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答申第527号

2024年3月22日

ページ番号:615249

概要

(1)公開請求の内容

 答申第527号別表(以下「別表」という。)項番1から項番4の各項の(う)欄に記載の公文書の公開請求(以下項番順に「本件請求1」、「本件請求2」、「本件請求3」、「本件請求4」という。)がありました。

(2)実施機関(=大阪市長)の決定

ア 実施機関は、本件請求1に係る公文書を別表項番1の(か)欄に記載のとおり特定(以下順に「本件対象文書1」、「本件対象文書2」という。)した上で、大阪市情報公開条例(以下「条例」という。)第10条第1項に基づき、別表項番1の(き)欄に記載の部分を公開しない理由を同(き)欄のとおり付して、部分公開決定(以下「本件決定1」という。)を行いました。

イ 実施機関は、本件請求2に係る公文書を別表項番2の(か)欄に記載のとおり特定(以下順に「本件対象文書3」、「本件対象文書4」、「本件対象文書5」という。)した上で、条例第10条第1項に基づき、別表項番2の(き)欄に記載の部分を公開しない理由を同(き)欄のとおり付して、部分公開決定(以下「本件決定2」という。)を行いました。

ウ 実施機関は、本件請求3に係る公文書を別表項番3の(か)欄に記載のとおり特定(以下順に「本件対象文書6」、「本件対象文書7」という。)した上で、条例第10条第1項に基づき、別表項番3の(き)欄に記載の部分を公開しない理由を同(き)欄のとおり付して、部分公開決定(以下「本件決定3」という。)を行いました。

エ 実施機関は、本件請求4に係る公文書を別表項番4の(か)欄に記載のとおり特定(以下「本件対象文書8」という。)した上で、条例第10条第1項に基づき、別表項番4の(き)欄に記載の部分を公開しない理由を同(き)欄のとおり付して、部分公開決定(以下「本件決定4」といい、「本件決定1」、「本件決定2」、「本件決定3」、「本件決定4」をまとめて以下「本件各決定」という。)を行いました。

(3)審査請求の内容

 本件各決定に利害関係を有する審査請求人は、別表項番1から項番4の各項の(く)欄に記載の年月日に、本件各決定を不服として、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求を行いました。

(4)答申の結論

 本件各決定は妥当である。

(5)答申のポイント

 審査会は、次の理由により、上記(4)のとおり判断しています。

ア 本件対象文書1、2、4、5、7、8の条例第7条第3号該当性について
(ア) 「実施機関の要請を受けて」について
 情報公開条例解釈・運用の手引(以下「手引」という。)によれば、「「実施機関の要請を受けて」とは、文書、口頭を問わず、実施機関から当該情報を提供してほしい旨の依頼があった場合をいう。したがって、個人又は法人等の側から、自己に有利な政策決定を求めて、自ら実施機関に情報を提供したような場合は含まれない。/また、法令等で定められた権限の行使として、実施機関が資料の提出等を求めた場合は、この要件に該当しない。」とされている。
 本件では、いずれの情報についても、法令等で定められた権限に基づくことなくなされた実施機関の求めに応じて提供された情報であることが認められ、「実施機関の要請を受けて」に該当する。

(イ) 「公にしないとの条件」について
 手引によれば、「「公にしないとの条件」とは、契約書、要綱、調査票等の書面中に「他の目的に使用しない」、「秘密を厳守する」、「公開しない」等の記載があるなど、明示のものに限る。したがって、情報提供者が形式的に又は一方的に条件を付しただけではこれに該当せず、実施機関が当該条件を了承していることが必要である。」とされている。
 この点について、仮に、実施機関が当該条件を了承していることが不要であるとすれば、「実施機関の保有する情報の一層の公開を図り」(条例第1条参照)との趣旨が情報提供者の一存で損なわれることになるので、「公にしないとの条件」の解釈において、「実施機関が当該条件を了承していることが必要である」とすることは合理的であるといえる。
 本件では、審査請求人から、「公開しない」等の記載がある契約書等は、証拠として提出されず、一方で、実施機関は、弁明書等で、当該条件を了承していない旨を一貫して述べているところであり、この点について、審査請求人からの反論はない。
 よって、審査請求人から実施機関へのこれらの情報の提供にあたって、「公にしないとの条件」が付されていたとは認められない。
 この点、審査請求人は、審査会に提出した意見書において、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。)を引用し、当該条件は明示でなくてもよい旨主張している。そして、同法第5条第2号ロは、「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」と規定しており、条例第7条第3号と文言の類似性が認められる。
 しかし、宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説』104頁(有斐閣、第8版、平成30年)によれば、「法人等が非公開の条件を一方的に付しただけでは、「公にしないとの条件で任意に提供されたもの」には該当せず、行政機関が当該条件を了承していることが必要である。」と記載されており本市手引における解釈と違いはなく、審査請求人の主張は妥当でない。

イ 本件対象文書1から8のうち審査請求人が指摘する部分等の条例第7条第2号該当性について
(ア) 「取引先企業の名称」が法人等の事業者に関する情報でその正当な利益を害するおそれがある情報に該当する否かについて
 まず、審査請求人は、本件各文書中の「取引先企業の名称」について、公にされると当該取引先が不当に奪われる可能性がある旨主張していることから、その点について検討する。
 ここで、審査請求人が主張する取引先は、本件工事の施工業者である。そして、施工業者名は、実施機関が意見書において主張するとおり、道路工事現場における標示施設等の設置基準(昭和37年8月30日付け道発第372号建設省道路局長通達)に基づき工事の現場に当該工事の内容や期間とともに、看板に表記の上掲示することとされている。よって、本件事故が発生した道路上にある喫煙所の工事においても、審査請求人の取引先名称が施工業者として看板に公示されていたと認められる。
 そうであれば、当該情報は、慣行として公にされている情報であるといえ、それを実施機関が公にすることにより審査請求人の正当な利益を害するおそれがある情報に該当しないといえる。
 なお、この点、審査請求人は意見書において、「仮に審査請求人の取引先企業の名称が工事現場の看板に記されていたとしても、一般市民がこれを目にする機会は稀であって、かかる名称が本事象と関係のある当事者として改めて公開されることによって、当該情報に基づいて「開示請求者がSNS等において不適切な言動を伴い投稿する」事態が生じ、取引先が情報公開請求の対象になることを恐れて、審査請求人との取引を中止・拒否するリスクが新たに発生することになるのである。かかる事態が審査請求人の正当な利益を害することは明らかである。」と主張する。
 しかし、工事現場における公示によって、既公開情報とあわせれば、審査請求人と施工業者との関係性を推知可能であったといえ、そうであれば、本件各決定によって当該情報を公にしたとしても、それは既知の情報を明らかにするものであり、それによって、審査請求人に不利益を生じさせるものとは認められない。
 よって、「取引先企業の名称」は、法人等の事業者に関する情報であって、公にすることによりその正当な利益を害するおそれがある情報に該当しないといえる。

(イ) 「本喫煙所での事故についての情報」が法人等の事業者に関する情報でその正当な利益を害するおそれがある情報に該当する否かについて
 次に、審査請求人は、文書中の「本喫煙所での事故についての情報」について、事故原因の把握や、今後の関係者間の協議の妨げになる可能性があり、審査請求人の正当な利益が害されるおそれがある旨主張していることから、その点について検討する。
 ここで、審査請求人が非公開とすべきと主張している情報は、事故の経緯や事故後の対応に係る情報である。
 この点、これらの情報が公になることの審査請求人への影響が不明確であるため、審査会から審査請求人に追加の意見を求めたところ、「本事象の原因の把握及び本事象の解決に向けた協議を行うにあたっては、当然ながら、本事象の内容・原因・責任の所在・責任割合等を含め、各当事者が対外的に公表することを望まない、機微に触れるやりとりも行う必要があるところ、各当事者がそのような議論を十分に行うには、各当事者から情報・やりとりの内容が外部に公表されないという信頼関係が必要となる。」といった補充の主張がなされた。
 しかし、審査請求人の主張に関しては、実施機関が意見書において、「事故原因解明のためには本件事故の関係者からの任意の協力が必要不可欠であるといえる。しかしながら、いまだ発生していない問題について、将来の発生を見越し、現時点で既に調査が終了した問題と結びつけ、将来の調査等に支障が生じるかもしれないというおそれは、具体性を欠いた抽象的なものである」と主張しているとおり、条例が原則公開としている趣旨からも認めがたいところである。
 これら情報の内容を見分したところ、内容は単に事故の事実関係が記されているにすぎず、一般的に支障となると思われる交渉の具体的内容等の協議の機微に触れる情報とは認められないので、それらは関係者間で当然の前提となるものであることから、それを公にすることによって審査請求人を含めた関係者の協議に支障があるとは認めがたい。
 また、一部今後の予定等に係る記載もあるが、それらについても、補修方法に係る一般的な報告等にとどまり、それが明らかになることによって、審査請求人にとって何か支障があるとは認めがたい。
 よって、「本喫煙所での事故についての情報」は、法人等の事業者に関する情報でその正当な利益を害するおそれがある情報に該当しないといえる。

(ウ) 「今後審査請求人が行政機関との取引を躊躇せざるを得なくなる」との主張について
 また、審査請求人は、「行政機関に対して非公開を前提に提出した情報が公開されてしまうことになると、審査請求人としては、今後行政機関との間の取引、又は行政機関が関与し得る取引を行うことを躊躇せざるを得ない。このような審査請求人の経済活動への萎縮効果が、審査請求人に対する競争上の地位やその他正当な利益は(ママ)与える悪影響は大きい。」と主張する。
 しかし、仮に審査請求人が今後そのような対応を取ったとして、実施機関の不利益にはなり得ても、審査請求人の正当な利益を害するおそれがある事情とは認められない。

() その他の公開部分について
 その他、実施機関が公開とした部分に、「法人等の事業者に関する情報でその正当な利益を害するおそれがある情報」は認められない。

ウ 実施機関が本件対象文書1から8を部分公開しようとするにあたって、条例第13条第2項に基づく手続を行うべきであったか否かについて
() 条例第13条第2項の適用について
 本件では、実施機関が、第7条第1号ただし書、第2号ただし書又は第3号ただし書を適用して公開決定を行った事実はなく、条例第13条第2項が適用される要件を満たさない。

() その他の審査請求人の主張について
 また、審査請求人は、本件において、条例第13条第2項が適用されることを前提に、「意見書提出の機会を付与する場合は、審査請求人に対して、所定の様式により、A公開請求の年月日、B公開請求に係る公文書に記録されている当該第三者に関する情報の内容、C当該第三者に関する情報が本条例7条1号から3号までの但書に規定する情報に該当すると認められる理由及びD意見書を提出する場合の提出先及び提出期限を通知しなければならない(〔令和5年3月31日規則第35号による改正前の〕大阪市情報公開条例施行規則(以下「本施行規則」という。)7条2項及び3項)。/しかしながら、実施機関は、本施行規則に定められた様式とは全く異なる様式で、本件各文書記載の情報の一部を開示する予定であることについて、審査請求人に対して「情報提供」をしたのみで、上記C及びDの通知も怠っており、審査請求人に対して、意見書を提出する機会を付与したとはいえない。/さらに、審査請求人は、本件処分に先立ち、本件各文書記載の情報の公開に反対する意思を表示した令和3年1月15日付け意見書を実施機関に提出したため、実施機関は、本件情報について公開決定をしたときは、直ちに、公開決定をした旨及びその理由並びに公開を実施する日を、審査請求人に書面により通知する義務を負うが(本条例13条3項)、実施機関は当該義務も怠っている。」(〔〕内大阪市情報公開審査会補足)と主張している。
 この点、本件各決定が、条例第13条第2項が適用される要件を満たさないことは、上記()のとおりである。しかし、条例第13条第1項に基づく意見書提出の機会の付与であっても、令和5年3月31日規則第35号による改正前の大阪市情報公開条例施行規則第7条第1項及び第3項に基づき通知事項や様式が定められるとともに、条例第13条第3項に基づき、意見書を提出した第三者に対する書面通知の定めがあることから、手続面で実施機関に違法な点がなかったか以下検討する。
 上記審査請求人の主張に関して、実施機関に事実確認を行ったところ、審査請求人に対し条例に基づき意見書を提出する機会を与えたのではないとのことであった。
 ここで、条例第13条第1項は、「公開請求に係る公文書に本市、国等及び公開請求者以外のもの(以下この条、第18条及び第19条において「第三者」という。)に関する情報が記録されているときは、実施機関は、公開決定等をするに当たって、当該情報に係る第三者に対し、公開請求に係る公文書の表示その他市長が定める事項を通知して、意見書を提出する機会を与えることができる。」と規定しており、その解釈としては、同条同項によらない単なる「情報提供」として、第三者に一部情報を提供することも排除されていないと考えられる。
 よって、令和5年3月31日規則第35号による改正前の大阪市情報公開条例施行規則に基づく様式を使用しなかったこと等に違法な点はない。

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