ページの先頭です

答申第198号

2019年9月9日

ページ番号:622714

大個審答申第198
令和6年3月29

大阪市教育委員会
教育長 多田 勝哉 様

大阪市個人情報保護審議会
会長 金井 美智子

答申書

 大阪市個人情報の保護に関する法律の施行等に関する条例(令和5年大阪市条例第5号)附則第3項の規定によりなお従前の例によることとされた同条例による改正前の大阪市個人情報保護条例(平成7年大阪市条例第11号。以下「旧条例」という。)第45条に基づき、大阪市教育委員会(以下「実施機関」という。)から令和4年3月31日付け大市教委第4018号により諮問のありました件について、次のとおり答申いたします。

第1 審議会の結論
 実施機関が令和3年1221日付け大市教委第2940号により行った部分開示決定(以下「本件決定」という。)で開示しないこととした部分のうち、別表項番1~13の該当箇所欄に掲げる部分を開示すべきであり、その余の部分は妥当である。

第2 審査請求に至る経過
1 開示請求
 審査請求人は、令和3年12月7日に、旧条例第17条第1項の規定に基づき、実施機関に対し、「公開請求者に対する令和2年1130日付地方公務員法第29条第1項各号による懲戒処分(令和2年12月1日から向う1月間(令和2年1231日までの間)1月につき給料及び地域手当の合計額の10分の1(〇〇〇〇円)の減給)に至る経過で作成された一切の記録」の開示を求める旨の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 本件決定
 実施機関は、本件請求に係る保有個人情報を旧条例第23条第1項に基づき、「電話聴取報告書(令和2年7月31日作成)」(以下「本件情報1」という。)、「電話聴取報告書(令和2年8月13日作成)」(以下「本件情報2」という。)、「電話聴取報告書(令和2年11月6日作成)」(以下「本件情報3」という。)、「体罰・暴力行為等に関する報告書(令和2年10月1日作成)」(以下「本件情報4」という。)、「事情聴取議事録(令和2年10月8日実施)」(以下「本件情報5」という。)、「事情聴取議事録(令和2年1026日実施)」(以下「本件情報6」という。)、「事情聴取議事録(令和2年11月5日実施)」(以下「本件情報7」という。)、「顛末書(令和2年1013日作成)」(以下「本件情報8」という。)、「顛末書(令和2年1112日作成)」(以下「本件情報9」という。)、「大阪市人事監察委員会への案件の付議について(令和2年1113日決裁)」(以下「本件情報10」という。)、「教職員に対する懲戒処分について(令和2年1118日決裁)」(以下「本件情報11」という。)、「第16回教育委員会会議の議案第115号(令和2年1124日開催)」(以下「本件情報12」という。)と特定した上で、教職員以外の関係者の氏名その他個人を特定しうる情報(以下「本件非開示部分1」という。)、大阪市人事監察委員(以下「人事監察委員」という。)の自宅住所及び印影(以下「本件非開示部分2」という。)、人事監察委員の意見(以下「本件非開示部分3」という。)、処分案、処分事由、量定の考え方その他処分内容を類推しうる情報(以下「本件非開示部分4」という。)、顛末書提出に関する指示事項(以下「本件非開示部分5」という。)を開示しない理由を次のとおり付して、本件決定を行った。

旧条例第19条第2号に該当
(説明)
 本件非開示部分1及び本件非開示部分2については、開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報そのものにより又は他の情報と照合することにより、特定の個人が識別されるもの、又は特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であると認められ、かつ同号ただし書ア、イ、ウのいずれにも該当しないため
旧条例第19条第6号に該当
(説明)
 本件非開示部分3については、本市の服務事務に関する情報であって、開示することにより、人事監察委員の意見が明らかとなり、人事監察委員が率直な意見を述べられなくなる他、人事監察委員への働きかけ等が行われ、今後の人事監察委員の業務に影響をきたすことから、服務事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
 本件非開示部分4については、本市の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるため。
 本件非開示部分5については、本市の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、今後予定される本市の争訟に係る事務に関し、本市又は国等の財産上の利益または当事者としての地位を不当に害するおそれがあるため。
3 審査請求
 審査請求人は、令和4年3月8日に本件決定を不服として、実施機関に対して、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。

第3 審査請求人の主張
 審査請求人の主張は、おおむね次のとおりである。
1 審査請求の趣旨
 実施機関が審査請求人に対して行った本件決定を取り消すとの裁決を求める。
2 審査請求の理由
(1) 本件情報1から本件情報3までの非開示部分について
 審査請求人が生徒の自宅を訪問した際のやり取りを電話で聞き取った内容が記載されているところ、「父」、「母」といった関係性に係る記載であると推測される部分が非開示となっているが、生徒の情報が非開示となっている以上、当該記載だけで個人を特定することはできない。
 本件情報1から本件情報3までは、審査請求人に対する処分の根拠となる資料であるが、審査請求人は、当該処分により違法に財産権を侵害されたことから当該処分の取消しを求めて争っており、非開示部分については、旧条例第19条第2号ただし書イに該当する。
 本件情報1から本件情報3までに記載されている人物の氏名や関係性は、審査請求人に対する懲戒処分の根拠として最も重要な部分であり、その内容を把握しなければ、審査請求人が当該処分の適法性を争うにあたって、適切な反論をすることができず、当該部分が非開示とされることにより、審査請求人が受ける不利益は甚大である。一方で、本件情報1から本件情報3までに記載されている人物の氏名が、懲戒処分に係る関係者であるとすれば、審査請求人に当事者の生徒らの氏名を全て知っており、また、審査請求人は当該処分の効力を争うにあたって既に代理人を選任しているから、これらの関係者に直接連絡をとったり、危害を加えたりすることは考えられないものであり、これらの情報を審査請求人に開示してもこれらの関係者に何ら不利益は生じない。したがって、本件非開示部分1を非開示にすることにより、証言者が特定され、審査請求人以外の者の権利が害されるおそれに比して、開示することにより得られる審査請求人の利益が優越することから、旧条例第19条第2号ただし書イに該当することは明らかである。
(2) 本件非開示部分3について
 人事監査委員の意見は、その性質上、事後的に不利益処分の内容を争われた場合には、その処分を検証するために公開することが予定されている。
 人事監査委員の意見の根拠となる資料や事実関係は、審査請求人において確認ができているから、人事監査委員の意見のみを非開示とする理由はない。
 人事監査委員の意見が公になると人事監査委員への働きかけが行われるとしているが、既に人事監査委員の氏名は公開されているため、本件非開示部分3を公開しなくとも、人事監査委員への働きかけは可能である、また、審査請求人は既に代理員を選任し、懲戒処分について争っており、人事監査委員会の構成員に直接的な働きかけを行うはずがない。非開示事由該当性は実施機関において主張・立証すべきであるにもかかわらず、実施機関は、人事監査委員の勤務先等への押し掛けや働きかけ等の自体が度々発生すると主張するが、具体的な主張や客観的な証拠の提出もない。
 旧条例第19条第6号柱書の「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するか否かは、当該文書の性質上同号の要件に該当することが明らかでない限り、取り調べの必要性と公務の遂行に支障を及ぼすおそれの程度とを相関的に検討したうえで判断すべきであり(文書提出命令に係る最高裁第三小法廷平成25年4月19日決定(裁判集民243385頁)の田原睦夫裁判官の補足意見)、本件においても「服務事務の適切な遂行に支障を及ぼすおそれ」の判断に当たっては、当該文書を開示し、判断の対象として取り調べる必要性の程度についても検討し、当該文書の取り調べの程度と上記のおそれの程度とを相関的に検討すべきである。そして、当然ながら取り調べの必要性の程度が高い場合には、上記おそれの程度としてそのような取り調べの必要性の程度を上回るようなものが認められない限り、上記おそれは否定されるべきである。
 大阪市教育委員会は、審査請求人に対する懲戒処分を行うにあたって、人事監査委員会からの意見聴取を経て最終的な懲戒処分の要否及び量定を決定しているのであるから、当該処分の前提となる人事監査委員会の意見の内容が合理的か否か、当該処分が人事監査委員会の意見と整合しているかを確認することは重要な意味があり、審査請求人が当該処分により受けた不利益の大きさに鑑みれば、人事監査委員会の意見の内容を取り調べる必要性は非常に高い。したがって、人事監査委員会の意見の取り調べの必要性は高く、実施機関の主張する意見を開示した場合の抽象的なおそれと比較しても、当該事務又は事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとは言えない。
(3) 本件非開示部分4について
 旧条例第19条第6号に該当するとされているが、柱書なのか同号ア~カのいずれに該当するのか不明である。
 処分案、処分事由、量定の考え方その他の処分内容を推認しうる情報が開示されることで、公正かつ円滑な人事の確保について、具体的にどのような支障が生じるのか明らかではない。
 審査請求人は、自らに対する懲戒処分を争っているが、当該処分に理由があるのであれば、処分案、処分事由、量定の考え方その他の処分内容を推認しうる情報を開示しても何ら公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすことはない。
 処分案、処分事由、量定の考え方その他の処分内容を推認しうる情報は、事後的に処分の有効性が問題となった場合には、改めてその内容を検証することが予定されている。
 審査請求人は、自らに対する懲戒処分に対して審査請求を行っているところ、当該審査請求の手続のなかで大阪市教育委員会においてどのような事実に特に着目し、評価の対象としたのか、その結果を踏まえて処分の量定を決定したのかは、大阪市教育委員会において審査請求人に対して積極的に説明しなければならないから、処分案及び処分事由等を開示することは当然である。
 処分案、処分事由、量定の考え方その他の処分内容を推認しうる情報は、審査請求人に対する懲戒処分の適否を判断するために必要不可欠で、他に代えがたい証拠であるため、取り調べの必要性が高い。
 実施機関は、処分案、処分事由、量定の考え方その他の処分内容を推認しうる情報を開示すると実施機関が行う評価の着眼点及び手法が明らかになり、今後、同種の事案において非違行為を行なった教職員が自己に不利な評価を受けることを免れるための措置を講じる機会を与えると主張するが、抽象的な危険を指摘するだけで、何ら具体的な業務の支障を主張・立証したものとは言えない。そもそも、教職員の懲戒処分の事案に関して、個別の事案について実施機関がどのような事実に着目したかが明らかになったとしても、一般論として他の懲戒処分の事案に適用できるものではなく、ただちに教職員が不利な評価を受けることを免れるための措置を講じられるはずがない。さらに、実施機関は、教職員に対して、事実経過を報告するために調査に協力を求めることができるのであり、上記のおそれが顕在化することも考えられない。
 実施機関は、本件非開示部分4を開示した場合は、今後すべての懲戒処分において本件非開示部分4を開示することとなると主張するが、開示請求については個別具体的な事情を勘案し、非開示事由に該当する場合のみ非開示処分を行うことになるのであるから、他の事案についてすべて当該部分を開示しなければならないとの結論にならない。
(4) 本件非開示部分5について
 旧条例第19条第6号に該当するとされているが、柱書なのか同号ア~カのいずれに該当するのか不明である。
 非開示の理由には、「開示することにより、今後予定される本市の争訟に係る事務に関し、本市又は国等の財産上の利益または当事者としての地位を不当に害するおそれがある」とされているが、審査請求人に対して「顛末書の提出を求める際に何を伝えたのか」ということは、単なる事務連絡事項に過ぎず、上記の事項が明らかになったとしても、財産上の利益または当事者としての地位を不当に害するおそれがあるとは考えられない。
 旧条例第19条第6号イの「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、本市又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」については、「契約、交渉又は争訟に係る事務においては、相手方との交渉、折衝等が不可欠であるが、市が保有する内部情報等を明らかにすると相手方にとって一方的に有利となり、対等な立場で契約、交渉又は争訟を遂行すべき立場にある市の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれがあるため、非開示とする趣旨である。このうち、争訟に係る事務に関する情報を非開示とする理由については、実施機関が当事者として争訟に対処するための内部的な方針等に関する情報を開示した場合には、当該情報が正規の争訟の場を経ないで、相手方当事者に伝わるなどして、紛争の公正、円滑な解決を妨げ、実施機関の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれがあることによる。」とされている(松戸市平成30年度答申第9号等)。顛末書の提出に際する指示事項は、単なる事務連絡に過ぎず、開示したとしても、審査請求人を一方的に有利にするものではなく、実施機関が対等な立場で交渉等ができなくなるものではない。

第4 実施機関の主張
1 本件非開示部分1の旧条例第19条第2号該当性について
(1) 旧条例第19条2号の解釈について
 審査請求人は、旧条例第19条2号の解釈に誤りがあることから本件情報1から本件情報3までについては、非開示と決定された部分も開示をしなければならないとしている。また、単なる関係性(父や母)を非開示としている判断について、その情報自体は本人の個人名が非開示となる以上は何らの個人を特定し得る情報にはなり得ず、かつ、個人の権利利益を害するおそれがあるとも言えないと主張している。
 本件処分は、審査請求人が、平成28年8月頃、大阪市立中学校において自身が顧問を務めていた部活動の部員である生徒(以下、「関係生徒」という。)を指導した際、関係生徒の足を蹴ったことに関し、その事実を確認するため、関係生徒やその保護者に対し、電話にて聴取した証言である。本件情報1から本件情報3は、その証言を報告する文書である。これらの証言は、証言者を秘匿することにより得ているものであり、証言者を特定しうる情報は、特定の個人が識別されるものとして非開示としている。
 また、生徒と保護者の単なる関係性であっても、審査請求人が知り得た情報のうち、本件情報1において審査請求人が家庭訪問時に出会った保護者の性別や話の内容等により生徒を特定するなど、他の情報と照合することにより、特定の個人が識別され、前述の証言者を特定しうる可能性を否定できない。このため、審査請求人が主張している単なる関係性であっても、特定の個人が識別される可能性があるため、旧条例第19条第2号本文に該当するといえる。
 以上から、本件非開示部分1の情報を非開示とした。
(2) 旧条例第19条2号ただし書アの解釈について
 本件非開示部分1は、「法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」ではなく、同号ただし書アに該当しないことは明らかである。
(3) 旧条例第19条2号ただし書イの解釈について
 審査請求人は、本件処分に対し、人事委員会への審査請求を申し立てており、実施機関から、本件情報1から本件情報3までのうち本件非開示部分1をマスキングして証拠提出している。これに関連して、審査請求人は、旧条例第19条第2号ただし書イに規定する「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」に本件非開示部分1が該当していると主張している。
 審査請求人は、本件情報1から本件情報3までにおいて、本件非開示部分1である「教職員以外の関係者の氏名その他個人を特定しうる情報」を正確に確認しなければ、本件処分に理由があるか判断することが出来ないとしており、少なくとも、誰が、どのように説明したのかわからなければ、本件処分の事案の被害生徒の供述なのかもわからないと主張している。
 しかし、本件情報1から本件情報3までにおいて、部員への聞き取りであることは明記されており、本件処分の理由を判断するに足りる十分な情報が記載されていることは明らかであるから、審査請求人の主張は当たらない。
 また、本件非開示部分1を非開示とすることにより得られる利益と本件非開示部分1を開示することにより得られる開示請求者を含む人の生命、身体、健康、生活又は財産の保護という公益を比較衡量した場合、本件非開示部分1を開示することにより、保護者の性別や話の内容により証言者が特定され、開示請求者以外の権利利益が害されるおそれがあり、開示することにより得られる開示請求者を含む人の生命、身体、健康、生活又は財産の保護という公益が優越するとはいえないことから、同号ただし書イに該当しない。
(4) 旧条例第19条2号ただし書ウの解釈について
 本件非開示部分1は、「当該個人が行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第14条第2号ハに規定する公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」ではなく、同号ただし書ウに該当しないことは明らかである。
2 本件非開示部分3の旧条例第19条第6号該当性について
(1) 大阪市人事監察委員会について
 大阪市人事監察委員会(以下「人事監察委員会」という。)は、大阪市職員基本条例(平成24年条例第71号。以下「基本条例」という。)第63条の規定に基づき設置されたものであり、人事監察委員会議事運営要綱(以下「要綱」という。)第2条第2号では人事監察委員会に大阪市人事監察委員会教職員分限懲戒部会(以下「部会」という。)を置くとされているものである。
 部会の所掌事務は、要綱第3条第2項第2号で「教職員の分限処分、懲戒処分を行うか否かの決定及びその処分内容の決定にあたっての意見具申その他必要な事項に関する調査審議」と規定されている。
(2) 教職員に対する懲戒処分の要否及び量定の決定について
 本市では、職員に対する懲戒処分の要否及び量定を、地方公務員法(昭和25年法律第261号)及び基本条例に基づき、非違行為の動機及び態様並びに公務内外に与える影響等を総合的に考慮した上で、決定する。
 基本条例は、処分量定の基準として、非違行為の類型に応じた懲戒処分の種類を表形式で定めるとともに(基本条例第28条第1項、別表)、処分を加重する場合(同条第2項及び第3項)又は軽減する場合(同条第4項)の取扱いについて定めている。
 また、懲戒処分の要否及び量定を決定するにあたっては、基本条例を根拠に設置する、市長の附属機関である人事監察委員会の専門的見地に基づく意見を事前に聴くことにより、より公正な懲戒処分を行うこととしている(基本条例第30条)。
 なお、前述の(1)で述べたとおり、要綱第2条第2号では人事監察委員会に部会を置くとされており、部会の所掌事務は、要綱第3条第2項第2号で「教職員の分限処分、懲戒処分を行うか否かの決定及びその処分内容の決定にあたっての意見具申その他必要な事項に関する調査審議」と規定されている。
 実施機関では、これら人事監察委員会からの意見聴取を経た後に、教育委員会会議において、最終的な懲戒処分の要否及び量定を決定することとなる。
(3) 人事監察委員の意見について
 実施機関は、本件非開示部分3の人事監察委員の意見については、旧条例第19条第6号に該当し、本市の服務事務に関する情報であって、公にすることにより、人事監察委員の意見が明らかとなり、人事監察委員が率直な意見を述べられなくなる他、人事監察委員への働きかけ等が行われ、今後の人事監察委員の業務に影響をきたすことから、服務事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断し、本件決定を行ったものである。
 人事監察委員の意見を非開示としている現状においてさえ、実際に、非違行為を行い懲戒処分の対象となった教職員及びその関係者らが、公表されている人事監察委員の勤務先等へ押し掛け、執拗に、処分に賛同しないようにとの働きかけの他、処分に係る質問や批判、ビラ撒き等の示威行動を行う事態が度々発生しているところである。
 このような状況下において、仮に、本件決定において非開示とした人事監察委員の意見を開示した場合、最終的に懲戒処分を受けた被処分者又はその関係者らから、人事監察委員個人に対し、下された懲戒処分の他、部会で発言した意見に対する苦情や批判等が寄せられることが容易に想定される。その結果、人事監察委員がそれら苦情や批判を恐れ、部会において率直かつ自由に意見を述べることを躊躇し、さらには、部会の判断にも影響を及ぼすことから、公正な懲戒処分がなされなくなるおそれがある。
 また、審査請求人は、人事監察委員の意見の性質上、事後的に不利益処分の内容が争われた場合には、その内容を事後的に検証するために公開をすることを予定しているものであると主張している。
 しかし、実施機関は、基本条例第30条に基づき、懲戒処分を行うか否かの決定及びその量定の決定に当たっては、基本条例第63条の規定による人事監察委員会の意見を聴かなければならないとされており、実施機関では聴取した意見を参考に処分を決定しているが、人事監察委員の意見を公開することは予定しておらず、実施機関が懲戒処分を行う際は、その旨を記載した書面として処分事由説明書を被処分者へ交付しており、事後的に不利益処分の内容が争われた場合には、処分事由説明書に記載している内容を基に争われるものと考える。
 以上から、本件非開示部分3の情報を非開示とした。
3 本件非開示部分4の旧条例第19条第6号該当性について
 処分案、処分事由、量定の考え方その他処分内容を類推しうる情報のうち、量定の考え方は、実施機関が、過去の類似事案に対して行った処分及び基本条例の別表に定める処分量定の基準に基づき評価した、教職員の非違行為についての具体的な評価内容の案である。処分案は、量定の考え方から導き出される処分量定の案であり、処分事由は、実施機関が事実であると認定した教職員による具体的な非違行為のうち、処分案の決定にあたって特に着目し、評価の対象とした内容である。ここで、基本条例の別表に定める処分量定の基準の内容とは、非違行為の類型ごとに懲戒処分の種類を示したに過ぎないものであり、処分内容並びに量定の考え方、処分案及び処分事由の作成にあたっては、実施機関が、個々の非違行為の動機及び態様を個別具体的に斟酌するとともに、公務内外に与える影響等を総合的に考慮して、教職員の非違行為について評価を行うものである。従って、処分内容並びに量定の考え方には、教職員の非違行為について、実施機関がどのような点に着眼し、どのように評価するのかといった個々の事案に応じた評価方法が示されており、また処分案及び処分事由にはその評価結果が示されていることになる。
 このような性質を有する本件非開示部分4を開示すると、教職員の非違行為について、実施機関が行う評価の着眼点及び手法が明らかになり、今後、同種の事案において、非違行為を行った教職員が自己に不利な評価を受けることを免れるための措置を講じる手段を与えてしまうことが想定される。その結果、実施機関において、教職員の非違行為に対する適正な評価が困難となり、今後実施される教職員の懲戒処分に係る人事管理事務自体が機能不全に陥るおそれがある。
 仮に本件請求に対し本件非開示部分4を開示した場合、今後全ての懲戒処分においても本件非開示部分4を開示することになり、開示することにより保障されると考えられる市民の権利と、実施機関が被る上記の事務事業遂行上の支障を比較衡量すると、開示することの必要性を考慮しても、なお、今後実施される教職員の懲戒処分に係る人事管理事務において、公正かつ円滑な遂行に重大な支障を及ぼすことから、人事管理に係る事務へ「支障を及ぼすおそれ」は、相当の蓋然性を有していると思料する。
 以上から、本件非開示部分4の情報を非開示とした。
4 本件非開示部分5の旧条例第19条第6号該当性について
 実施機関では、事故発生時の状況を把握し、不始末が生じたいきさつや原因をはっきりさせることにより、事故再発の防止や反省材料として役立てるため、地方公務員法第32条に基づく職務命令として、顛末書の提出を求めている。本件処分においては、審査請求人に対する事情聴取の際に、本件情報6のとおり顛末書の提出を求める指示を行っている。
 一方、審査請求人は、「顛末書の提出を求める際に何を伝えたのか」ということは、単なる事務連絡事項に過ぎず、上記の事項が明らかになったとして、本市又は国等の財産上の利益または当事者としての地位を不当に害するおそれがあるとは考えられないと主張している。
 しかし、今後想定される本市の争訟に係る事務において、被処分者が提出した顛末書は、事実を認定し教職員の非違行為に対する適正な評価を行うための重要な書証の一つを構成している。本件非開示部分5における指示事項は、実施機関から審査請求人への単なる事務連絡事項ではなく、実施機関と審査請求人が係争した際に、その指示内容は争点となりうるものである。
 このため、本件非開示部分5を開示することにより、今後本市の争訟となった場合その事務において、本市又は国等の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれがあるといえる。
 以上から、本件非開示部分5の情報を非開示とした。

第5 審議会の判断
1 基本的な考え方
 旧条例の基本的な理念は、第1条が定めるように、市民に実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める具体的な権利を保障し、個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めることによって、市民の基本的人権を擁護し、市政の適正かつ円滑な運営を図ることにある。したがって、旧条例の解釈及び運用は、第3条が明記するように、個人情報の開示、訂正及び利用停止を請求する市民の権利を十分に尊重する見地から行わなければならない。
2 争点
 審査請求人は、本件決定を取り消し、本件非開示部分1から本件非開示部分5まで(以下これらを総称して「本件各非開示部分」という。)を開示すべきと主張しているのに対して、実施機関は、本件各非開示部分は旧条例第19条第2号又は第6号に該当すると主張している。したがって、本件審査請求における争点は、本件各非開示部分の旧条例第19条第2号又は第6号該当性である。
3 旧条例第19条第2号及び第6号の基本的な考え方について
(1) 旧条例第19条第2号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報…であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」は開示しないものと規定しているが、同号ただし書では、これらの情報であっても、「ア 法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報、イ 人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報、ウ 当該個人が…公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」については、開示しなければならない旨規定している。
(2) 旧条例第19条第6号の基本的な考え方について
 旧条例第19条第6号は、本市の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業の目的を達成し、その公正、円滑な執行を確保するため、「開示することにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」は開示しないことができると規定している。
 ここでいう「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を開示することによる利益と支障を比較衡量した上で、開示することの必要性を考慮しても、なお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過し得ない程度のものであることが必要である。
 したがって、「支障を及ぼすおそれ」は、抽象的な可能性では足りず、相当の蓋然性が認められなければならないと解される。
4 本件各非開示部分の旧条例第19条第2号又は第6号該当性について
 以下、本件対象情報ごとに本件各非開示部分の旧条例第19条第2号又は第6号該当性について検討する(なお、本件対象情報8及び本件対象情報9は全部開示であるため検討しない)。
(1) 本件対象情報1から本件対象情報3までについて
 審議会において、本件対象情報1から本件対象情報3を見分したところ、これらの文書において非開示とされている部分は、開示請求人以外の関係者の氏名その他個人を特定しうる情報であるため、旧条例第19条第2号本文に該当する。
 そして、これらの情報のうち、別表項番1、3及び4の該当箇所欄に掲げる情報を除く部分については、その性質上、同号ただし書ア、イ、ウに該当しない。
 他方、別表項番1、3及び4の該当箇所欄に掲げる情報については、開示請求人が行ったとされる体罰・暴力行為(以下「本件行為」という。)の対象者(以下「本件生徒」という。)の氏名等であり、審査請求人が開示請求時点で既に知っている情報であると認められる。
 また、本件対象情報1は、審査請求人が審査請求書に添付された甲第1号証と同一の文書であると認められるところ、甲第1号証においては、本件対象情報のうち、別表項番2の該当箇所欄に掲げる情報が開示されていると認められる。
 したがって、別表項番1~4の該当箇所欄に掲げる情報については、旧条例第19条第2号ただし書アの開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当するため、同号に該当しない。
 以上より、本件対象情報1から本件対象情報3までにおいて非開示とされた情報のうち、別表項番1~4の該当箇所欄に掲げる情報は開示すべきである。
(2) 本件対象情報4について
 審議会において、本件対象情報4を見分したところ、当該文書において非開示とされている部分は、本件生徒の氏名等の本件生徒を特定しうる情報(別表項番4の該当箇所欄に掲げる情報)及び本件行為に対する関係者の意見等であった。
 このうち、本件生徒の氏名等の本件生徒を特定しうる情報は、開示請求人以外の関係者の氏名その他個人を特定しうる情報であり、旧条例第19条第2号本文に該当するが、当該情報は、上記(1)のとおり、審査請求人が開示請求時点で既に知っている情報であることから、旧条例第19条第2号ただし書アの開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当するため、同号に該当せず、当該情報は開示すべきである。
 そして、本件行為に対する関係者の意見等については、本件行為に起因する審査請求人に対する処分を基礎づける情報であり、処分事由の一部であると認められる。そして、処分事由は、実施機関が事実であると認定した教職員による具体的な非違行為のうち、処分案の決定にあたって特に着目し、評価の対象とした内容である。そして、処分事由の作成にあたっては、実施機関が、個々の非違行為の動機及び態様を個別具体的に斟酌するとともに、公務内外に与える影響等を総合的に考慮して、教職員の非違行為について評価を行うものであるから、処分事由にはその評価結果が示されていることになる。
 このような性質を有する処分事由を開示すると、教職員の非違行為について、実施機関が行う評価の着眼点及び手法が明らかになり、今後、同種の事案において、非違行為を行った教職員が自己に不利な評価を受けることを免れるための措置を講じる手段を与えてしまうことが想定される。
 その結果、実施機関において、教職員の非違行為に対する適正な評価が困難となるなど、実施機関の人事管理事務の公正かつ円滑な遂行に重大な支障を及ぼす相当の蓋然性があると認められるから旧条例第19条第6号に該当する。
(3) 本件対象情報5から本件対象情報7までについて
 審議会において、本件対象情報5から本件対象情報7までを見分したところ、これらの文書において非開示とされている部分は、本件生徒その他開示請求人以外の関係者の氏名及び顛末書提出に関する指示事項(本件非開示部分5)であると認められ、また、本件対象情報5から本件対象情報7までは、実施機関の職員が審査請求人及びその上司から聞き取りを行った内容を逐語で反訳したものであると認められた。
 したがって、本件対象情報5から本件対象情報7までにおいて非開示とされている部分のうち、本件生徒その他開示請求人以外の関係者の氏名については、これらの個人を特定しうる情報であることから、旧条例第19条第2号本文に該当するが、上述の本件対象情報5から本件対象情報7までの作成過程に鑑みると、これらの情報は審査請求人が開示請求時点で既に知っている情報であると認められるから、同号ただし書アの開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当するため、同号に該当しない。
 また、本件対象情報5において非開示とされている部分のうち、本件非開示部分5について、実施機関は、今後想定される本市の争訟に係る事務において、被処分者が提出した顛末書は、事実を認定し教職員の非違行為に対する適正な評価を行うための重要な書証の一つを構成していることから、本件非開示部分5における指示事項は、実施機関から審査請求人への単なる事務連絡事項ではなく、実施機関と審査請求人が係争した際に、その指示内容は争点となりうるものであるとして、本件非開示部分5を開示することにより、今後、争訟となった場合、本市又は国等の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれがあるとして、旧条例第19条第6号イに該当すると主張する。
 しかしながら、本件非開示部分5については、上記のとおり、本件対象情報5の作成過程に鑑みると、口頭とはいえ、審査請求人に既に伝えられていた内容であると認められ、さらに、その内容は複雑な内容ではなく、その指示に基づいて審査請求人が実際に顛末書を作成し、提出していることを併せ考えると、審査請求人が開示請求時点で既に知っている情報であると認められる。したがって、本件非開示部分5を開示したとしても、本市の訴訟上の地位を不当に害するおそれがあるとは認められないから、旧条例第19条第6号イには該当しない。
(4) 本件対象情報10及び本件対象情報11について
 審議会において、本件対象情報10及び本件対象情報11を見分したところ、本件対象情報10において非開示とされている部分は、処分案、処分事由、量定の考え方その他処分内容に至る判断過程を推測しうる情報(以下「処分関連情報」という。)並びに本件生徒の氏名等の本件生徒を特定しうる情報(別表項番4の該当箇所欄に掲げる情報)及び本件行為に対する関係者の意見であり、本件対象情報11において非開示とされている部分は、これらの情報のほか、人事監察委員会の自宅住所及び印影並びに人事監察委員の意見であると認められた。
 そして、処分関連情報のうち、別表項番9及び11の該当箇所欄に掲げる情報は、基本条例及び地方公務員法の条文の抜粋並びに実施機関が令和2年3月に定めた「体罰暴力行為等に対する処分等の基準について」の抜粋であることが認められ、事務局職員をして実施機関に確認させたところ、「体罰暴力行為等に対する処分等の基準について」は、実施機関において大阪市のホームページ等で公表しているとのことであった。
 したがって、これらの法律・条例の規定や処分基準は、いずれも広く公表されている情報であって、審査請求人に開示したとしても、人事管理事務の公正かつ円滑な遂行に重大な支障を及ぼす相当の蓋然性があるとは認められないから、これらの部分は、旧条例第19条第6号には該当しない。
 他方、処分関連情報のうち、別表項番9の該当箇所欄に掲げる情報を除く部分は、処分案、処分事由、量定の考え方その他処分内容に至る判断過程を推測しうる情報である。
 このうち、量定の考え方は、実施機関が、過去の類似事案に対して行った処分及び基本条例の別表に定める処分量定の基準に基づき評価した、教職員の非違行為についての具体的な評価内容の案であり、処分案は、量定の考え方から導き出される処分量定の案であり、処分事由は、実施機関が事実であると認定した教職員による具体的な非違行為のうち、処分案の決定にあたって特に着目し、評価の対象とした内容である。
 ここで、基本条例の別表に定める処分量定の基準の内容とは、非違行為の類型ごとに懲戒処分の種類を示したに過ぎないものであり、処分内容並びに量定の考え方、処分案及び処分事由の作成にあたっては、実施機関が、個々の非違行為の動機及び態様を個別具体的に斟酌するとともに、公務内外に与える影響等を総合的に考慮して、教職員の非違行為について評価を行うものである。従って、処分内容及び量定の考え方には、教職員の非違行為について、実施機関がどのような点に着眼し、どのように評価するのかといった個々の事案に応じた評価方法が示されており、また処分案及び処分事由にはその評価結果が示されていることになる。
 このような性質を有する本件非開示部分4を開示すると、教職員の非違行為について、実施機関が行う評価の着眼点及び手法が明らかになり、今後、同種の事案において、非違行為を行った教職員が自己に不利な評価を受けることを免れるための措置を講じる手段を与えてしまうことが想定される。その結果、実施機関において、教職員の非違行為に対する適正な評価が困難となり、今後実施される教職員の懲戒処分に係る人事管理事務自体が機能不全に陥るおそれがある。
 仮に本件請求に対し本件非開示部分4を開示した場合、今後全ての懲戒処分においても本件非開示部分4を開示することになり、開示することにより保障されると考えられる市民の権利と、実施機関が被る上記の事務事業遂行上の支障を比較衡量すると、開示することの必要性を考慮しても、なお、今後実施される教職員の懲戒処分に係る人事管理事務において、公正かつ円滑な遂行に重大な支障を及ぼすことから、人事管理に係る事務へ「支障を及ぼすおそれ」は、相当の蓋然性を有していると認められる。
 次に、処分関連情報を除く情報が記載されている本件対象情報1014頁は、本件対象情報4と文書下部に記載されている教育委員会決裁欄に押印されている印影を除き同一の内容であると認められる。
 したがって、上記(2)と同様に、次のとおり認められる。
 すなわち、別表項番10の該当箇所欄に掲げる情報は、開示請求人以外の関係者の氏名その他個人を特定しうる情報であるため、旧条例第19条第2号本文に該当するが、当該情報は、審査請求人が開示請求時点で既に知っている情報であることから、旧条例第19条第2号ただし書アの開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報に該当するため、同号に該当しないから、当該部分は開示すべきである。
 そして、本件行為に対する関係者の意見等については、実施機関によれば、人事監察委員の意見を非開示としている現状においてさえ、実際に、非違行為を行い懲戒処分の対象となった教職員及びその関係者らが、公表されている人事監察委員の勤務先等へ押し掛け、執拗に、処分に賛同しないようにとの働きかけの他、処分に係る質問や批判、ビラ撒き等の示威行動を行う事態が度々発生しているとのことである。
 この点、審査請求人は、人事監査委員の意見は、その性質上、事後的に不利益処分の内容を争われた場合には、その処分を検証するために公開することが予定されていると主張するが、不利益処分の内容が争われた場合に、当該処分の適法性を立証するため人事監査委員の意見が提出される可能性は否定できないが、当該処分の適否はあくまでも、当該処分の当否実施機関が被処分者に交付した処分事由説明書に記載された処分理由をもとに判断されるものであり、人事監査委員の意見が公開することが予定されているものとは認められない。
 また、審査請求人は、既に人事監査委員の氏名は公開されているため、本件非開示部分3を公開しなくとも、人事監査委員への働きかけは可能であるし、また、審査請求人は既に代理員を選任し、懲戒処分について争っており、人事監査委員会の構成員に直接的な働きかけを行うはずがないと主張する。
 しかしながら、氏名のみが公表されている状況下でさえ、懲戒処分の対象となった教職員及びその関係者らによる公表されている人事監察委員の勤務先等への押し掛けなどの働きかけや示威行動を行う事態が度々発生しているとのことであり、このような状況下で、人事監察委員の意見を開示した場合、最終的に懲戒処分を受けた被処分者又はその関係者らから、人事監察委員個人に対し、下された懲戒処分の他、部会で発言した意見に対する苦情や批判等が寄せられることが容易に想定されるとの実施機関の主張に不自然・不合理な点は認められず、また、このような事態は、懲戒処分の対象となった教職員が懲戒処分について弁護士を代理人として選定することにより、抑止されるとは限らない。
 したがって、人事監察委員の意見を公表することで、人事監察委員が部会において率直かつ自由に意見を述べることを躊躇し、さらには、部会の判断にも影響を及ぼすことから、公正な懲戒処分がなされなくなるおそれがあるから、実施機関の服務事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
 以上より、人事監察委員の意見については、旧条例第19条第6号に該当する。
(5) 本件対象情報12について
 審議会において、本件対象情報12を見分したところ、本件対象情報12において非開示とされている部分は処分関連情報であり、そのうち、別表項番13の該当箇所欄に掲げる情報は、基本条例及び地方公務員法の条文の抜粋並びに実施機関が定めた「体罰暴力行為等に対する処分等の基準について」の抜粋であることが認められるから、上記(4)のとおり、これらの情報を審査請求人に開示したとしても、人事管理事務の公正かつ円滑な遂行に重大な支障を及ぼす相当の蓋然性があるとは認められないから、これらの部分は、旧条例第19条第6号には該当しない。
 本件対象情報12において非開示とされている部分のうち、別表項番13の該当箇所欄に掲げる情報を除く情報は、処分量定の考え方であることが認められるから、上記(3)のとおり、これを開示することにより、実施機関において、教職員の非違行為に対する適正な評価が困難となるなど、実施機関の人事管理事務の公正かつ円滑な遂行に重大な支障を及ぼす相当の蓋然性があると認められるから旧条例第19条第6号に該当する。
5 結論
 以上により、第1記載のとおり、判断する。
6 付言
 当審議会は、審査請求人に対する懲戒処分に係る理由提示が十分であるか否かについては判断する立場にはないが、審査請求人に対する処分事由説明書を見分すると、事案の概要及び地方公務員法第29条第1項各号による懲戒処分である旨を記載するにとどまり、条例及び「体罰暴力行為等に対する処分等の基準について」の適用関係を記載する等の詳しい理由提示はなされていない。この点、不利益処分の理由提示が名宛人にとってなるべくわかりやすいものであることが望ましいことは言うまでもない。本件審査請求は、審査請求人において、自らに対する懲戒処分に係る処分事由説明書だけでは、どのような理由に基づいて、懲戒処分に至ったかを知ることが困難であったことが端緒となっているものと考えられ、このような経過に鑑みると、処分事由説明書へのよりわかりやすい理由提示の必要性は相当高いものと認められる。したがって、実施機関においては、人事管理に係る事務への支障を及ぼさない範囲で懲戒処分に係る処分事由説明書に条例及び「体罰暴力行為等に対する処分等の基準について」の適用関係を記載する等、よりわかりやすい理由提示のあり方を検討されたい。

 (答申に関与した委員の氏名)
 委員 野呂 充、委員 小林 邦子、委員 篠原 永明、委員 矢口 智春

別表

 (参考)調査審議の経過 令和3年度諮問受理第121
 略

答申第198号

Adobe Acrobat Reader DCのダウンロード(無償)別ウィンドウで開く
PDFファイルを閲覧できない場合には、Adobe 社のサイトから Adobe Acrobat Reader DC をダウンロード(無償)してください。

探している情報が見つからない

このページの作成者・問合せ先

大阪市 総務局行政部行政課情報公開グループ

住所:〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所1階)

電話:06-6208-9825

ファックス:06-6227-4033

メール送信フォーム