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答申第532号

2024年3月22日

ページ番号:615258

概要

(1)公開請求の内容

 「西成区管内における医療扶助(移送費・通院交通費)に関する申請から支給までの全ての記録」と表示して公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)がありました。

(2)実施機関(=大阪市長)の決定

 実施機関は、本件請求について、公開請求書に記載された内容では、本件請求に係る公文書の特定が不十分であることを理由に、審査請求人に対して、大阪市情報公開条例(以下「条例」という。)第6条第2項に基づく補正を求めましたが、審査請求人からは補正依頼に対する回答書が提出されず、本件請求に係る公文書が特定できないことから、条例第10条第2項の規定に基づき、公開請求却下決定(以下「本件決定」という。)を行いました。

(3)審査請求の内容

 審査請求人は、令和4年8月15日、本件各決定を不服として実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、審査請求を行いました。

(4)答申の結論

 本件決定は妥当である。

(5)答申のポイント

 審査会は、次の理由により、上記(4)のとおり判断しています。

ア 本件請求に係る公文書の特定の有無について
 審査請求人は、本件請求に係る公文書を実施機関が具体的に特定しており、また、その公文書の量が著しく大量であったとしても、その決定のための期間を延長することが認められている旨を主張している。
 そして、条例は公開請求に係る公文書が著しく大量である場合について公開決定等の期限の特例を設けており(条例第12条)、また、「西成区管内における医療扶助(移送費・通院交通費)に関する申請から支給までの全ての記録」という請求内容は、公開請求に係る公文書が著しく大量なものであったとしても、文書の範囲は、形式的・外形的には明確であり、本件請求について「公文書の名称その他の公開請求に係る公文書を特定するに足りる事項」の記載があるということもできないではなく、本件請求を受けた実施機関において,本件請求をした者が公開を求める公文書の全てを他の公文書と識別した上、それらについての公開の適否を判断することも、公開請求の方法の合理性の有無、実施機関の事務処理量及びそれによる実施機関の所掌事務への支障、並びに公開決定までの期間の長期化等を度外視すれば不可能ではない。
 しかしながら、条例第12条は、公開請求に係る公文書が著しく大量であるため、公開請求があった日の翌日から起算して44日以内にそのすべてについて公開決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、公開請求に係る公文書のうちの相当の部分につき当該期間内に公開決定等をし、残りの公文書については相当の期間内に公開決定等をすれば足りるとし、この場合において、公開請求があった日の翌日から起算して14日以内(条例第11条第1項)に、公開請求者に対し、「本条を適用する旨及びその理由」及び「残りの公文書について公開決定等をする期限」を書面により通知しなければならない、としている。そのため、同条は、公開請求に係る公文書が著しく大量であっても、事務の遂行に著しい支障を生じさせることなく、「相当の部分」(実質的に公開請求にある程度応答するためには、少なくとも全体の何割かの部分が必要であり、僅少な部分では足りないと解される。)について公開決定等をし、残りの部分についても14日以内に公開決定等をする期限を区切ることを想定しているのであり、自ずから期間内の事務処理が可能な量的な制限が想定されており、かつ事務の遂行に著しい支障が生じない範囲において、可能な限りの人員を配置しても同期限を年余の先とせざるを得ない場合を想定しているとは考えられない。
 また、公文書の量的な制限があることは、行政組織の活動は多種多様であるところ、通常は公開請求者が特定種類の行政文書の全部の公開を希望するとは考え難いことや、「公文書の名称その他の公開請求に係る公文書を特定するに足りる事項」を公開請求書の必要的記載事項とするのは、実施機関の担当職員において、請求の対象となる公文書を識別した上、請求の対象となる公文書の全部について非公開事由の有無の調査・判断を行うことを可能とするためであるところ、公開請求者が通常公開を希望しない膨大な文書についてもそのような調査・判断を行わせることは,実施機関の担当職員及び行政組織をいたずらに疲弊させ、行政機関の他の行政活動をいわれなく停滞させる原因ともなるものであって、「公文書の名称その他の公開請求に係る公文書を特定するに足りる事項」を必要的記載事項とした趣旨を没却させることになることから肯定される。そして、このような「公文書の名称その他の公開請求に係る公文書を特定するに足りる事項」が必要的記載事項とされた趣旨を考慮すると、公開請求に係る公文書の範囲が形式的・外形的には明確であることから、条例第6条第1項第2号の「特定」に該当すると解釈するのは、必ずしも適当であるとは言えない。
 そうすると、条例の定める公開請求制度上は、条例第12条が想定する量的な制限を超えていると考えられる公開請求は、特段の事情のない限り、「公文書の名称その他の公開請求に係る公文書を特定するに足りる事項」の記載が無いと解すべきである。特段の事情のある場合とは、「公文書の名称その他の公開請求に係る公文書を特定するに足りる事項」が必要的記載事項とされた趣旨を没却しないような例外的な事情がある場合、例えば、公開請求者が真に公開請求に係る公文書全部の公開等を希望しており、かつ、請求対象公文書の全部の公開等を相当期間内に実行することのできる態勢を整えており、実施機関をいたずらに疲弊させるものでないような場合に限られるものというべきである。
 そして答申第532号第5.3(2)アによれば、本件請求に応じる場合、約42,000のファイルの確認等が必要であり、所要期間は約8年である。本件請求に対応するため、職員の配置数や1日あたりの作業時間を増やせば、より短期間での対応が想定されるものの、例えば、本件請求に対し1年以内の対応を行う場合、専任の職員約10名を要することとなり、このような人員配置を行うと事務の遂行に著しい支障が生じるものと認められるから、条例がそのような無制約の人員配置等の態勢整備を実施機関に義務付けているとは解し得ない。よって、本件請求に係る公文書については、条例第12条が想定する量的な制限を超え、また、個別に公開・非公開の検討を行うとすれば、実施機関の担当職員及び行政組織をいたずらに疲弊させるものと考えられ、条例に基づく公開請求権として保護する範囲に含まれるとは解されない(平成231130日東京高裁判決参照)。
 なお、審査請求人は、「こうした抽象的な内容では、多様な情報を扱う公文書のうちから請求内容に合致する公文書を特定することができない」とする実施機関の主張に対し、本件請求は「抽象的」でなく、本件決定の理由の提示に誤りがある旨を主張していると考えられる。この点、請求する公文書の範囲は、形式的・外形的には明確であるものの、本件請求に係る公文書が著しく大量であるため、請求の対象となる具体的な文書を特定できないという意味を読み取ることは可能であることから、本件決定の理由の提示に誤りがあるとまでは言えず、審査請求人の主張は、認められない。

イ その他の審査請求人の主張について
() 5月13日付けで本件決定を行ったことについて
  実施機関は、補正の求めの回答期限である令和4年5月13日に本件決定を行った理由について、同日に審査請求人と面談した際、「回答書は提出しない」旨の発言があったことを述べている一方、審査請求人は、「補正に応じない」旨の話をした覚えはないと主張している。
 また、当審査会が、口頭意見陳述の際に審査請求人に確認を行ったところ、補正の求めに応じる意思はなかった旨を陳述した。
 以上を踏まえると、実施機関が補正の求めの回答期限である令和4年5月13日に本件決定を行ったことにより、観念的には審査請求人が補正を申し出る機会が失われたものと認められる。しかしながら、審査請求人が「補正に応じない」旨の申出を行ったという実施機関の主張についてはその真偽は不明であるものの、口頭意見陳述において審査請求人から補正の求めに応じる意思はなかった旨の陳述があったこと、結果的に令和4年5月13日までに補正の求めに対する回答を行っていないことを踏まえると、実質的には、回答期限が経過する前に本件決定を行ったことにより、審査請求人が補正を行うことができなくなるという不利益を被ったものとは認められないから、本件決定には取り消すべき瑕疵があるとまでは言えず、審査請求人の主張は認められない。

() 補正の求めに対する回答期限が短いことについて
 条例第6条第2項の「相当の期間」とは、補正すべき内容に応じて、公開請求者が当該補正をするに足る合理的な期間をいう。
 審査請求人によると、補正の求めは、令和4年5月9日に到達したとのことであるから、回答期限までの期間が十分であったとは考えられないものの、本件請求に係る公文書を特定するための補正期間として不合理とまでは言えず、審査請求人の主張は、認められない。

() 補正の参考となる情報を提供していないことについて
 補正の参考となる情報の提供については、努力義務であるうえ、実施機関が回答の記載例を掲載していることを踏まえると、補正の参考となる情報を提供していないとは考えられず、審査請求人の主張は、認められない。

() 開示請求との違いについて
 条例に基づく公開請求権は、実施機関の保有する公文書の公開を求めるものであるのに対し、大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号)に基づく開示請求権は、実施機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を求めるものであり、開示請求の対象は、開示請求者本人の保有個人情報に限定される。
 よって、本件請求と同内容を記載した開示請求を行った場合、自ずから本件請求に比べ対象の範囲が限定されることから、開示請求において保有個人情報を特定した一方、本件請求に係る公文書を特定できないとした実施機関の判断に不自然・不合理な点はなく、審査請求人の主張は、認められない。

答申第532号

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