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答申第524号

2024年3月22日

ページ番号:598067

概要

(1)公開請求の内容

 「別紙、マスコミ報道されているA容疑者が、生活保護申請した際、対応した職員全員の出勤簿」と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)がありました。

(2)実施機関(=大阪市長)の決定

 実施機関は、大阪市情報公開条例(以下「条例」という。)第10条第2項に基づき、本件請求を拒否する決定(以下「本件決定」という。)を行いました。

(3)審査請求の内容

 審査請求人は、令和4年2月13日、本件決定を不服として、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第4条第1号に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行いました。

(4)答申の結論

 本件決定は妥当である。

(5)答申のポイント

 審査会は、次の理由により、上記(4)のとおり判断しています。

ア 条例第9条の基本的な考え方
 条例第9条は、公開請求に係る公文書の存否を明らかにするだけで、第7条各号(非公開情報)の規定により保護される利益が害されることとなる場合には、例外的に当該公文書の存否を明らかにしないで公開請求を拒否することができる旨規定している。
 本条が適用されるためには、①特定の個人又は法人を名指しして、あるいは特定の事項(場所や分野)を限定して公開請求がなされているため、非公開決定(当該公文書が不存在であることを理由にする場合を含む。)を行って、その旨を請求者に通知することにより、何らかの情報が明らかになること(以下「要件1」という。)及び②当該情報が条例第7条各号のいずれかに該当すること(以下「要件2」という。)の2つの要件を備えていることが必要であると解される。

イ 本件請求に係る条例第9条該当性について
(ア) 要件1該当性について
 特定の個人を名指しした上で、同人が生活保護の申請を行った際に対応した職員に係る公文書の公開を求める請求に対しては、当該公文書の存否を答えることにより、Aによる生活保護の申請の有無という情報(以下「本件情報」という。)が明らかになることが認められる。
 したがって、本件請求は、要件1を満たすことが認められる。

(イ) 要件2該当性について
 本件情報は、上記⑴で述べた通り、Aによる生活保護の申請の有無という情報であり、当該情報は個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報であることから、本件情報が条例第7条第1号本文に該当することは明らかである。

A 条例第7条第1号ただし書ア該当性について
 条例第7条第1号ただし書アは、同号本文の例外として、本文に規定する個人情報に該当する情報であっても、法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報については、公開すべきことを定めている。
 もっとも、既に公にされている情報であっても、その中には、本来公にされるべきではないにもかかわらず、個別の事情等により公にされることとなった情報が含まれることがあると考えられ、このような情報については、これを公にすることにより個人のプライバシーを侵害するおそれがあることが考えられる。したがって、条例第7条第1号ただし書アは、公にされる根拠が法令の規定や慣行にあり、公にされることの正当性が担保されている情報に限って、非公開の対象から除外する趣旨であるものと解される(条例第7条第1号ただし書アと同趣旨の規定である行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第1号ただし書イの解釈について、同趣旨を述べた裁判例(東京地方裁判所平成22年12月22日判決、東京高等裁判所平成23年7月14日判決)がある。)。
 ここで、審査請求人が提出した資料(インターネット上の記事と思料されるもの。)によれば、本件情報に関し、大阪府警察は、報道機関による取材に対し、Aに係る生活保護の申請について「家賃収入があるなどの理由で却下された」旨を説明したことが認められ、本件情報が公にされているものと認められる。もっとも、この点については、実施機関への確認によれば、「大阪府警刑事部捜査第1課が今回の事件について報道機関向けに説明会を行」ったとのことであるから、当該事件限りの個別の取扱いとして本件情報が公にされたものであると考えられる。
 また、同様に、審査請求人が提出した資料(インターネット上の記事と思料されるもの。)によれば、大阪市長が、報道機関による取材に対し、Aに係る生活保護の申請が取下げられた旨の発言を行ったことが認められる。もっとも、この点についても、実施機関への確認によれば、大阪市長の発言は、当該取材を受けた際に、報道機関からなされた質問の前提が、同市長が認識している事実関係と異なるものであったことから、その場において、その前提の誤りを正す趣旨で当該発言に至ったとのことであり、少なくとも当該発言は、本件情報を直接的、かつ積極的に発信する意図をもってなされたものではないことが認められる。すなわち、大阪市長の発言についても、当該取材を受けた場面の限りでの対応として、本件情報を含む発言がなされた結果、意図しない形で本件情報が公にされたものであると考えられる。
 以上のことから、上記のとおり、大阪府警察や大阪市長が本件情報を公にしていることを踏まえても、その根拠は法令の規定や慣行にあるとは言えず、また、本件情報は公にされることの正当性が担保されている情報とは言えないと考えられることから、本件情報は、条例第7条第1号ただし書アには該当しない。

B 条例第7条第1号ただし書イ該当性
 条例第7条第1号ただし書イは、同号本文の例外として、同号本文に規定する個人情報に該当する情報であっても、当該情報を非公開とすることにより得られる利益よりも、当該情報を公開することにより得られる人の生命、身体、健康、生活又は財産の保護という公益が優越する場合には、当該情報を公開すべきことを定めたものである。故に、比較衡量を行うに当たっては、人の生命等を害する相当の蓋然性その他保護の必要性、緊急性等を具体的かつ慎重に検討する必要があるものと解される。
 この点、本件情報は、上述のとおり、Aによる生活保護の申請の有無という情報であるところ、本件決定時において、本件情報を公にしてまでも保護すべき公益は、特段想定されない。
 以上のことから、本件情報は、条例第7条第1号ただし書イには該当しない。

C 条例第7条第1号ただし書ウ該当性
 条例第7条第1号ただし書ウは、同号本文の例外として、同号本文に規定する個人情報に該当する情報であっても、当該情報が公務員等の職務遂行に係る情報であるときは、当該公務員等の職及び職務遂行の内容に係る部分を公開すべきことを定めたものである。
 この点、本件情報は、上述のとおり、Aによる生活保護の申請の有無という情報であるところ、本件情報は、あくまでAの個人的な生活に関わる情報であって、公務員等の職務遂行に係る情報とは解されない。
 以上のことから、本件情報は、条例第7条第1号ただし書ウには該当しない。

 よって、本件情報は、条例第7条第1号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当せず、条例第7条第1号の規定する非公開情報に該当することが認められる。
 したがって、本件請求は、要件2を満たすことが認められる。

答申第524号

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