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答申書(令和4年度答申第9号)

2023年2月17日

ページ番号:593239

諮問庁:大阪市長
諮問日:令和4年11月28日
諮問番号:令和4年度諮問第7号

答申書

事件番号:令和4年度第2号
答申日:令和5年1月31日
答申番号:令和4年度答申第9号

大阪市長 松井一郎様

大阪市行政不服審査会
会長 榊原和穂 

 地方税法(昭和25年法律第226号)第24条第1項第1号及び第294条第1項第1号に基づく令和4年度個人市民税及び府民税賦課決定処分に係る令和4年8月12日付け審査請求についての上記審査庁の規定に基づく諮問に対し、次のとおり答申する。

第1 結論
 本件審査請求は棄却されるべきであるとの諮問に係る審査庁の判断は、妥当である。

第2 事案の概要等
 本件は、処分庁大阪市長(以下「処分庁」という。)が審査請求人に対して、令和4年5月20日付けで行った地方税法(以下「法」という。)第24条第1項第1号及び第294条第1項第1号の規定による令和4年度個人市民税及び府民税賦課決定処分(以下「本件処分」という。)に対し、審査請求人が、法第313条第13項に規定される特定配当等に係る所得(以下「特定配当等所得」という。)を含めた計算を行うことが相当である等と主張して、本件処分の一部取消しを求める事案である。

第3 事実関係
1 関係法令等の定め(本件処分に係る根拠法令等)
(1) 道府県民税及び市町村民税は、市町村内に住所を有する個人に対しては均等割額及び所得割額の合算額によって課すると定められている(法第24条第1項第1号及び第294条第1項第1号)。
(2) 道府県民税及び市町村民税の申告について
ア 市町村内に住所を有する個人(給与所得以外の所得又は公的年金等に係る所得以外の所得を有しなかった者で一定の要件に該当する者を除く)は、3月15日までに総務省令の定めるところにより、前年の総所得金額や控除額等を記載した申告書(以下「住民税申告書」という。)を賦課期日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならないことと定められている(法第45条の2第1項及び第317条の2第1項)。
イ 住民税申告書を提出する義務のある者が、前年分の所得税について、所得税法第2条第1項第37号の確定申告書を提出した場合には、当該確定申告書が提出された日に住民税申告書が提出されたものとみなし(法第45条の3第1項及び法317条の3第1項)、当該確定申告書に記載された事項のうち住民税の申告事項に相当するもの及び附記された事項(法第45条の3第3項及び第317条の3第3項の規定により附記されたもの、下記(9)参照)は、住民税申告書に記載されたものとみなすことと定められている(法第45条の3第2項及び法317条の3第2項)。ただし、当該確定申告書が提出された日前に住民税申告書が提出された場合は、この限りではないとされている(法第45条の3第1項及び法317条の3第1項)。
ウ 1月1日現在において給与の支払をする者で、当該給与の支払いをする際所得税法第183条の規定によって所得税を徴収する義務がある者は、同月31日までに、総務省令の定めるところによって、当該給与の支払いを受けている者についてその者に係る前年中の給与所得の金額その他必要な事項を当該給与の支払いを受けている者の1月1日現在における住所所在の市長村別に作成された給与支払報告書に記載し、これを当該市町村の長に提出しなければならないと定められている(法第317条の6第1項)。
(3) 特定配当等とは、租税特別措置法(以下「措法」という。)第8条の4第1項に規定する上場株式等の配当等をいうと定められている(法第23条第15号)。
(4) 特定株式等譲渡所得金額とは、措法第37条の11の4第2項に規定する源泉徴収選択口座内調整所得金額をいうと定められている(法第23条第17号)。
(5) 所得割の課税標準
ア 個人の道府県民税及び市町村民税の所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とされ(法第32条第1項、第313条第1項)、これらの総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額は、原則として所得税法における計算の例によって算定するものと定められている(法第32条第2項、第313条第2項)。
イ 特定配当等所得について
(ア) 特定配当等所得を有する者に係る総所得金額は、当該特定配当等所得の金額を除外して算定するものとすると定められている(法第32条第12項及び第313条第12項。本規定の適用を受ける場合を以下「申告不要」という。)。
(イ) 上記(ア)の規定は、特定配当等所得が生じた年の翌年の4月1日の属する年度分の特定配当等申告書(道府県民税及び市町村民税の納税通知書が送達される時までに提出された次に掲げる申告書をいう。以下同じ。)に特定配当等所得の明細に係る事項等の記載があるとき(特定配当等申告書にその記載がないことについてやむを得ない理由があると市町村長が認めるときを含む。)は、当該特定配当等所得の金額については、適用しないものと定められている(法第32条第13項及び第313条第13項本文。本規定の適用を受ける場合を以下「総合課税」という。)。そして、上記の適用にあたっては、次のA及びBに掲げる申告書がいずれも提出された場合には、これらの申告書に記載された事項その他の事情を勘案して決定することとされている(法第32条第13項及び第313条第13項ただし書)。
A 第45条の2第1項及び法第317条の2第1項の規定による住民税申告書
B  法第45条の3第1項及び法第317条の3第1項に規定する確定申告書(同条同項の規定により住民税申告書が提出されたものとみなされる場合における当該確定申告書に限る。以下「確定申告書」という。)
ウ 特定株式等譲渡所得について
(ア) 特定株式等譲渡所得金額に係る所得(以下「特定株式等譲渡所得」という。)を有する者に係る総所得金額は、当該特定株式等譲渡所得金額に係る所得の金額を除外して算定するものとすると定められている(法第32条第14項及び第313条第14項。本規定の適用を受ける場合を以下「申告不要」という。)。
(イ) 上記(ア)の規定は、特定株式等譲渡所得金額が生じた年の翌年の4月1日の属する年度分の特定株式等譲渡所得金額申告書(道府県民税及び市町村民税の納税通知書が送達される時までに提出された住民税申告書又は確定申告書をいう。以下同じ。)に特定株式等譲渡所得の明細に関する事項等の記載があるとき(特定株式等譲渡所得金額申告書にその記載がないことについてやむを得ない理由があると市町村長が認めるときを含む。)は、当該特定株式等譲渡所得の金額については、適用しないものと定められている(法第32条第15項及び第313条第15項本文)。そして、上記の適用にあたっては、住民税申告書又は確定申告書がいずれも提出された場合には、これらの申告書に記載された事項その他の事情を勘案して決定することと定められている(法第32条第15項及び第313条第15項ただし書)。
(6) 所得割の税率
 個人の道府県民税及び市町村民税の所得割の額は、課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額の合計額に、道府県民税にあっては100分の2の、市町村民税にあっては100分の8の標準税率によって定める率を乗じて得た金額とすると定められている(法第35条第1項及び314条の3第1項)。
(7) 上場株式等に係る配当所得等に係る課税の特例
 納税義務者が措法第8条の4第1項に規定する上場株式等の配当等を有する場合には、当該上場株式等の配当等に係る利子所得及び配当所得については、上記(5)ア及び(6)にかかわらず、他の所得と区分し、前年中の当該上場株式等の配当等に係る利子所得の金額及び配当所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額に対し、道府県民税については当該金額の100分の1、市町村民税については当該金額の100分の4に相当する金額に相当する所得割を課すると定められている(法附則第33条の2第1項及び第5項)。上記のうち、措法第8条の4第2項に規定する特定上場株式等の配当等に係る配当所得に係る部分は、道府県民税及び市町村民税について当該所得につき上記規定の適用を受けようとする旨の記載のある特定配当等申告書を提出した場合に限り適用するものとされている(法附則第33の2第2項及び第6項。本規定の適用を受ける場合を以下「申告分離課税」という。)。
(8) 上場株式等に係る譲渡所得等に係る課税の特例
 納税義務者が前年中に措法第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得等を有する場合には、当該上場株式等に係る譲渡所得等については、上記(5)ア及び(6)にかかわらず、他の所得と区分し、前年中の当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額として政令で定めるところにより計算した金額(上記(5)ウ(ア)により総所得金額から除外して算定される特定株式等譲渡所得は除く。)に対し、道府県民税については当該金額の100分の1、市町村民税については当該金額の100分の4に相当する金額に相当する所得割を課するものと定められている(法附則第35の2の2第1項及び第5項。本規定の適用を受ける場合を以下「申告分離課税」という。)。
(9) 確定申告書の附記事項について
 上記(2)イの法第45条の3第3項及び第317条の3第3項の規定により確定申告書に附記しなければならない事項として、前年の特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得の全部について法第32条第12項及び第313条第12項の規定又は法第32条第14項及び第313条第14項の規定(上記(5)イ(ア)又は上記(5)ウ(ア))の適用を受けようとする場合(前年分の所得税において申告不要の制度の適用を受けた場合を除く。)はその旨と定められている(法施行規則(「以下「規則」という。)第2条の3第2項第10号)。具体的には、確定申告書第二表の「住民税に関する事項」の欄に「全部の申告不要」の欄が設けられており、この欄に「〇」を記載して申告することで、上記附記が行われたものとされ、法第32条第13項及び15項並びに第313条第13項及び15項の住民税申告書の提出は不要となる。
2 処分の内容及び理由
(1) 処分庁は、審査請求人の給与支払者から令和4年1月26日、大阪市長に提出のあった令和4年度分給与支払報告書及び審査請求人が令和4年2月22日、税務署長あてに提出した「令和3年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書(以下「令和3年分確定申告書」という。)」の金額に基づき、令和4年5月20日付けで本件処分を行い、審査請求人に対し、令和4年度給与所得等に係る市民税・府民税特別徴収税額の決定・変更通知書(以下「税額決定通知書」という。)により、特別徴収義務者を経由して通知した。
(2) 処分庁は、本件処分にあたり、令和3年分確定申告書に記載の特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得の金額については、令和3年分確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」における「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に「〇」の記載があることから、法第32条第12項及び第313条第12項並びに法第32条第14項及び第313条第14項に基づき、総所得金額から除外して算定した。
3 審理手続の経過
令和4年8月12日、審査請求人は、行政不服審査法第2条に基づいて、本件処分に対する審査請求を行った。
令和4年9月1日、審理員が指名された。
令和4年9月28日、処分庁より弁明書が提出された。
令和4年10月7日、処分庁より審理に係る書類が提出された。
令和4年10月18日、審査請求人より反論書が提出された。
令和4年10月26日、審理員の質問に対し、処分庁より回答があった。
令和4年11月21日、審理員より審理員意見書が提出された。
令和4年12月6日、当審査会において審議を行った。
令和4年12月20日、当審査会において審議を行った。
令和5年1月13日、当審査会において審議を行った。
令和5年1月30日、当審査会において審議を行った。

第4  審理員意見書の要旨
1  審理段階における審理関係人の主張
(1) 審査請求人の主張の要旨
 審査請求人は、本件処分に関し、特定配当等所得を含めた計算を行うことが相当であるとして、その理由を次のとおり主張している。
ア 審査請求人の目的は、特定配当等所得を総合課税とし、税額が増額となることで、ふるさと納税に係る市民税及び府民税(以下「市府民税」という。)の減額対象額が増額され、令和4年度の市府民税が現決定より低額になること。
イ 次の経過が法第313条第13項の救済条文の適用に値すると考え、令和4年度の市府民税額を、特定配当等所得を含めたものに再計算することを求める。
(ア) 令和3年3月6日、処分庁に令和3年度分市民税・府民税申告書を提出し、特定配当等所得を総合課税されるよう申告した(審理員の調査によると、審査請求人は、特定配当等所得は申告分離課税を選択して申告し、特定株式等譲渡所得は対象所得がなかった)。
(イ) 処分庁に証券会社発行の特定口座年間取引報告書を提出した。
(ウ) (イ)の1週間程度後、処分庁に、「申告不要」と「所得税と異なる課税方式」の相違について確認したところ、申告者が国民健康保険の加入者でないから、どちらでも同じとの回答を得たため、「申告不要」を選択しても特定配当等所得は合算されると理解した。
(エ) 令和4年2月22日に税務署に令和3年分確定申告書を提出した。当該年度より確定申告書に「申告不要」のチェック欄が設けられたため、前年度の処分庁の回答(上記(ウ))に基づき、「申告不要」を選択した。
ウ 弁明書に対する反論について
 弁明書の「なお」書きは、審査請求人の主張が認められても税額が増額になると誤認させ、不適切であるから、令和4年度の市府民税の税額を正確に算出したうえで判断してほしい。
(2) 処分庁の主張の要旨
ア 事実の経緯
 処分庁は、審査請求人の令和4年度分給与支払報告書及び令和3年分確定申告書に基づき、令和4年5月20日付けで本件処分を行い、審査請求人あて税額決定通知書により通知した。
 本件処分では、上記確定申告書において、住民税に申告不要制度を適用する意思表示があったため、特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得の金額を除外して総所得金額を算定した(法第32条第12項及び第14項並びに法第313条第12項及び第14項)。
 令和4年6月20日に審査請求人から、特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得を総所得に合算する旨の申し出があったが、税額決定通知書の送達までに令和4年度分市民税・府民税申告書の提出がなかったため、この申し出に応じなかった(法第32条第13項及び第15項並びに法第313条第13項及び第15項)。
イ 法令上の取扱い
 特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得は、原則、申告を要しない所得として、総所得金額の算定から除外され(法第32条第12項及び14項並びに法第313条第12項及び第14項)、納税通知書が送達されるまでに、特定配当等所得の明細に関する事項その他総務省令で定める事項、特定株式等譲渡所得の明細に関する事項その他総務省令で定める事項を記載した確定申告書又は住民税申告書が提出された場合は、総所得金額に算入される(法第32条第13項及び第15項並びに法第313条第13項及び第15項)。
 また、確定申告書の提出に際して、確定申告書の附記事項とされている「特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得の全部について法第32条第12項及び第313条第12項の規定又は法第32条第14項及び第313条第14項の適用を受けようとする旨」を附記した場合(具体的には上記に記載している、確定申告書第二表の住民税・事業税に関する事項の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に「○」を記載した場合)には、特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得は総所得金額の算定から除外される。
ウ 処分の判断
 法第313条第13項の救済条文とは、同項前段の「特定配当等申告書にその記載がないことについて、やむを得ない理由があると市町村長が認めるときを含む」を指すと解するが、やむを得ない理由は客観的事実に基づき、かつその理由に合理性が求められるところ、審査請求人が主張する本市との経過は客観的事実に基づくものではないため、やむを得ない理由があるとは認められない。また、令和3年分確定申告書の「申告不要」欄に「○」が記載され、申告不要制度を適用する意思が明確であり、やむを得ない理由があると認める余地がないことから、本件処分は適正である。
 なお、仮に法第32条第13項及び第313条第13項が適用された場合、特定配当等所得は分離課税ではなく、総合課税として課税されるため(法附則第33条の2第1項及び第2項並びに第5項及び第6項)、増額の課税処分となる。
2  審理段階における論点整理
(1) 特定配当等所得について
 審査請求人は、本件処分の税額が減額となることを期待して、特定配当等所得を総所得金額に含めた計算を行うことが相当であるとして争っており、その計算方法としては、総合課税と申告分離課税があるところ、審理員の試算によると、総合課税を選択した場合の税額は、本件処分の税額と比較して13,500円の増額となり、申告分離課税を選択した場合は18,900円の減額になることから、審査請求人は、申告分離課税を選択した計算を求めていると解される。
(2) 特定株式等譲渡所得について
 審査請求人は、令和3年分確定申告書において、特定株式等譲渡所得も有しており、処分庁は、上記申告書の「申告不要」欄の「〇」の記載に基づき、申告不要が選択されたとして、総所得から除外して算定している。
 仮に、特定株式等譲渡所得も申告された場合の税額を審理員が試算したところ、特定配当等所得のみの場合より2,600円多い21,500円の減額となった。
3 審理員意見の理由
(1) 審理員が認定した事実
ア 審査請求人の給与支払者は、令和4年1月26日、審査請求人に係る令和4年度分給与支払報告書を提出した。
イ 審査請求人は、令和4年2月22日、令和3年分確定申告書を提出し、特定配当等所得は総合課税、特定株式等譲渡所得は申告分離課税を選択して申告し、当該確定申告書の第二表「住民税・事業所税に関する事項」の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に「○」を記載した。
ウ 処分庁は、令和4年5月20日付けで本件処分を行い、審査請求人あて税額決定通知書により、特別徴収義務者を経由して通知した。特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得は、総所得金額から除外して課税した。
(2) 論点に対する判断
 本件処分では、令和3年分確定申告書により、特定配当等所得が総合課税、特定株式等譲渡所得が分離課税として申告され、当該確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」における「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に「〇」の記載があり、外に申告書の提出は認めらない。
 したがって、特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得について、市府民税では、その全部について法第32条第12項及び第313条第12項の規定又は法第32条第14項及び第313条第14項の適用を受けようとする旨の附記があったと認められ、総所得金額から上記所得を除外して算定した本件処分に違法又は不当な点はない。
 審査請求人は、前年度の処分庁の回答により、「申告不要」を選択すれば、当該所得が総所得金額に合算されると理解したという事情を考慮するべきである旨主張するが、課税方式の選択は、必要事項を記載した確定申告書又は住民税申告書を提出することにより行うものとされており、市町村長は、提出された申告書の記載内容をもとに課税方式を決定することから、この審査請求人の主張は採用できない。
 また、仮に申告不要は選択されなかったとしても、納税通知書の送達までに、特定配当等所得の明細に関する事項等の記載及び申告分離課税を選択する旨を記載した住民税申告書の提出(法附則第33条の2第2項及び第6項)が認められないことから、税額の減額に必要な申告分離課税として課税することはできない。
(3) 上記(2)以外の違法性または不当性についての検討
 本件処分全体として検討したところ、他に違法又は不当な点はない。

第5  調査審議における審査関係人の主張の要旨
1 審査請求人の主張の要旨
 審査請求人は、令和3年3月、処分庁に令和3年度分市民税・府民税申告書を提出した。
 その後、処分庁より証券会社から発行された特定口座年間取引報告書の提出を求められたので、これを提出した。
 その1週間程度後、処分庁よりその受取と処理について電話があった際に、「申告不要」と「所得税と異なる課税方式」の相違について確認したところ、本件申告の場合、申告者が国民健康保険の加入者でないから、どちらでも同じとの回答を得たので、「申告不要」を選択しても、特定配当等所得は合算されると理解した。特定口座年間取引報告書を提出し、特定配当等所得の話をしているのだから、上記のとおり理解するのは自然な理解であると思慮する。
 令和4年2月、税務署に令和3年分確定申告書を提出したが、当該年度より住民税に関する申告方法が変更され、確定申告書に「申告不要」のチェック欄が設けられていたため、前年度の処分庁の回答に基づき、「申告不要」を選択しても令和3年度の市府民税と同様の計算がされるものと考え、「申告不要」を選択した。
 審査請求人の目的は、特定配当等所得が総合課税として課税され、税額が増額となることで、ふるさと納税に係る市府民税の減額対象額が増額することにあり、これによって令和4年度の市府民税は現決定より低額になると思慮しており、前記の経過が、法第313条第13項の救済条文を適用するに値すると考え、令和4年度給与所得等に係る市民税・府民税特別徴収税額を、特定配当等所得を含めたものに再計算することを求める。
2 審査庁の主張の要旨
 審査庁は、課税方式の選択は必要事項を記載した申告書の提出によって行い、市町村長は提出された申告書の記載内容をもとに課税方式を決定するところ、審査請求人は、令和3年分確定申告書で「申告不要」の欄に「〇」を記載しており、外に申告書の提出はないことから、特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得について、法第32条第12項、第14項、第313条第12項、第14項の適用を受けようとする旨の附記があったと認められるから、本件処分に違法又は不当な点はないと主張する。
 また、仮に審査請求人が申告不要を選択しなかったとしても、税額の減額をもたらすには、納税通知書の送達までに所定の事項を記載した申告書の提出により、特定配当等所得の課税方式として申告分離課税を選択する必要があるところ、その提出がなされていないことから、本件審査請求には理由がないと主張する。

第6  論点整理
 審査請求人は、令和3年に審査請求人が「申告不要」と「所得税と異なる課税方式」の相違について確認した際の処分庁の回答から、令和3年分確定申告の際に「申告不要」を選択しても、特定配当等所得も合算されると理解するのは自然であり、法第313条第13項の救済条文を適用するに値すると主張している。
 審査請求人のいう法第313条第13項の救済条文とは、「特定配当等申告書にその記載がないことについてやむを得ない理由があると市町村長が認めるとき」を指すものと解されるところ、審査請求人が主張する上記の経緯が「やむを得ない理由」に該当するといえるかについて判断する必要がある。

第7 答申の理由
1 認定した事実
(1) 審査請求人の給与支払者は、令和4年1月26日、審査請求人に係る令和4年度分給与支払報告書を提出した。
(2) 審査請求人は、令和4年2月22日、令和3年分確定申告書を提出し、当該確定申告書において、特定配当等所得について総合課税を、特定株式等譲渡所得について申告分離課税を選択して申告した。また、当該確定申告書の第二表「住民税・事業所税に関する事項」の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に「○」を記載した。
(3) 処分庁は、令和4年5月20日付けで本件処分を行い、審査請求人あて税額決定通知書により、特別徴収義務者を経由して通知した。なお、特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得については、総所得金額から除外して課税した。
2 論点に対する判断
 前提として、本件において、審査請求人は、令和3年分確定申告書により、特定配当等所得を総合課税、特定株式等譲渡所得を分離課税として申告し、また当該確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」における「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に「〇」を記載しており、外に特定配当等申告書の提出は認めらないことから、市府民税では、特定配当等所得及び特定株式等譲渡所得の全部について、法第32条第12項及び第313条第12項の規定又は法第32条第14項及び第313条第14項の適用を受けようとする旨の附記があったと認められ、総所得金額から上記所得を除外して算定した点に違法又は不当な点は認められない。
 審査請求人は、審査請求人の主張する事実経緯に基づき、法第313条第13項の「やむを得ない理由」が認められる旨主張するが、「やむを得ない理由」には、関係法令の不知や誤解を含むものではなく、客観的な理由であることが必要である。令和3年に審査請求人が「申告不要」と「所得税と異なる課税方式」の相違について確認した際の処分庁の回答から、令和3年分確定申告の際に「申告不要」を選択しても、特定配当等所得も合算されると理解したという審査請求人の主張によったとしても、当該経緯は、関係法令の不知や誤解であり、客観的な理由とは認められず、本件において、法第313条第13項の「やむを得ない理由」は認められない。
 したがって、処分庁が行った本件処分に違法又は不当な点は認められない。
 また、本件審査請求に係る審理手続について、違法又は不当な点は認められない。

第8 まとめ
 以上の点から、本件審査請求には理由がないものと認められるので、本件審査請求は棄却すべきであるとの審査庁の判断は妥当である。よって、結論記載のとおり答申する。

大阪市行政不服審査会税務第1部会
委員(部会長) 吉岡奈美
委員 平松亜矢子
委員 森本勝志

 

上記答申書に関する問合せ先
財政局税務部管理課(審査監察グループ)
電話:06-6208-8236  ファックス:06-6202-6953

答申書(令和4年度答申第9号)

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