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答申第190号

2019年9月9日

ページ番号:622705

大個審答申第190号
令和6年3月29

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から令和3年7月28日付け大大正窓第191号、同年9月9日付け大市民第547号及び同年1012日付け大大正窓第319号により諮問のありました件について、次のとおり一括して答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が行った令和3年6月18日付け大大正窓第134号による不存在による非開示決定(以下「本件決定1」という。)、令和3年7月5日付け大市民第322号による不存在による非開示決定(以下「本件決定2」という。)及び令和3年7月5日付け大大正窓第157号による不存在による非開示決定(以下「本件決定3」といい、本件決定1から3をあわせて「本件各決定」という。)は、いずれも妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求前の経過
(1) 大正区長が、審査請求人の戸籍謄本等請求に対し、令和2年7月31日付け大大正戸発第123号による不交付決定(以下「旧不交付決定」という。)を行った。
(2) 審査請求人は、旧不交付決定を不服として、同年9月23日に大阪法務局に対して審査請求を行った。
(3) 大正区長は、旧不交付決定について、取消理由を「交付しない理由及び根拠条文の号数の記載がないため。」と表示して、令和3年3月29日付け大大正戸発31号により、旧不交付決定を取り消すとともに(以下「本件取消処分」という。)、同日付け大大正戸発第32号により、改めて不交付決定(以下「新不交付決定」という。)を行った。
2 開示請求
(1) 審査請求人は、令和3年6月4日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「令和3年3月29日付大大正戸発第31号取消し通知書及び大大正戸発第32号の決定書に係る同年3月19日に起案した理由を記載した文書等」(以下「請求内容1-1」という。)及び「上記文書を大阪法務局に来週送付するに関するメモ等文書(令和2年7月26日の戸籍謄本等請求に対する不交付の決定を約8ヵ月後に取消し、新たに決定する理由記載の文書)」(以下「請求内容1―2」という。)の開示を求める旨の開示請求(以下「本件請求1」という。)を行った。
(2) 審査請求人は、令和3年6月22日、旧条例第17条第1項に基づき、実施機関に対し、「当時、審査請求中の令和3年3月29日付大大正戸発第31号取消しの通知書及び大大正戸発第32号の決定書及び同年3月19日に同起案した理由を記載した文書に関して(1)大正区役所戸籍グループ等が大正区長に報告等した文書等(以下「請求内容2」という。)(2)同戸籍グループから市民局総務部等が受けた報告等(電話、メール、メモを含む。)の文書等(以下「請求内容3」といい、本件請求1から3をあわせて「本件各請求」という。)」の開示を求める旨の開示請求(以下「本件請求2」という。)を行った。
3 本件各決定
(1) 実施機関は、本件請求1に係る保有個人情報を保有していない理由を次のとおり付して、旧条例第23条第2項に基づき、本件決定1を行った。

 請求内容1-1については、令和3年3月29日付大大正戸発第31号通知書に「決定を取消す理由」を記載していることから、その他に当該理由を記載した公文書は作成していない。
 また、請求内容1-2については、大阪法務局に来週送付する旨は、電話連絡で伝えていることから、当該内容を記載した公文書は作成していない。
 上記の理由から、請求内容1-1及び1-2について、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
(2) 実施機関は、本件請求2のうち、請求内容3に係る保有個人情報を保有していない理由を次のとおり付して、旧条例第23条第2項に基づき、本件決定2を行った。

 請求内容3については、市民局総務部は審査請求に関して大正区役所戸籍グループから報告を受ける必要があるものではなく、本件に関する報告も受けていないことから、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
(3) 実施機関は、本件請求2のうち、請求内容2に係る保有個人情報を保有していない理由を次のとおり付して、旧条例第23条第2項に基づき、本件決定3を行った。

請求内容2については、令和3年3月29日付大大正戸発第31号通知書及び大大正戸発第32号の決定書を資料とし、大正区長に口頭で報告したことから、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しないため。
4 審査請求
 審査請求人は、令和3年6月28日に本件決定1を不服として、同年8月12日に本件決定2を不服として、同年9月22日に本件決定3を不服として、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第4条第1号に基づきそれぞれ審査請求(以下順にそれぞれ「本件審査請求1」から「本件審査請求3」といい、あわせて「本件各審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件審査請求1
(1) 審査請求の趣旨
 非開示決定の取消しを求める。非開示決定の理由には誤りがあり理由不記である。
(2) 審査請求の理由(令和3年1112日付け審査請求人意見書における主張を含む。)
ア 請求内容1―1について
・大正区長は、審査請求人による大阪法務局への旧不交付決定に係る審査請求がなされた後、大正区長は、旧不交付決定から8か月も経過した時点で、突如として、旧不交付決定を職権で取り消しているが、本件取消処分の取消理由や同処分の決裁文書(以下「本件決裁文書」という。)の記載では、なぜ、突如として旧不交付決定が取り消されたのかが不明である。
・したがって、行政手続法(平成5年法律第88号)第8条に基づく理由付記としては不十分であり、また、本件取消決定について、決裁の添付文書・資料、関係職員のメール、メモなどの経過・理由を記載した文書が存在するはずである。
・実際に、大正区役所の職員が大阪法務局あてに本件取消処分に関するメールを送付している。
イ 請求内容1―2について
・本件決裁文書には「大阪法務局に来週送付する旨、説明しました」との記載があり、大正区長は大阪法務局に連絡した事実を認めているが、その具体的な内容は記載されていない。
・実施機関は、大阪法務局には電話で連絡をしたから公文書を作成していないと説明するが、本件取消処分に係る決裁文書に「大阪法務局に来週送付する旨、説明しました」と記載し、決裁関与者に報告している。
・大正区役所職員から大阪法務局職員に送付されたメールの添付文書からは、本件取消処分の1か月前から大正区役所の職員と大阪法務局職員との間に複数の送受信メールが存在することは明らかである。
2 本件審査請求2
(1) 審査請求の趣旨
・大阪市事務分掌規則(昭和24年大阪市規則第133号)第12条1号事務改善及び5号戸籍関係事務の統括及び指導に関することから、報告を受ける必要がある。
・令和3年7月5日付け大市民第322号による「不存在による非開示決定」の取消しを求める。
(2) 審査請求の理由(令和4年1月26日付け審査請求人意見書における主張を含む。)
・市民局は、審査請求について報告を受けるものではないと主張するが、大阪市事務分掌規則の市民局総務部の項、第5号において、戸籍及び住民基本台帳関係事務の総括及び指導に関することと規定されており、また、住民情報担当課長等の担当業務を見ると、戸籍事務に関する業務を担当しており、本件取消処分及び新不交付決定はいずれも戸籍事務に関するものであるから、市民局において、大正区役所の戸籍事務に係る本件取消処分及び新不交付決定に係る報告等の文書・メール等を保有している。
・市民局は、戸籍事務を所管していることから、区役所から戸籍事務の照会、報告を受けており、法務省民事局長等からの通達等を受領している事実がある。
・審査請求人は、開示請求書に「報告等」と記載し、電話、メール、メモ、パソコンに記録された文書を含むものとして開示を求めているものであるが、実施機関は、「報告」という公文書を受けていないことを不存在の理由としており、上記のメモ等の存否について回答しておらず、理由不備、理由不記にあたる。
・審査請求人は、開示請求書に「市民局総務部等」と記載しており、市民局総務部以外が保有している文書も含めて開示を求めている。そして、大阪市事務分掌規則の行政課の項の第4号には「訴訟及び重要な不服申立の総括に関すること」と記載されており、また、同課には行政不服審査担当課課長及び担当係長が配置されており、本件取消処分及び新不交付決定は、これに該当するから、行政課にも請求対象文書が存在する。
・市民局総務部等は事務分掌上、大正区役所職員の地方公務員法(昭和25年法律第261号)上の非違行為について市長に報告する義務があるところ、旧不交付決定の理由に不備があったこと、審査請求人が戸籍謄本等の請求を行ってから8か月経過後に本件取消処分・新不交付決定を行ったことは非違行為に該当するから、市民局等の職員は、これらの報告を受け、その文書を保有している。
・審査請求人は、新不交付決定に対して審査請求を行っているが、大正区長は、当該審査請求への対応に関して、総務局行政部が所管する大阪市リーガルサポーターズ設置運営要綱等に基づく弁護士相談等を行っており、この相談において、旧不交付決定通知書等を関係書類として総務局行政部に送付しているから、「市民局等」(に含まれる総務局行政部)がかかる文書を受領していたことは明らかである。
・審査請求人は、大正区役所の戸籍グループの職員に対して、不交付の審査請求の件を報告しているかと尋ねたところ、報告しているとの回答を得ており、これは、市民局が大正区役所戸籍グループから報告を受けていないとの主張と矛盾するものである。
3 本件審査請求3の趣旨及び理由
(1) 審査請求の趣旨
・本件決定3の取消しを求める。
・本件決定3の理由には誤りがあり理由不記である。
(2) 審査請求の理由(令和4年2月4日付け審査請求人意見書における主張を含む。)
・本件取消処分及び新不交付決定は大正区役所窓口サービス課長が決裁しているが、区長、副区長が承認していないため、公文書として無効である。
・実施機関は、本件取消処分及び新不交付決定に係る決裁権限は、大正区役所課長等専決規程(平成24年達第29号。以下「大正区専決規程」という。)に基づき、窓口担当課長専決事項とされていると主張するが戸籍事務取扱準則(以下「準則」という。)第5条に基づく戸籍事務を取り扱う補助者の選任届を大阪法務局長に提出したときに限り、市長が戸籍事務を取り扱えるところ、当該届を行っていないため、戸籍グループの課長が戸籍事務を取り扱うことはできない。
・実施機関は、旧不交付決定の取消しについて、大阪法務局長に照会を行い、回答を得ているから、当該照会に係る「戸籍照会・回答票」、「戸籍相談票」に本件取消決定に係る記載が存在するはずである。
・実施機関は、旧不交付決定を、8か月以上経過した後に取り消した理由を故意に本件取消処分の決裁に記載せず、その理由を記載した文書は作成しないこととするなど、隠ぺいを行っている。

第4 実施機関の主張
 実施機関の主張は、おおむね次のとおりである。
1 本件決定1について
(1) 請求内容1―1について
・審査請求人が開示を求めている令和3年3月29日付大大正戸発第31号取消し通知書及び大大正戸発第32号の決定書に係る同年3月19日に起案した理由は、「交付しない理由及び根拠条文の号数の記載がないため」であり、これは本件取消処分の通知書に記載している。
・また、本件取消処分及び新不交付決定に係る意思決定過程においては、それぞれの通知書案を用いて、根拠となる法律の名称や該当する条項とその内容及び戸籍謄本等を不交付決定するに至る経緯などについては口頭で説明のうえ決裁を行ったため、それぞれの通知書案以外に当該理由を記載した公文書は作成又は取得しておらず、存在しない。
・なお、審査請求人は、「31号(取消し)通知書の理由の公開を求めていない」、「大大正発第123号決定…の取消しを起案するための理由文書全部及び付帯、添付文書の開示を求めていた。大正区長は情報提供として開示した。」と主張し、実施機関が請求の趣旨を誤認している旨を指摘するが、開示請求書には、「令和3年3月29日付大大正戸発第31号取消し通知書及び大大正戸発第32号の決定書に係る同年3月19日には起案した理由を記載した文書}とあり、実施機関の職員が審査請求人に電話にて請求内容を確認した際に、対象情報は「起案した理由を記載した文書」であることを確認しており、本件請求の趣旨の誤認があるとの指摘は当たらない。
(2) 請求内容1―2について
・実施機関の職員が、「大阪法務局に来週送付するに関するメモ等文書」の意味を電話で審査請求人に確認したところ、「大阪法務局に来週送付する旨を連絡したことに関するもの」であることを確認した上で、請求内容1-2に係る保有個人情報を探索しており、「大阪法務局に来週送付する旨」は、旧不交付決定に対する審査請求に係る実施機関としての対応について、情報提供の趣旨から事務連絡として伝えたものであり、文書による通知ではなく直接大阪法務局に電話連絡で伝えていることから、当該内容を記載した公文書は作成又は取得しておらず、存在しない。
 審査請求人は、審査請求書において、「いつ日時に、法務局のどの部署の誰氏名に、どうのような内容を伝えたのか。非開示理由に記載していません。」と主張するが、請求内容1-2に係る保有個人情報を記載した公文書を作成又は取得していないことを説明しており、理由付記の不備はない。
(3) 市民局との関係について
・市民局は実施機関における戸籍事務の統括所属であるが、準則第20条において、戸籍法第124条に基づく不服の申立てがされたときの報告先は大阪法務局長とされており、市民局あてにその旨の報告を行う取扱いとなっていないことから、本件取消処分及び新不交付決定を行うにあたって、大正区役所から市民局は報告を受け、又は大正区役所を指導する立場にはない。
2 本件決定2について
(1) 本件請求2に対して本件決定2を行った理由について
・戸籍法第124条において、戸籍の謄本等の交付請求等についての市町村長の処分又はその不作為に不服がある者は、管轄法務局長等に審査請求をすることができる旨、定められている。
・開示請求書に記載されている審査請求は、戸籍謄本等の交付請求に対して区長が行った不交付決定に対するものであることから、審査請求すべき行政庁は大阪法務局長であり、大阪市長は当該審査請求に係る審査庁ではない。
・戸籍謄本等の交付請求に対して区長が行った処分に対する審査請求については、準則第2条において「支局管内の市町村の長は、法に定める許可の申請並びにこの準則に定める報告及び照会をするときは、特別の定めのあるもののほか、支局の長にこれを行わなければならない。」と、準則第20条1項において「戸籍法第122条及び第124条に規定する不服の申立てがされたとき、…その概要を報告しなければならない。」とされている。
・戸籍法第1条において、「戸籍に関する事務は、この法律に別段の定めがあるものを除き、市町村長がこれを管掌する。」と、同法第4条において、市長に関する規定は、地方自治法第252条の19第1項の指定都市においては区長に準用する旨、定められていることから、不服申立がなされた際に実施機関は報告を受けることとされていない。
・なお、準則においては、不服申立て等の報告について特別の定めを設けられる規定はなく、当然本市においても区役所から報告を受ける規定もない。
・以上から、本件情報を作成又は取得しておらず、存在しないため本件決定を行った。
(2) 審査請求人の主張に対する反論
・審査請求人は、大阪市事務分掌規則の第12条第1号及び第5号等を根拠に「報告等の文書を受ける必要がある」と主張しているが、市民局は区役所から報告等の文書を受ける規定はない。
・また、審査請求人は、本件取消処分の理由が地方自治法及び地方公務員法に違反する旨主張するが、市民局は報告を受ける規定はない。そのため、これに関する資料を作成及び取得することもなく、当然に関係資料は存在せず、このことは地方自治法及び地方公務員法違反には当たらない。
・なお、審査請求人が「大正区役所戸籍グループからの報告等と、電話、メール、メモを含む記録文書等の開示」を求めていたところ、当庁から「報告」という特定の公文書を受けていないことを不存在の理由としている、と主張している点については、本件審査請求について大正区役所から電話、メールがあった事実はなく、そのため口頭による連絡、パソコンに記録している文書も存在しない。
3 本件決定3について
(1) 本件情報について
・令和3年5月に審査請求人から本件取消処分に係る起案文書一式及び新不交付決定に係る起案文書一式の開示請求があったが、審査請求人と調整のうえで、当該開示請求を取り下げ、情報提供に切り替えることとなったため、本件取消処分及び新不交付決定に係る決裁文書を送付したところ、本件請求3があった。
・本件請求3の対象については、審査請求人と調整のうえで、既に情報提供している情報は対象としないこととなった。
・実施機関において、当該文書以外に請求内容に合致する保有個人情報がないかを探索したが、特定すべき保有個人情報は存在しなかった。
・大正区長には本件取消処分の通知書及び新不交付決定の決定書を資料とし、口頭で報告したことから、当該保有個人情報をそもそも作成又は取得しておらず、実際に存在しない。
(2) その他の主張について
・審査請求人は、「非開示決定の理由には誤りがあり理由不記である。」とするが、公文書を作成又は取得していない理由は本件決定3に記載しており、理由不記の不備はない。
・審査請求人は、「31号通知書及び32号決定書に係る吉田区長、副区長の承認を受けておらず、決済、起案をしていないことから起案書自体が存在しない。」、「上記31号、32号は区長承認、副区長承認の電子承認を得ていない。」、「承認・追認のない31号処分及び32号処分は公文書として無効である。」とするが、戸籍の不交付決定及びその取消し決定は戸籍等に係る証明に関する事項であり、当該事項は大正区専決規程第5条第1項において窓口サービス課長専決事項とされており、大正区専決規程に基づき窓口サービス課長の決裁により決定・通知を行っていることから、「公文書として無効」との主張は失当である。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
2 争点
 本件各審査請求における争点は、いずれも、特定すべき保有個人情報の有無及び本件各決定の理由の提示の不備の有無である。
3 本件各請求の決定理由について
 実施機関によれば、本件各決定の理由は第2 3(1)(3)に記載のとおりである。
4 本件各決定の妥当性について
(1) 本件決定1について
ア 対象文書の存否について
 審査請求人は、本件各決定について、本件取消処分の決裁以外にその理由を記載した文書、メモなどがあるはずであると主張し、本件決定1の取消しを求めている。
 この点、事務局職員をして、実施機関に確認させたところ、当該取消決定の決裁には資料等の添付はなく、取消通知書の案のみで構成されているとのことであり、この実施機関の主張に不自然・不合理な点は見当たらない。
 また、この点に関し、審査請求人は意見書中で、令和3年3月19日付で実施機関の職員から大阪法務局の職員に送付したメール文書が対象になるのに特定していない旨を主張しているが、当該メールは弁明書の送付に関する事務連絡であって、審査請求人が開示を求める本件取消処分及び本件不交付決定を令和3年3月19日に起案した理由を記載した文書等ではないことは明らかである。
 そして、本件取消処分の決裁以外にその理由を記載した文書、メモなどがあるはずである旨主張しているが、審査請求人はその主張の根拠を示さず、また実施機関の主張を覆すに足る事実も確認できない。
 以上により、他に特定すべき情報は存在しないとする実施機関の主張に不自然不合理な点は認められない。
 なお、審査請求人は、令和3年1112日付け審査請求人意見書において、大阪市のパソコンやメールの検証や、大阪法務局職員の陳述を求めるが、当審議会としては、旧条例第60条に定める調査の必要性を認めないため、審査請求人の求める検証等は実施しない。
イ 理由提示の不備について
 次に、審査請求人は、本件決定1の理由提示に不備がある旨主張する。
 この点、開示請求に係る保有個人情報の全部又は一部を開示しないときの理由の提示について、旧条例第23条第3項は、「開示しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が、当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。」と規定している。
 上記条文は、実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保し、その恣意を抑制するとともに、開示しない理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨であると認められる。
 このような理由の提示の趣旨に鑑みれば、不存在による非開示決定通知書に付すべき理由は、開示請求者において、不存在である具体的な理由が、そもそも対象情報を作成又は取得していないのか、存在はしたが保存年限が経過したため廃棄したのかなど、何故対象情報が存在しないのかを了知し得るものでなければならないと認められる。
 そして、本件決定1の理由は、第2 3(1)記載のとおりであり、その記載によれば、不存在である具体的な理由が、そもそも対象情報を作成又は取得していないことであることは明らかであり、理由提示に不備があるものとは認められない。
(2) 本件決定2について
 本件決定2について、審査請求人は、実施機関の市民局総務部は大正区役所を含む実施機関における戸籍関係事務を総括しているから、実施機関の大正区役所から本件取消決定及び本件不交付決定について、報告を受けているはずであり、当該報告に係る文書を保有しているはずであり、実施機関の大正区役所の職員からも旧不交付決定の審査請求について、市民局に報告している旨の発言があったと主張し、本件決定2の取消しを求めている。
 この点について、実施機関は、戸籍法(昭和22年法律第224号)第124条において、戸籍の謄本等の交付請求等についての市町村長の処分又は不作為に不服がある者は、管轄法務局長に審査請求をすることが定められていること、実施機関における事務分掌を定めた大阪市事務分掌規則(昭和24年大阪市規則第133号。ただし、令和4年大阪市規則第21号による改正前のもの。)の第12条市民局総務部の項第5号の「戸籍及び住民基本台帳関係事務の統括及び指導に関すること」には、個別の交付決定・不交付決定について市民局から区役所に報告を求めることは含まれていないことから、戸籍謄本等の不交付決定に係る審査請求は大阪法務局に報告されるものであり、区役所から市民局へ報告することとなっておらず、実際に報告を受けていないため、請求内容に係る文書は存在しないと主張する。
 そして、当審議会において事務局職員をして実施機関に確認させたところ、令和3年6月22日付けの審査請求人の開示請求について、その一部を大正区役所が担当し、その一部を市民局が担当することから、審査請求人による旧不交付決定に係る審査請求があった事実を大正区役所職員より市民局の職員へ電話で伝達していたため、大正区役所の職員が、審査請求人から令和3年9月15日に「戸籍の不交付決定の件は、市民局には報告しているのか。」と尋ねられた際は、上記経過より「このような事案があるということは伝えています」と返答したものであり、旧不交付決定に係る審査請求について、大正区役所の職員から市民局の職員に文書で報告等を行ったものではないとのことであり、この説明に特段、不自然、不合理な点は見当たらない。
 さらに、審査請求人は、実施機関の職員が本件取消処分の決裁以外にその理由を記載した文書を隠ぺいしている旨主張するが、その具体的な根拠を説明せず、本件取消処分の決裁以外にその理由を記載した文書が存在するとの具体的な主張を行っておらず、実施機関の主張を覆すに足る事実も確認できない。
 以上により、他に特定すべき情報は存在しないとする実施機関の主張に不自然不合理な点は認められない。
 なお、審査請求人は令和4年1月26日付け審査請求人意見書の中で、大正区役所から総務局行政部に提出された資料の提出を求め、大阪市役所本庁舎、大正区役所等の検証を求めているが、いずれも旧条例第60条に定める調査の必要性を認めないため、実施しない。
(3) 本件決定3について
ア 対象文書の存否について
 審査請求人は旧不交付決定の取消処分及び新不交付決定の決裁が区長の承認を得ていないことから無効であり、不存在理由の記載が誤りであると主張し、本件決定3の取消しを求めている。
 この点、本件における争点は、上述のとおり、対象文書の存否、すなわち、大正区役所戸籍グループ等が大正区長に報告等した文書等が存在しているか否かであるところ、本件旧不交付決定の取消処分及び新不交付決定の意思決定に瑕疵があったか否かは当該文書等の存否とは別の問題であって、開示請求に対する不存在決定の妥当性に影響を与えるものではない。
 そして、口頭のみで説明したとする実施機関の主張を覆すに足る事情を見出すことはできない。
 なお、審査請求人は、実施機関が「旧不交付決定を取り消し、新不交付決定をする決裁に関して大正区長に報告した資料等」を特定したのに対して、「旧不交付決定を取り消し、新不交付決定をするまでの過程で大正区長に報告した資料すべて」を請求した趣旨であると主張しているものとも考えられるが、本件請求の請求文言からそこまでの情報を求めているものと解することは困難であるから、当審議会の判断に際して考慮しない。
 また、審査請求人は令和4年2月4日付け審査請求人意見書の中で、大正区役所から大阪法務局に提出された資料、大正区長が大阪市リーガスサポーターズ制度設置要綱に基づく業務委託契約の受託者である弁護士との間で交わした文書、メールなどの提出を求め、和泉市役所、大阪市役所、大正区役所の検証を求めているが、いずれも旧条例第60条に定める調査の必要性を認めないため、実施しない。
イ 理由提示の不備について
 次に、審査請求人は、本件決定3の理由提示に不備がある旨主張する。
 この点、本件決定3の理由は、第2 3(3)記載のとおりであり、その記載によれば、不存在である具体的な理由が、そもそも対象公文書を作成又は取得していないことであることは明らかであり、理由提示に不備があるものとは認められない。
5 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
委員 金井 美智子、委員 岡澤 成彦、委員 塚田 哲之、委員 野田 崇

(参考)調査審議の経過 令和3年度諮問受理第28号・33号・52

答申第190号

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