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答申第191号

2019年9月9日

ページ番号:622706

大個審答申第191
令和6年3月29
 

大阪市長 横山 英幸 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子 

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市長(以下「実施機関」という。)から別表1の(い)欄に記載の諮問がありました件について、次のとおり一括して答申いたします。

第1 審議会の結論
 
実施機関が行った別表1の項番1から項番5までの(お)欄に記載の決定(以下項番順にそれぞれ「本件決定1」から「本件決定5」までといい、あわせて「本件各決定」という。)のうち、本件決定2から本件決定5までは妥当である。
 本件決定1において開示しないこととした部分のうち、別表3に掲げる部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、別表1の項番1から項番5までの(う)欄に記載の日に、実施機関に対し、同表の項番1から項番5までの(え)欄に記載の3件(なお、項番3から項番5までは1件の開示請求であるが、便宜上、実施機関の部署ごとに3件に分割して記載している。)の保有個人情報開示請求(以下項番1から項番5までに係る請求を順に「本件請求1」から「本件請求5」までといい、本件請求1から本件請求5までをあわせて「本件各請求」という。)を行った。
2 本件各決定
(1) 実施機関は、本件請求1に係る保有個人情報のうち、別表1の項番1の(か)欄に記載の「開示請求に係る保有個人情報」を対象情報と特定した上で、同欄に記載の「開示しないこととした部分」を開示しない理由を同表の項番1の(き)欄に記載のとおり付して、旧条例第23条第1項に基づき、本件決定1を行った。
(2) 実施機関は、本件請求2に係る保有個人情報のうち、別表1の項番2の(か)欄に記載の情報を対象情報として特定したうえで、旧条例第23条第1項に基づき、その全部を開示する旨の本件決定2を行った。
(3) 実施機関は、本件請求3に係る保有個人情報のうち、別表1の項番3の(か)欄に記載の情報を対象情報として特定したうえで、旧条例第23条第1項に基づき、その全部を開示する旨の本件決定3を行った。
(4) 実施機関は、本件請求4に係る保有個人情報のうち、別表1の項番4の(か)欄に記載の情報を対象情報として特定したうえで、旧条例第23条第1項に基づき、その全部を開示する旨の本件決定4を行った。
(5) 実施機関は、本件請求5に係る保有個人情報について、別表1の項番5の(か)欄に記載の情報については、保有していない理由を同表の項番5の(き)欄に記載のとおり付して、旧条例第23条第2項に基づき、本件決定5を行った。
3 審査請求
 審査請求人は、別表1の項番1から項番5までの(く)欄に掲げる日にそれぞれ、本件決定1から本件決定5までを不服として、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき、審査請求(以下別表1の項番に応じてそれぞれ「本件審査請求1」から「本件審査請求5」までという。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 
審査請求人の主張は、おおむね別表1の項番1から項番5までの(け)欄に記載のとおりである。

第4 実施機関の主張
 
実施機関の主張は、おおむね別表1の項番1から項番5までの(こ)欄に記載のとおりである。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
 しかしながら、旧条例は、すべての保有個人情報の開示を義務づけているわけではなく、第19条本文において、開示請求に係る保有個人情報に同条各号のいずれかに該当する情報が含まれている場合は、実施機関の開示義務を免除している。もちろん、第19条各号が定める非開示情報のいずれかに該当するか否かの具体的判断に当たっては、当該各号の定めの趣旨を十分に考慮するとともに、当該保有個人情報の取扱いの経過や収集目的などをも勘案しつつ、旧条例の上記理念に照らして市民の権利を十分に尊重する見地から、厳正になされなければならないことはいうまでもない。
2 争点
 審査請求人は、本件決定1は旧条例第19条第2号、第3号及び第6号に該当するとして部分開示としたのに対して、非開示情報に該当しないと主張し、本件決定2から本件決定4までについては開示された情報以外の情報があるはずであると主張し、本件決定5については不存在による非開示決定に対して、対象となる情報が存在しているはずであると主張している。
 したがって、本件各審査請求における争点は、本件決定1については旧条例第19条第2号、第3号及び第6号該当性であり、本件決定2から本件決定5までについては対象情報の特定の妥当性である。
3 本件決定1の旧条例第19条各号該当性について
(1) 旧条例第19条第2号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報…であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」は開示しないものと規定しているが、同号ただし書では、これらの情報であっても、「ア 法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報、イ 人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報、ウ 当該個人が…公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」については、開示しなければならない旨規定している。
(2) 旧条例第19条第3号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第3号本文は、法人その他の団体(以下「法人等」という。)又は事業を営む個人の事業活動や正当な競争は、社会的に尊重されるべきであるとの理念のもとに、「法人等…に関する情報であって、開示することにより、当該法人等…の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は、原則として非開示とすることを定めている。
 そして、この「権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」とは、①法人等又は事業を営む個人(以下「法人等の事業者」という。)が保有する生産技術上又は販売上の情報であって、開示することにより、当該法人等の事業活動が損なわれるおそれがあるもの、②経営方針、経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、開示することにより、法人等の事業者の事業運営が損なわれるおそれがあるもの、③その他開示することにより、法人等の事業者の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれるおそれがあるものがこれに当たると解される。
 なお、同号ただし書において、「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」は、条例第19条第3号本文に該当する場合であっても、開示しなければならない旨規定している。
(3) 旧条例第19条第6号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第6号は、本市の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業の目的を達成し、その公正、円滑な執行を確保するため、「開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は開示しないことができると規定している。
 ここでいう「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を開示することによる利益と支障を比較衡量した上で、開示することの必要性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものであることが必要である。
 したがって、「支障を及ぼすおそれ」は、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
(4) 本件非開示部分について
 当審議会において本件決定1において非開示とされた部分を実際に見分したところ、当該非開示部分は、別表2の対象情報(対象文書)欄に掲げる文書の同表該当箇所欄に掲げる場所に記載された同表非開示部分欄に記載された情報であった。以下対象文書ごとに検討する。
ア 「生活保護に関するケース記録票」について
(ア) 別表2の項番1に掲げる情報及び同表項番3に掲げる情報のうち来所者名については、審査請求人以外の個人の氏名であって、当該氏名そのものにより、審査請求人以外の特定の個人を識別することができるものである。そして、同表項番3に掲げる情報のうち、来所者に係る相談内容及び対応内容に係る情報については、審査請求人以外の個人の発言及び行動に関する情報であり、審査請求人以外の特定の個人を識別することができる情報であることが認められた。
 したがって、これらの情報は、旧条例第19条第2号本文に該当し、また、その情報の性質上、同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないと認められる。
(イ) 同表項番2に掲げる情報については、実施機関に対して、審査請求人の診療状況を回答した医療機関名が記載されており、当該情報に続いて、当該医療機関からの回答によって審査請求人に対する生活保護法(昭和25年法律第144号)上の処遇変更を変更する旨及びこの処遇変更の方針を審査請求人に伝える旨が記載されている。
 この点について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、本件開示請求1において審査請求人が開示を求める2012年8月から10月までの期間に実施機関が審査請求人に係る診療状況についての照会を行った医療機関は1機関のみであり、当該医療機関に照会をした事実及びその結果は審査請求人も了知しているとのことである。
 したがって、当該非開示部分に記載されている情報は、審査請求人において了知しているものと考えられるから、これを開示することにより、実施機関における生活保護業務の実施に支障が生じるものとは考えられない。
イ 「関係先照会決裁書(兼同意書使用決裁書)」及び「生活保護法第29条に基づく調査について(回答)」について
(ア) 「生活保護法第29条に基づく調査について(回答)」のうち、別表2の項番6に記載された文書に記載されている情報を当審議会において見分したところ、金融機関の回答内容の一部に審査請求人以外の個人(当該金融機関の職員等を除く。)の氏名、性別、生年月日、照会対象事実の有無が記載されていた。これらの情報について、実施機関は、保有個人情報であると特定のうえ、旧条例第9条第2号に該当するとして非開示としている。しかしながら、当該文書は、当該金融機関が実施機関からなされた審査請求人を含む複数の者に対する回答を一覧表の形式にまとめて一括で回答したものであるから、そもそも、当該記載は審査請求人を本人とする保有個人情報には該当しない。したがって、本来は、当該部分については、本件請求の対象外とすべきであったが、当該部分が開示されないという点に誤りはなく、本件決定1において当該部分を非開示としたことは結論として妥当である。
(イ) 標記の文書に記載された調査先の金融機関の名称や調査項目、当該金融機関からの回答内容に係る情報のうち、別表2の項番7に記載されている情報については、当審議会で見分したところ、実施機関の調査に対して、照会先の金融機関が調査書類に不備があったため返却し、訂正のうえ、再度調査するよう依頼する旨の記載がなされていた。
 この部分について、実施機関は、これを審査請求人に開示すると、生活保護の申請者が財産の隠蔽や処分等を行い、差押え等を回避することが容易となり、また生活保護法(昭和25年法律第144号)第4条に規定されている利用し得る資産の把握が困難となり、今後の生活保護事務の適正な遂行に支障を生じるおそれがあるため、旧条例第19条第6号に該当する非開示情報である旨主張する。
 この点、当該部分のうち、5行目から9行目の非開示部分を当審議会で見分したところ、金融機関において実施機関からの照会に不備があると判断した根拠が記載されていた。かかる情報が開示されると、実施機関の生活保護法に基づく金融機関への調査について、どのような場合に金融機関からの回答が得られないかという情報が開示されることとなり、申請者が財産の隠蔽や処分等を行い、差押え等を回避することにつながるおそれがあると認められることから、旧条例第19条第6号に該当する。
 他方、当該部分のうち、2行目から4行目の非開示部分を当審議会で見分したところ、単に、不備があるため返却し、再度郵送するよう記載されているのみであり、当該記載からは当該金融機関がどのような理由で調査に不備があると判断したことは了知できないものと認められるから、かかる情報を開示したとしても申請者が財産の隠蔽や処分等を行い、差押え等を回避することにつながるおそれがあるとは認められず、旧条例第19条第6号には該当しない。
(ウ) 標記の文書に記載された調査先の金融機関の名称や調査項目、当該金融機関からの回答内容に係る情報のうち、別表2の項番6及び7に記載されている情報を除く部分については、当審議会で見分したところ、審査請求人から提出された資産申告書に記載されていない金融機関に対する生活保護法第29条に基づく調査に対する回答であると認められた。
 この点、平成29年3月17日付け大個審答申第90号において、当該調査が通常どの申請者に対しても同様の流れで行う事務であり、実施機関が今後も同様の流れで申請者に係る資産調査を行うことを踏まえると、一旦、当該調査に関する情報が開示されると、それにより実施機関における調査の手法等をはじめとした資産調査の全貌が明らかになってしまうおそれがあり、申請者が財産の隠蔽や処分等を行うことが容易となる相当の蓋然性が認められることを理由に当審議会として旧条例第19条第6号に該当すると判断しているところである。
 したがって、大個審答申第90号における当審議会の判断と同様に、標記の文書に記載された調査先の金融機関の名称や調査項目、当該金融機関からの回答内容に係る情報のうち、別表2の項番6及び7に記載されている情報を除く部分については「資産申告書」により申告のあった金融機関以外の金融機関に対する調査に関する情報であることから、旧条例第19条第6号に該当する。
(エ) 「生活保護法第29条に基づく調査について(回答)」に押印されている金融機関・保険会社の印影については、法人等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、開示することにより偽造等のおそれがあり、当該法人等の事業運営が損なわれるおそれがあると認められるため、旧条例第19条第3号に該当する。
(オ) 「生活保護法第29条に基づく調査について(回答)」に記載されている金融機関の担当者の氏名及び同文書に押印されている金融機関の担当者の印影については、審査請求人以外の個人の氏名であって、当該氏名そのものにより、審査請求人以外の特定の個人を識別することができる情報であることが認められるから、旧条例第19条第2号本文に該当し、また、その情報の性質上、同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないと認められる。
ウ 「親族にかかる戸籍関係書類」について
(ア) 当審議会において見分したところ、標記の文書は、審査請求人の親族に係る戸籍、除籍及び戸籍附票の全部事項証明書であった。これらの文書に記載されている各情報は、当該情報の性質上、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものであるから旧条例第19条第2号本文に該当する。
(イ) そして、戸籍法(昭和22年法律第224号)は、戸籍謄本等について次のとおり規定している。
10条 戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第24条第2項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
2―3 省略
10条の2 前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
(1) 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
(2) 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
(3) 前2号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
2―6 省略
 当審議会において、審査請求人の親族に係る戸籍、除籍を見分したところ、審査請求人は、上記の戸籍法の規定に基づき当該戸籍及び除籍の証明書の交付を請求できる者に該当することが認められた。したがって、戸籍、除籍については、旧条例第9条第2号ただし書アの法令等の規定により審査請求人が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当する。
(ウ) 住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)は、戸籍附票の請求について次のとおり規定している。
(戸籍の附票の写しの交付)
20条 市町村が備える戸籍の附票に記録されている者(当該戸籍の附票から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされ、かつ、当該記載が消除された者を除く。)を含む。次項において同じ。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、当該市町村の市町村長に対し、これらの者に係る戸籍の附票の写し(第16条第2項の規定により磁気ディスクをもつて戸籍の附票を調製している市町村にあつては、当該戸籍の附票に記録されている事項を記載した書類。次項及び第3項並びに第46条第2号において同じ。)の交付を請求することができる。
2 省略
3 市町村長は、前2項の規定によるもののほか、当該市町村が備える戸籍の附票について、次に掲げる者から、戸籍の附票の写しで第17条第2号から第6号までに掲げる事項のみが表示されたものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該戸籍の附票の写しを交付することができる。
(1) 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の附票の記載事項を確認する必要がある者
(2) 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
(3) 前2号に掲げる者のほか、戸籍の附票の記載事項を利用する正当な理由がある者
4 省略
5 第12条第2項から第7項までの規定は第1項の請求について、第12条の2第2項から第5項までの規定は第2項の請求について、第12条の3第4項から第9項までの規定は前2項の申出について、それぞれ準用する。この場合において、これらの規定中「総務省令」とあるのは「総務省令・法務省令」と、「住民票の写し又は住民票記載事項証明書」とあるのは「戸籍の附票の写し」と読み替えるほか、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
【表省略】
(本人等の請求による住民票の写し等の交付)
12条 省略
2―5 省略
6 市町村長は、第1項の規定による請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
7 省略
 当審議会において、当該戸籍附票を見分したところ、審査請求人は、上記の住民基本台帳法の規定に基づき当該戸籍附票の交付を請求できる者に該当することが認められた。
 しかしながら、同法第20条第5項が準用する同法第12条第6項において、戸籍附票の写しの請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができるとされている。
 この点、戸籍の附票の写し又は戸籍の附票の除票の写しの交付に関する省令(昭和60年法務省・自治省令第1号)において次のとおり記載されており、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、ドメスティック・バイオレンス等に係る支援措置として、一定の場合には戸籍の附票の写しの交付を拒否することとされているとのことが確認できた。
(本人等の交付の請求の手続及び請求につき明らかにしなければならない事項)
第1条 省略
2 法第20条第5項において読み替えて準用する法第12条第2項第4号に規定する総務省令・法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
(1) 省略
(2) 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者のうち更なる暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがあるものに係る請求である場合その他市町村長が法第20条第5項において準用する法第12条第6項の規定に基づき請求を拒むかどうか判断するため特に必要があると認める場合にあつては、請求事由
(3) 省略
 したがって、戸籍附票については、住民基本台帳法に基づき戸籍附票の写しを請求することができる者に該当する場合であっても一定の場合には戸籍附票の交付を拒否される可能性があるものであると認められるから、本件については、旧条例第19条第2号ただし書アの法令等の規定により又は慣行として審査請求人が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当するとまではいえない。また、その情報の性質上、同号ただし書イ、ウのいずれにも該当しない。
(エ) 事務局職員をして、生活保護事務における扶養照会について実施機関に確認させたところ、次のとおりの説明があった。
・「親族にかかる戸籍関係書類」は実施機関が審査請求人の扶養義務者の存否を調査するために生活保護法に基づく職権で取得したものである。
・扶養照会については、原則として、三親等以内の直系血族と兄弟姉妹、配偶者に加え、これらを除く三親等以内の親族のうち、実際に家庭裁判所において扶養義務創設の審判がなされる蓋然性が高い状況にある者を対象として、要保護者からの申告に基づき、その存否の確認を行い、さらに必要があるときは、戸籍謄本等により存否の確認を行うが、これらの者が扶養義務の履行が期待できない場合は、扶養照会を行わない。
・要保護者やその家族と扶養義務者との関係が良好ではない場合や要保護者が困窮している状況を扶養義務者に知られたくないと考えている場合など、要保護者やその家族から扶養義務者への扶養照会を行わないよう申入れがある場合があるが、このような申入れがあっても扶養義務の履行が期待できないとは言えないときは、実施機関において扶養照会を行うこととなる。したがって、要保護者やその家族が扶養照会を希望していない場合に、要保護者の親族の戸籍を実施機関が取得している事実を要保護者が知ったときは、実施機関が親族への扶養照会を行ったのではないか、あるいは今後扶養照会を行おうとしているのではないかといった疑念を要保護者やその家族が抱き、結果として、被保護者に無用の不信感や感情的な反発を生じさせることになり、事務の性質上、被保護者に対する支援のみならず、将来の生活保護事務全般の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
・本件については、審査請求人の親族から扶養照会をしないよう申入れがあったものであり、本件の戸籍・除籍を開示すると、実施機関が当該戸籍・除籍に記載されている親族に対して扶養照会を行ったのではないかといった疑念を審査請求人やその親族が抱きかねない。
・したがって、当該戸籍・除籍等に記載された情報については、旧条例第19条第2号に該当するものとして非開示としたが、正しくは、同条第6号にも該当するものである。
 しかしながら、本件決定1においては、保有個人情報を「親族にかかる戸籍関係書類」と表示して非開示とする決定を行っており、審査請求人において、当該非開示部分が親族の戸籍・除籍に係る書類であることは了知しているものと考えられるから、これらを開示することにより、実施機関の主張するような事態が生じるものとは認められないから、当該部分については、旧条例第19条第6号には該当しない。
4 本件決定2で特定した情報(以下「本件情報2」という。)以外に特定すべき保有個人情報の存否について
(1) 実施機関は、開示請求で指定された期間に係る審査請求人に対する生活保護における医療扶助として支給した医療費の明細として生活保護システムに記録されている医療機関からの請求記録を特定した上で本件情報2を特定し、開示した。
(2) これに対して、審査請求人は、本件情報2のうち、次の点からみて、正確なデータとは考えられないと主張する。
ア 診療年月が「令和1年6月」とされている「A薬局」の明細が同額で重複している。
イ 本件情報2のデータの順序について、診療年月が「令和1年11月」とされているデータの間に「令和1年1月」のデータが挟まれている。
ウ 平成29年6月に「Bクリニック」を受診しているがその記録がない。
エ 平成29年9月に同クリニックにおいて診断書を作成してもらった際の記録がない。
(3) かかる審査請求人の主張について、実施機関は次のとおり主張する。
ア 令和元年6月における「A薬局」の重複については、診療報酬の審査支払機関において診療報酬明細の返戻を受けた薬局が再請求を行った事実が記載されたものである。
イ 平成29年6月に「Bクリニック」が記載されていないという点については、審査請求人は、同月に生活保護法に基づく医療扶助として「Bクリニック」において医療を受けていないためである。すなわち、生活保護法第15条に定められた医療扶助は現物給付により行われ、生活保護実施機関は公費負担者番号や生活保護受給者の氏名、生年月日、受給者番号等を記載した医療券を発行し、医療機関に生活保護受給者に対する医療扶助を委託することとなるが、実施機関は同月に審査請求人の「Bクリニック」における医療扶助のための医療券を発行していないことから、医療扶助の委託のための費用が「Bクリニック」から請求された事実もない。
(4) また、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、次のような説明があった。
ア 対象文書2はレセプトの処理年月日順に並んでおり、通常は診療年月日順と同じになるが医療機関による請求が遅れた場合診療年月日順とは異なることがある。本件においても医療機関の請求遅れがあったため、令和元年11月分のデータの間に同年1月分が挟まれた順番になったものである。
イ 審査請求人が本件請求2において「医療費のお知らせ」を添付していたことから、「医療費のお知らせ」に記載されている医療費(診療報酬)の請求記録を生活保護システムのレセプト管理システムに登録されているデータから特定して開示したものである。
 審査請求人が主張する平成29年9月の「Bクリニック」での診断書作成の費用については、審査請求人に係る医療扶助として支給していることは事実であるが、当該費用は、健康保険制度における保険外の費用である文書料であることから、レセプトによる請求ができない。
 上述のとおり、「医療費のお知らせ」に記載されているデータはレセプトによる請求に対して支払ったものだけであるため、当該文書料については、レセプトをもとに作成される「医療費のお知らせ」には掲載されないことから、対象文書2にも記載されていないものである。
(5) かかる実施機関の説明に不自然、不合理な点は認められないから、本件情報2以外に特定すべき保有個人情報は存在しないとする実施機関の主張にも不自然、不合理な点は認められない。
5 本件決定3で特定した情報(以下「本件情報3」という。)及び本件決定4で特定した情報(以下「本件情報4」という。)以外に特定すべき保有個人情報の存否並びに本件決定5において特定すべき保有個人情報の存否について
(1) 審査請求人は、実施機関の東住吉区役所、旭区役所、天王寺区役所が保有する「知的障害者(児)指導台帳」の開示を求めたところ、天王寺区役所は同区役所が保有する審査請求人に係る「知的障害者(児)指導台帳」の写しを、旭区役所においては同区役所が保有する審査請求人に係る「知的障害者(児)指導台帳」の写しをそれぞれ保有個人情報として特定し、東住吉区役所は審査請求人に係る「知的障害者(児)指導台帳」を保有していないとして不存在決定を行った。
(2) 実施機関の主張によれば、本市における「知的障害者(児)指導台帳」に係る事務は次のとおりである。
 実施機関においては、「療育手帳制度について」(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)及び「療育手帳制度の実施について」(昭和48年9月27日児発第725号厚生省児童家庭局長通知)に基づく療育手帳の発行に関して、発行の判定機関であるこども相談センター又は心身障がい者リハビリテーションセンターから判定結果通知書が発行された際に「知的障害者(児)指導台帳」を作成し、同台帳に療育手帳の交付を受けた者の氏名、生年月日、住所、療育手帳の判定結果、身体障害者手帳の交付状況等を記載することとしている。
 そして、療育手帳の交付を受けた者が大阪市の市域内で行政区をまたいで転居した場合には、「知的障害者(児)指導台帳」及び付随する書類を転出区から転入区に送付することとしている。
(3) 審査請求人の本件請求3に対して、実施機関の東住吉区役所、旭区役所、天王寺区役所それぞれ異なる内容の決定を行った点について、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、次のような説明があった。
 審査請求人は、本件請求3がなされるまでに、大阪市内を東住吉区、旭区、天王寺区と転居していることから、上記(2)の取扱いに従い、審査請求人に係る知的障害者(児)指導台帳及び付随する書類の原本も東住吉区役所、旭区役所、天王寺区役所と順に引き継がれている。
 したがって、本件請求3に対しては、請求時点の居住区を所管する天王寺区役所においては、知的障害者(児)指導台帳の原本を保有個人情報として特定し、東住吉区役所では既に旭区役所に知的障害者(児)指導台帳の原本を引きついでいたことから不存在を理由とする非開示決定を行ったものである。そして、旭区役所においては、請求時点では、天王寺区役所に知的障害者(児)指導台帳の原本を引き継いでいたが、その写しを保有していたため、その写しを保有個人情報として特定して開示したとのことである。また、旭区役所においては、知的障害者(児)指導台帳及びその付随書類を引き継いだ際にその写しを作成・保管する取扱いとしているわけではなく、本件については、審査請求人が旭区内に居住している際に知的障害者(児)指導台帳の開示請求を行い、同区役所において当該開示請求に対する開示決定を行ったことから、その決裁に添付された知的障害者(児)指導台帳の写しを保有個人情報として特定したとのことであった。
(4) この点について、審査請求人は、台帳に平成28年7月30日の面会記録がないことから本件情報3及び本件情報4以外に特定すべき保有個人情報があると主張していると解される。
 この点、当審議会で本件情報3及び本件情報4を見分したところ、これらは審査請求人に係る知的障害者(児)指導台帳であるところ、実施機関の主張のとおり、療育手帳の交付を受けた者である審査請求人の氏名、生年月日、住所、療育手帳の判定結果、身体障害者手帳の交付状況等が記載されていること、審査請求人が主張する平成28年7月30日の面会記録は記載されていないものの、当該書類の他の記載事項を踏まえると、これらの書類は面談内容を逐一記載するものではないものであることが認められ、さらに、知的障害者(児)指導台帳に面談内容を逐一記載すべきであることを定めた規程等も見当たらなかったから、審査請求人が主張する平成28年7月30日の記載がないことをもって、他に特定すべき文書が存在するものとは認められない。
 そして、審査請求人は他に本件情報3及び本件情報4以外に特定すべき保有個人情報が存在することについて、具体的な主張を行わず、本件情報3及び本件情報4以外に特定すべき保有個人情報は存在しないとする実施機関の主張にも不自然、不合理な点は認められない。
(5) また、審査請求人の生活保護に係るケース記録などの個人情報が区ごとに管理されているのと同様、知的障害者(児)指導台帳も転居後も旭区役所には引き継がれず、東住吉区が保有しているはずであるとして本件決定5において保有個人情報として特定すべきであると主張していると解される。
 この点について、当審議会で本件情報3及び本件情報4を見分したところ、実施機関の主張のとおり、審査請求人が大阪市内東住吉区、旭区、天王寺区と転居していることが確認できた。そして、実施機関においては、転居にあたって、知的障害者(児)指導台帳及び付随書類を転居先の区役所に引継ぐこととしているとの実施機関の説明に不自然、不合理な点はなかった。
 したがって、本件決定5において他に保有個人情報として特定すべき情報が存在するものとは認められない。
6 結論
 したがって、第1記載のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
 委員 野呂 充、委員 小林 邦子、委員 篠原 永明、委員 矢口 智春

別表1~3

(参考)調査審議の経過 令和3年度諮問受理第47号・第57号・第58号・第60号・第61

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