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答申第188号

2019年9月9日

ページ番号:622703

大個審答申第188
令和6年3月29

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和3年1015日付け大天窓住第194号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和3年8月10日付け大天窓住第129号により行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和3年7月29日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和3年5月17日〇〇〇(審査請求人)が天王寺区役所へ届け出た転入届の際に提出した文書及び天王寺区役所が転入決裁した際の関係文書全て」を求める開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を、「令和3年5月17日に提出した住民異動届(転入届)、転出証明書、大阪市外よりの転入届受付シート(以下「本件文書」という。)」と特定したうえで、旧条例第23条第1項に基づき、「委託業者の従業員の署名及び本市職員の署名」を開示しない理由を次のとおり付して、本件決定を行った。

旧条例第19条第2号に該当
(説明)
 委託業者の従業員の署名は、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別される情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
 職員の署名については、開示請求者以外の個人に関する情報であって、これを開示することにより偽造あるいは転用が可能となることから、当該個人の権利利益を害するおそれがあり、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和3年9月15日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 本件決定のうち、本市職員の署名に関する部分(以下「本件非開示部分」という。)を取り消す、との裁決を求める。
2 審査請求の理由
 本件処分は、「当該個人が行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第14条第2号「ただし書」ハに規定する公務員」に対するものであるから「大阪市個人情報保護条例第19条2号ウ」の規定に違反しており、違法である。
 本件決定により、審査請求人は法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることが出来、又は知ることが予定されている情報の法的権利を侵害されている。
 以上の点から、本件決定のうち、住民異動届「受付」は転入受付業務、「点検1」は住民異動届情報が住民基本台帳に適正に書込みされているかの審査業務職務遂行部分の本市職員の署名に関する非開示処分の取消しを求めるため、本審査請求を提起した。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件決定に係る保有個人情報について
 本件決定に係る保有個人情報は住民異動届、転出証明書及び受付シートである。審査請求に該当する部分が住民異動届に関してのみであるため、以降住民異動届についてのみ説明を行う。
 住民異動届の様式は、「異動年月日」、「届出年月日」、「これからの住所」、「いままでの住所」、「世帯主の氏名」、「届出人の氏名・資格」、「昼間の連絡先」、「本人確認資料」、「氏名」、「生まれた日」、「世帯主との続柄」、「性別」等の情報で構成されており、欄外に受付や点検などの内部処理において作業を行った委託業者の従業員の署名及び印影、職員の署名が記載・押印されている。
2 本件決定で非開示とした情報について
 本件決定において非開示とした情報は、「委託業者の従業員の署名及び印影」、「職員の署名」である。
3 住民異動届(転入届)について
 住民異動届(転入届)の事務について、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号。以下「住基法」という。)の規定に基づき行われる。
 住基法第22条第1項により、転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。)をした者は、転入をした日から14日以内に各種事項を市町村長に届け出なければならないと定められている。
 届出が提出された後、受付欄に受付職員が署名を行い、次工程における委託事業者へ引き渡す。
 委託事業者は、届出内容に基づきシステムの入力作業を行い、住民票記載欄に作業者が署名もしくは押印を行い、次工程における本市職員へ引き渡す。
 引き渡された職員は委託事業者が入力した内容について審査を行い、内容の点検を行い、システムにおいて審査処理を入力した後、点検1欄に署名を行う。
4 本件決定を行った理由
 審査請求人は、本件審査請求において「職員の署名」の開示を求めている。したがって、当該情報を非開示とした理由を以下で述べる。
 職員の署名については、開示請求者以外の個人に関する情報であって、これを開示することにより偽造あるいは転用が可能となることから、当該個人の権利利益を害するおそれがあることから、旧条例第19条第2号本文に該当し、かつ同号ただし書ア、イ及びウのいずれにも該当しないとして、非開示としたものである。
 審査請求人は、欄外の「受付」及び「点検」に記載している「職員の署名」は、「当該個人が行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第14条第2号『ただし書き』ハに規定する公務員」に対するものであるから、旧条例第19条2号ただし書ウの規定に該当するため開示すべきである旨主張している。
 旧条例第19条第2号ただし書ウでは、「行政機関個人情報保護法第14条第2号ハに規定する公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分について定めている。
 職務遂行上の情報に係る本市職員の氏名は、原則として公開する慣行が定着しており、慣行として開示請求者が知ることができる情報である。よって、本件非開示部分のうち住民異動届の受付及び点検1に署名した職員の「氏名」については、旧条例第19条2号ただし書アに定めている「開示請求者が知ることができる情報」といえる。
 しかし、職員の「署名」については、偽造あるいは転用をされるおそれがあり、当該職員の権利利益を害するおそれがあることから非開示としたものである。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
 しかしながら、旧条例は、すべての保有個人情報の開示を義務づけているわけではなく、第19条本文において、開示請求に係る保有個人情報に同条各号のいずれかに該当する情報が含まれている場合は、実施機関の開示義務を免除している。もちろん、第19条各号が定める非開示情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮するとともに、当該保有個人情報の取扱いの経過や収集目的などをも勘案しつつ、旧条例の上記理念に照らして市民の権利を十分に尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 争点
 実施機関は、本件非開示部分について、旧条例第19条第2号を理由に非開示としたのに対し、審査請求人は、旧条例第19条第2号には該当しないため開示すべきであるとして争っている。
 したがって、本件審査請求の争点は本件非開示部分の旧条例第19条第2号該当性である。
3 本件決定の妥当性について
⑴ 旧条例第19条第2号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報…であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」は開示しないことができると規定しているが、同号ただし書では、これらの情報であっても、「ア 法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報、イ 人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報、ウ 当該個人が…公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」については、開示しなければならない旨規定している。
⑵ 本件非開示部分の旧条例第19条第2号該当性について
 当審議会において本件非開示部分を見分したところ、実施機関の職員の氏名の一部又はイニシャルが記載されていることが確認できた。そして、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、これらの氏名の一部又はイニシャルは、実施機関の担当職員がその職務において署名として使用しているものであり、本件非開示部分についても署名として各自が自書しているとのことであった。
 このような実施機関の説明に不自然、不合理な点は認められないから、本件非開示部分は、実施機関の職員がその署名として自書したことが認められる。
 したがって、本件非開示部分は、審査請求人以外の個人に関する情報であって、審査請求人以外の特定の個人を識別することができることから、旧条例第19条第2号本文に該当する。
 また、「職員の署名」は、本人が自書したものであり、その筆跡から特定の個人を識別しうるにとどまらず、個人を認証する機能を有していることを考慮すると、開示することにより偽造等当該個人の権利利益を害する場合もあると認められることから、実施機関の職員の氏名について公表する慣行があるからといって、当該署名を開示することが妥当であるとは認められず、旧条例第19条第2号ただし書アに該当せず、かつ、その性質上、同号ただし書イ及びウのいずれにも該当しない。
4 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 野呂 充、委員 小林 邦子、委員 篠原 永明、委員 矢口 智春

(参考)調査審議の経過 令和3年度諮問受理第53
 略

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