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答申第189号

2019年9月9日

ページ番号:622704

大個審答申第189
令和6年3月29

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から別表1項番1から項番5までの(い)欄に記載の諮問がありました件について、一括して次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
1 実施機関が行った別表1項番1の(お)欄に記載の決定(以下「本件決定1」という。)及び同表項番3の(お)欄に記載の決定(以下「本件決定3」という。)については、別表1項番1及び項番3の開示しないこととした部分のうち、別表2の文書名欄に掲げる文書の該当箇所欄に掲げる部分を開示するとともに、別表3の文書名欄に掲げる文書の該当箇所欄に掲げる情報を特定した上で、改めて開示決定等すべきである。
2 実施機関が行った別表1項番4の(お)欄に記載の決定(以下「本件決定4」という。)については、別表3項番1及び項番2の文書名欄に掲げる文書の該当箇所欄に掲げる情報を特定した上で、改めて開示決定等すべきである。
3 実施機関が行った別表1項番2の(お)欄に記載の決定(以下「本件決定2」という。)及び同表1項番5の(お)欄に記載の決定(以下「本件決定5」という。)は妥当である。 

第2 審査請求に至る経過
1 保有個人情報の開示請求
 審査請求人は、別表1項番1から項番5までの(う)欄に記載の年月日に、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、別表1項番1から項番5までの(え)欄に記載の旨の開示請求(以下、項番順に「本件請求1」から「本件請求5」までといい、あわせて「本件各請求」という。なお、本件請求3及び本件請求4は1件の開示請求であるが、便宜上、決定内容に応じて2件に分割している。)を行った。
(1) 実施機関は、本件請求1に係る保有個人情報について、別表1項番1の(か)欄に記載の「開示請求に係る保有個人情報」を対象情報と特定した上で、同欄に記載の「開示しないこととした部分」を開示しない理由を別表1項番1の(き)欄に記載のとおり付して、旧条例第23条第1項に基づき、部分開示をする旨の本件決定1を行った。
(2) 実施機関は、本件請求2に係る保有個人情報について、別表1項番2の(か)欄に記載の情報を対象情報として特定したうえで、旧条例第23条第1項に基づき、その全部を開示する旨の本件決定2を行った。
(3) 実施機関は、本件請求3に係る保有個人情報について、別表1項番3の(か)欄に記載の「開示請求に係る保有個人情報」を対象情報と特定した上で、同欄に記載の「開示しないこととした部分」を開示しない理由を別表1項番3の(き)欄に記載のとおり付して、旧条例第23条第1項に基づき、部分開示する旨の本件決定3を行った。
(4) 実施機関は、本件請求4に係る保有個人情報について、開示請求を却下する理由を別表1項番4の(き)欄に記載のとおり付して、旧条例第23条第2項に基づき、開示請求を却下する旨の本件決定4を行った。
(5) 実施機関は、本件請求5に係る保有個人情報について、保有していない理由を別表1項番4の(き)欄に記載のとおり付して、旧条例第23条第2項に基づき、全部を非開示する旨の本件決定5を行った。
2 審査請求
 審査請求人は、別表1の項番1から項番5までの(く)欄に掲げる日にそれぞれ、本件決定1から本件決定5までを不服として、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、審査請求(以下「本件各審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね別表1項番1から項番5までの(け)欄に記載のとおりである。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね別表1項番1から項番5までの(こ)欄に記載のほか、次のとおりである。
1 本件請求1、本件請求3及び本件請求4に係る主張
(1) 高齢者虐待対応及び緊急一時保護事業について
 緊急一時保護事業とは、障害者虐待の防止、障害者の養護者の支援等に関する法律(平成23年法律第79号)第9条及び高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号。以下「高齢者虐待防止法」という。)第9条の趣旨に基づき、養護者からの虐待により生命又は身体に重大な危険が生じるおそれがあると認められる障がい者及び高齢者、警察に保護された身元不明の徘徊認知症高齢者並びに介助者が急病等により不在となる事態が生じた障がい者を障がい者支援施設及び特別養護老人ホーム等において一時的に保護することにより、保護を必要とする障がい者及び高齢者の身体面の安全と精神的安定を確保することを目的としている事業であり、本市では事業実施に関し必要な事項を大阪市要援護障がい者・高齢者緊急一時保護事業実施要綱(以下「緊急一時保護要綱」という。)に定めている。
 本市の高齢者虐待対応において、区保健福祉センターは、高齢者虐待のうち養護者(高齢者を現に養護する者)による高齢者虐待の通報・届出・相談窓口であり、養護者による高齢者虐待対応の第一義的な責任を担っており、養護者及び高齢者に対し、相談、指導、助言を行うほか、必要に応じて老人福祉法(昭和38年法律第133号)第5条の2に定められた支援及び同法第11条第1項第2号に定められた措置、支援を行う。
 区保健福祉センターは、高齢者虐待の相談、通報、届出があれば、地域包括支援センター・総合相談窓口(ブランチ)と連携し、高齢者の安全確認や養護者の状況確認などの事実確認を行い、虐待かどうかの判断、緊急性の判断(高齢者虐待防止法第9条第2項に基づく分離及び同法第11条に基づく立入検査を行うかどうか)、支援方針の3点を決定する。
 緊急性があり、分離保護が必要と判断されると、区保健福祉センターは、要援護者に援助可能な資源(資産・人的資源等)があれば転居、親族宅への避難、宿泊施設(ホテル等)の利用などを選択肢とすることができるが、援助可能な資源がない場合かつ高齢者が入院加療を必要とする状態ではない場合、老人福祉法第11条第1項第2号を適用した高齢者虐待防止法第9条第2項に基づく特別養護老人ホームへの入所措置(以下「やむを得ない措置」という。)を行わなければならない。しかしながら、緊急対応が可能な受け入れ先施設は限られていることから、区保健福祉センターで手を尽くしても施設が見つからないこともある。そのような場合に、福祉局生活福祉部地域福祉課(以下「地域福祉課」という。)が緊急一時保護要綱第3条の規定に基づき入所委託契約を締結し確保している特別養護老人ホーム等の施設(以下「一時保護施設」という。)に要援護者を収容する。
 緊急一時保護事業における保護期間は緊急一時保護要綱第5条において基本的に14日以内と定められており、この間に区保健福祉センターは要援護者の地域ケア会議などにより施設への入所、医療機関への入院先など支援体制の構築を図ることとされている。
(2) 緊急一時保護事業利用の流れ
 区保健福祉センターはサービス利用調整会議で要援護者の分離保護の支援計画を決定した時点で、地域福祉課に緊急一時保護施設活用の可能性があることを連絡し、区保健福祉センターから連絡を受けた地域福祉課は、本事業の適用事例であることを確認し、事案の概要を電話で聞き取るなどした上で、緊急一時保護事業の委託施設へ連絡を行い、受け入れ先施設を調整する。地域福祉課から受け入れ先決定の伝達を受けた区保健福祉センターは、要援護者を緊急一時保護施設へ移送する。その後緊急一時保護施設は緊急一時保護要項第8条3項に基づく文書を地域福祉課あてに提出する。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
2 争点
 本件各審査請求における争点は、本件決定1及び本件決定3については開示しないこととした部分(以下「本件非開示部分」という。)の旧条例第19条第6号該当性であり、本件決定2については別表1項番2の(か)欄に記載の保有個人情報以外に特定すべき保有個人情報の存否であり、本件決定4については開示請求の対象が旧条例第17条に基づいて開示請求することができる「自己を本人とする保有個人情報」に該当するか否かであり、本件決定5については特定すべき保有個人情報の存否である。
3 高齢者虐待対応及び緊急一時保護事業の概要等について
 大阪市における高齢者虐待対応及び緊急一時保護事業の概要、緊急一時保護事業利用の流れ並びに高齢者虐待防止法第13条及び老人福祉法第11条の規定については、実施機関の主張のとおりであると認められる。
4 本件決定1について
(1) 旧条例第19条第6号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第6号は、本市の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業の目的を達成し、その公正、円滑な執行を確保するため、「開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は開示しないことができると規定している。
 ここでいう「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を開示することによる利益と支障を比較衡量した上で、開示することの必要性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものであることが必要である。
 したがって、「支障を及ぼすおそれ」は、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
(2) 本件非開示部分の旧条例第19条第6号該当性について
ア 審査請求人は、東淀川区保健福祉センターが審査請求人の母に対して行った緊急一時保護の全記録(音声記録と映像記録を含む)の開示を求めているのに対して、実施機関は、審査請求人の母にかかる関係機関との経過記録を特定している。
イ 当審議会において、当該文書を見分したところ、本件非開示部分1のうち別表2の情報を除いた部分には、関係機関等の審査請求人に係る所見を含めて実施機関が関係機関等から聴取した内容が率直に記載されていることが認められる。
 これらの情報を開示することにより、関係機関及び実施機関と本人との信頼関係が損なわれるのみならず、本人との信頼関係が損なわれることをおそれて関係機関や実施機関が虐待に関する事情を率直に記載することができなくなると考えられ、そうすると将来の大阪市要援護者高齢者一時保護事業の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があると認められる。
 したがって、本件非開示部分1のうち別表2の情報を除いた部分は、旧条例第19条第6号に該当する。
ウ 本件非開示部分1のうち別表2の情報については、実施機関職員の氏名であって、これを開示しても、将来の虐待対応業務及び成年後見市長申立業務の適正な遂行に支障を及ぼす相当の蓋然性があるとは認められず、旧条例第19条第6号に該当しない。
(3) 本件情報1以外に特定すべき保有個人情報の存否について
 事務局職員をして実施機関に確認させたところ、東淀川区保健福祉センターにおいて保管する審査請求人の母に対して行った緊急一時保護の全記録に関するすべての文書のうち、審査請求人本人の記載がなかった文書については、本件請求1に係る保有個人情報として特定していないとのことであったため、当審議会において、実施機関が本件決定1で特定しなかった当該文書を見分したところ、別表3の項番1から5までの文書名欄に掲げる文書の該当箇所欄に掲げる部分に該当情報欄に掲げる記載が確認された。
 したがって、実施機関は別表3の文書名欄に掲げる文書の該当箇所欄に掲げる情報について本件請求に係る保有個人情報として特定すべきであった。
5 本件決定2について
(1) 審査請求人は、特定日から特定日まで(措置期間)の審査請求人の母と審査請求人に対して東淀川区保健福祉センターが行った老人福祉法第11条を適用して、高齢者虐待防止法第13条の面会制限に係る情報の開示を求めたものであるから、今回開示決定された文書以外に「審査請求人の母に係る緊急一時保護の決定に係る情報」及び「審査請求人の母及び審査請求人自身に対して実施機関が行った面会制限に係る情報」を本件請求2に係る保有個人情報として特定すべきであると主張している。
 したがって審査請求人の母に対して行った緊急一時保護及び面会制限に係る情報が審査請求人を本人とする保有個人情報といえるか、また、審査請求人に対する面会制限に係る情報が存在するかが論点となる。
(2) 審査請求人に対する面会制限に係る情報の存否について
 実施機関によれば、面会制限は、やむを得ない措置による分離及びこれを実行化するための付随的措置であるため、面会制限に係る固有の文書等は存在しないとのことであり、かかる実施機関の主張は、高齢者虐待防止法第13条の「養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第11条第1項第2号又は第3号の措置が採られた場合においては、市町村長又は当該措置に係る養介護施設の長は、養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護の観点から、当該養護者による高齢者虐待を行った養護者について当該高齢者との面会を制限することができる」との規定に照らして、不自然、不合理な点は認められないから、審査請求人に対する面会制限に係る情報を特定すべきであったものとは認められない。
(3) 審査請求人の母に対して行った緊急一時保護及び面会制限に係る情報の審査請求人を本人とする保有個人情報該当性について
ア 上記(2)のとおり、面会制限に係る固有の文書等は存在しないとの実施機関の主張に不自然、不合理な点はないから、審査請求人の母に対して行った緊急一時保護に係る情報が審査請求人を本人とする保有個人情報に該当するかが問題となる。
イ 旧条例第17条について
 旧条例第17条は、何人も、実施機関に対して、当該実施機関の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができるとともに、本人に代わって開示請求をすることができる者の範囲を定めたものである。
 本条に基づいて開示請求をすることができる情報は、「自己を本人とする保有個人情報」に限られる。したがって、自己以外の者に関する情報については、たとえ家族に関するものであっても本条第2項に規定する未成年者又は成年被後見人の法定代理人による開示の請求の場合を除き請求することはできない。
ウ 死者に関する情報に係る開示請求について
 旧条例に基づく開示請求の対象となる個人情報は、旧条例第2条第2号において、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」と規定されている。
 この定義に照らせば、旧条例に基づく保有個人情報の開示請求権を行使できる主体は、生存する請求者本人であり、死者に関する情報は制度の対象外とされていることから、死者に関する情報を他者が開示請求することは認められない。
 しかしながら、死者に関する情報のすべてが開示請求の対象とならないと解することは相当ではなく、死者に関する情報であっても、それが同時に請求者本人の情報でもあると認められる事情がある場合には、請求者本人の情報として扱い、開示請求の対象となると解される。
 例えば、相続財産に関する情報のように、死者に関する情報であると同時に相続人である請求者本人の個人情報の性質も有し、当該個人を識別することができる情報については、当該請求者の個人情報として開示請求の対象となると解される。
エ 審査請求人を本人とする保有個人情報該当性について
 審査請求人の母に係る老人福祉法に基づくやむを得ない措置に係る情報は、相続財産のように他者と共有し、又は他者に帰属する余地があるものではないため、審査請求人本人の情報と同視すべき情報であるとはいえない。
(4) 小括
 以上のとおりであるから、本件決定2で開示された情報以外に本件請求2に係る保有個人情報として特定すべき情報があるとは認められない。
 なお、本件決定2においては、実施機関は、面会制限に係る固有の文書等は存在しないことを前提として、審査請求人が「被措置者との同居生活や面会が不可能となっている」ことを理由に同居生活の回復と面会制限の取消しを求めて当該審査請求を提起した結果、裁決及び決定を行ったものであることから、実施機関としては、別件審査請求に対する裁決書の謄本等を審査請求人が言うところの「面会制限」に係る保有個人情報と判断し、本件情報を開示したとのことである。
 この点、本件情報のうち、平成26年9月24日付け、総務局行政部行政課長から各所属庶務担当課長あての「不服申立取扱件数等の調査について(照会)」と題する文書については、審査請求人に係る記載はない。そして、その文言から不服申立の件数に係る照会であると認められ、照会の対象として審査請求人が行った審査請求が含まれるとしても、当該照会は単なる件数の照会であり、審査請求人に係る情報を収集する意図がないものであることも明らかである。
 行政不服審査法第48条により、不利益変更が禁止されていることから、本件決定2のうち、当該文書を特定し開示した部分を取り消すことはできないが、本件決定2において当該文書を特定したことは誤りであったことは指摘しておく。
6 本件決定3について
 本件決定3については、本件請求3について、審査請求人の母に関する関係機関との経過記録を特定したうえで、審査請求人以外の第三者から提供された情報及び聴取した情報に関する部分が旧条例第19条第6号に該当することを理由として非開示とする部分開示決定を行ったものである。
 したがって、本件非開示部分3の旧条例第19条第6号該当性が問題となる。
 この点について、実施機関は審査請求人の母に係る緊急一時保護事業に係る関係機関との経過記録のうち、審査請求人に関する情報が記載された部分を、本件請求3に係る保有個人情報として特定したとのことである。
 そして、本件請求3に係る保有個人情報として特定された情報は、本件決定1において特定された保有個人情報と同一であり、本件決定3において非開示とした部分と本件決定1において非開示とした部分も同一であることが認められる。
 さらに、当審議会において、審査請求人の母に係る緊急一時保護事業に係る関係機関との経過記録のうち、実施機関が本件決定3において特定しなかった文書を見分したところ、本件決定1において対象情報として特定しなかった情報と同一の情報であることが認められた。
 したがって、本件決定1において検討したとおり、本件非開示部分3のうち、別表2に掲げる情報を除いた部分は、旧条例第19条第6号に該当し、別表2に掲げる情報は旧条例第19条第6号に該当しない。
 また、実施機関は別表3に掲げる情報について本件請求に係る保有個人情報として特定すべきであった。
7 本件決定4について
 本件決定4については、本件請求4に対して審査請求人の母に係る「要援護高齢者緊急一時保護依頼書」「想定問答集」「関係者との面談記録」の各文書を特定したうえで、当該各文書には審査請求人に係る記載がないことから、旧条例第17条に定める自己を本人とする保有個人情報の開示請求には該当しないとして、開示請求を却下したものである。
 したがって、上記の各文書に審査請求人を本人とする保有個人情報の記載があるか否かが争点となる。
 この点、当審議会において、上記の文書を見分したところ、「想定問答集」には、審査請求人に係る記載は認められなかったが、「要援護高齢者緊急一時保護依頼書」は、別表3の項番1の文書と同一の文書であることが認められ、また、「関係者との面談記録」については同表の項番2の文書と同一の文書であることが認められた。
 以上のとおり、本件決定4においては、実施機関は別表3の項番1及び項番2の文書名欄に掲げる文書の該当箇所欄に掲げる情報を本件請求に係る保有個人情報として特定すべきであった。
8 本件決定5について
(1) 本件決定5の争点
 本件決定5については、審査請求人が、東淀川区保健福祉センターが保有する平成25年度及び平成26年度の「老人福祉措置台帳()」及び「老人福祉関係書類」に記載されている審査請求人の母に係る全記録の開示を求めたのに対して、実施機関が、平成25年度及び平成26年度の老人福祉措置台帳は作成しておらず、また、平成25年度及び平成26年度の老人福祉関係書類については保存年限が経過したことから廃棄したとして、不存在を理由として非開示決定を行ったものである。
 したがって、平成25年度及び平成26年度の「老人福祉措置台帳()」及び「老人福祉関係書類」の存否が争点となる。
(2) 平成25年度及び平成26年度の「老人福祉措置台帳()」について
 平成25年度及び平成26年度の「老人福祉措置台帳()」について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、次のとおり説明があった。
・大阪市老人福祉法施行細則(昭和39年大阪市規則第94号)第3条第1項第1号において、保健福祉センター所長は、法第10条の4又は第11条第1項の規定により措置した者に係る措置台帳を作成し、常にその記録を整備しておかなければならないとされている。
・本市では、措置台帳の様式を指定しておらず、また、台帳用として別の文書を作成することを想定していない。
・「措置決定通知書」、「措置廃止決定通知書」、「ケース記録」、「地域ケア会議議事録」等被措置者に関する資料により、被措置者に関する情報について、現在及び過去の状況も含めて正確に把握できることから、これらの文書が措置台帳であると考えている。
・東淀川区役所においても、「措置開始決定通知」、「措置廃止決定通知」及びその添付資料を老人福祉法施行細則に基づく「措置台帳」であるとの考えに基づき、「老人福祉措置台帳(区)」の簿冊は作成していなかった。
 この点、行政機関において、老人福祉法第10条の4又は第11条第1項の措置などの行政処分を行うにあたっては、当該行政処分に係る意思決定が決裁によりなされることが当然に予定されるところ、大阪市老人福祉法施行細則において、作成・整備を義務付けている「台帳」がこれらの措置に係る意思決定を行う決裁文書で足りるとすると、あえて、明文で台帳の作成を義務付けた意義が失われることとなるから、かかる解釈をとることはできない。したがって、老人福祉法施行細則第3条第1項第1号は、措置に係る意思決定とは別に、台帳を作成し、管理することを求めていると解すべきである。
 そして、審査請求人の母に対して老人福祉法第11条第1項に基づく措置がなされたことに争いはないから、実施機関は、老人福祉法施行細則第3条第1項に基づき措置台帳を作成すべきであったにもかかわらず、その解釈を誤り、措置台帳の作成を怠っていたものと認められる。
 他方で、実施施関が平成25年度及び平成26年度において「老人福祉措置台帳(区)」を作成していないとの当該説明を覆すことができる特段の事情も見当たらず、保有個人情報は存在しないとの実施機関の主張については、これを是認するほかない。
(3) 平成25年度及び平成26年度の「老人福祉関係書類」について
 実施機関は、平成25年度及び平成26年度の「老人福祉関係書類」について、保存期間が3年であることから、既に廃棄済みであり不存在であると主張する。そして、当審議会において、本市の文書分類表を確認したところ、「老人福祉関係書類」の保存期間は3年とされている。
 そして、実施機関から提出された平成29年度及び平成30年度の廃棄簿冊目録によると、平成25年度の「老人福祉関係書類」が平成29年度に、平成26年度の老人福祉関係書類が平成30年度にそれぞれ廃棄されたことが確認できた。
 したがって、本件請求5が行われた時点では、平成25年度と平成26年度の老人福祉関係書類は、廃棄されていたものと認められる。
9 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。
10 付言
 上記8(2)のとおり、老人福祉法施行細則第3条第1項に基づく措置台帳を作成していない点については、実施機関の文書管理が不適切であったと言わざるを得ず、今後、実施機関において適切な文書管理がなされるよう強く要請する。

(答申に関与した委員の氏名)
 委員 金井 美智子、委員 岡澤 成彦、委員 塚田 哲之、委員 野田 崇 

別紙

(参考)調査審議の経過 令和2年度諮問受理第175号並びに令和3年度諮問第7号及び第30号~第32

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