうるものであることに留意されたい。」としている(国要綱別記4任意事業の3事業内容(3)ア)。
(7) 地方自治法第232条の2は、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」とし、当該規定においては補助の要件及び効果を具体的に定めていないことから、助成金を交付するかについては、地方公共団体の長が、当該地方公共団体における経済的、社会的、文化的な諸要素や各種の行政施策の在り方等の諸事情を総合的に考慮した上で、住民の福祉の増進に寄与するという見地から判断すべきものであり、地方公共団体の長に広く裁量権が認められているものと解することができる。
 一方で、同規定が公益上必要であることを要件としたのは、恣意的な助成金の交付によって、地方公共団体の財政秩序を乱すことを防止することにあると解することができるため、当該地方公共団体の長による公益上必要であるかに関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったか否かは、当該助成金の交付の目的、助成の対象となる事業の目的や性質等の諸般の事情を総合的に考慮して判断されるものであり、その判断が著しく不合理であったといえる場合には、裁量権の逸脱又は濫用があったといえると解する。
2 本件処分について
(1) 本件処分に違法又は不当な点があるかについては、本件処分において、本件後見期間の内、令和○年○月から令和○年○月の4か月間について、審査請求人は病院に入院していたとして、要綱第6条第3項第2号に規定する「施設入所者」の区分にあたると認定し、報酬助成額として月額18,000円と判断したことが不合理であるか否か、である。
 要綱は、法の規定を受け成年後見制度利用支援事業の一環として処分庁が後見人等報酬助成を実施するために定めたものである。
 要綱第6条第1項及び第2項において、後見人等の報酬の支払いに要する費用の一部又は全部を助成することができるとし、要綱第6条第3項において、報酬助成の額は、民法第862条の規定により家庭裁判所が定める報酬の額の範囲内であって、同項第1号で施設入所者の報酬助成額の上限を月額18,000円、同項第2号で在宅生活者の報酬助成額の上限を月額28,000円として市長が認める額とし、当該区分については、同条第4項において、対象期間の各月の初日の状態によるものとしていることについては、助成の対象や要件及び効果について具体性のある規定となっていること、地域支援事業を実施するにあたり当該地域における利用者間に格差を生じさせないよう配慮しつつ公益上の見地から助成を実施するために平準的かつ客観的な要件とすべきなかで、処分庁は厚生労働省が発出している「老人福祉法第32条に基づく市町村長による法定後見の開始の審判等の請求及び「成年後見制度利用支援事業」に関するQ&Aについて」(平成12年7月3日付厚生労働省老健局計画課長名事務連絡)のQ6の回答にある参考単価を参考に、上限額の基準を定めたものであることに鑑みると、処分庁が定めた要綱は法の趣旨からみても相当なものであり、著しく不合理なものとはいえない。
(2) また、要綱第6条第1項、第2項及び第3項第1号及び同項第2号の規定については、処分庁による助成は必ずしも家庭裁判所の決定した報酬額の全額が助成される性質のものではなく、家庭裁判所が決定した報酬額の範囲で、後見人について「在宅生活者」又は「施設入所者」の区分に応じた上限額を超えない額で助成額が決定されるものであることが客観的に認識できる規定になっているといえる。
 そして、被後見人が要綱第6条第3項の「在宅生活者」又は「施設入所者」のどちらにあたるかの認定について、申請に係る処分を公平に処理する必要に鑑み、処分庁は申請における被後見人の居場所に関する外形的な事実に基づいて居住形態を認定せざるを得ず、そうであれば、外形的に医療機関に入院している状態にある被後見人の居住形態について、要領上、「施設入所者」の区分に該当する者であると認定する運用となっていることが、不合理とまではいえない。
(3) そこで、令和○年○月から令和○年○月の4か月間における審査請求人の客観的な状況について検討すると、まず審査請求書添付の後見開始申立書並びに報酬付与申立事情説明書及びその添付書類から、令和○年○月から令和○年○月の4か月において審査請求人は医療行為を受けることを目的に病院に入院している状態にあったということが認められる。
 この点、審査請求人は、処分庁に対して、令和○年○月から令和○年○月の4か月において審査請求人は医療行為を受けることを目的に病院に入院している状態にあったことを証する客観的な資料の提出は行っていないが、処分庁が令和○年○月○日及び同月○日に審査請求人代理人に対して入院期間を電話で確認したことに対し、審査請求人代理人は同代理人が後見人に就職した時から令和○年○月○日まで入院していた旨を回答していることは弁明書及び審査請求書、反論書の記載からも明らかであり、当該入院期間については審査請求人においても異論は述べていないところである。
 いずれにしても、令和○年○月から令和○年○月の4か月において審査請求人は病院に入院している状態にあったということが認められ、当該事実に基づき、処分庁が、被後見人の居住形態を「施設入所者」の区分に該当する者であると認定したことについて不合理な点はないというべきである。
(4) よって、処分庁が令和○年○月から令和○年○月の4か月について、審査請求人は病院に入院していたとして、要綱第6条第3項第2号に規定する「施設入所者」の区分にあたると認定し、報酬助成額として月額18,000円とした判断に違法又は不当な点は認められない。
(5) なお、上記の争点以外についても審査請求人代理人は、本件処分について憲法第31条の観点から違法不当であるとする点、さらに理由付記の規定に反することから違法不当であるとする点をそれぞれ主張するが、それらの主張の趣旨は上記争点における審査請求人の主張に収斂されるものであるから、本件処分について処分庁の判断に違法又は不当な点は認められないとする結論に影響を与えるものではない。
3 上記以外の違法性又は不当性についての検討
 本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。
4 結論
 以上のとおり、本件審査請求は理由がないことから、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第45条第2項の規定により、主文のとおり裁決する。

令和4年12月27日
審査庁 大阪市長  松井 一郎 

裁決書(令和3年度答申第10号)

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