ページの先頭です

答申第186号

2019年9月9日

ページ番号:622674

大個審答申第186号
令和6年3月29日

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和3年8月3日付け大福祉第1203号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が、令和3年4月19日付け大福祉第126号により行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)で開示しないこととした部分のうち、別表に掲げる部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和3年4月5日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「平成25年特定日付で東淀川保健福祉センター所長が審査請求人の母に対して行った特別養護老人ホーム入所措置処分(面会制限の全記録を含む)の全記録(音声記録と映像記録を含む)市役所福祉局保有分」を求める開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を、「老人福祉法第10条の4第1項及び第11条第1項第2号の規定に基づく措置の開始について(報告)」(以下「本件情報1」という。)及び「地域ケア会議報告書及び別紙(ケース記録の写し)」(以下「本件情報2」といい、本件情報1とあわせて「本件各情報」という。)のうち、開示請求者に関する部分と特定した上で、旧条例第23条第1項に基づき、「措置開始理由」(以下「本件非開示部分1」という。)、「地域ケア会議報告書における出席者の所属機関及び氏名」(以下「本件非開示部分2」という。)、「検討内容」(以下「本件非開示部分3」という。)、「介護状況」(以下「本件非開示部分4」という。)及び「経過」(以下「本件非開示部分5」といい、本件非開示部分1から5をあわせて「本件各非開示部分」という。)を開示しない理由を次のとおり付して、本件決定を行った。

旧条例第19条第2号に該当
(説明)
 本件非開示部分2のうち出席者の氏名については、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人を識別される情報又は特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
旧条例第19条第6号に該当
(説明)
 本件各非開示部分については、本市の事業に関する情報であって、開示することにより、被措置者の安全性が損なわれるおそれがあることから、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第10条の4及び第11条第1項第2号の規定に基づく措置業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和3年7月16日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 部分開示決定を取り消し、非開示の部分を開示する決定を求める。
2 審査請求の理由
(1) 本件開示請求に対して、実施機関は、開示請求者の母にかかる部分について、開示請求者の情報ではないとして、対象から除外しているが、開示請求者の母に関する情報であっても、開示請求者が母の権利を全て相続しており、相続した権利を行使するために必要な情報であるから、開示請求者の情報として開示されるべきである。
(2) 旧条例第19条第6号に該当するとの点について
ア 実施機関は、平成25年特定日付「老人福祉法第10条の4第1項及び第11条第1項第2号の規定に基づく措置の開始について(報告)」の開示請求者に関する部分のうち「措置開始理由」について、「開示することにより、被措置者の安全性が損なわれるおそれがあることから、老人福祉法第10条の4及び第11条第2号の規定に基づく措置業務の適性な遂行に支障を及ぼすおそれがある」(旧条例19条第6号に該当)として、非開示とした。
 また、平成25年特定日開催の「地域ケア会議報告書及び別紙」の開示請求者に関する部分のうち「出席者の所属機関及び氏名」、「検討内容」、「介護状況」「経過」についても、同じ理由により非開示とした。
イ しかし、本件の被措置者は、開示請求者(審査請求人)の亡母であるところ、平成30年に死亡しているうえ、死亡するよりも相当前に当該措置処分は解除されていたから、非開示部分が開示されることによって、被措置者の安全性が損なわれるおそれは存在しない。
ウ 前記非開示部分は開示請求者に関する部分であるから、開示請求者の情報であることは明らかであるところ、開示請求者は、当然にその内容を知る権利を有している。行政機関が、業務の支障を理由に知る権利を不当に制限することがあってはならないから、開示請求を拒みうる「業務の支障」とは、抽象的なものでなく、具体的かつ現実的なものでなければならない。
 ところが、本件開示請求に対して、処分庁は、開示することによって措置業務(しかも既に解除され終了してから久しい措置処分)にどのような支障があるのか具体的に明示せず、単に抽象的な業務の支障のおそれを主張するのみであり、到底許されない。
エ 本件非開示部分を開示することによって、措置業務の適正な遂行に支障を及ぼす具体的現実的おそれは存在しないから、旧条例第19条第6号に該当しない。よって、非開示部分は全部開示されるべきである。
(3) 旧条例第19条第2号に該当するとの点について
ア 実施機関は、地域ケア会議報告書の「出席者」の所属機関及び氏名については、「出席者の氏名については、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人を識別される情報または特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であると認められ、かつ旧条例第19条第2号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないことを理由としても非開示とした。
 しかし、「出席者」の氏名及び職によっては特定の個人を識別することはできず、かつ、これらが開示されるのは開示請求者に対してのみであるから、開示によって個人の権利利益を害するおそれがあるとはいえないから、非開示情報にはあたらず、開示請求者に対して開示するべきである。
イ また、仮に非開示情報にあたる場合であっても、地域ケア会議には公務員も出席していると考えられるところ、出席者のうち公務員に関しては、当然公務員の氏名及び職は旧条例第19条第2号ウに該当し、開示されるべきである。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件決定における非開示部分の旧条例第19条第2号該当性について
 本件非開示部分2のうち出席者の氏名については、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人を識別される情報又は特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないことから、旧条例第19条第2号に該当するものと判断した。
 なお、出席者のうち公務員等の氏名については、東淀川区保健福祉センターから文書が送付された時に既に黒く塗抹されていたものである。
2 本件決定における非開示部分の旧条例第19条第6号該当性について
 本件非開示部分1、本件非開示部分3、本件非開示部分4及び本件非開示部分5については、被措置者の状況として審査請求人に係る情報を詳細に記録した内容であるが、その内容が審査請求人の認識と異なる場合もあり得ることから、開示することで事業所または区保健福祉センターへ審査請求人が苦情を申し立てる等のトラブルが発生することにより、区保健福祉センターと事業所の信頼関係が悪化し、今後事業所から区保健福祉センターの虐待等に関する情報が連携されなくなるおそれがあり、また本件非開示部分2については、老人福祉措置事務上の担当者及び関係機関は、被高齢虐待者の安全確保の観点から一般的に非公表としており、それらが特定されると他の同種の事案において区保健福祉センターや関係機関への執拗な問い合わせや訪問がなされるおそれがあり、いずれも今後の被措置者の安全性が損なわれるおそれがある情報であり、本市が行う老人福祉法第10条の4及び第11条第1項第2号の規定に基づく措置業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、旧条例第19条第6号に該当するものと判断した。
3 本件審査請求における審査請求人の主張について
 本件審査請求において、審査請求人は、開示請求者の母に関する情報であっても、開示請求者が母の権利を全て相続しており、相続した権利を行使するために必要な情報であるから開示請求者の情報として開示されるべきであるとの旨の主張をしているが、相続財産に関する情報のように、相続人の個人情報の性質も有し、当該個人を識別することができる情報については開示請求の対象となると考えられるところ、本件請求に係る情報は相続財産に関する情報に当たるものではなく、本件請求に係る情報には、審査請求人の個人情報の記載があるため、記載のある部分について本件決定を行った旨を審査請求人にも説明している。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
 しかしながら、旧条例は、すべての保有個人情報の開示を義務づけているわけではなく、第19条本文において、開示請求に係る保有個人情報に同条各号のいずれかに該当する情報が含まれている場合は、実施機関の開示義務を免除している。もちろん、第19条各号が定める非開示情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮するとともに、当該保有個人情報の取扱いの経過や収集目的などをも勘案しつつ、旧条例の上記理念に照らして市民の権利を十分に尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 争点
 審査請求人は、本件決定を取り消し、審査請求人の母に関する情報を相続人である審査請求人の情報として開示すべきと主張しているのに対して、実施機関は開示請求の対象ではないと主張している。また、審査請求人は、本件決定を取り消し、本件各非開示部分を開示すべきと主張しているのに対して、実施機関は本件各非開示部分は旧条例第19条第2号及び第6号に該当すると主張している。したがって、本件審査請求における争点は、本件各情報の審査請求人を本人とする保有個人情報該当性及び本件各非開示部分の旧条例第19条各号該当性である。
3 本件各情報の審査請求人を本人とする保有個人情報該当性について
(1) 旧条例第17条について
 旧条例第17条は、何人も、実施機関に対して、当該実施機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができるとともに、本人に代わって開示請求をすることができる者の範囲を定めたものである。
 本条に基づいて開示請求をすることができる情報は、「自己を本人とする保有個人情報」に限られる。したがって、自己以外の者に関する情報については、たとえ家族に関するものであっても本条第2項に規定する未成年者又は成年被後見人の法定代理人による開示の請求の場合を除き請求することはできない。
(2) 死者に関する情報に係る開示請求について
 旧条例に基づく開示請求の対象となる個人情報は、旧条例第2条第2号において、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と規定されている。
 この定義に照らせば、旧条例に基づく保有個人情報の開示請求権を行使できる主体は、生存する請求者本人であり、死者に関する情報は制度の対象外とされていることから、死者に関する情報を他者が開示請求することは認められない。
 しかしながら、死者に関する情報のすべてが開示請求の対象とならないと解することは相当ではなく、死者に関する情報であっても、それが同時に請求者本人の情報でもあると認められる事情がある場合には、請求者本人の情報として扱い、開示請求の対象となると解される。
 例えば、相続財産に関する情報のように、死者に関する情報であると同時に相続人である請求者本人の個人情報の性質も有し、当該個人を識別することができる情報については、当該請求者の個人情報として開示請求の対象となると解される。
(3) 審査請求人を本人とする保有個人情報該当性について
 本件各情報は、審査請求人の母の老人福祉法に基づく入所措置に係る情報で、相続財産のように他者と共有し、又は他者に帰属する余地があるものではないため、審査請求人本人の情報と同視すべき情報であるとはいえない。
 したがって、本件各情報のうち審査請求人本人に係る個人情報の記載がない部分については、旧条例第17条の「自己を本人とする個人情報」に該当しないため、実施機関が本件請求の対象外とすべきであった部分と認められる。
4 本件各非開示部分の旧条例第19条各号該当性について
(1) 旧条例第19条第2号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報…であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)…又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」は開示しないものと規定しているが、同号ただし書では、これらの情報であっても、「ア 法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報、イ 人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報、ウ 当該個人が…公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」については、開示しなければならない旨規定している
(2) 旧条例第19条第6号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第6号は、本市の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業の目的を達成し、その公正、円滑な執行を確保するため、「開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は開示しないことができると規定している。
 ここでいう「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を開示することによる利益と支障を比較衡量した上で、開示することの必要性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものであることが必要である。
 したがって、「支障を及ぼすおそれ」は、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
(3) 本件各非開示部分の旧条例第19条第6号該当性について
 本件各非開示部分について、実施機関は、当該情報を開示することにより、老人福祉法第10条の4及び第11条第1項第2号の規定に基づく措置業務の適正な遂行に支障が生じるおそれがあると主張している。当審議会で見分したところ、別表に掲げる情報については、実施機関の担当課又は実施機関が当該業務において連携することが容易に推測できる関係機関の名称であることが認められ、実施機関の主張する当該業務若しくは将来の同種の業務に支障が生じるおそれがあるとは認められない。その余の記載については、関係機関から提供された情報、関係機関の職員の評価を伴う情報及び実施機関における対応方針に係る情報であると認められ、開示することにより、当該業務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があると認められる。
 したがって、本件各非開示部分のうち別表に掲げる情報については旧条例第19条第6号に該当せず、別表に掲げる情報を除いた部分については旧条例第19条第6号に該当する。
(4) 本件非開示部分2の旧条例第19条第2号該当性について
 本件非開示部分2のうち出席者の氏名について、実施機関は、当該情報を開示請求者以外の個人に関する情報であるとしている。当審議会で見分したところ、審査請求人以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより審査請求人以外の特定の個人を識別することができるものと認められることから、旧条例第19条第2号本文に該当し、またその性質上、同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないものと認められた。
 なお、審査請求人は、出席者のうち公務員に関しては、当然公務員の氏名及び職は開示されるべき旨を主張するが、当審議会で見分したところ、本件各情報のうち判読できるものの中には公務員の氏名の記載を認めることはできなかった。
5 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 金井 美智子、委員 岡澤 成彦、委員 塚田 哲之、委員 野田 崇

別表
略 

(参考)調査審議の経過 令和3年度諮問受理第29
略 

答申第186号

Adobe Acrobat Reader DCのダウンロード(無償)別ウィンドウで開く
PDFファイルを閲覧できない場合には、Adobe 社のサイトから Adobe Acrobat Reader DC をダウンロード(無償)してください。

探している情報が見つからない

このページの作成者・問合せ先

大阪市 総務局行政部行政課情報公開グループ

住所:〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所1階)

電話:06-6208-9825

ファックス:06-6227-4033

メール送信フォーム